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三菱重工、宮永俊一CEO直轄体制で2020年半ばの「MRJ」初号機納入目指す
宮永氏「航空機は今後大きく進化していくエリアの1つ」
2017年1月23日 21:36
- 2017年1月23日 発表
三菱重工業、三菱航空機は1月23日、MRJ事業進捗に関する説明会を開催。三菱重工業 取締役社長CEO 宮永俊一氏らが出席して「開発スケジュールの現状」「課題と推進中の諸施策」「MRJ事業の成功に向けて」の項目で、MRJの進捗について説明した
MRJの開発スケジュールの現状について2018年半ばを予定していた初号機納入を、2020年半ばとなる見通しを示すとともに、開発体制については、2016年11月28日付で三菱重工業 CEO 宮永氏直轄の「MRJ事業推進委員会」を設置したことを明らかにした。
これにより、それまで外国人アドバイザーの助言を得ながら日本人主体で開発を推進していたものを、2016年11月以降は、中核業務に外国人エキスパートの活用を拡大。外国人エキスパートの協力を得て、一部装備品の配置等変更や電気配線全体を最新の安全性適合基準を満たす設計に変更するとしている。
宮永氏は「初飛行はうまくいったが、型式証明を取るうえでいろいろな問題があり、関係者と協議したうえで私の完全な直轄体制にすることにした。それ以降、外国人エキスパートを招いて、特にコアな部分については日本に招いてレビューをしてもらい、その結果、一部の装備品の配置を変更し、最新の安全性適合基準を満たす設計に変えよう。国際的に説明しやすい設計をもう一回することで、今後のMRJの長期的な事業展開によりよい結果をもたらすと判断で、設計変更を決断した」。
さらに「開発は全体の7合目、8合目ですべての証明プロセスに入っております。世界で売れる飛行機として、安心安全で最高水準のものをお届けする、そのためには2020年中頃になるのではないか、我々としても最も安全な飛行機を作ることを前提に効率化できないかと、半年の繰り上げを目標に頑張っていく」との見通しを示した。
課題と推進中の諸施策
新体制で目指すMRJ開発組織について「外国人エキスパートと日本人が一体となった世界水準の民間完成機開発」を目標に掲げ、宮永氏は「国際的に共通化されたルール、より分かりやすく規制の観点から説明できる設計手法に我々の知見が足りないところがあった。過去の経験で得られなかったValidation&Verificationプロセスについて外国人の方に学びながら、世界水準の民間完成機を開発したい」と意気込みを示した。
それに向けて、リーダシップや権限委譲による「意思決定のレベルアップ」、情報知識の共有などによる「高度なチームワークの追求」、最先端のIT環境の維持、業務プロセスの持続的な改善など「世界水準の職場効率」に取り組むとした。
また、財務基盤では、キャッシュフローへの影響は、開発完了に向けて単年度キャッシュフローはこの2~3年でピークアウトするとし、今後のキャッシュ投入は三菱重工グループ全体で生み出すフリーキャッシュフローにより対応可能という。損益の影響については、投資回収期間の長期化が見込まれるものの、開発費の増加が同社グループ全体の単年度損益に与える影響は軽微で限定的であるとの見通しを示した。
MRJ事業の成功に向けて
8年間の取り組みを振り返り、宮永氏が「今回骨身にしみたのは開発前の情報収集とリスク分析というものを、もう少し勉強すべきだった」「よく似たような例が客船(事業)だったと思う。できると思って取り組んだものが、分析力が足りなかったため大きな失敗があった」と反省の弁を述べる一方、MRJ事業や客船事業を通じて獲得した人材活用やリスクモニタリング面の知見や手法は、これからの三菱重工グループの大きな強みになると強調した。
今後のMRJ事業については、民間航空機、完成機市場については、今後20年間で機数が約2倍、年率4%の成長が見込まれるとし、技術や投資額、回収期間など高い参入障壁があることから、三菱重工に適した事業領域であると判断したという。
宮永氏は「航空機は今後大きく進化していくエリアの1つ。安全性のさらなる確保など技術進化の余地が大きく、付加価値の高いバリューチェーンであることを確認した。三菱重工業グループに適した事業エリアであるとともに、本当の力があるかというと足りない分野がありますが、ティア1で培った製造技術、防衛航空機で培った開発設計技術といった最先端技術と、今回得られたものと合わせてシナジーを作ることで新しいものができる、我々がやるべき事業であるともう一回見直した」と語った。
最後にMRJ取り組みのビジョンとして、「安心、安全」「快適、高性能」な世界最高水準のジェット旅客機とカスタマーサポートを継続的に供給し、新しい価値を付加していく事業と位置づけ、宮永氏は「三菱重工、三菱航空機が全力でMRJを開発し、少し時間はかかると思いますが2020年には完成をさせて、日本の空をMRJが飛んでいるという姿をぜひ実現させたい」と意気込みを話した。