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ANA CAと一ノ蔵 社長がトークショー。「ANAも採用する一ノ蔵の味と酒造りへの情熱」

日本橋高島屋S.C.新館のオープン記念イベント「日本酒まつり」会場にて

2018年10月25日 実施

日本橋高島屋 本館で実施された「日本酒まつり」で行なったトークショー「ANAも採用する一ノ蔵の味と酒造りへの情熱」にANAが参加した

 ANA(全日本空輸)は、日本橋高島屋 本館で実施された「日本酒まつり」で行なったトークショー「ANAも採用する一ノ蔵の味と酒造りへの情熱」に参加。 同社の機内で提供している日本酒「一ノ蔵」の製造元、一ノ蔵の代表取締役社長 鈴木整(ひとし)氏らとともに、日本酒の魅力をアピールした。

 トークショーは、2018年8月刊行の「NIPPON SAKE DISCOVERY 会いに行ける酒蔵ツーリズム 仙台・宮城」の出版元であるKADOKAWAの街づくり総研の矢野晋也氏の司会で進行。一ノ蔵の鈴木整氏とANA CA(客室乗務員)の田中詩乃氏の3名が、日本酒の試飲を交えながら一ノ蔵の酒造りや航空機内で高まる日本酒の人気について語った。

左から全日本空輸株式会社 CA(客室乗務員) 田中詩乃氏、株式会社一ノ蔵 代表取締役社長 鈴木整氏、株式会社KADOKAWA 街づくり総研 矢野晋也

「日本橋高島屋S.C.新館」誕生の記念イベントとして「日本酒まつり」を東京初開催

 イベントは、日本橋高島屋S.C.新館のオープン記念イベント「日本酒まつり」(10月24日~29日開催)で行なわれたもの。「日本酒まつり」はこれまで横浜タカシマヤや大阪タカシマヤなどで実施してきたが、東京では初開催となった。日本橋二丁目地区の再開発により誕生した日本橋高島屋S.C.新館は、地上26階建てのうち地下1階から地上7階までに、114店舗の専門店が入居。日本初出店や商業施設初出店の専門店も多い。

 この新館オープンにより、3月に先行してオープンした東館や、重要文化財である既存の日本橋高島屋 本館、ウオッチメゾンを合わせて「日本橋高島屋S.C.」となっている。

日本橋高島屋S.C.新館のオープン記念イベント「日本酒まつり」
日本橋高島屋S.C.新館のオープン記念イベントとして「日本酒まつり」を実施。多くの蔵元が出展し、試飲や日本酒販売を行った。チケット制のスタンドバーも登場
20名ほどが参加できるイベントコーナーで実施された
「ANAも採用する一ノ蔵の味と酒造りへの情熱」とのタイトルでトークイベントを行なった

酒蔵ツアー「会いに行ける酒蔵ツーリズム」を発売

「会いに行ける酒蔵ツーリズム」とは、東北へのインバウンド誘致を目的に設立された「宮城インバウンドDMO」と東北の観光振興を行なう「VISIT東北」が、観光コンテンツとして開発した酒造ツアー。「人に会いに行く旅」をテーマに、地元タクシー企業や旅行代理店と連携して2018年9月から販売を開始した。

 矢野氏によると「NIPPON SAKE DISCOVERY 会いに行ける酒蔵ツーリズム 仙台・宮城」も宮城のお酒を紹介するだけではなく、「会いに行きたくなる」をコンセプトに作られ、「なぜ酒蔵を始めたのか」など人のストーリーに焦点を当てて紹介しており、宮城にある12蔵のとがったお酒を各業界のプロに評価してもらうという企画で、ANAの田中氏が評価者として登場した経緯があった。

 一ノ蔵は、1973年に宮城県内の酒蔵4軒の企業合同により誕生。創業100年や200年は当たり前という業界では、ベンチャー企業のような立ち位置だという。企業合同したきっかけは、それまで割当制だったお米が自主流通米制度に変更されたこと。当時若手醸造家だった先代の4名が企業合同を行ない、現在はその2代目が順番に社長を務めていると説明した。鈴木氏は、軽快な語り口で一ノ蔵の酒造りについて解説していった。

株式会社一ノ蔵 代表取締役社長 鈴木整氏
株式会社KADOKAWA 街づくり総研 矢野晋也
全日本空輸株式会社 CA(客室乗務員)の田中詩乃氏
一ノ蔵の鈴木氏が軽快な語り口で酒造りについて解説

