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オーストラリア政府観光局が会見。2020年までに観光客の年間支出1400億オーストラリアドルを目指す

「Australian Tourism Exchange 18」レポート

2018年4月16日~19日 開催

ATE 18が行なわれたアデレード・コンベンションセンター

 オーストラリアの観光業界向けイベント「Australian Tourism Exchange 18」(ATE 18)が、4月16日~19日(現地時間)の4日間にわたって、オーストラリア 南オーストラリア州 アデレード市にあるアデレード・コンベンションセンターにおいて開催された。

 4月16日には、地元となる南オーストラリア州貿易・観光・投資大臣 デイビッド・リッジウェイ氏を迎えて、オーストラリア政府観光局主催の記者会見が行なわれた。

地元となる南オーストラリア州のリッジウェイ貿易・観光・投資大臣が登壇

 南オーストラリア州は、今回のATE 18が行なわれたアデレード市がある地元州で、オーストラリア政府観光局と共同で今回のATE 18をホストしている。ATE自体は、オーストラリアの観光地が持ち回りで開催しており、例えば2017年はオーストラリア最大の都市であるシドニーで開催。アデレードが前回開催したのは2010年だ。

南オーストラリア州貿易・観光・投資大臣 デイビッド・リッジウェイ氏

 リッジウェイ氏は「ATEのアデレードでの開催は2010年以来になる。アデレードは今年はほかにもビッグイベントが控えており、来週にはスポーツ関連のイベントを行なっている。南オーストラリアには、ワイン、新しい体験などすべてがある。今回のATEはそうした南オーストラリア州をアピールするよい機会で、南オーストラリア州の経済にもよい影響があると考えている」と説明した。

南オーストラリア州観光局 最高責任者 ロドニー・ハレックス氏

 記者会見には南オーストラリア州観光局 最高責任者 ロドニー・ハレックス氏も同席しており、「ニュージーランド路線や、中国南方航空の便がスタートするなどアデレード発着の国際線は拡大を続けており、現在もエアラインに働きかけを続けている。今回のATEに向けては新しいコンベンションセンターのホールをオープンして、カンファレンスのサイズを大きくすることができた。ATEをホストすることは非常に大きなチャンスになる」と述べ、やはり地元政府の観光局としてATE開催の経済効果に期待していると述べた。

2020年に観光客の年間支出1400億オーストラリアドルという目標は75%達成

 リッジウェイ氏が退席した後は、オーストラリア政府観光局 本局局長 ジョン・オサリバン氏による、オーストラリアの観光業界の現状などが説明された。

オーストラリア政府観光局 本局局長 ジョン・オサリバン氏

 オサリバン氏によれば、旅行者がオーストラリアで使う支出が、2020年に1300億~1400億オーストラリアドルとなるのがオーストラリア政府観光局の目標だということだが、2017年のオーストラリアへの旅行者全体の支出は1050億ドルであり、目標の75%に達したと述べた。また、もう1つの目標として2020年までに1000万人の国外からの観光客を掲げているということだが、2017年の段階ですでに880万人を実現したと説明した。

オーストラリア政府観光局のビジョン
2020年の目標に向けた2017年の結果
2020年の目標達成に向けたデマンド

「現在オーストラリアへの観光のデマンドは非常に強くなっている。特に中国からのお客さまは引き続き多く、成長している。それに加えて、現在はインドからのお客さまが増えており、2017年は16%と2桁成長した。さらにサプライも増えており、2017年の国際線の席数は前年度に比較して5%増加している。中国は30%、カナダは26%、日本はJAL(日本航空)やカンタス航空がメルボルン線を開設するなどして11%増えている」と述べ、オーストラリアの観光産業は引き続き成長基調にあると説明した。オサリバン氏によれば、中国や米国からの顧客が特に増えており、それが成長を牽引しているとのことだった。

飛行機の座席供給なども増えている
米国や中国の需要は引き続き強い
人気のポイント

 オサリバン氏は「われわれの調査では旅客が快適と感じるポイントはなにかと調べたところ、安全安心であること、フレンドリーでオープンな市民がいることだと分かった。オーストラリアはどちらも兼ね備えている」と述べ、詰めかけた報道関係者などにオーストラリアが国外の観光客にとって優れた目的地だとアピールした。

