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JAL、ロードバイクの前輪を外すだけで輪行OKの「SBCON(エスビーコン)」発表会見

SBCONで愛車と出かける「しまなみ海道」フリーライドツアーを7月発売

2018年6月22日 発表

JAL、せとうちDMO、S-WORKSは、共同開発したした自転車輸送用の受託手荷物専用ボックス「SBCON(エスビーコン)」を公開した。8月から始まるモニターツアーから実証実験をスタートする

 JAL(日本航空)、せとうちDMO(せとうち観光推進機構)、S-WORKSは6月22日、東京・天王洲にある「JAL Innovation Lab」で会見を開き、3者が共同開発した自転車輸送用の受託手荷物専用ボックス「SBCON(エスビーコン)」について説明を行なった。

 SBCONはサイズが約52×170×94cm(幅×奥行き×高さ)で、プラスチックダンボール製。一般的な形状・サイズのロードバイクとクロスバイクが前輪を外すだけで収納可能だ。空港での自転車預け入れの際にSBCONが貸し出され、これに収納することで、愛車が破損するリスクを低減して目的地まで輸送することができる。

 このSBCONを使った国内線パック商品として「JALで行くサイクリストのための『しまなみ海道』モニターツアー3Days」を7月2日に発売する。このモニターツアーを皮切りに、当面はパックツアーで実証実験を重ね、将来的には事前予約制などで個人旅客にも対応していく予定だ。

JALで行くサイクリストのための「しまなみ海道」モニターツアー3Days

発売日:2018年7月2日予定
旅行期間:2018年8月24日~26日(2泊3日、食事なし)
料金:未定
募集人員:10名限定(最少催行人員は1名)
旅程:
[8月24日]羽田空港(11時10分)発~広島空港(12時30分)着~自転車で自走~尾道「HOTEL CYCLE(ONOMICHI U2)」に宿泊
[8月25日]尾道~自走~しまなみ海道をフリーライド~今治「今治国際ホテル」に宿泊
[8月26日]今治~自走~松山空港(14時45分)発~羽田空港(16時10分)着
特典:往路/復路で「SBCON」を利用、しまなみ島走MAP、今治国際ホテルの大浴場利用パスポート券、道後温泉本館利用券

SBCONのサイズは約52×170×94cm(幅×奥行き×高さ)
SBCONには一般的な形状・サイズのロードバイクとクロスバイクが、前輪を外すだけで収納可能。175cm前後の体格の人が乗る自転車であれば、サドルを付けたままでも収納できるが、別途サドル、シューズ、ヘルメットなどの収納スペースも設けられている

JALも航空会社として「より安全な自転車の輸送手段」を提供する

日本航空株式会社 常務執行役員 経営企画本部長 西尾忠男氏

 会見ではJAL 常務執行役員 経営企画本部長の西尾忠男氏が、企画背景から説明した。JALでは2015年から地域活性化プロジェクト「JAL 新・JAPAN PROJECT」を展開しているが、インバウンドや民泊、ペット連れ旅行などとともに「サイクルツーリズム」も地域活性化につながる重要な要素の1つに位置付けている。

 政府は6月に「自転車活用推進計画」を閣議決定しているが、サイクルツーリズムの推進による観光立国の実現のために、JALも航空会社として「より安全な自転車の輸送手段」を提供する。

 サイクルイベントは日本各地で行なわれているが、参加するためには自転車の長距離輸送手段が一番のハードルになっている。現状はいわゆる「輪行バッグ」を使い空港カウンターで預け入れするが、自転車を分解して収納する手間がかかり、輸送中の破損のリスクもあった。

 しかしSBCONを使えば前輪を外すだけの最小限の作業で収納でき、ハードケースのため輸送中の破損リスクを低減することができる。SBCONの外観が長方体の一部が斜めに欠けたような形状なのは、航空機の貨物スペースの壁面にフィットさせるためだという。

 SBCONを使ったモニターツアーを7月に発売し、8月の催行から実証実験を重ね、空港カウンターまでの動線、余裕を持って預け入れできる所要時間、航空機への積み込み時間などを検証し、全国の主要空港にSBCONを配備すること、事前予約制での個人旅客への対応などを目指す。

