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三菱重工業、社長交代会見。新社長に泉澤清次常務が内定、宮永社長は会長としてMRJにも関わる
三菱自動車時代には品質関連業務の改革を主導
2019年2月6日 21:30
- 2019年2月6日 発表
三菱重工業は2月6日、取締役会において役員人事(3月31日、4月1日)と6月開催の定時株主総会時における取締役候補者を決定、同日東京本社において社長交代会見を開いた。
4月1日付けで、現取締役会長の大宮英明氏は「取締役相談役」に、現取締役社長 CEOの宮永俊一氏は「取締役会長」(3月31日付けで代表権は返上)に、現取締役常務執行役員の泉澤清次氏が「取締役社長 CEO 兼 CSO」に就任する。また、「本格的に推進する当社グループのグローバル企業への転換」に伴い、現行の「相談役・特別顧問制度」を6月で廃止する。
三菱重工業株式会社の取締役会長、取締役社長の交代
大宮英明氏
[現]取締役会長 → [新]取締役相談役
宮永俊一氏
[現]取締役社長 CEO → [新]取締役会長
泉澤清次氏
[現]取締役常務執行役員 CSO グループ戦略推進室長 → [新]取締役社長 CEO 兼 CSO
会見ではまず宮永社長が、2018年秋から役員指名・報酬諮問会議において議論を重ねてきた結果、泉澤清次氏を新社長・CEOの候補と決めて、取締役会において選任を決議したと報告。詳細を説明した。
三菱重工グループでは長年にわたる構造改革を完了し、客船、米国での原子力訴訟など一連の大きなトラブル対応と、リスクマネジメントの強化が終了。「後顧の憂いはほぼ一掃された」ことにより、新分野・新技術に加えて、AI技術の既存製品への融合や、サイバーセキュリティを含む新事業分野の開拓などを推進し、「新しい形のコングロマリット」として発展の道を歩むことになった。
一方、進行中の第4次産業革命は、世界の産業や経済の構造、既存製造業のありかたを大きく変えていくと思われるなか、三菱重工グループは、大きな変化を絶好の成長の機会であると考え、総力を挙げて挑戦していく段階にあるとした。
このような状況で、今後の成長過程をリードしていくCEOに最も必要な能力は、「多様な意見に耳を傾け、未来志向と全体最適の考えに基づき、皆で一緒に進めるように組織をまとめる力」であると考え、特に「公平な評価と判断を行なう力」「忍耐力」「決断力」「実行力」などから、泉澤清次氏に適性があるとした。
泉澤清次氏は1957年生まれ、千葉県出身。1981年に三菱重工へ入社。本社の技術管理部で全社の試験研究管理業務や技術横通しなどの業務からキャリアをスタートした。1985年に神戸造船所に移り(この時期に宮永氏と泉澤氏はお互いを認識したとのこと)、宇宙プロジェクト部で宇宙ステーション利用プロジェクトなどに従事し、NASDA(宇宙開発事業団、現JAXA:宇宙航空研究開発機構)を支援するための「有人宇宙システム株式会社」の発足から参画した。
1991年から2013年までは全社の技術行政の管理者として活動したが、三菱重工からの指示で2013年3月に同社を退職し、燃費データ不正問題後の三菱自動車へ入り、品質統括部門を担当する取締役常務執行役員として、品質関連業務の改革を主導、社員の品質意識向上活動に成果を上げたという。宮永氏も社外取締役として三菱自動車の取締役会に参加していたが、三菱自動車での泉澤氏を「よくがんばっていた」と評価した。その活躍から、宮永氏は2016年に泉澤氏を再び三菱重工へ呼び戻した。三菱重工復帰後は、技術戦略推進の執行役員を1年間、常勤監査等委員である取締役を1年間務め、2018年7月から現在までは、CSOとしてグループ全体の経営戦略推進業務を所掌してきた。
泉澤氏はあいさつのなかで、「17年間さまざまな改革を担当してきた。ドメイン制への移行、日立製作所との合弁立ち上げなど、当社の既存のものを抜本から見直して、財務体質の改善を図り、事業基盤の強化を進めてきた」と自己紹介し、グループは、強化された事業基盤をベースに、製造業をとりまく激しい変化、厳しい状況に対し、グローバルグループ経営の進化・成長戦略を成し遂げ、持続可能な企業、高収益を目指すプロセスにチャレンジする段階にあり、このタイミングで社長を引き継ぐということは、「大変責任の重いことだとが、非常にやりがいのあること」と述べた。
そしてこれまで行なってきた改革を定着させて、グループに関係する多くの人たちの期待に応えるために全力を尽くしたいと話し、そのためには「グループの事業特性に適したグローバルグループ経営を実現して、将来のビジョンを描き、その実現に邁進し、多様な人材を育成、活用し、従来のグループの枠を超えたところで取り組みんでいきたいと思っています」とあいさつを締めくくった。
質疑応答のなかで三菱航空機による国産リージョナルジェット「MRJ(Mitsubishi Regional Jet)」事業について問われた宮永氏は「一定の目処が付いた」ところであるものの、これまで直轄でさまざまな判断をしてきた経緯があり、「丁寧な引き継ぎ方をしないと関係するパートナーやANA(全日本空輸)さま、米国の関係者に大変失礼なことになるので、(MRJは会長職就任後も宮永氏が)リードしながら一緒にやっていく」という考えを示し、「いつまでリードするのか」という質問には「デリバリーのころまででは」と答えた。