観光客のニーズに答えていく
DUNDEEのキャンペーン
米紙によればDUNDEEのキャンペーンは10億人以上に見られたという

 そのうえで、オーストラリア観光局が行なっているマーケティング施策として、「DUNDEE」という動画を紹介した。これは、1986年にオーストラリアで製作されて国際的に人気を呼んだ映画「クロコダイル・ダンディー」の続編という触れ込みで大々的に発表されたものの、それはジョークで実はオーストラリア政府観光局のパロディ動画だったという内容で話題を呼んだ。動画そのものはアメリカ人がオーストラリアに来てその大自然を楽しむという内容で、米国など西洋の観光客に向けた動画となり、欧米のメディアではかなり話題を呼び、オーストラリア観光のアピールに一役買ったという。

DUNDEEキャンペーンの結果
若者向けのキャンペーン
MICEにも力を入れていく

 また、オサリバン氏は今後重要な市場になってくる市場として、若年層の観光客市場、さらにはMICEなどと呼ばれる企業の会議・宴会需要(オーストラリアではMICEとは言わずにビジネス市場と呼んでいる)について説明した。オサリバン氏によれば観光客全体の25%は若者で、特に支出の46%は若者の支出が支えているとのこと。そこで、今後の若い観光客の獲得のため、イギリスやドイツでキャンペーンを行なっていくと説明した。また、ビジネス向けに関しては1200万オーストラリアドルの投資を行ない、企業の誘致につなげていきたいとのことで、米国、カナダ、イギリス、欧州、中国などがそのメインターゲットだと説明した。

MICEの主たるターゲットは中国や米国
さらなる新商品の発売を目指す
最後のスライド

 最後にオサリバン氏は「今後も観光客にとってユニークな体験を提供できるような新しい商品を開発して提供していきたい」と述べ、それによりオーストラリア観光商品の魅力を増して、ATEに来ている旅行代理店などの関係者などにアピールしていきたいとまとめた。

日本にはコードシェアで乗り入れているヴァージンオーストラリア航空が現状を説明

 ヴァージンオーストラリア航空 グループ・エグゼクティブのロブ・シャープ氏は、オーストラリアで第2位の航空会社グループになるヴァージンオーストラリア航空の現状などを説明した。

ヴァージンオーストラリア航空 グループ・エグゼクティブ ロブ・シャープ氏

 ヴァージンオーストラリア航空はその名前からも分かるように、もともとはイギリスのヴァージングループの子会社としてスタートしたが、その後、英ヴァージンはヴァージンオーストラリア航空をほかの航空会社などに売却し、現在はエア・ニュージーランドやシンガポール航空などが株主に名を連ねる独立系の航空会社となっている。現時点では3大アライアンスのどこにも属しておらず、それぞれの航空会社(例えば米国ではデルタ航空)と独自のパートナーシップを結んで運航している。日本には直接は運航はしていないが、シンガポール航空などとのコードシェア便を持っており、シンガポール経由などで日本の空港にも乗り入れを行なっている(直行便や、ヴァージンオーストラリア航空自身のフライトはない)。

最初のスライド
複数のブランド
保有機材
ネットワーク
これまでに獲得しているアワード

 シャープ氏によれば、ヴァージンオーストラリア航空には複数のブランドがあり、フルサービスキャリアとしてのヴァージンオーストラリア航空、リージョナル向け航空会社となるヴァージン・オーストラリア・リージョナル航空、LCCとなるタイガーエア・オーストラリアなどがよく知られている。

 所有する機材は、ATR 72-500/600型機、フォッカー F100型機、エアバス A320型機、エアバス A330-200型機、ボーイング 737-600/700型機、ボーイング 777-300ER型機でそれぞれ異なる市場に投入しており、平均機齢は10年とのことで、国際標準より若めだと説明した。また、ネットワークに関しても近年は米国への直行便の運航を始めているほか、アジア各地にはパートナーとなるシンガポール航空とのコードシェア便などで就航を実現していると説明した。

顧客満足度を上げる取り組み
新しいスマートフォンアプリやAlexa対応
中国市場でのキャンペーン

 また、シャープ氏は新しい顧客満足度を上げる取り組みの1つとして、スマートフォンやスマートスピーカーなどの活用を挙げた。「顧客の満足度を上げるには、デジタルへの対応が大事だ。われわれはスマートフォンのアプリを一新したほか、Amazon Alexaへの対応を進めており、音声でさまざまなサービスが提供できるようにしたい」と述べ、Amazon Alexa向けのサービスも早急に提供していく必要があると説明した。

ニュージーランド向けのフライトを充実させる

 なお、質疑応答の時間には日本への直行便を開設する計画はないのかという質問が出たが、シャープ氏は「今の時点ではまだ言えることはない。常に検討はしているし、日本の市場は魅力的だが、今の時点では米国や中国といった市場への対応を優先している」と述べた。