旅レポ

オーストラリア・カンガルー島の大自然を満喫する(その1)

野生のアシカやカンガルー、コアラをウォッチングできるツアーに参加

カンガルー島で遭遇した野生のカンガルー

 オーストラリアといえば日本人にも人気の観光地だが、そのなかでも日本人の感性に響きそうな地名の観光地があることをご存じだろうか? その名も「カンガルー島」(Kangaroo Island)、聞いただけで行ってみたい気がする地名ではないだろうか。名前からしてカンガルーが住んでそうな島だし、島の1/3は特別保護区に指定されていて、手つかずの自然がそのまま残されている。

 今回、オーストラリア政府観光局主催のカンガルー島へのFAM(視察)ツアーに参加してきたので、その模様をお伝えしていく。初回では初日に体験した、カンガルー島に生息する野生生物への接近などについて紹介しよう。

オーストラリアのアデレードから南にある「カンガルー島」

 カンガルー島は、オーストラリアのアデレードから飛行機ないしフェリーで行ける距離にある島で、島の1/3は特別保護区になっており、手つかずの自然がそのまま残されている。アデレードといえば、F1マニアの筆者にとっては、1995年までF1オーストラリアGPが最終戦として開催されていた都市で、過去に何度もチャンピオン決定戦の地となったというイメージだが、一般的には南オーストラリア州の州都として5番目に大きな都市という存在だろう。

 今回はカンガルー島に行くのに、アデレード空港(3レターコードはADL)から「Regional Express」というそのままズバリの名前のローカル航空会社を利用した。便名はZL4753で、目的地はカンガルー島のキングスコート空港(3レターコードはKGC)。飛行機はSAAB 340型機という双発のプロペラ機で、アデレード空港からキングスコート空港間はわずかに25分ということで、風景を眺めていたらあっという間に到着した。キングスコート空港は、日本の地方駅のような感じのこぢんまりとしたもので、預け入れた手荷物は建物の外で渡されるという、いかにもなローカル空港だった。

Regional ExpressのSAAB 340型機に乗ってカンガルー島へ、久々のプロペラ機にちょっとドキドキ
席の配置は1-2だが、最後列だけは4列になっていた。ちょっとバスっぽい
左に見えるのがアデレード空港
左に見えるのがオーストラリア大陸側の半島、翼の向こう側に見えるのがカンガルー島
キングスコート空港

 今回のツアーの最初の目的地は「シールベイ(Seal Bay)」と呼ばれる入り江。カンガルー島は面積が4405km2という大きさで、日本でいえば京都府や山梨県あたりとだいたい同じ程度の大きさになる。1つの県がすっぽり入ってしまうと考えると、案外と大きな島だ。このため、空港からシールベイまでクルマでだいたい30分ぐらいと、移動に意外と時間がかかるのが特徴とも言える。

 ただし、道には一切信号というものがなかった。ツアーガイドによれば、街に行けばあるとのことだが、島の大部分には信号などはない。クルマの台数が多くないので、その必要がないからだ。

キングスコート空港からシールベイへ向かう途中
目的地のシールベイ

 信号がないとなると、当然のことながら街灯もない。したがって夜は真っ暗で本当に何も見えない。このため、結構多いのが野生動物とクルマの衝突事故とのことで、ガイドからは「野生動物が道の端で死んでいても驚かないでほしい、これがここでは普通のことだ」と言われて、注意して道の端を見ていると確かに何度かそういうシーンに出くわした。それだけではない、クルマの助手席に乗っていると、クルマが走っている目の前をカンガルーが横断していくのを見たこともあった。それぐらい野生動物が普通にいる島だということだ。

シールベイでは野生のアシカに近づく。子供のアシカがとてもかわいい

 目的地のシールベイに到着すると、初めはビジターセンターに到着した。ここで、ガイドありのツアーと、単に入場料を払って回るツアーを選ぶことができる。このカンガルー島は非常に大きいが、人口は4000人程度となっており、その人口もいくつかある街に集中している。島全土をカバーする公共交通機関などはないため、基本移動は自家用車でということになる。

