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2020年に海外渡航者2000万人を目指すアウトバウンド促進協議会が2018年度第1回全体会議を実施
国・地域別に幅広い活動を計画
2018年6月26日 06:00
- 2018年6月25日 実施
JATA(日本旅行業協会)のアウトバウンド促進協議会は6月25日、2018年度の第1回全体会議を実施した。旅行会社や各国の観光局、大使館、オペレーター、運輸機関などが協力し、日本における海外旅行市場の拡大を目指して活動する組織がアウトバウンド促進協議会である。年間の日本人海外渡航者数2000万人を早期に達成し、海外旅行促進活動のさらなる活性化を目的としている。
アウトバウンド促進協議会の会長を務める菊間潤吾氏は、全体会議の冒頭のあいさつにおいて、2017年の海外渡航者数は1789万人で、今年度も堅調に推移していると話す。そのうえで「2018年は1850万人を超えるものと見ており、1900万人も可能だと考えています」と話した。
一方で菊間氏が指摘したのは、日本における出国率の低さである。まず「もっとも近場の韓国旅行は双方向で1000万人時代が目前となっています。昔はそれぞれの方向の数が拮抗していましたが、昨今では韓国から日本への旅行者が700万人、日本から韓国へは230万人という状況です」と、インバウンドとアウトバウンドに大きな差があると語る。そのうえで「日本の出国率は約14%とあまりにも低い。日本の経済状況から考えると誠に不思議な数字ですが、それだけ潜在力があるとも言えます。我々の働きかけ次第により、出国率が伸びることも難しいことではないでしょう」と話し、2020年の海外渡航者数2000万人の実現に向けて意欲を示した。
また、アウトバウンド協議会について菊間氏は「日ごろはそれぞれ競合関係にある者同士が、全体のパイを拡げるために、日常とはスイッチを切り替え、ともに考えて活動していく場です」と意義を説明する。そのうえで「2018年度はこれまで以上に皆さま方の意見をいただく場を作り、活動していきたいと考えています。(海外渡航者数)2000万人、その先にある2500万人時代を実現するべく、積極的に活動していくことを会員の皆さまにはお願いしたい」と語った。
続けて、観光庁の審議官である瓦林康人氏があいさつした。冒頭、瓦林氏はインバウンドが堅調な一方、アウトバウンドが伸び悩んでいることに触れて「一種の均衡状態が発生している」と話す。この状態は決して好ましくないとして「(インバウンドとアウトバウンドの)双方向で旅行者を伸ばしていきたい」と話した。
観光庁において実施されている、若年層のアウトバウンドを増やすための勉強会についても触れた。若年層のアウトバウンドが減っているという指摘が勉強会を実施した背景にあると説明し、「海外旅行の概念の見直し、具体的には観光やレジャーにとらわれず、海外を体験する場としてアピールする。こうした新しい切り口での海外旅行も検討してほしい」と参加者に語りかけた。そして最後に「アウトバウンド促進協議会に対しては大きな期待を寄せていて、密に協力させていただこうと考えています。2000万人という目標を達成するためにも、アウトバウンドのマーケットを発展するべく協力していきたい」と述べた。
その後、アウトバウンド促進協議会における2017年度の活動報告、そして2018年度の活動計画案が紹介された。活動報告では、登録会員(会社・団体)数が2017年4月時点での135から2018年3月には190と大きく伸びたことが報告された。
2018年度の活動計画案は、部会別の渡航者実績と2018年の目標数値、研修旅行の方針、セミナー実施計画案、大学での文化祭活動計画案などの説明があった。なおプランナーのためのセミナーはすでに8回開催されており、今後も対象国やテーマを設定したセミナーを続けていくとする。大学文化祭でのワークショップ、セミナーについては、2017年に実践女子大学で初めて実施したところ非常に評価が高かったことから、今年は実践女子大学 渋谷キャンパス、そして東海大学のそれぞれの文化祭で実施することが紹介された。
その後、各部会ごとに活動計画を発表した。まず欧州部会は2020年度の渡航者数の目標として392万2000人とした上で、プランナーのためのセミナーや研修旅行の実施計画を示した。またEU大使館(欧州連合代表部)でのB to Bイベントも実施予定だとする。
中近東・アフリカ部会は各種セミナーやフォーラムの実施、現地視察のほか、ツーリズムEXPOジャパンで南部アフリカのデスティネーションに関するセミナーを実施予定だとする。
オセアニア・大洋州部会では、2020年の渡航者数の数値目標として90万人を設定する。さらにオセアニア地域における投稿者数の増加に向けた考え方として、ゲート都市および近郊の開発による「人数増」、周遊旅行の強化による「滞在日数増」、そしてオフシーズンのイメージ払拭とコンテンツ開発を目指す「OFF期喚起」の3つを掛け算するという内容を紹介した。
大洋州部会では、ニューカレドニアやパラオ、タヒチ・クック諸島、フィジーのそれぞれで研修旅行やプランナーのためのセミナー開催を行なうといった取り組みが紹介された。
アジア部会は、中国と韓国、台湾を除くアジア地域21カ国を管轄する部会である。渡航者目標として2020年に720万人という数値を掲げ、需要拡大と需要創造による渡航者数と取り扱い額の拡大を目指す方針を示した。活動計画としては、プランナーのためのセミナーの開催と研修旅行を実施し、商品化や送客増につなげるとした。
カナダやアメリカのほか、中南米各国を管轄する北中南米部会からは、ミクロネシア、ハワイ、北中南米のそれぞれで活動骨子が発表された。特にハワイに関しては、JTBやジャルパックなど7社が共同でシャトルバスの運行を開始したと紹介された。
中国と韓国、台湾を管轄する東アジア部会は、それぞれ270万人、350万人、200万人という渡航者数の目標を示した。中国においては「再発見!中国」という日中平和友好条約締結40周年のロゴと専用Webサイトによる取り組みや各種イベントなどが行なわれるほか、今後は海外旅フェスタやツーリズムEXPOジャパンでのワークショップおよびセミナーが予定されているという。
最後に、若年層向けアウトバウンド施策の成功事例として、女子のための旅情報メディア「女子旅プレス」を運営する、ネットネイティブによるセミナーが行なわれた。