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JAL、“旅の試着”ができる「JAL xR Traveler」と「JAL 体験自販機」を公開

仮想空間を散歩しながら風や香りを感じる

2018年4月2日 実施

旅を仮想体験できるJAL xR Travelerの実機をJAL Innovation Labにて公開

 JAL(日本航空)は4月2日、VRやIoTを活用した新しい旅のプロモーションのための取り組みを、東京・天王洲にある「JAL Innovation Lab」で公開。旅との新しい出会い方・選び方の提案を目指す「Try on trips」のコンセプトが紹介され、デモンストレーションが行なわれた。

 発表会ではその第1弾として、「xR技術」を活用した旅の試着マシン「JAL xR Traeler」、IoTを活用した旅の体験を買う自動販売機「JAL 体験自販機」の実機を披露しつつ、概要や今後の展開について説明した。「xR」の「R」は「VR(仮想現実)」「AR(拡張現実)」「MR(複合現実)」などの総称であり、「x」は「未知数」を示すという。

イノベーションを生み出すための施策を次々に行ない企業価値を上げる

日本航空株式会社 常務執行役員 イノベーション推進本部長 西畑智博氏

 発表会では常務執行役員 イノベーション推進本部長の西畑智博氏がまず、開催場所である「JAL Innovation Lab」を紹介。この施設は、中期経営計画のなかで触れられている「人財×テクノロジーでイノベーションを起こす」を具現化する拠点として2018年5月にオープンしたもの。

 西畑氏は「われわれはカッコイイ技術だけを追い求めるわけではなく、現場の知見、社外の人たちの知見を活用して『地に足のついたイノベーション』を起こしていこうと考えています」と話し、2018年はJALイノベーションプラットフォームを構築したことを説明。

 このプラットフォームには社内のヒューマンリソースを活用するべく考えられた社内起業化オーディション「創造の翼」が含まれ、このオーディションで評価された人はイノベーション事業本部に異動してプロジェクトを推進する役割が与えられる。

 また、ラボを使ってプランを実現したい有志を社内から募った「ラボ会員」を任命。現在、60名ほどがこちらのラボでディスカッションをしながらサービスを作り上げている。

 そして、社外の知見も必要という考えから社外パートナーシップの導入も積極的に進めている。その一つが「JAL Innovation Found」というコーポレートベンチャーキャピタルファンドの設立であり、国内外のスタートアップ企業に出資してノウハウを活用する。

 また、企業が持つ社内ラボとアライアンスを提携することでそれぞれの知見を活かし、新しいサービスを生み出すとしている。今回披露するJAL 体験自販機は「日経イノベーション・ラボ」(日本経済新聞社の研究開発組織)と提携して生み出されたものだという。

 JALが目指しているものとして、「エアラインは、チケットを購入して乗降する利用客の動線、飛行機を飛ばすために整備して運航するオペレーションなど、いかに便利にするかや、生産性の向上など、イノベーションによってまだまだよくなると考えられます」と説明した。

JALイノベーションプラットフォームを2018年に策定
5G、AI、IoT、Robot、xRの5つの技術を使って技術革新を進める
目指しているのは利用客の利便性の向上や新しい提案、生産性の最大化や予測整備など

新しい旅の体験ができるマシンと旅の自販機

日本航空株式会社 デジタルイノベーション推進部 部長 斎藤勝氏

 公開した機器について、JAL デジタルイノベーション推進部 部長の斎藤勝氏が説明した。xR技術を活用した旅の試着マシンであるJAL xR Travelerは、さまざまなデータを用いてクリエイティブな映像作品などを手掛けるSOOTHが開発したもので、同社のxR技術を活用している。

 ちなみに、SOOTHはアジア大手の映像制作会社であるAOI Pro.からスピンアウトして設立されたもの。JAL xR Travelerは視覚や聴覚に加え、嗅覚(現地の匂いを再現)、触覚(送風装置や歩行器を活用)なども刺激し、より没入感のあるトリップを体験できる。マシンには体験者の脳波を計測する装置も取り付けられており、分析することで、相性のよい旅行先やスタイルを提案することも考えているそうだ。

 JAL 体験自販機は日経イノベーション・ラボと協力して開発したもので、自販機のパネルに表示される好みの現地体験を選び、表示されるQRコードをスマートフォンなどで読み取ると、その場で旅行ツアーが購入できるものだ。

 筐体には、ジャルパック・ハワイが扱う現地オプショナルツアーのコンテンツが入っており、QRコードからリンクしたジャルパックのWebページで購入可能になっている。将来的には現地や出発前のゲート、ラウンジに設置し、気軽に購入できるようにしたいとしている。

 現在はタッチしてその都度表示する仕組みではあるが、「今後は顔認証やAIによる分析によってレコメンド機能などの追加も考えています」と、今後のアップグレードについても説明した。どちらもまずはJALが出展するイベントやニコニコ超会議で展示し、体験してもらうことを考えているそうだ。

xR技術を活用した旅の試着マシン「JAL xR Traveler」

HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着し、設定された場所を体験できる「JAL xR Traveler」。今回はハワイを体験できる映像が組み込まれている

 JAL xR TravelerはHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着し、ウォーキングマシーンの上を歩くことで、ハワイを体験できるようになっている。映像には女性が案内役として登場し、手を引かれるまま、山か海の2パターンのシチュエーションを散歩する内容だ。歩行器はゆっくり動くとはいえ、実視界が遮られることから不安を取り除き安定させるためにも義手がハーネスの役割になっている。

 体験時間は3分ほどで、海岸に出ると風を感じたり(サーキュレーターが動作する)、花が近くにあると香りを感じたりできる。極めつけは滝を眼前にするシーンで、義手付近に装着されているミスト発生装置が動作し、冷たいしぶきが飛んでくるような感覚を味わえる。

使用するHMDはHTCの「VIVE」。映像は全周囲ではないが約270度ほど見渡せるので、かなりワイドな視界を楽しめる。また、HMDの下には5種類の香りを送出できるデバイスも取り付けられており、シーンによって臨場感が高まる
体験者の視線に応じて見える角度が変わるので、実際にその場所を歩いている感覚を味わえる
義手の近くにはミスト発生装置が備え付けてある
風を感じるシーンではサーキュレーターが動作する
脳波を測定しているので、驚きやリラックスの度合いなども記録される

旅の体験を買う自動販売機「JAL 体験自販機」

ハワイのオプショナルツアーを購入できる「JAL 体験自販機」。ツアーはジャルパック・ハワイが扱っている600種類の中から24×4パターンの96種類を用意

 JAL 体験自販機は飲料自販機のような縦長のボックスで、前面には大型の液晶ディスプレイを備えている。今回のマシンにはジャルパック・ハワイのオプショナルツアーが組み込まれており、概要が書かれたボトルをタッチすると詳細な説明が表示される。その中には写真やムービーなどもあり、どのようなツアーかが分かる仕組みだ。また、QRコードも同時に表示されるので、それをスマホなどで読み取ることでジャルパックの該当するツアーのWebサイトへリンクして、その場で購入できる。

ジャングル体験からゴルフの海越えショット、イルカとの交流やフルーツの試食など、バラエティ豊かなオプショナルツアーが用意されている
ツアーの詳細ページではタイムスケジュールと写真やムービーなどが表示される
同時にQRコードが表示されるので簡単にジャルパックのWebページにアクセスできる
あとはスマホで予約をすれば完了。ツアー料金はシーズンによって変動するので、Webサイトに移動しないと分からない