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JR九州、3月10日オープンの「門司港駅」内覧会。大正時代の面影を色濃く残す駅舎や「みかど食堂」に注目

2019年3月7日 実施

2019年3月10日 グランドオープン

大正時代の面影を色濃く残す門司港駅が改修工事を終え、3月10日にグランドオープンする

 JR九州(九州旅客鉄道)は3月7日、報道関係者に向けに3月10日にグランドオープンする門司港駅の内覧会を行なった。

 門司港駅は2012年から保存修理工事を進めており、約6年間の工事を終えて改装中だったスペースを一般に公開する(関連記事「JR九州、工事中の重要文化財『門司港駅』を2019年3月グランドオープン。スタバと洋食レストランが出店」)。注目は1階にオープンする「スターバックスコーヒー 門司港駅店」(関連記事「重要文化財でコーヒーが飲める『スターバックス コーヒー 門司港駅店』内覧会。旧三等待合室に鉄道駅ならではの内装で3月10日開業」)や2階の「みかど食堂 by NARISAWA」。こちらの記事では門司港駅とみかど食堂について紹介する。

 門司港駅は関門海峡を挟んだ九州側の港である門司港に近い鹿児島本線の起点駅。駅舎は木造と鉄骨を組み合わせたハイブリッド構造(竣工当時は木造)の2階建てであり、その歴史的な外観や内装から1988年に重要文化財に指定されている。

 大正時代の駅舎は1等から5等までの等級があり、門司港駅は1等駅(当時の名称は門司駅)。同じく1等駅として駅舎が残っているのは門司港駅以外では東京駅のみであり、そちらも重要文化財に指定されている。

 歴史的な建造物も長らく使用されてきた過程で改造され、様相も変わりつつあったが、老朽化に伴い2012年から保存修理工事を開始。それと同時に詳細な調査を行なうことで門司港駅の移り変わりが明らかになり、今回は大正時代の竣工した当初の駅の姿へ復元することになった。駅舎の外観は当時に近づけるため、石貼り風にモルタルを塗り、屋根には天然の石盤を葺き、時間の経過とともに失われた屋根まわりの飾りも復元する。また、1929年(昭和5年)に設置された正面の車寄せの庇は取り除くことになった。

 先に工事が完了した1階のコンコースとみどりの窓口は2018年11月から供用が開始されているが、今回のグランドオープンからは1階の待合室部分が使えることになり、旧三等待合室があった場所にはスターバックスがオープンする。2階では食堂跡地に「みかど食堂 by NARISAWA」がオープンし、復元された貴賓室や次室も公開される。ちなみに2階は工事に入る前までは一般には公開されていない社用スペースだったそうだ。

駅舎正面の大時計は3代目にあたる。建設された当初はなく、1918年(大正7年)に設置されたものであるが、長きにわたり親しまれてきたことから今回も残すことにしたそうだ
駅の1階のコンコースや切符売り場はすでに利用が開始されている
コンコースのオープンと同時にみどりの窓口や観光案内所も復元された室内で営業している
門司港駅の主な移り変わり

1891年(明治24年):初代門司駅開業(現在よりも300mほど東の山側)
1914年(大正3年):現駅舎竣工・営業開始・みかど食堂営業開始
1918年(大正7年):駅舎に大時計設置
1929年(昭和4年):正面大庇設置(今回の工事で撤去)
1931年(昭和6年):西側上家等設置
1942年(昭和17年):「門司駅」から「門司港駅」に改称
1988年(昭和63年):重要文化財に指定

2階にオープンする「みかど食堂 by NARISAWA」

 1914年(大正3年)に駅と同じく2階で営業を開始した高級洋食店「みかど食堂」は、山陽鉄道の急行列車内で食堂車を運営していた「みかど株式会社」が全国の主要駅に設けた駅構内の高級洋食店。名物のカレーはソースポットで提供され、テーブルにはフィンガーボール、内装もシャンデリアが吊るされるなど豪華な空間であったとのこと。復元工事中に旧厨房の床下から発見された伝票によると、1日に200組の来店があり大繁盛していたそうだ。だが、関門トンネルの開通により客足が遠のき、閉店に至っている。

 今回は「西洋の食文化と日本の食文化が融合した懐かしい料理」「大正時代の駅舎に復元された重要文化財で味わう上質な雰囲気」「ていねいで温かいおもてなし」をコンセプトに、地元に愛され、門司港のシンボルとして誇れる洋食レストラン「みかど食堂 by NARISAWA」として再興される。

3月10日オープン予定である「みかど食堂 by NARISAWA」の店内
建設当初の内観を資料をもとに復元したもので、こげ茶色のワニス塗装を施した腰壁と天井、装飾されたシャンデリア、白い漆喰壁などが特徴
食堂のシンボルマークはJR九州の制帽などのエンブレムにも採用されていた“動輪”のマークと、門司港駅が起点駅であることからスタートする線路がモチーフに使われている。放射状に広がる動輪は、北九州から九州、そしてアジアや世界へと広がる交流をイメージしている
地元の工房に発注した家具は新品であるものの、落ち着いた雰囲気を演出するために表面にはビンテージ風の加工が施されている
使われているカーテンも著名なテキスタイルデザイナーに発注したもので、デザインパターンに金色が使われている。昼間は落ち着いた色合いで、夜のライトアップ時にはキラキラと光が反射するそうだ
店内には九州で活動しているアーティストを中心に、数多くのクラフト作品が展示されている

 レストランの監修は「ワールド50 ベストレストラン」に現在まで10年間連続で選出され、JRKYUSHU SWEET TRAIN「或る列車」のスイーツコースを演出している成澤由浩氏が行なう。提供される料理は徹底して九州の食材にこだわり、伝統的な日本の洋食メニューが現代最高の技術で提供されるとのことだ。内装も料理同様、クラシカルでありながらもモダンなデザインにこだわっている。メニューは名物であったカレーをはじめ、オムライスやグラタン、ハンバーグ、メンチカツ、牛ステーキなどが提供される。ほか、地元の蔵元が製造したお酒もラインアップされる予定だ。

カレーやオムライス、ハンバーグといった洋食カテゴリーで人気のある料理が提供される(写真提供:JR九州)
江戸時代に飢饉を救った「猿喰(さるはみ)新田」(福岡県北九州市門司区)を復興させ、その米を使ったレアな日本酒「猿喰1757」、門司産のサツマイモと米を使った芋焼酎「地芋」など、地酒も取り扱っている

大正天皇も訪れた貴賓室も公開

赤い絨毯の上に大きな円卓が置かれた貴賓室

 2階には身分の高い人たちを迎えるための貴賓室も当時は設置されており、今回の改修工事ではそちらも復元された。真っ赤な絨毯に重厚なカーテン、独特なデザインの壁紙が特徴で、現代にはない当時のスタイルを見ることができる。特に壁紙のデザインは古い部材に残されたわずかな破片しかなかったため難航したそうだが、北九州市在住の方が「当時の壁紙を持っている」との一報を受けて分析した結果、同じものであると判明。復元工事に向けての大きな助けになったそうだ。そのほか、トイレを挟んだ隣には従者が控える次室も復元されており、こちらも見学することができる。

大正時代には天皇陛下や皇族方が休憩室として使用された記録も残っている
従者が控える次室はオリーブ色の絨毯で落ち着いた雰囲気
1階から2階へと続く階段も当時の雰囲気を再現しているので見どころではあるが、段差がキツイので足元に不安がある方はエレベータを利用するのがオススメ。エレベータはスターバックス店内にある