日本酒人気の高まりでANAの国際線エコノミークラスに一ノ蔵の特別純米酒 辛口を採用

 ANAの田中詩乃氏は2017年に「唎酒師」の資格を取得。ビジネスクラスに乗務すると外国人の乗客に「SAKE, Please」「GINJYO, Please」と指定されることが多く、「日本のよさを海外のお客さまに広めていきたい」という思いがきっかけでCAになったこともあり、日本酒を通じて海外のお客さまに日本のよさを伝えることができると実感。もっと日本酒の魅力を自分で学んで発信していきたいと唎酒師の資格を取得したという。

 現在、ANAの国際線エコノミークラスでは「一ノ蔵 特別純米酒 辛口」が採用されているが、これは一ノ蔵の定番の特別純米酒を特別ラベルで提供しているもの。イベント会場では、トークショーを鑑賞する参加者たちにこの特別純米酒が提供され、テイスティングしながら鑑賞した。

 ANAでは以前は国際線のエコノミークラスでの日本酒提供を休止していた期間もあったが、現在では国内外での日本酒への注目度が高まり、現在は一ノ蔵が採用されている。田中氏は米国路線やインド路線を担当しているそうだが、一ノ蔵は特に人気で、足りなくなることも多いとのこと。インバウンドだけでなく、乗り継ぎ便でも「SAKE, Please」とよく指定され、日本酒の人気の高まりを感じているそうだ。

 また、一ノ蔵の鈴木氏によると、特にエコノミークラスで銘柄が採用されていることが、メーカーにとっては名誉なことだという。ビジネスクラスやファーストクラスの採用では数種類あるうちの1種になってしまうが、エコノミークラスは一ノ蔵しかないので、ほかの酒造メーカーからもうらやましがられるそうだ。

ANAの国際線エコノミークラスでは日本酒として「一ノ蔵 特別純米酒 辛口」を、ANAをイメージした限定オリジナルラベルで提供

新しい取り組みを続ける一ノ蔵。「発泡酒」に続き「温泉熱熟成種」も

 さらに、一ノ蔵での取り組みや先進的な酒造りも紹介。一つは、社内に農業部門を設けて酒米の研究開発を行なっていること。1993年の米の大冷害をきっかけに開始し、地元農家と協力して活動しているという。ほかにも、毎年「日本酒大学」という取り組みも実施。1泊2日で本格的に座学と酒造り体験を行ない、筆記試験や実技試験の後、合格者に修了証書を渡すもので、非常に人気が高いという。

 また、先進的な取り組みの例として、温泉熱熟成酒「一ノ蔵 Madena」も紹介。宮城県 鳴子温泉郷の温泉熱を利用した熟成酒で、黄金色に輝くブランデーのような香ばしい香りが漂う日本酒に仕上がっているという。開けずに瓶のまま保管すると30年、50年など自家熟成が楽しめ、誕生年に合わせて熟成させるなど、ワインのような楽しみ方ができるという。入手困難な人気商品だが、会場では試飲も振る舞われた。

 さらに、発売から20周年を迎える「一ノ蔵 発泡清酒 すず音」は日本酒の発泡酒の先駆けでもあり、ANAの田中氏も「やわらかくて甘いお酒なので、女子会に向いているのでは」とコメント。会場の参加者は、日本酒の試飲を楽しみながら、一ノ蔵 鈴木氏による酒造りやANA 田中氏による機内での日本酒人気の紹介をたん能。これからの日本酒の広がりを感じさせる内容となった。

 トークセッション後にANAの田中氏に話を聞くと、「私も知らなかった一ノ蔵さんの魅力や背景を知ることができました。機内でサービスする際に、お客さまにもお伝えしてサービス向上につなげていきたいと思います。日本のよさを伝える武器の一つとして、今後も日本酒の魅力を伝えていきたい。宮城県の復興にもつながると思っています」と語っていた。

スライドで紹介しながら一ノ蔵の取り組みについて紹介
社内に農業部門を設けて酒米の研究開発も実施
毎年、座学と酒造りを本格的に学ぶ「日本酒大学」という取り組みも行なっている
温泉熱熟成酒「一ノ蔵 Madena」(左)や発泡清酒の先駆け「一ノ蔵 発泡清酒 すず音」(右)など新しい日本酒造りも数多く行なっている
会場には「一ノ蔵 特別純米酒 辛口」や「一ノ蔵 Madena」を試飲で提供
左が「一ノ蔵 特別純米酒 辛口」、右が温泉熱熟成酒「一ノ蔵 Madena」