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三菱航空機、水谷社長が会見。MRJの型式証明飛行試験は「まもなく始まる」

2018年12月19日 実施

三菱航空機株式会社 代表取締役社長 水谷久和氏が会見を開いた

 国産リージョナルジェット「MRJ(Mitsubishi Regional Jet)」を開発中の三菱航空機は12月19日、名古屋で会見を開き、代表取締役社長の水谷久和氏がMRJの現状について説明した。

 同社は、6月に米ワシントン州モーゼスレイクの拠点で試験飛行や格納庫などを公開したほか、7月のファンボロー国際航空ショーでは初めて飛行展示を実施するなど、型式証明の取得に向けて進捗や情報の発信を行なってきた(関連記事「【ファンボロー航空ショー 2018】三菱航空機、ANA塗装のMRJを航空ショーで初の飛行展示」「三菱航空機、MRJの現状について会見。『ローンチカスタマーのANAへのデリバリーに集中している』とプログラム統括のベラミー氏」)。

 これまでを振り返った水谷氏は、2017年に計器室の配置見直し、電気配線の見直しなどで設計を変更したことや、それに伴う量産機引き渡し時期の延期発表、多くの外国人技術者を雇用して開発・試験体制が大きく変わったことに触れ、当時は「開発から10年ほど経った段階でこんなに変えるのか」という驚きがあったと述懐。2017年4月から現職に就き、同6月にはパリ航空ショー2017で静的展示を実施、2018年に入って春先には設計の最終段階にあたるクリティカルデザインレビュー(詳細設計審査)を終えた。

 特に設計変更に伴うクリティカルデザインレビューのスケジュールは守れており、こうした状況についてローンチカスタマーのANA(全日本空輸)やJCAB(国土交通省 航空局)からの評価は「我々の活動は彼らも見ていて、いろんな面で応援・支援してもらっている」「技術作業は来るところまで来たという認識を持ってもらっている」という状況であることを説明した。

会見に臨む水谷氏

 2018年最大のトピックは、やはり「ファンボローで初めて飛行展示できたこと」。飛行展示した3号機は従来の設計のため、あのまま型式証明を取るわけではないが、なにより航空ショーという世界的に注目される舞台で初飛行が成功したという事実が「MRJの歴史にとってはきわめて大きいこと」として、各国関係者やメディアなどを通じて、「非常に美しい機体」「静かな機体だった」という評価を聞けたこともプラスになったと述べた。

 一方で、初日の飛行展示終了後のけん引中に現地グランドハンドリング会社の車両と接触、2日目の飛行展示をキャンセル(3日目には再び実施)したことについては、「日本では初日の飛行展示の成功というニュースよりも接触事故の方が大きく取り上げられていた」と海外の報道との温度差について残念に思っていたことを明かした。この点については、会見後の質疑応答で広報活動に言及し、「もっと前向きな報道をしてもらえるようにしたい」「ANAやJCABを巻き込んで、オールジャパンで応援してもらえるような体制になれば」と、同社がより積極的に広報的なアピールを強めていくことを説明した。

 量産に向けて、型式証明を取得するための型式証明飛行試験はまだ始まっていないが、「そのための書類はすべて提出済みで、もうまもなく(飛行試験が)始まると考えている。ただ、その時期は我々が明言する立場にない」と従来の姿勢を貫いた。そのうえで、2019年は型式証明飛行試験や型式証明の取得に向かう年と位置付け、6月のパリ航空ショー2019での展示内容などは未定ながら、「2017年の静的展示をホップ、2018年の初飛行展示をステップとするなら、2019年は“ジャンプ”にしたい」として、新設計機を会場へ持ち込む可能性をほのめかした。ただし、型式証明飛行試験の時期がパリ航空ショーと重なる可能性もあり、その場合は飛行試験を優先することになるという。

 水谷氏は2019年に強化する点として「カスタマーサポート」も挙げており、「カスタマーサポートにはマニュアルや予備部品、パイロット訓練、Webを使った機内のサービスなどいろいろあるが、2020年半ばにデリバリーするなら、そのときにはカスタマーサポートが仕上がっていなければならない」として、サポート体制の構築に力を入れるという。

 なお、現在開発が進んでいるのは90席クラスのMRJ90型機で、MRJのラインアップには70席クラスのMRJ70型機も存在する。MRJ70型機について「今日は何も話せない」としつつ、「MRJ70はMRJ90の1年後と話していた時期もあった。しかし、胴体を短くするだけでいいのか」と述べ、まだコンセプトを固めている段階であると説明した。