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スカイマーク、就航20周年を記念した「星空ジェット」披露。定時運航率に続き、顧客満足度日本一を目標に

チャーリィ古庄氏やココリコ遠藤章造さんによるトークショーも

2018年9月3日 実施

スカイマークは就航20周年を記念した「星空ジェット」を9月4日から運航する

 スカイマークは9月3日、9月19日に迎える就航20周年を記念した特別デザイン機「星空ジェット」(登録記号:JA73NQ)を羽田空港の同社格納庫で披露した。お披露目にあたってはWebサイトで募集した一般の招待客194名が参加したイベントも行なわれた。

 スカイマークは1998年9月19日に羽田~福岡線に就航したのが最初の路線。その後、2015年1月28日に民事再生を申請し、ANAHD(ANAホールディングス)、インテグラル、UDSエアライン投資事業有限責任組合の支援による再生計画案を提出。2016年9月29日に新経営体制で再スタートを切っている。

 記念式典で登壇したスカイマーク 代表取締役会長の佐山展生氏は、「2015年1月28日に民事再生の申し立てをし、その結果、2015年9月29日に新体制が発足した。その時点ではどのような形になるか分からなかったが、安全第一、定時運航率日本一を目指そうと、いろいろな改善を重ねてきた結果、2017年度、国土交通省発表の定時運航率で、ついに12社中、日本一になることができた。とにかく民事再生を乗り切らなければ20周年は迎えられなかったので、感慨もひとしお」とあいさつ。次のステップとして、「お客さま満足度も日本一を目指して社員一丸となって頑張っていく」と話した。

 また、20周年を記念して9月4日に運航を開始する「星空ジェット」については、「デザインを社内で公募し、全体のラッピングは7つのアイディアから、パイロットの橋本俊太郎がデザインしたものが選ばれた。手前味噌ではあるが、プロがデザインしたのではないかという出来。日本中を飛びまわるので応援を」とコメントした。

スカイマーク株式会社 代表取締役会長 佐山展生氏

 その「星空ジェット」のデザインについて、作成した副操縦士の橋本氏が説明にあたった。側面は左右で異なるデザインを描いており、左側面(ポートサイド)は、星座のはくちょう座と、実際の星空と同じくはくちょう座に重なるように天の川を描いている。

 これは、スカイマーク創業時のロゴマークに由来したもの。現在は垂直尾翼に星が1つだけ描かれているが、創業時は星が5つ描かれており、はくちょう座を表現していた。創業時は第3の航空会社としてひよっこのような存在だったが、それを童話の「みにくいあひるの子のアヒル」になぞらえ、今はアヒルでも、将来は白鳥のように優雅に羽ばたきたいという意味を込めて作られた。橋本氏は「20周年という節目を迎え、創業時の想いを改めて広く知ってもらいたい」と、モチーフとした理由を説明した。

 また、天の川は前方から後方にかけて虹色のグラデーションがかかっているが、これは橋本氏が同社に感じている魅力を表現したものだという。「日ごろ一緒に乗務している機長は非常に豊富な知識と経験を有している。そうした豊富な知識などは多様性という言葉に集約できると感じているが、それを受け入れる企業風土や人材が弊社の最大の魅力だと感じている。多様性ということで“レインボーフラッグ”を連想して虹色のグラデーションにした」と紹介した。

「星空ジェット」の機体左側面(ポートサイド)のデザイン

 一方、機体右側面(スターボードサイド)は、まったく異なるデザイン。「20周年といえば、人間でいえば新成人。弊社も新成人として、一つの節目としての想いを込めた」と全体を朝焼けのイメージに。そして、そこに流れ星がいくつかあしらわれており、「流れ星は、星に願いをかけるという言葉に代表されるが、スカイマークがみんなの気持ちや願いを叶える存在でありたい」との想いを込めたという。

 橋本氏は最後に「スカイマークは2017年に、みんなに気持ちに本気で向き合う、という抱負を出している。想いをつなげられるパイロットを目指しているので、自分のなかでも共感しており、織姫と彦星を分け隔てる天の川を飛び越えるようなはくちょう座になっていこうと考えている。皆さまと願いや想いを私どもにかけていただき、一緒に空を飛べたらと考えている」と、就航20周年と、それを記念した機体のデザインへの想いを語った。

「星空ジェット」の機体右側面(スターボードサイド)のデザイン

 ちなみに、乗降に使われる左前前方のドア(L1)ドアの脇には、「20周年記念デカール」が貼付される。これは20種類が用意されており、機体ごとに異なるロゴマークが貼られるので、搭乗時にチェックしてみるとよいだろう。

