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JAL、「JAL Innovation Lab」開設。社員の気付きと知恵をすぐに形にして検証、新たなサービスの実現へ

2018年5月29日 実施

JALは東京・天王洲の本社ビル近くに「JAL Innovation Lab」を新設した

 JAL(日本航空)は5月29日、東京・天王洲にある寺田倉庫内に「JAL Innovation Lab」を4月20日に新設したことを発表し、同施設のお披露目会を行なった。

「JAL Innovation Lab」は、社内外の知見を活かして新しい付加価値やビジネスを創出する“オープンイノベーション”の活動拠点として新設したもの。広さは約500m2で、施設内は「アイデアを発想するエリア」、3Dプリンタを揃えたクラフトルームやキッチンスペースなどを含む「プロトタイプの制作スぺース」、空港や機内などをイメージした空間の「プロトタイプを並べて検証するエリア」の3エリアで構成している。

 JAL本社からも徒歩5分ほどと近く、今後この施設を活用して100社以上の外部パートナーと協働し、JAL社員約3万3000人の気付きや知恵を活かしながら、新たなサービスの実現を目指すとしている。

 お披露目会では、JAL執行役員の西畑智博氏があいさつし、JAL Innovation Labの概要について説明した。

説明を行なった日本航空株式会社 執行役員 西畑智博氏

 「JAL Innovation Lab」は、同社が2月に発表した「2017~2020年度 JALグループ中期経営計画ローリングプラン2018」で掲げた「JAL Vision」(関連記事「JAL、2018年度から機内衛星テレビ、2019年度からA350と787に国内線個人モニター導入。顔認証チェックインも検討」)のうち、「一歩先行く価値を創ります」の部分の具体的な施策の一つにあたる。

 中期経営計画でも発表しているとおり、JALの考えるイノベーションは、「人財とテクノロジーを融合させる取り組みにより、イノベーションを生み出す基盤を構築する」というもので、そのなかでも「People(お客さま・社員の気付き)」「Place(JAL Innovation Lab)」「Process(デザイン・シンキング)」「Pertnership(オープン・イノベーション)」という4つのPをイノベーションを起こす要素としている。

「2017~2020年度 JALグループ中期経営計画ローリングプラン2018」で掲げた「JAL Vision」の2つ目の柱の具体的な施策の一つ
JALのイノベーションの基盤は「人財×テクノロジー」
イノベーションを起こす4つのP
JAL Innovation Labは4月20日に開設した
あらゆる領域でイノベーションを起こしていく

 この施設を作った狙いについて西畑氏は「JALの現場を含めた社員が持っている知恵とか知見、また社外のいろいろな方々が持っている知恵と知見をパートナーシップとしていただきながらあらゆる領域でイノベーションを起こしていきたい。本社で考えるよりもここで聞いて、できたらそれをやってみて、できそうだったらもっと深堀してみる、そういういう場所が必要だと思った」とコメントした。

 続けて、JAL Innovation Lab内に設置したエリアを細かく紹介。施設内は「チェックインカウンター」「フリースペース&ハドルルーム」「ステージ」「ダイニング&キッチン」「クラフトルーム」「搭乗ゲート&キャビンモックアップ」「ラウンジ」「プロジェクトルーム」と目的別に8つに分かれている。

目的別に8つのエリアに分かれている

 例えば、3Dプリンタを備えた「クラフトルーム」では、自社内で気軽にプロトタイプが作れるようさまざまな道具が用意されており、ちょっとした気づきをすぐに実践できる場所となっている。

「クラフトルーム」
いろいろな道具が用意されている
3Dプリンタは2台設置
3Dプリンタでは小物などが制作可能だ

 また「搭乗ゲート&キャビンモックアップ」では、キャビン内に2本通路があるワイドボディ機の広さを再現している。ここでは実際にシートを置いてデザインや座りごこちの検証、またCA(客室乗務員)機内サービスの訓練などを行なう。これまで時間と場所の制約などがあり気軽に検証できるという状況ではなかったが、今後は社員同士ですぐに検証することも可能だ。

搭乗ゲートは音やデザインを含めた検証を行なう
キャビンモックアップ内。この日は、エコノミークラスで使用している「JAL SKY WIDER」「JAL SKY WIDER II」が置いてあった。シートは簡単に入れ替えができる

 そのほか、ギャレー内に設置しているスチームオーブンと同じものを用意した「ダイニング&キッチン」では、機内食など食に関する検証、「チェックインカウンター」では自動チェックイン機の新しいデザインなどを構想している。

「フリースペース&ハドルルーム」ではプレゼンテーションなどができるスペースが用意しているほか、「ハドルルーム」は防音対策もされており、「ロボット」などを使った音に関する検証も可能だ。さらに、空いているスペースでは、ロボットを活用した手荷物の運搬などの検証も行なわれていた。

ギャレー内と同じスチームオーブンを用意したキッチン
自動チェックイン機の新しいデザインを構想する
チェックインカウンターも設置している
「フリースペース&ハドルルーム」。この日はVRを使用したプレゼンテーションを行なっていた
ハドルルームではロボットを使ったサービスなど「音」に関する検証などを行なう
ミーティングルームも設置している
ロボットを活用した検証も。これらは手荷物の運搬などを行なう。

 JAL Innovation Labは、デジタルイノベーション推進部がコアメンバーとなり運営するもので、西畑氏は「社内の人間をどれだけ巻き込んでいけるかが大きなミッション」とコメント。

 またラボへの期待に対しては、「JALグループのなかでイノベーションを起こしていこうという人がたくさんいる。『それでいいんだ、それをやっていこう』ということを全社員でやっていこうと思っている。部のなかでは、今まで1年かけてやってきたことを3カ月でやってみようというスピード感で、社内のやる気がある人を巻き込みながら、さらに社外から知見をもらいながらやっていきたい」と語った。

「JAL Innovation Lab」のコアメンバーとなるデジタルイノベーション推進部のメンバー