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相鉄とJR東日本、11月30日開業の直通線共同会見。「二俣川~新宿間で15分の時間短縮」と滝澤社長
2019年3月30日 00:00
- 2019年3月28日 公開
- 2019年度下期 開業予定
相鉄(相模鉄道)は3月28日、かしわ台車両センター(神奈川県海老名市)において、新型車両「12000系」の公開と、同社線内を利用した報道向けの試乗会を実施。それに先駆けて相鉄とJR東日本(東日本旅客鉄道)による「相鉄・JR直通線」の共同発表会も行なわれた。
ここでは共同発表会についてレポートする。
12000系の概要を説明
車庫内で行なわれたプレゼンテーションでは、相鉄ホールディングス 経営戦略室 課長の鈴木昭彦氏が登壇。2017年に創業100周年を迎えた同グループが取り組む「SOTETSU あしたをつくる プロジェクト」について説明。
このプロジェクトでは、東京都心への直通運転を契機に「都市と自然をつなぐ住みやすい沿線」として真っ先に選ばれる会社を目指し、ブランド力向上のためにさまざまな取り組みを進めているとした。
まず、プロジェクトの大きな核となるJR線との直通運転について「都心へダイレクトアクセスが可能となり、所要時間が大幅に短縮」すると歓迎。さらに2022年度下期には東急線との直通線が予定されていることから、「都心直通に加え新幹線停車駅である新横浜駅までのアクセスが大幅に向上します」と、沿線価値の向上をアピール。
続いて同プロジェクトから沿線のハブである二俣川といずみ野線の駅前リノベーションを紹介した。まず、二俣川では再開発事業により進めていた南口エリアの商業施設、住宅、駅舎のリニューアルが完了。ついでいずみ野線ではいずみ野、南万騎が原、弥生台駅各駅の駅前街区でリノベーションを計画を実施。賃貸住宅、サービス付高齢者住宅、幼児保育室など安心して生活できる環境を整えていると説明した。
最後に都心への乗り入れを契機に進めている「デザインブランドアッププロジェクト」に触れ、「沿線のお客さまが毎日ご利用になる鉄道の駅、車両、制服などをリニューアル」することにより沿線のブランド価値向上を目指すとした。
同プロジェクトではアートディレクターに丹青社洪恒夫氏、およびgood design companyの水野学氏を起用。安全、安心、エレガントをコンセプトに据え、「日常お使いになるお客さまにちょっとした豊かさを与えられたら」という想いを込めるとともに、「次の100年を創る時代の流行に左右されない醸成するデザイン」を目指し、取り組みを進めているとした。
今秋開業予定の羽沢横浜国大駅についても同コンセプトに基づき、「キーマテリアルに鉄、レンガ、ガラス、キーカラーに表示が見やすいダークグレー」を用い、駅空間をデザインしているとした。このほかにもバス、鉄道制服の29年ぶりのリニューアル、幅広のオリジナルベンチの導入、さらに「本プロジェクトの象徴」となる横浜ネイビーブルーを纏った新型車両20000系、12000系についても、こうしたコンセプトによるものであるとした。
続いて相模鉄道 運輸車両部 車両課長の関根雅人氏が登壇し、12000系の車両概要を説明した。まず、同車は「JR東日本線への直通を念頭に置いたもの」であるとし、「20000系に続く新型車両第2弾」「高品位なデザイン」「相互直通用として使いやすい」といった点を目指したと説明。
総合車両製作所の次世代ステンレス車両「sustina」がベースとなっており、ステンレス製の車体と鋼製ブロックの前頭部を組み合わせた構造で、「外板に継ぎ目のないレーザー溶接を採用し非常に美しい車体を実現」していると述べた。
ひと足先に登場した20000系との違いについては車両限界の差を挙げ、東急線直通向けとなる20000系が通常幅であるのに対し、JR線直通向けの12000系は従来の相鉄車と同じ「拡幅車体」であるという。