 観光客にとっては、もちろん自家用車はないだろうから、空港近くで借りられるレンタカーに乗るか、ガイド付きのツアーに申し込んでガイドのクルマで回るか、のどちらかだ。ガイドがいると入れる場所が増えるなどのメリットもあるため、可能であればガイド付きのツアーを手配することをお勧めしたい。

シールベイのビジターセンター
アシカの骨や毛皮などでアシカの生態を説明するコーナー

 というのも、このシールベイにはアシカ(Sea Lion)が生息しており、それを見ることができるのだが、ガイド付きのツアーの場合にはかなり近くまで寄って見ることができる。そうでない場合には、入れる場所に制約があるようだったので、ビジターセンターで申し込めるガイドツアーないしは、最初からパッケージになっているガイドツアーを申し込んだ方が楽だと感じた。

 そのアシカツアーだが、湾に向かって降りていくと、その途中に何か動く物体……それがなんとアシカだった。ガイドによれば、われわれの一行が最初に見たのは、子供のアシカだそうで、お母さんがいないと「キューキュー」と鳴いていてとってもかわいらしかった。ガイドによれば、親のアシカは数日漁に出て帰ってこないこともあるそうで、そうすると子供はずっと鳴いて親を探して回っているそうだ。

浜辺に向かって降りていくところ
何かいると思ったら子供のアシカ
この距離ぐらいまで近づくことができる
親を探してさみしそうに鳴いていた

 その後、浜辺に降りてみると、アシカがそこら中にいて、手を伸ばせば届きそうなところにいたりする。ただし、触ったりするのはもちろん厳禁で、ガイドが適度な距離(アシカがびっくりしたりおびえたりしない距離)まで行くことを許可してくれるので、その距離から撮影をすることなどが可能だ。

人間が通る台の下にもアシカが、手が届きそうだ
お休み中のアシカ……
浜辺に降りてアシカの群れに近づいているところ
アシカがみな動きがかわいい

野生のカンガルーに接近して、野生のコアラを木の上に発見

 そのあと向かったのは、カンガルーファームと呼ばれる、いわばカンガルーの牧場だ。といっても、普通に放し飼いにされており、野生のカンガルーと何も変わらない状態で飼われている。ガイドによれば、こうした牧場はこのカンガルー島にはいくつもあり、カンガルーだけでなく、コアラを飼ってる牧場など、いろいろな種類の牧場があるそうだ。

私有地の扱いになっているカンガルー牧場にクルマで入る。ガイドツアーに申し込むとこうしたところにいけるのもメリットだ。
クルマの向こうにカンガルーが

 クルマで入っていくと、茂みの脇にカンガルーが無造作に横たわっていた。ガイドによれば、気温23℃あたりがカンガルーが外に出てくるのによい温度らしく、われわれが訪れたときがちょうどその23℃。カンガルーが出てくるのに適した気候になっていた。ここでは、カンガルーをクルマから見るだけでなく、ガイドに先導されて降りてカンガルーに近づくことができる。

 カンガルーの方も人間になれているのか、こちらがそれなりの距離を保っていれば、いきなり逃げたりはしない。ただし、ちょっと大きな音を出したりすると、逃げてしまうので、そっと静かにゆっくりと近づくのがよい写真を撮るためには必要だ(それとできれば望遠レンズ……)。

 実際、結構な距離まで近づけて、写真を撮ることができた。カンガルーを見たのは人生で初めての体験だったので、非常に感動した。

普通に寝ているカンガルー
本当にこの飛び方で移動するのだと感心
こんな近くまで近寄れる、ただあまり近づくと逃げてしまう
立っているカンガルー
コッチ見んなよ、のカンガルー
立ってるカンガルーはかわいい
移動中

 そのあとは、「フリンダースチェイス国立公園」のなかにあるBBQ会場に移動しての昼食。昼食はツアー会社のガイドが自ら焼いてくれるというオージービーフのステーキ。鉄板の上であらかじめ味付けをしてある状態のステーキを焼いてくれて、そのまま焼きたてを食べることができ、非常に美味しかった。

