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JR西日本、鳥取駅~出雲市駅を走る観光列車「あめつち」報道公開

7月1日から運行

2018年7月1日 運行開始

JR西日本 米子支社は7月1日から営業運行を開始する観光列車「あめつち」を報道公開した

 JR西日本(西日本旅客鉄道)米子支社は6月11日、後藤総合車両所 運用検修センター(鳥取県米子市目久美町)において、7月~9月実施の山陰デスティネーションキャンペーンに合わせて7月1日から営業運行を開始する観光列車「あめつち」を報道公開した。

「あめつち」は鳥取駅~出雲市駅を走る新たな観光列車で、「天地の初発の時(あめつちのはじめのとき)」という古事記の書き出しに由来して名付けられた。山陰地方は自然が豊かで、古事記に見られるように多くの神話が伝わり、また神社や酒、歌舞伎、相撲など、日本独自のさまざまな文化が花開いたエリアでもある。こうした日本の原風景や文化のルーツをコンセプトに、「あめつち」の車両デザインやサービス開発に活かしている。

JR西日本の観光列車「あめつち」の概要

運行開始日:2018年7月1日
運行日:毎週土・日・月曜 ※8月12日/25日、11月12日は運休。7月27日、8月3日/10日は運行
運行区間とダイヤ:
[下り]鳥取駅(09時00分)発~倉吉駅(9時45分)発~米子駅(11時06分)発~安来駅(11時16分)発~松江駅(11時45分)発~出雲市駅(12時47分)着
[上り]出雲市駅(13時41分)発~玉造温泉駅(14時26分)発~松江駅(14時43分)発~安来駅(15時22分)発~米子駅(15時35分)発~倉吉駅(16時36分)発~鳥取駅(17時36分)着
車両:キハ47形車両・2両編成(定員59名)
料金例:鳥取駅から出雲市駅まで乗って大人4540円、子供3240円(運賃、指定席グリーン料金を含む)
Webサイト:あめつち(山陰いいもの探県隊)

車両側面に山陰の山並みと日本刀の刃文を表現した銀の帯

クールな青系でまとめられた「あめつち」

「あめつち」は、キハ47形の2両編成で、出雲市駅側(西側)が1号車、鳥取駅側(東側)が2号車。山陰の美しい空や海を表現したという紺碧を基調として、下部には山陰の山並みと、たたら製鉄にちなんだ日本刀の刃文を表現した銀の帯があしらわれている。全体が光沢のある艶やかな塗装で仕上げられており、シックで高級感がある。

撮影時は曇天のため深い青に見えたが、晴天だと異なった趣になりそうだ。隣に停車しているのは境港線 鬼太郎列車「子泣き爺車両」
1号車(写真左)と2号車(写真右)の側面。帯模様は山並みにも日本刀の刃文にも見える
1号車と2号車ドア付近に書かれた号車表示。1号車は島根(出雲)、2号車は鳥取(因幡)を連想させるイラストをあしらっている

 ヘッドマークを含むロゴデザインは、漢字の「天地(あめつち)」をあしらい、「天」のバックには放射状の陽光のラインを縦に、「地」のバックには広大に横たわる海のラインを横に引いてデザインの変化を狙っている。さらに、天つ神々(太陽)、山と海、八雲、(神話に登場する金色の)トンビ、白兎、ワニ(鮫)など、やはり神話にヒントを得たモチーフが散りばめられた凝ったものとなっている。なお、このエンブレムは出雲市の企業が制作したもの。「あめつち」の内外装には多くの地元企業の作品が使用されている。

2号車(鳥取側)の先頭部
車体側面のエンブレムとロゴ。ヘッドマークも同様のものが取り付けられている

地元の島根県や鳥取県の工芸品が車内を彩る

白木の明るい雰囲気にまとめられた「あめつち」の車内(1号車)

 内装は木目調のパネルを多用して白木の質感を表現するなど、モダンな和の応接室のようなイメージ。基本的な座席配置は1号車、2号車でほぼ同じだが、1号車はカウンター席の一部を車いす対応にしてあるため1席少ない。一見して分かるのは、2つの車両では内装の色が異なること。また、まったく同じに見える車内の調度品についても、1号車には島根県のものを主に、2号車には鳥取県のものを主に使うなど、非常に細かい部分にまでこだわっている。

