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三菱重工、こうのとり8号機を乗せて宇宙へ向かう「H-IIBロケット8号機」を報道公開。H-IIBロケット機体色の驚きの理由も判明
2019年6月27日 20:22
- 2019年6月26日公開
三菱重工業は6月26日、「H-IIB(H2B)ロケット8号機」のコア機体を名古屋航空宇宙システム製作所 飛島工場で報道公開した。
H-IIBロケット8号機の打ち上げは、宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機(HTV-8)を所定の軌道に投入することを目的とし、ミッション終了は第2段エンジンを再度始動させて第2段ロケットの軌道を変更、南太平洋上へ制御落下を行なうという。
なお、海上へ落下後はそのまま海中へ沈むので回収作業は行なわれない。打ち上げの時期は各関係機関と現在調整中とのことだ。
H-IIBロケット8号機の構成は4つのブロックに分かれていて、上部より、こうのとり8号機を納めるHTV用フェアリング、その下に第2段液体水素タンク、第2段液体酸素タンク、そして1基の第2段エンジン(LE-5B-2)で構成される第2段ロケット部が付く。続いて第1段ロケット部。第1段液体酸素タンク、第1段液体水素タンク、第1段エンジン(LE-7A)が2基の構成。そして第1段ロケットのまわりに固体ロケットブースタが4基が装着される。
続いて今回の打ち上げが三菱重工の打ち上げ輸送サービスとして5機目という速いペースであること。2018年9月23日に打ち上げたこうのとり7号機(HTV7号機)以降、約1年ぶりのH-IIB打ち上げであること、さらに人工衛星の打ち上げならびに人工衛星の管理に関する法理である宇宙活動法施行後では初のH-IIB打ち上げであることなど、今計画の特記事項が説明された。
次はペイロード(積載物)の解説。最上部の衛星フェアリング内にはJAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機(HTV-8)を格納していて、切り離し後は日本の実験棟「きぼう」を含む国際宇宙ステーション(ISS)へ物資を輸送するとのこと。
次は飛行経路と主要制御についての解説。打ち上げ場である種子島宇宙センターから南東の方角へ打ち上げ、1分47秒後の高度47kmでロケットブースター燃焼終了。3分40秒後の高度120kmで衛星フェアリングが分離される。
続いて5分47秒後の高度189kmで燃焼停止した第1段ロケットと第2段ロケットを分離し第2段エンジンが点火。第2段エンジンは14分20秒後に高度289kmまで上がったところで燃焼停止し、15分11秒後の高度287kmでHTV-8を分離する。
HTV-8切り離し後は制御落下の工程に入る。H-IIBは地球を1周したあと、機体の向きを転回させる。これで第2段エンジンが前を向き、そこで2回目の燃焼を開始。速度を落として大気圏へ再突入し、南太平洋上へ落下させるという内容だ。
H-IIBロケット8号機の機体製造状況と今後の予定だが、コア機体は工場で機能試験を終えていて、6月29日に海上輸送で種子島宇宙センターへ出荷。各ロケットは横倒しの状態でコンテナに入れられて大型輸送船の船倉へ収まる。そして7月1日に種子島の島間港に着いたあと、陸路で種子島宇宙センターへ運び込まれる。
種子島宇宙センターには大型ロケット組み立て棟があり、ここで各ロケットは直立して組み立てられる。完成後の打ち上げは2つある射点のうち、第2射点からになるとのことだ。
説明終了後はいよいよ工場へ移動となるが、H-IIBロケットがある工場1階はクリーンルームになっているので、防塵服を着用し、履き物もスリッパに変える。また、ヘルメット着用も必須だ。持ち物も制限される。
準備ができたらエアシャワー室でホコリを落としたあと工場内へ入場する。記者の組は最初に2階の展望デッキから俯瞰での工場内を見た。このデッキと外の境は分厚く背の高いガラスで保護されているので、今回は用意された踏み台に乗ってガラスより上からH-IIBロケット8号機を撮影した。
2階からの見学のあとは1階へ移動。H-IIBロケット8号機のコア機体を間近で見た。ここでまず驚いたのが機体の色だ。これまで打ち上げたH-IIBロケットでは機体がオレンジ色に見えたが、今回のH-IIBロケット8号機は色合いが違ったので、記者は色合いの変更があったのかと説明担当者に尋ねたところ、なんとオレンジに見えていたのは「燃料タンクを覆う断熱材が紫外線を浴びることで変色したもの」であるということ。もとの断熱材は白なのだ。
では、ここからは写真を中心にH-IIBロケット8号機のコア機体を紹介していこう。
さて、今回は上記の断熱材を含むいくつかの機体部品が展示されていたので、それらを紹介していこう。
まずはH-IIBのパネルフレーム結合部のサンプル。以前は金属だったが、H-IIAからCFRP(炭素繊維強化プラスチック)とロハセルというウレタン系の素材によるサンドイッチパネル構造になった。これにより高強度化と軽量化が進んだということだ。
工場見学後は会議室へ移動し質疑応答が行なわれた。その場では、田村氏から打上執行責任者となったことに対するコメントが聞けた。田村氏は「私はH-IIロケットのプロジェクトマネージャー業を、アシスタントプロジェクトマネージャーを1年、プロジェクトマネージャーを1年と2年間やってきました。その経歴になかで最も大きなものはプロジェクトマネージャーをやっていた2年目に初めて第2段ロケットの制御落下をやったことでした。ここがとても思いで深いところであります」と語った。
続けて「私の責任者としての本機は次のH-IIIロケットになりますが、とくにH-IIA/Bに対して次のH-IIIという区別はありません。諸先輩方が続けてきた技術をきちっと引き継いで、打ち上げを成功に導いていきたいと思います」と語った。
今回公開されたH-IIBロケット8号機の打ち上げ日は未定だが、そのときが来たら、いつもどおり繊細で豪快な打ち上げシーンを見せていただきたい。