L1ドア脇に貼られる20周年記念ロゴマークのデザイン(同社ニュースリリースより)
星空ジェット(登録記号:JA73NQ)に貼られたドア脇のロゴマーク
機内のデザインは大きく変わらないが、ヘッドレストカバーの後ろ側に「スカイマークはおかげさまで就航20周年」のメッセージとイラストが描かれる
デザインに込めた想いなどを語る副操縦士の橋本俊太郎氏

 続いて、スカイマーク 代表取締役社長の市江正彦氏が登壇。ある日、橋本氏が歩み寄ってきて、星空が描かれた飛行機デザインとともにコラボ企画を提案してきたそうで、「そういえば秋に20周年記念イベントがあるから応募して、と話しておいたら、きっちり出してくれた。元のデザインはもっとよいが、飛行機全体にペイントするのが難しかった。それでもよくできた飛行機だと思う」と、星空ジェット誕生にまつわるエピソードを紹介した。

 また、創業時のスカイマークのマスコットキャラクター「クービー」にも触れ、「社内のイントラネットもクービーといって、最初はなんのことか分からなかった。空に美しいと書いてクービーと読む。このアヒルが白鳥になるんだと、最初の垂直尾翼にあしらったのがはくちょう座」と、デザインの説明を補足した。

スカイマーク創業時のマスコットキャラクター「クービー」。アヒルのクービーが白鳥になることを目指して作られた

 一方、就航20周年に対しては、「この20年は日本の航空業界の自由化の歴史。スカイマークが誕生したころ、いくつかの他社も誕生し、それによって航空料金がぐっと下がったという功績を残した。その1つがスカイマーク。だが航空業はそう簡単ではなく、みんないろいろ苦労して、民事再生や国の支援を仰いで今日に至っている。スカイマークも最後の方まで頑張っていたが、難しいことをやりすぎてしまったのか、3年前に民事再生になった。いろいろな方のご協力、ご支援を受けて、安定して、事業も路線も増やして、機材も増やして、海外も、というところまでにはなった。

 3年前に中期経営計画を作り、ほぼ2年ぐらいで達成できた。3年目の今は次の3か年計画または中期経営計画を作成中。2020年に上場を目指しているので、あと2年。これまでは経済環境にも恵まれたが、これからが本当の勝負どころになってくると思っているので、しっかり進めていきたい」と決意を示した。

 また、新体制が最初に発足したときに掲げた3つの約束として、1つ目の安全第一、2つ目のお客さまの時間を大切にし、定時運航率を高めて、欠航をできるだけなくす、という目標は2017年度の定時運航率日本一獲得などで「軌道にようやく乗ってきた」としたうえで、次は3つ目の「お客さま満足度向上」に取り組むことを紹介。

 そのために4月にCS推進室を立ち上げ、「お客さまの声をなるべく早く全社に伝わるように改善することをはじめている。そして、秋から新しい試みを進める」とし、CS推進室長の小林氏にマイクを譲った。

スカイマーク株式会社 代表取締役社長 市江正彦氏

 小林氏は「このたび9月末からの予定で、お客さまへ搭乗後のアンケートを回収することにしたい。搭乗券の上部のQRコードが読み取れるようになっており、お客さまのスマホでアンケートサイトにアクセスできる仕組み。これを、航空機が着陸し、駐機場に向かうまでの地上走行中にお客さまに回答していただきたいと想定している。出発時の空港から、機内、到着にいたる一連の体験を、なるべく早く、スピーディに回答いただき、それをリアルタイムに集計し、関連部署にどんど情報共有することを考えている。鮮度が高い、記憶が薄れる前にご回答いただいた内容を社内でフィードバックして、改善につなげたい」と、取り組みと意図を説明。

 地上走行中の短時間で答えられるよう、アンケートの設問は3問+フリーコメント1問の4問で構成。アンケートに答えた人に対してのプレゼントなども予定しているという。

4月に発足したCS推進室長の小林氏が、9月末からを予定している新たな取り組みを発表。搭乗券上部に書かれたQRコードからアクセスできるアンケートWebサイトを用意し、到着後の地上走行中にアンケートに答えてもらう

 佐山氏はこの取り組みについて、「定時運航率で日本一になれたのは、全空港支店の前日の定時運航率を発表し、よくなっているのか、他社と比べてどうかなどをレポートすることで、自分のポジションが分かったからできたもの。顧客満足度も日々上がっているかチェックできるよう、着陸後の短い時間を利用して、皆さんの声をお伺いする。そうすることで、よくなっているのか、どこが問題なのかが分かってくる。その改善でなにがなんでも日本一を達成したい」と狙いを話した。

 また、顧客満足度向上のための取り組みはこのほかにも検討が進められており、市江氏によれば、「身近な価格で、といっているとおり、サービスで料金を上げる気はなく、この価格でできる精いっぱいのサービスをしたいと思っている。例えば足のばシートをネット予約できるようにしたり、情報入力を簡単にできるようにしたりなどを進めている」と具体例を紹介した。

