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日本政府観光局主催のインバウンドセミナーが沖縄で開催。デジタルマーケティングの重要性に関心
2018年10月25日 20:24
- 2018年10月18日 実施
JNTO(日本政府観光局)は10月18日、OCVB(沖縄観光コンベンションビューロー)協力のもと、沖縄県豊見城市の沖縄空手会館にて「訪日インバウンド向けプロモーションのための最新マーケティング手法」と題した研修会を開催した。
当初、60名程度での開催を予定していたが100名を超える申し込みがあったとのことで関心の高さを伺わせた。
最初に、JNTO 地域連携部次長の吉浜隆雄氏より主催者あいさつがあった。「JNTOではこの7月に組織改変をし、新たに地域連携部という部署を立ち上げ、地域の皆さまとの窓口になる地域プロモーション連携室の体制の強化を図っている。これまで以上にインバウンドプロモーションに関する情報発信を行なうとともに、地域の皆さまのニーズ、地域に関する情報の収集にもしっかりと取り組み、地域の皆さまとの連携の強化を図っていきますのでよろしくお願い申し上げます」と語った。
続いて協力団体であるOCVBより、事務局次長の市原秀彦氏があいさつを行なった。「今日ご参加の皆さまには、地域の稼ぐ力を引き出していただきたいと思っている。私どもは、地域と中央省庁などとの関係組織のつなぎ役となって、連携を強化していきたい。OCVBではこの4月から、今までの各事業部によるスペシャリスト機能に加え、経営推進室を発足しDMOの強化に取り組んでいる。これまでOCVBの事業は県の事業が主であったが、現在は国の事業を獲得していく取り組みをしている。
また、日観振(日本観光振興協会)沖縄支部をOCVB内に設置しており、沖縄のことを全国に発信していく取り組みをこの4月より行なっている。私どももこのような取り組みのなかで、地域の皆さまと連携しながら稼ぐ力をつけていきたいと思っている」と語った。
次にJNTO 地域プロモーション連携室の茅野慎吾氏より、最近の訪日旅行のトレンドについて説明があった。
国の掲げる訪日外国人旅行者の目標値は、旅行者数が2020年に4000万人、2030年に6000人。旅行消費額が2020年に8兆円、2030年に15兆円である。2017年現在、訪日外国人1人あたりの観光消費額は15万4000円であり、2030年の目標人数を達成できたとしても観光消費額が目標に5.8兆円届かないため、1人あたり25万円の消費額が必要になるという。
そのための3つの方策として、「地方誘客による平均泊数のアップ」「ハイエンド強化による単価のアップ」「娯楽・サービス消費の増加」を提唱している。またインバウンドプロモーションの在り方として、今後は「B to Cを重要視したWEB広告施策」「ターゲッティングを明確化したプロモーション」「結果をデータ化し次回に活かす」などが挙げられた。
訪日インバウンド動向については、個人旅行が圧倒的に多く、その申込方法はWebサイト経由が主流となっている。リピーターも増えており、特に韓国、台湾、香港からの訪日客はリピーターが多いと発表した。
入国外国人の利用空港については、2010年には成田国際空港、関西国際空港、羽田空港が全体の71%を占めていたが、2017年には68%となり、ほかの空港が伸びてきている。特に那覇空港は2010年には2%だったのが2017年には6%と大きく伸びている。その大きな要因となっているのが、LCC(格安航空会社)の国際線就航の広がりが挙げられる。
JNTOと地域との連携については、7月1日より地域連携部を設置しJNTOと地域を結ぶ窓口となっている。情報共有やノウハウの提供、支援メニューなどを提供しているとのことであった。
続いてセミナー本編へ。テーマ1は、JNTO 海外プロモーション部の笠井沙織氏より「欧米市場向けプロモーションのポイント」が発表された。
2013年から2016年までの欧米豪各国の外国旅行人口の動向をみると、各国の旅行人口の伸び率は+2%~6%とほぼ横ばいである一方、訪日人口は+16%~20%と大きく伸びているという。
しかしながら、旅行先のランキングは米国、カナダ、豪州が11~16位であるのに対し、英国、フランス、ドイツといった遠距離の欧州ではいずれも30位以下であった。なぜ来ないのかをアンケートで調査した結果、費用が高い、言語の問題、日本に興味がない(情報不足)がトップ3であったという。
そこで、JNTOではプロモーションの事例をいくつか紹介。オーストラリアの料理番組を日本で撮影したものを放映したところ、約680万人が視聴し約27%の旅行会社で放映後に訪日関連の問い合わせが増加したとのこと。
