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沖縄観光コンベンションビューロー、「ハラール、ベジタリアンに対応するための食のセミナー」開催
2018年11月22日 16:20
- 2018年11月20日~21日 開催
増加を続ける外国人観光客。あらゆる面で対応が求められているが、食に関しても宗教や主義などによる「食の禁忌」への対応が求められている。
沖縄県とOCVB(沖縄観光コンベンションビューロー)は、平成30年度外国人観光客受入体制強化事業の一環として「多様な食の受入対応セミナー」を、11月20日に那覇市、21日に名護市と2日間にわたって開催した。20日にロワジールホテル那覇で行なわれたセミナーをレポートする。
セミナー開催に先立ち、主催者を代表して沖縄県文化スポーツ部の新垣健一氏よりあいさつがあった。「ムスリム人口の多い東南アジアからの直行便が就航したことにより、今後ますます訪沖人口が伸びると考えられる。また訪沖外国人で多くを占める台湾人にはベジタリアンが多く、推定13%である。
2019年にはラグビーワールドカップ、2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、ベジタリアンへの対応、富裕層の獲得が求められる。ムスリムやベジタリアンへの理解を深め、多様化する食のニーズに対応して国際観光都市を目指して積極的に取り組んでいきたい」と語った。
第1部では、フードダイバーシティの守護彰浩氏によるセミナー「多様な食の受入対応を実践するヒントと食対応の重要性について」が行なわれた。
最近、少しずつ耳にするようになった「ハラール」。ハラールとは、イスラム教の戒律にて「許されたもの」のこと。食に限らず、許されたものは全てハラールとなる。これに対し、禁じられたものは「ハラーム」である。
イスラム教で禁じられているものでよく知られているのは「豚」と「アルコール」。豚肉以外の食肉は、イスラムの教義にのっとって処理されたものならハラールだ。また、イスラム教でも宗派によってハラールの内容が変わることも知っておきたい。
このような、宗教上の戒律で食べられないものがあるという場合のほか、主義としての食への禁忌もある。たとえばベジタリアンだ。
日本へ多く訪れる台湾人。実は台湾人にはベジタリアンが多い。ベジタリアンであれば野菜なら何でもよいかというとそうではなく、「五葷(ごくん)」が禁止されている宗教もある。
五葷とは、ネギ・にんにく・にら・らっきょう・あさつきといった香りの強い5種の野菜。ヒンズー教や一部の仏教で禁止されている。このように多様な食の禁忌に対応するために、フードダイバーシティでは食対応のマトリクスを作成。ベジタリアンの食事をベースに、そこに何をプラスできるか、そこから何をマイナスしたらどのような宗教・主義に対応する食事になるかを示している。
大事なことは、「和食」「洋食」「中華」などと並んで「ハラール」「ベジタリアン」があるのではなく、和食なら和食のなかに「一般向け」「ハラール」「ベジタリアン」があるということ。
観光客は、旅先ではそこの料理を食べたいはずだ。例えば沖縄に来たら沖縄料理が食べたい。なので、沖縄料理でハラールやベジタリアンのメニューを用意することが喜ばれるということだ。
現在は、食品メーカーがハラールの食肉や調味料などを発売している。それらをうまく使い、ハラールやベジタリアンに対応しながらも一般の顧客にも違和感や特別感なく選んでもらえるメニューが作れるとのこと。
会場では、さまざまなハラールの調味料や食材などが展示されていた。また、ハラールのカレーの試食も行なわれた。
試食タイムのあとは、第2部としてパネルディスカッションが行なわれた。パネリストには、ハラール、ベジタリアンに対応したメニューを実践している2社より、沖縄美ら島財団首里城公園 料飲担当(店長)の平良智史氏、南都 レストラン部支配人 田仲貴志氏が登壇。ファシリテーターは引き続き守護氏が務めた。
南都では、観光施設「おきなわワールド」などでレストランを経営。ランチバイキングには80ほどの料理が並び、そのうち20品ほどがムスリムやベジタリアンに対応しているという。
きっかけとなったのは、20年ほど前からの精進料理のニーズに応えたこと。また、アレルギー対策にも真剣に向き合うようになったことだという。その後、精進料理をベースに料理をアレンジしてベジタリアン、ムスリムに対応するようになった。
首里城公園内のレストラン「首里杜」では、ムスリム対応メニューポリシーを作成。それを明記することにより、個別の問い合わせが減り、スタッフのオペレーションの軽減にもつながったという。
またベジタリアン向けに開発したメニューは、一般の女性客にも人気が高い。メニュー作りの際にベジタリアン・ハラールなどといった特殊感を出さないことも客層を狭めない秘訣と語った。
これからベジタリアン・ムスリム対応を図ろうとする人へのアドバイスとして田仲氏は、「最初から完璧を目指さなくてよい。まずできるところから始める。例えば、今あるメニューにピクトグラムを表示するとか。そこから少しずつ次の段階へ進めばよいのではないか」とのことだった。
宗教による食の禁忌は、日本人には馴染みのないことだが海外ではそれが当たり前のこととして生活している人も多い。まずは、そういう人たちがいるということ、そして今後ますます日本に多く訪れることを知っておくだけでも大きな一歩だと感じた。