 このほか、2019年度中の運航を目指している国際線チャーターについては、パラオ、サイパンが対象であることに改めて触れ、「9月1日に準備室を立ち上げてスタートしたところ。国際線経験のある外部の方もスカウトして進める。今はサイパン、パラオに力を割いているが、今飛べる飛行機の範囲で、いろいろなところに行けるので、例えば夏に那覇への深夜便などを運航しているが、それをほかのアジアの都市にすることなども考えられる」(市江氏)と、国際線のネットワーク拡大にも意欲を示す。

 その機材についても、ボーイング 737-800型機の製造終了に伴う後継機の選定が進められているが、「鋭意検討中」(佐山氏)として具体的な機種名は挙げられなかった。ただ、「今より小さな飛行機はない」と断言したほか、国際線の将来的なネットワーク拡大に備えて、航続距離も検討材料に含まれているとした。

星空ジェットをバックに記念撮影

一般公募の招待客も参加した就航20周年記念イベント

 その後、Webで一般公募した招待客194名が参加して、20周年記念イベントを実施。代表取締役会長の佐山氏と、代表取締役社長の市江氏がそれぞれ登壇し、民事再生から20周年を迎えるまでの苦労や喜び、星空ジェットの説明や、顧客満足度向上に取り組む意欲などを語った。

 そして、元阪神タイガースの岡田彰布氏と、元中日ドラゴンズの山本昌氏からのビデオメッセージを紹介。岡田彰布氏は「タイガースジェットで神戸の魅力を阪神タイガースとともに伝えていただき、2010年のオリックス・バファローズ監督時代には準本拠地とした球場がスカイマークスタジアムだった」と自身とスカイマークの縁を紹介。山本昌氏は会長の佐山氏と公私ともに親しく、スカイマーク便には何度も搭乗しているとのこと。両名とも定時運航率日本一と就航20周年を祝福するメッセージを寄せた。

スカイマーク株式会社 代表取締役会長 佐山展生氏
スカイマーク株式会社 代表取締役社長 市江正彦氏
ビデオメッセージを寄せた元阪神タイガース監督の岡田彰布氏
同じく、元中日ドラゴンズの山本昌氏からもメッセージ

 続いて、スカイマーク機内で流れるBGMの作曲者であり、奏者であるピアニストの川上ミネ氏が登場。佐山氏が依頼してスカイマークの機内BGMのために書き下ろした「『SKYBLUE』スカイブルー」のほか、スカイマークが就航する空港を北から順に新千歳、仙台、茨城、中部、神戸、福岡……とイメージした曲を演奏。最後は、「未来の就航都市」として川上氏が期待する「マドリード」をイメージした楽曲も披露した。

ピアノの生演奏を披露した川上ミネ氏

 その後はトークショーの時間に。司会はスカイマーク創業時に入社した社員第1号だった経歴を持つ航空写真家のチャーリィ古庄氏が務め、スカイマークからは財務経理部担当 執行役員 田上馨氏、運航本部担当 執行役員 小田美喜雄氏が登壇。さらにサプライズゲストとして、航空マニアとしても知られるココリコの遠藤章造さんが登場。

 チャーリィ古庄氏が撮りためたスカイマーク創業時の写真を題材に、「新宿二丁目に本社があって、飛ぶか飛ばないか分からない新宿二丁目航空会社と呼ばれていた」「当時は発着枠がいまより貴重で、その枠を使うことに対するプレッシャーから737型機ではなく767型機になった。ANAからカタールの航空会社へ行った747型機を使う計画もあった」「フォードを社用車にしたり、タラップ車に海外製を使ったりしていた」など、さまざまなエピソードを披露。時折はさまれる小田氏のダジャレに遠藤さんがツッコミを入れるなど、漫才のようなやりとりで来場者を楽しませた。

トーイングトラクターに乗ってココリコの遠藤章造さんが登場
左からチャーリィ古庄氏、ココリコの遠藤章造さん、スカイマーク財務経理部担当 執行役員 田上馨氏、スカイマーク 運航本部担当 執行役員 小田美喜雄氏
チャーリィ古庄氏
ココリコ 遠藤章造さん
会場に飾られたモデルプレーン。こちらは就航時のペイントが施されたボーイング 767型機のもの
現行塗装のボーイング 737-800型機
2016年5月に阪神タイガースとコラボして就航した「タイガースジェット」
2017年5月に福岡ソフトバンクホークスとコラボして就航した「タカガールジェット」
2017年2月に映画「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」とコラボして就航した「ヤマトジェット」
2017年10月に東京都大田区のモノ作りを応援すべく就航した「下町ボブスレージェット」
除雪車やカウルが外されたエンジンの展示も