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ANAの新航空教室「ANA Blue Academy ミライつく~る」、福岡の小学校で開催

ANAのパイロットやCAらが講師。福岡市東区の舞松原小学校を訪問

2018年2月21日 実施

福岡市東区の舞松原小学校で「ANA Blue Academy ミライつく~る」を開催

 ANA(全日本空輸)グループは、2017年10月からスタートした「ANA Blue Academy ミライつく~る」を、2月21日に福岡で実施した。

 東京からスタートして(関連記事:「ANA、子供たち自ら考えながら空の仕事を学ぶ、新スタイルの航空教室『ANA Blue Academy ミライつく~る』」)4カ月が経過。福岡で12カ所目となる。福岡市東区にある舞松原小学校で行なわれた航空教室をレポートする。

「ANA Blue Academy ミライつく~る」は、2018年から導入される学習指導要領にも応している内容に合わせてプログラムが組まれている。小学校5・6年生を対象とし、ANAグループの社員が講師となり、パイロット、CA(客室乗務員)、整備士、グランドスタッフ、グランドハンドリングスタッフの5つのグループに分かれて、職業紹介から、各職種に従事するスタッフがどのように問題の解決にあたっているかを、子供も一緒になって考える。

 今回は舞松原小学校の6年生87名が5つのグループに分かれて、それぞれの教室で特別授業を受け、最後に再度全員が集結し学んだことをシェアする流れとなっていた。

会場となった舞松原小学校(福岡県福岡市東区)
教室開始前に講師を務めるANAスタッフが円陣を組んで気合を入れる
体育館に向かう講師陣

 ANAスタッフと子供が体育館に集合。開会式の冒頭で、舞松原小学校校長の松原里美氏は「いつもANAの皆さんのハツラツとした働きぶりを見ていると素晴らしいなと思っています。今日の特別授業は各県で1校しか選ばれないという、とても貴重な機会となります。授業をとおして皆さんの夢をさらに膨らませていってください。ANAの皆さま、お忙しいなか子供たちのために準備してくださいまして本当にありがとうございます。今日の特別授業は一生記憶に残ると思います。よろしくお願いいたします」とコメント。

 続いて、ANAのCAから「準備はできていますか? 間もなく未来に向かってテイクオフします」と号令がかかり、まずANAを知ってもらうためのムービーが放映され、それぞれの職種も紹介された。その後、各職種に振り分けられたグループごとに教室へ移動し授業開始となった。

ANAの講師陣が待つ体育館に6年生も集合
舞松原小学校校長 松原里美氏
ANAを紹介するムービーが流れた
パイロットや整備士が働いている様子が映し出される
それぞれのテーマにグループ分け

各職種の授業風景

・パイロット

 パイロットのグループは、羽田~伊丹線のANA41便のフライトプランを考えようというもの。19時25分の出発便だが、15分出発が遅れており、また、伊丹空港は21時以降飛行機の着陸ができないという2つのポイントを考慮しつつ、どの飛行高度を飛んでいけばよいかを子供同士で考えていく。

 1グループ4~5人ずつに分かれ、「1. 時間がかかるが揺れない9800m」「2. 少し揺れるが熱い飲み物が提供できない可能性がある8500m」「3. 時間は節約できるが雲が多く揺れる可能性が高い7300m」の3つから、どのルートを飛ぶかを話し合う。

 実はこの課題に正解はないが、子供自ら乗客の都合を想像しがら答えを出すことが狙い。さらに飛行中、パイロットが地上と常に連絡を取り合い、刻々と変わる気象状況を確認しながらベストな方法を選択している、ということを知ってもらうための内容となっていた。子供たちは「揺れて具合がわるくなる人がいたら」「急いで到着したい乗客がいるかもしれない」と、さまざまな意見を交わしていた。

パイロットのグループ
福岡出身の副操縦士が講師
出発時刻に遅れが発生した便をどのように飛ばすかというグループワーク
場面設定は出発時刻が15分遅くなったが、伊丹空港は21時以降の着陸ができないというケース
どの高さを飛べば安全かつ時間内に到着できるかを考える

・グランドスタッフ

 グランドスタッフのグループは、機内への持ち込みが禁止されている風船をどのように断るか、また家族団らんという場面での声掛け方法が各テーブルで検討され発表された。

 そのほか、英語や中国語を使う場面も多いということで「こんにちは」「いってらっしゃい」をそれぞれの外国語で発声練習。さらに、手話や手荷物の受託方法などのレクチャーも受け、本物のタグを使って荷物に巻き付けてみる体験も行なわれた。

家族連れ客で女の子が風船を持ってチェックインカウンターにやってきたとき、機内に持ち込めない風船をどのように説明するか
スタッフによる回答例。子供たちも「空気を抜いてもらうように説明する」というほぼ満点の答え
子供たちの答えに笑顔のグランドスタッフ
外国語を使う場面も多いということで、あいさつの練習
手話のあいさつも
荷物の受託の手順
子供たちに実際に空港で使用されているタグが配られて、荷物に取り付けてみる

・キャビンアテンダント

 CAのグループは、ライフベストの着用法を学習。離陸前の機内でCAが行なう安全設備の説明と同様の動作を子供たちが体験した。そのほか、機内の設備にはどのようなものがあるか、赤ちゃん連れの搭乗客にどのようなサービスが考えられるかといったことを考えるグループワークとなっていた。