また英国では、女優のJoanna Lumley氏を起用した訪日ドキュメンタリー番組を3回にわたり放映。一般消費者からの問い合わせ、さらなるメディア露出、旅行会社の販売促進などに活用されるなど大きな反響を得たとのこと。同番組の制作にはJNTOも取材を支援。メディアの招請事業のほか、このようなメディア側からの希望に対応した取材支援も行なっている。
ほかにも、ドイツの旅行雑誌で東京、京都、沖縄の魅力を紹介したことや、英国の新聞の空手特集で沖縄を取材した記事を掲載ことなどが紹介された。
講演のあとの質疑応答では「ライバルとなる国は?」との質問に対して「タイの存在感が大きい」と回答。欧州ではビーチ=タイのイメージが強いとのこと。また、バックパッカーからラグジュアリー層まで広い対応力がある。英語が通じることも強みとのこと。
「沖縄の知名度は?」との質問には、「英国では、日本でビーチを探すと沖縄がまず出てくる。2年前くらいから、ゴールデンルートのあと沖縄へという流れが増えている。特に家族旅行で沖縄へというのが増えている」とのことだった。
次のテーマは、JNTO 企画総室デジタルマーケティング室室長の吉田憲司氏より「JNTOが実践するマーケティングPDCA ~『デジタルマーケティング』の必要性~」が発表された。
世界のインターネット利用状況は、人口75.9億人のうち40.2億人がインターネットを利用している。1日あたりの利用時間は、一番多いのはタイで9時間40分。日本は4時間12分で、実は世界のなかでは短いほうだそうだ。
利用デバイスは、2018年の調査ではPCが前年度より減っているのに対し、モバイルが前年度比4%増の52%で過半数を超えているが、タブレットは前年度比ー13%と大幅減。そのほかのデバイス(ゲーム機などが含まれる)は全体では0.14%とまだまだ少ないが、前年度比+17%と大幅アップ。IoTなどの利用が進んでいる表われと考えられる。
世界の旅行トレンドは、ミレニアル世代が旅行者の中心であり、モバイルブッキング、OTAの活用、民泊、チャットなどが多く利用されている。通信環境が進むにしたがい、報伝達手法も変わってきており、今後5G回線時代にはIoTやAIを利用してデータが蓄積され、個人毎への情報提供などが行なわれるようになるという。
一方で、自身の興味ある記事やコンテンツ以外の情報に接触する機会が減っていく「フィルターバブル」という現象が起きているという。
デジタルマーケティングは、マーケティングやプロモーションの高度化、事業効果が一部可視化できるなどの利点がある。一方で、市場やターゲット(年齢・属性)によってはテレビや新聞がまだまだ情報伝達において有益であったり、フィルターバブルの問題、またごく一部の企業の市場独占により、ルール変更などが発生しやすかったりなどのデメリットがある。
マーケティングには、オンラインとオフラインを組み合わせ、ターゲット、チャネル(メディア)、タイミング、クリエイティブを掛け算して作りあげることが必要であり、JNTOでは2017年10月にデジタルマーケティング部を設置。Webサイト、SNS、スマホアプリなどオウンドメディアの情報発信手段を整備し、関連ビッグデータの収集、分析を進めている。そのデータから訪日市場の潜在顧客の分析などを行ない、マーケティングやプロモーションに活用するという。
収集するデータは「コンテンツプール」に蓄積。そこから訪日旅行ターゲット層に向けてオウンドメディアを通じた直接アプローチや、インフルエンサーを経由した情報発信、大手メディアやフリーライターを経由した情報発信を行なっていくという。その情報発信活動のなかで得られるデータを、「JNTO DMP(デジタル・マネジメント・プラットフォーム)」に蓄積してさらに活用を広げる。
訪日プロモーションにおいて、従来メディアからデジタルに移行している部分が多いが、人対人などリアルの部分は一定の必要性がある。「デジタル化」とは、デジタルを一つのメディアとして捉えるのではなくマーケティング全体の基礎として捉え、オフラインも含めて展開していくことが必要があるとした。
3つ目のテーマでは、グーグル合同会社 観光立国推進部長の陳内裕樹氏より「Okinawaの魅力の届け方」についての発表があった(内容非公開のためレポートは割愛)。
閉会のあいさつには、OCVB 誘客事業部海外プロモーション課 課長の平川美由紀氏が登壇。「OCVBではWebサイトやFacebook、Twitterなどで情報発信を行なっているが、世の中での沖縄の認知度を上げるには私どもの力だけではまだまだ足りず、皆さまがデジタルマーケティングを一緒に展開していただくことが必要と考える。本日のセミナーを活かしていただき、ともに沖縄の認知度を世界に広めていけたらと思う」と結んだ。