20000系と同じ世界観ながら車体幅に合わせて再構築し、「拡幅車体を活かし長さ方向を意識したデザイン」「グレーベースにガラス、金属を多用した高品位な内装」など、「未来感のある20000系」「落ち着きのある12000系」と異なる性格付けになっているとした。
設備面でのトピックとしては「全車両にフリースペース、ユニバーサルデザインシート、優先席を設定するとともに中間車両座席の配置を統一」した点を挙げ、さまざまなニーズに対応できることから「今後制作する20000系でも踏襲予定」であると説明。
このほか、ユニバーサルデザインシートの座面高引き下げ、相鉄初となる防犯カメラの設置、空気清浄機、Wi-Fiなどを追加した一方、カーテンに関してはガラスの光学性能向上に加えJR線ではほとんど装着されていないことから省略、など細かな変更点についても解説した。
一方、技術面では先行デビューした20000系が新しい機器を導入して将来化の追求をした反面、12000系ではあえて11000系と同様のレベルに設定したと述べ、これは「扱い慣れた機器」により運用サイドの負担を低減することが安定輸送、輸送品質の向上につながるためだと説明した。
こうした点を踏まえつつ「2020年までに予備編成を含めて6編成を導入」「4月20日より営業運転を開始」と今後の予定を述べるとともに、「開業に向けて万全の体制で進めてゆきたい」とコメントし説明を締めくくった。
相鉄・JR直通線共同発表セレモニー
場を屋外に移して行なわれた相鉄・JR直通線 共同発表セレモニーには相模鉄道 代表取締役社長の滝澤秀之氏、JR東日本 執行役員 横浜支社長の廣川隆氏が出席した。
最初にスピーチした滝澤社長は直通線を含む神奈川東部方面線について、都市鉄道利便増進法の第1号案件としてスタートしたことに触れ、国土交通省をはじめ神奈川県、横浜市、鉄道運輸機構、JR東日本、JR貨物(日本貨物鉄道)など、関係各機関の「絶大なるご協力でこの日を迎えることができた」とあいさつ。
続けて「我が社にとっても将来を担う重要な路線」であることから、成功に導くとともに魅力ある路線に成長させたいと述べるとともに、安全面、運航管理、営業面に万全な準備をして相互直通開始を迎え、東急直通線につなげていきたいとコメントした。
開通後は沿線開発の活性化がさらに進むのは利用者にとってもメリットになり、また、「都心方向にお住まいの方も開業後は使っていただいて、沿線に足を運んでいただくことを期待したい」と述べた。
続いて登壇した廣川支社長は、事業化以来「13年越しの大きなプロジェクト」だったと述べるとともに、同路線(東海道貨物線)を主に使用しているJR貨物にも「ダイヤ調整に多大なご苦労をかけた」として感謝を述べた。
開業後は相鉄線沿線と首都圏間の利便性が格段に向上することは、同社にとっても「新たな需要喚起になるとともに横浜北エリア沿線活性化」につながると大きな期待を寄せた。
開通する区間については現在は湘南ライナーが数往復するのみだが、今後は旅客列車の本数が大幅に増えることから、一部の施設については改修/強化したうえで、「オペレーション面でも訓練を行ない、安全で安定的な輸送を行なうことで地域の皆さまのご期待に応えていく」ために、関係各所と協力して来るべき開業に向け万全の体制で準備をしていくと述べた。
最後に行なわれた質疑応答では、混雑度について「およそ7万人がルートを変えることから、現在の130%台から10%程度減少する見通し(滝澤社長)」と、「1時間に4本のためあまり混雑緩和には寄与しない(廣川支社長)」と、若干異なる見通し。運賃については「二俣川~新宿間で15分程度の時間短縮。それより手前の駅を利用するお客さまには魅力的に映るのでは(滝澤社長)」と、小田急線との競合は考えていないとした。
【お詫びと訂正】初出時、発言者の氏名に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。