JALはインバウンドや民泊、ペット連れ旅行などとともに「サイクルツーリズム」も地域活性化につながる重要な要素の1つに位置付けており、航空会社として「より安全な自転車の輸送手段」を提供するためのSBCONを開発した。SBCONの外観が長方体の一部が斜めに欠けたような形状なのは、航空機の貨物スペースの壁面にフィットさせるため。SBCONを使ったモニターツアーを7月に発売し、8月の催行から実証実験を重ね、全国の主要空港にSBCONを配備すること、事前予約制での個人旅客への対応などを目指す

瀬戸内は自然に恵まれ、日本中、世界中のサイクリストに人気のしまなみ海道など有名なサイクリングルートある

一般社団法人せとうち観光推進機構 事業本部長 村橋克則氏

 瀬戸内海を共有する7県が観光を軸に交流人口を増やし、地域経済を刺激して豊かな地域社会を築いていくことを目的に2016年3月に発足したのが「せとうちDMO」だが(関連記事「関係機関が一体となって『瀬戸内(せとうち)』ブランド確立を目指す『せとうちDMO』発足」)、そのせとうちDMOを代表して、事業本部長の村橋克則氏があいさつした。

 瀬戸内海エリアの交流人口を増やし、観光活性化を図るために、せとうちDMOではさまざまなテーマを設けて施策を展開しているが、そのなかでもサイクリングに力を入れているという。

「瀬戸内は自然に恵まれ、日本中、世界中のサイクリストに人気のしまなみ海道など有名なサイクリングルート」があり、多くの人に誘客活動を行なっているが、課題だったのが旅行客の自転車の輸送方法だった。

 2017年には経済産業省による瀬戸内エリアでの社会実証実験が行なわれ、旅行者の自転車の輸送手段にS-WORKSが開発したケースが利用された。これはトラックに積載して輸送することを想定したもので、前後輪を外さずに収納できるケースだった。今回、航空機での輸送を想定したSBCONが開発され、遠方からの誘客にも可能性が広がったことに期待を寄せ、開発にかかわった関係者に感謝を述べた。

これまでの輪行のイメージとはまったく違うものになる

合同会社S-WORKS 代表社員 CEO 坂本潤氏

 SBCON開発の中心メンバーであるS-WORKSからは、代表社員 CEOの坂本潤氏が出席し、SBCONについて説明した。

 2017年に経済産業省主導による瀬戸内エリアでの社会実証実験で開発した、トラック輸送向けの自転車ケースが契機となり、そのノウハウを活かして作られたのがSBCONとのこと。

 空港で短時間で梱包できること、タイヤの空気圧を下げても自転車が安定して収納できること、航空機の貨物スペースに合うケースであること、強度を高めつつ軽量であること、ディスクブレーキの自転車も収納できることなどの課題を解決している。インテグラルのパーツなどにより着脱や伸縮ができない自転車にも対応し、電動の変速機、ディスクブレーキ採用の自転車なども、干渉せずに収納できる。

 収納する自転車の大きさは、175cmのユーザーが使用するものを想定しており、サドルを外さなくても収納可能で、「日本人の7~8割はこれにあてはまるのでは」とのこと。それ以上のサイズであっても別途サドルを収納するスペースがあるほか、シューズ、ヘルメットなどの収納スペースも設けられている。サドルなどを外す必要がない場合には「1~2分」で収納することができ、「これまでの輪行のイメージとはまったく違うものになる」と自信を見せた。

 ちなみにSBCONは「Smart Bicycle CONtainer」を略したものであり、何がスマートなのかというと、将来的にはケースにセンサーなどを内蔵して、ケースの状態をユーザーがスマートフォンなどでモニターできるようなものを考えているからとのこと。

SBCONでは、空港で短時間で梱包できること、タイヤの空気圧を下げても自転車が安定して収納できること、航空機の貨物スペースに合うケースであること、強度を高めつつ軽量であること、ディスクブレーキの自転車も収納できることなどの課題を解決している