 機内でさまざまなサービスを提供、対応するイメージの強いCAだが、なにより優先されるのは乗客の安全を確保するという保安要員としての役割が大きいということが伝わってきた。

ライフベストの着用方法のほかにも、機内の設備やサービス内容について学習した

・整備士

 整備士のグループは、飛行機に使用している本物の部品を持ち込み、実際に整備士が行なう分解整備を体験した。航空機のカーゴルームに採用されているローラートレイの実物を使い、分解された状態から工具を使い組み立てていくが、ここでパーツの傷を見付けられるかどうかがキモとなる。ほんのわずかな傷でさえも見逃してはいけない整備士の重要さ、少しでもなにかあれば飛行機を飛ばすことはできない可能性があることを学習した。

整備士のグループワーク
教材として用意したローラートレイ

・グランドハンドリングスタッフ

 グランドハンドリングスタッフのグループは、航空機が空港に到着して再び飛び立つまで、荷物の積み降ろしや燃料補給といった準備について学習した。また航空機誘導のためのマーシャラーの体験もでき、体育館のステージに映し出された航空機の動きに合わせて手に持ったパドルを動かしていた。

本物のパドルを手にして迫ってくる航空機を誘導
ANAのグランドハンドリングスタッフが使用するパドル
航空機が飛び立つまでに必要となる業務について、さまざまな特殊車両が関わっていることも学習
分からないことは積極的に質問

最後にミライシートに自分の夢を記入する

 各グループの職種の体験後、自分の夢をミライシートに記入する。これは「○○になりたい」ではなく、「○○のような○○になりたい」と具体的に書くことが大事で、課題を自分たちで解決しようとしてきたアクティブラーニングを取り入れたプログラムによって、子供のなりたい職業がより具体的にミライシートに記入された。

ミライシートに自分の夢を記入する

 各グループは再び体育館に集まり、その結果や感想をシェア。5つのグループに分かれていたが、各職種から1名ずつ5人1グループに分かれ、体験講座によって感じたことを報告しあった。

体育館に集合し、各職種で学んだことや感じたことをシェア
講師たちも子供の発表に耳を傾けていた
プログラムの最後に「ANA's Way」とはなにかという説明
子供たちからANAスタッフにお礼の言葉
最後に歌のプレゼントですべてのプログラムが終了した
体育館から退場する子供を見送り

「ANA Blue Academy ミライつく~る」終了後、講師を努めた福岡空港所属のグランドスタッフ梶原健氏、同じくグランドハンドリングスタッフの羽田弘輝氏、福岡出身の副操縦士の長沢圭氏、福岡客室乗務室所属のCAの徳永杏氏、羽田空港所属の整備士の袴田真由氏に、子供たちと接した感想を聞いた。

左から福岡空港所属のグランドスタッフの梶原健氏、同じくグランドハンドリングスタッフの羽田弘輝氏、福岡出身の副操縦士の長沢圭氏、福岡客室乗務室所属のCAの徳永杏氏、羽田空港所属の整備士の袴田真由氏

 福岡空港所属のグランドスタッフの梶原健氏は、「教室では明るく元気に受け答えをしてくれましたので、とても進めやすかったですね。とにかく素直なところが新鮮で、自分の業務に活かせるような元気をいただいた気がします。気を引き締めて応対にあたりたいと実感しました。返事をきちんと返すことや、キビキビとした行動だったり細かいことが刺激になりました」とコメント。

 福岡空港所属のグランドハンドリングスタッフの羽田弘輝氏は、「子供のころ、機内のモニターで見たマーシャリングが格好よく見えて、この職に就きました。ちょうど今日のような子供たちと一緒ですね。自分と同じようなきっかけでANAやグランドハンドリングスタッフを目指してくれる子が現われるかもしれません。そうなればうれしいですね。なかなか知られていない職業だと思いますが、このような機会が得られてよかったです」とコメント。

 福岡出身の副操縦士の長沢圭氏は、「子供向けの教室で講師を務めるのは2回目でしたが、まったく新しい内容でした。今日の子供さんは皆さん活発に話してくれて、うれしかったです。私自身、この東区の出身で懐かしい気持ちにもなりました。今日の飛行ルートを決める授業でも、子供たちが搭乗客のことを考えて答えを導き出そうとしていたのが印象的でした。明確な答えが決まっているのではなく、その日の客層や天候といった状況に合わせて考えることが大事だよ、ということが伝わったと思います」とコメント。

 福岡客室乗務室所属のCAの徳永杏氏は、「初めて講師を務めさせていただきましたが、向こうから話しかけてくれる子供さんが多くて楽しかったです。この学校の宝と聞いていた“あいさつ”も素晴らしく、自分も気合いを入れ直さないと、と思いました。今日は特に分かりやすい説明を心がけていました」とコメント。

 羽田空港所属の整備士の袴田真由氏は、「子供さんと接していて、普段は見られていないだろうと思っていましたが意外と知っている声が多く、見られているのだなと思いました。お客さまと直接接しない部署ではありますが、こういう子たちが飛行機に乗っていると思うと気が引き締まる思いですね」と、それぞれ感想を述べてくれた。