道なき道を移動してBBQ会場に
コールスローなどの付け合わせも美味しかった
オーストラリアはパンがなかなか美味しい
焼く前の肉、すでに味付けがされている
焼いているところ、だんだんお腹が減ってくる、よい匂いだ
ウェルダンを頼んで焼いてもらったオージービーフ、非常に美味だった
ローカルワインで漬けてあるデザート

 なお、そこの駐車場で上を見上げてみると、ユーカリの木に野生のコアラがとまっていた。といっても木のかなり上の方で、小さくしか見えなかったが、コアラも動物園でも見たことがなかったので、こちらも初体験で、そんな希少動物がそこら中にいるカンガルー島、侮り難しと思った。

ユーカリの木のかなり高いところにいたコアラ、タダのかたまりのようだが、コアラだった

500万年分の歴史を感じられるリマーカブル・ロックスを観光中に、ハプニングに遭遇

 昼食のあとには運動ということで、フリンダースチェイス国立公園のなかにある「リマーカブル・ロックス(Remarkable Rocks)」に向かった。リマーカブル・ロックスは、500万年前から徐々に雨露で削られながらできあがった岩で、ユニークな形をしているため、驚くべきという意味の「Remarkable」と名付けれた岩で、実際に登ってみることもできる。

 ただし、観光地にありがちな安全設備などはまったくなくて、1歩踏み外せばその下は切り立った崖という環境。このため、途中の看板には「You could endanger a life(命を危険にさらすかもしれない)」という危険性を喚起する注意書きがあるほどだ。くれぐれも安全に登るようにしたい。

リマーカブル・ロックスへ
リマーカブル・ロックスの全景
注意書き
リマーカブル・ロックスに登ったところの風景

 実際に登っていると、どこからともなく赤と白の色に塗られたレスキューのヘリコプターが飛んで来て、何かをチェックしている。ガイドによれば、普段はそんなことはないとのことで、何かの緊急事態のようだ。クルマを停めたところに戻ってみると、なんとわれわれのクルマの隣にそのレスキューのヘリコプターが着陸していて、自分たちのクルマには戻れないというハプニングが発生していた。

レスキューのヘリコプターがリマーカブル・ロックスの周囲を旋回しだした
そのまま駐車場に着陸
左がツアーの車両、ヘリコプターが再び離陸するまで待機することに

 ガイドがレスキューに話を聞くと、どうも遭難者が出たという通報があって来たのだが、来てみると通報者もいなくて、どうやら誤報だったらしいと分かったのだが、一応付近を捜索しているということだった。遭難者が出てなくてよかったが、いたずらならそれも困ったもので、レスキューの隊員も困ったモノだねという感じで肩をすくめていたのが印象的だった。

 その後、もう1つのビューポイントである、「Admiral Arch(提督のアーチ)」という場所に来た。途中には先ほどのシールベイと同じアシカがいるポイントがあったが、さらに降りていくと、岩が自然にくりぬかれてアーチ状になっている場所まで降りていくことができた。なぜそこが提督を意味するアドミラルという名前が付けられたのかは最後までよく分からなかったが、絶景ポイントであることは間違いない光景だ(帰りが登りになるので、それなりの体力は必要。元気なうちに行くようにしよう)。

提督のアーチに降りていく途中にあった撮影ポイント、鳥が留まっていた
ここを下っていく
かつての灯台の跡。今は宿泊施設の一部になっているという
ここにもアシカが
階段を利用して降りていく
提督のアーチ

 提督のアーチを見終わったらその日の宿に移動。この日の宿は「Mercure Kangaroo Island Lodge」。カンガルー島のアメリカンリバーという場所にあるホテルで、島の東側にある湾に面しており、ホテルの目の前は海という絶景の場所にある。夜はそこのレストランで食事を取り、お昼に続いてステーキ(フィレ)を選択し、やはりオージービーフのうまさに舌鼓を打った。

Mercure Kangaroo Island Lodgeの部屋、海に面しており眺めはよい
Mercure Kangaroo Island Lodgeでの夕食

笠原一輝