1号車の内装
2号車の内装
1号車(写真左)、2号車(写真右)ともに海側(偶数番号席)には窓へ向いたカウンター席がある
1号車(写真左)、2号車(写真右)のカウンター席のうち、1号車の写真一番手前の座席は回転できる。車いす利用者を想定した設計で、後述の多目的トイレにも最も近い座席だ
1号車(写真左)、2号車(写真右)ともに山側(奇数番号席)は2名掛けの対面シート。海が見えやすいように床面より一段高くなっている
1号車(写真左)と比較して2号車(写真右)の対面シートの一部は、さらに一段高くなっている。鳥取県をイメージした2号車のみの通称「大山シート」だ
1号車(写真左)、2号車(写真右)の4名掛け対面シート。海側(偶数番号席)に各車両8席が用意されている
1号車、2号車ともに、すべてのテーブルに石州瓦(島根県浜田市)が埋め込まれている
天井に埋め込まれた電球色のLED照明も地元企業(島根県出雲市)が製造している
1号車(写真左)、2号車(写真右)の天井照明は、因州和紙(鳥取県鳥取市)をとおして間接照明のような柔らかい光としている
1号車(写真左)、2号車(写真右)の窓側壁面に貼られた装飾。1号車は隠岐の黒松(島根県隠岐の島町)、2号車は智頭杉(鳥取県智頭町)を用い、絵柄も出雲、因幡の神話にちなんだものとしている
1号車ドア付近に展示された織物。写真左は出雲織、写真右は安来織で、いずれも島根県安来市で制作されたもの
2号車ドア付近には、弓浜絣(写真左、鳥取県境港市)と倉吉絣(写真右、鳥取県倉吉市)を展示
1号車に設けられた洗面台。岩井窯(鳥取県岩美町)の手洗い器を設置
1号車に設けられた多目的トイレ。車いすのまま入れる広さがあり、おむつ交換台も備えている。女性専用トイレも別途用意
1号車ドア付近には、大型の荷物が置けるスペースも
2号車にはカウンターがある。乗客が予約した弁当の準備などを行なうほか、ドリンクや山陰の菓子類、「あめつち」オリジナルグッズなども販売する。左端ののれんは西尾絞り(鳥取市)だ
2号車カウンターの奥には、ミニチュアの神楽衣装(島根県浜田市)が展示されている

山陰の食材を使った弁当と雄大な景色を楽しむ

「あめつち」の運行区間は、車窓から雄大な景色が楽しめるポイントが多い。このうち、日本海と大山(名和駅~大山口駅)、宍道湖(乃木駅~玉造温泉駅)、菱井川(直江駅~出雲市駅)が望める区間では速度を下げて走行し、山陰を代表する景色がゆっくりと楽しめる。

 また、車内で提供する弁当やスイーツ(要事前予約)も山陰の食材がふんだんに使われた特別なものとなる。これらは鳥取駅発と出雲市駅発でそれぞれ異なるものを用意しており、往復の乗車でも楽しめそうだ。なお、食事の詳細については、「あめつち(山陰いいもの探県隊)」のWebサイトをご参照いただきたい。

アテンダントとして搭乗する狩野裕香氏(左)と西谷さき氏(右)。「ゆったりとした空間で、山陰の景色と食を体感してください」とのこと
接客イメージ。制服のデザインにも「あめつち」色が盛り込まれている

 報道公開の場で、JR西日本 米子支社 車両課長の伊東克敏氏は「山陰の自然や文化などを最大限に楽しんでもらえる車両として企画し、地元の伝統や現代の技術を結集した車両として完成しました。お客さまには車窓からの景色と、山陰の食材を使った食を満喫していただきたいと思います」と話した。

「あめつち」は全国から大きな反響があったとのことで、予約も好調とのこと。乗車日の1カ月前の10時から全国のJRの主な駅のみどりの窓口・主な旅行会社で購入可能だ。

 デザインから制作まで細部までこだわりぬき、沿線に暮らす人々の協力も得て誕生する観光列車「あめつち」。五感で味わう新たな山陰の旅が、いよいよ始まる。

「あめつち」について説明するJR西日本 米子支社 車両課長の伊東克敏氏