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JR西日本、七尾線観光列車「花嫁のれん」公開
本物の金箔を壁一面にあしらった豪華装飾
(2015/8/21 17:18)
JR西日本(西日本旅客鉄道)は8月21日、「北陸デスティネーションキャンペーン」に合わせ10月3日より運行を開始する七尾線 金沢駅~和倉温泉駅間の観光列車「花嫁のれん」を報道陣に公開した。
「花嫁のれん」はキハ48気動車(キハ48 4、キハ48 1004)を改造した2輌編成の列車で、定員は52名。北陸の魅力を伝える「和と美のおもてなし」がキーワードとなっており、北陸の伝統工芸である輪島塗りや加賀友禅をイメージした外観と、車内は赤と黒を基調した座席に金沢の金箔や輪島塗りで彩られた車内装飾が特徴となっている。デザインは近畿日本鉄道「しまかぜ」のデザインも手がけた監修 山内陸平氏とデザイナー 井上昭二氏。クリエーティブディレクター・アートディレクターは山本俊治氏となっている。
「花嫁のれん」とは、旧加賀藩の加賀、能登、越中に見られる風習で、娘の婚礼の際に幸せを願って、色鮮やかな暖簾(のれん)を嫁ぐ娘に持たせるもので、幕末より明治にかけて始まったもの。「暖簾が風になびくように、婚家の家風に早くなびきますように」と願いを込め、花嫁に手渡される。婚礼の当日、嫁ぎ先の仏間の入口に掛けられたのれんを花嫁がくぐり、ご仏前でお参りをすることで先祖へのあいさつとし、花嫁とその家に新たな絆が生まれるという。
車両の外観は、ベースとなったキハ48と比べると、前面の貫通扉が埋められてフラットになっているほか、行き先方向幕が撤去され大きなLEDの前照灯を設置。それに伴い、左右にあった2つの前照灯は撤去されている。また、側面の乗降扉のうち、運転台側の乗降扉も埋められており、窓ガラスはUVカットガラスに変更されている。機関など走行系はベースとなったキハ48そのままだが、車内用の発電機だけ従来の2倍の出力となっている。七尾線は全線電化されているため、必ずしもキハ48のような気動車を使用する必要はないが、西日本旅客鉄道 金沢支社 営業課 課長 川村聡氏は「現在のところ他線区での運行予定はないが、改造できるキハ48があったのと、総合的に考えて広い範囲で走れる仕様にした」とのこと。
車体のデザインは、赤い車体に金色に縁取られた黒い帯を巻き、車体はもちろん、スカート部分まで輪島塗りや加賀友禅をイメージした柄のラッピングが施されており、鉄道車輌としては今までにない着物をまとったような、華やかな外観となっている。
前面と側面には「花嫁のれん」のロゴも掲出されている。ロゴは、石川の伝統工芸である「加賀水引」をモチーフに「花嫁のれん」をくぐる神聖で幸せな気持ちを表現し、「女性の幸せを願う列車」であることを表現している。また、水引の「淡路結び」には、簡単には解けないことから末長くお付き合いしたいという意味が込められており、互いの輪が結び合い、全体に和をなす形にすることで、北陸への旅が仲良く和やかで楽しい旅になるようにという願いが込められている。また、すべての文字が切れずに繋がるロゴタイプは「人と人、心と心を結ぶ列車」を表現している。
1号車は半個室タイプのブースが8つあり、それぞれ4人用の「桜梅の間」「撫子の間」「青の間」と3人用の「扇絵の間」「笹の間」、2人用の「鉄線の間」「菊の間」「錦秋の間」となっている。“ゆったりとくつろぎの旅を楽しめる空間”がコンセプト。通路は日本庭園の飛び石をイメージした絨毯が敷かれており、各ブースはそれぞれ石川県繊維協会の協力により選定した友禅のオールドコレクションをあしらった空間になっている。
物販スペースは、輪島塗の図柄で使われることが多い紅葉や蝶などの図柄となっており、客室側の側面は金箔で装飾されている。また、伝統工芸品を展示する棚の背面にも金箔が使われている。金箔は、金の含有量を変化させた2種類のものを使用して色味を変え、その上に図柄をプリントするという凝った装飾となっている。
2号車はオープンタイプの座席となっており、窓向きの1人用席が6席と4人用席4組、2人用席3組という構成。“にぎやかに旅を楽しめる空間”がコンセプト。通路は流水をイメージしたカーペットが敷かれており、内装は輪島塗の図柄で表現されている。また、座席は紅色の生地と背面の木の格子が特徴的な回転座席となっており、60度ずつ回転して固定できる。1号車には、イベントスペースや車いす対応のお手洗いを備えている。イベントスペースでは、七尾線観光列車魅力アップ協議会による「おもてなしパフォーマンス」を上演する予定。
車内の食事は、和倉温泉駅12時07分発の「花嫁のれん2号」で「和食セット」(2500円)を提供。「加賀屋」の総料理長が監修した能登特産の食材や石川の郷土料理などが楽しめる。ソフトドリンクとして加賀棒茶が付く。
金沢駅10時15分発の「花嫁のれん1号」と同14時15分発の「花嫁のれん3号」では、パティシエ 辻口博啓氏による「ル ミュゼ ドゥ アッシュ」のオリジナルセレクトスイーツと石川の老舗「ダートコーヒー」による、花嫁のれんオリジナルブレンドコーヒーまたは加賀棒茶のセットを提供。価格は2000円。
和倉温泉駅16時30分発の「花嫁のれん4号」では、「加賀屋」の総料理長の監修による石川ならではの珍味を揃えた和総菜と能登の酒造メーカー宗玄酒造の純米吟醸酒(花嫁のれんオリジナルラベル)のセットを楽しめる。
上記のメニューは、季節や仕入れ状況により、内容が変更になる場合がある。また、購入はJR西日本、JR四国、JR九州の「みどりの窓口」またはJR東日本の「びゅうプラザ」、および主な旅行会社、JR西日本電話予約サービス(クレジット決済のみ)にて事前申し込みにて販売される。購入時には「花嫁のれん」の乗車券と特急券が必要。また、金沢駅~和倉温泉駅間の乗車の場合のみ提供となる。その他の車内販売については、現在検討中だが、駅弁などを持ち込んで食べることもできる。
完成の挨拶としてスピーチした西日本旅客鉄道 執行役員金沢支社長 野中雅志氏は「北陸ディスティネーションキャンペーンの目玉のひとつになります、七尾線を運行する観光列車『花嫁のれん』が完成いたしました。花嫁が暖簾をくぐって仏間に挨拶するという伝統をもとに、このような華やかな車両を作りました。赤と輪島塗を連想させる黒を配色し、よい列車になったと自負をしております。加賀友禅や輪島塗など、石川県の伝統的工芸品をデザインに取り入れ、加賀や能登をイメージしやすい車両になっています。これをもとに、加賀友禅や輪島塗への関心の喚起と相互効果を期待をしています。10月3日より運行を開始いたしますので、ぜひご愛顧ください」と述べた。
さらに、食事やアテンダントなど“おもてなし”の分野で参画している加賀屋 代表取締役社長 小田與之彦氏は「加賀屋グループは、加賀屋の料理長が監修し石川県や能登の食材にこだわった食事の提供と、アテンダントとして私共のスタッフがJR西日本のスタッフのともに乗車し、能登の暖かさや優しさが伝わる“おもてなし”をするという部分で参画しています。『花嫁のれん』号が末長く愛され、お客様に楽しんで頂けるように努めて参ります」と述べた。
車内の装飾を担当した箔一 代表取締役社長 浅野達也氏は「なかなか鉄道車輌の内装に伝統のものを使うというのはありませんでした。伝統産業というものは非常に繊細で、内装に使うために、光や摩擦など様々な問題に取り組みました。多くの打ち合わせと試作の後に、ようやく出来上がりました。注目して頂きたいのは、1号車の壁面です。今回用いた技法は、様々な種類の金箔を組み合わせ市松模様を作りました。その上に絵を乗せています。より石川県らしい伝統産業が表現できたのではないかと思います」と述べた。
車両デザインを担当したデザイナー 井上昭二氏は「今回はデザインを遊ばせてもらったため、関係者の皆様には無理難題を実現していただきました。通常、鉄道車両はシンメトリーのデザインが基本ですが、本車両はシンメトリーの部分はありません。また、車内にステージを設けて様々なイベントができるようにしました。車内のレイアウトも袋小路のような今までの鉄道車輌にはないデザインとなっています」と述べた。
「花嫁のれん」は、10月3日~2016年2月28日の土曜、日曜、祝日と、12月8日を除く10月3日~12月29日の月曜、火曜、金曜、2016年2月12日に2往復運行される。
ダイヤは、和倉温泉駅方面の「花嫁のれん1号」が金沢駅10時15分発~和倉温泉駅11時37分着、「花嫁のれん3号」は金沢駅14時15分発~和倉温泉駅15時32分着。金沢駅方面の「花嫁のれん2号」が和倉温泉駅12時13分発~金沢駅13時21分着、「花嫁のれん4号」は和倉温泉駅16時30分発~金沢駅17時53分着となる。なお、「花嫁のれん1号」は和倉温泉駅から定期観光バス「のと恋路号」に接続する。
乗車するには、運賃のほか特急指定席券(全車指定席)が必要となる。指定券は、乗車日の1カ月前よりみどりの窓口および主な旅行会社で発売する。