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パナソニック、パーソナルモビリティや進化した案内板など空港での“次世代おもてなしサービス”紹介
2017年2月13日 20:10
- 2017年2月13日 内覧会実施
- 2017年2月14日~17日 実施
パナソニックは、取引先などに同社の新技術を紹介する「Wonder Japan Solutions」を2月14日~17日に、東京・有明のパナソニックセンター東京で実施する。それに先立つ2月13日に、報道関係者向けの内覧会が実施された。
Wonder Japan Solutionsは、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向けて、日本や東京が抱える社会課題を、同社の技術とさまざまな企業との連携によって解決方法を提案する場。今回が3回目で、第1回目の2015年にコンセプト提案、第2回目の2016年に具体的な社会実装のイメージをソリューションとして提案。実際に、成田国際空港(NAA)での実証実験のあと2016年12月にサービス展開を開始した「メガホンヤク」や、2016年4月にサービスインし、東京ビッグサイトや伊勢丹本店のキャンペーンで使用された光ID技術「LinkRay」なども、過去のWonder Japan Solutionsで展示されたものとして紹介があった。
そして第3回目となる今年は「Beyond 2020 The Legacy」と題し、特定空間での具体例を紹介。提案があったのは「都市」「空港」「スポーツ」の3つの領域で、「都市」のエリアでは主にストリートに注目し、法によって推進が決まった無電柱化の促進や、それに伴って必要となる地上設備をサイネージに利用し、街その者を情報/IoTプラットフォームとして使っていくソリューションなどを紹介。
加えて、2016年8月に東京・新橋で実証実験が行なわれた暑さ対策ソリューションの一つを紹介。これは東京都港区と協力し、新橋駅前にクールスポットを設けたもの。濡れにくいドライミストや、冷気を閉じ込めるエアカーテン、保水性ブロックなどにより体温や周辺温度を下げるもの。
新橋での実証実験時にはポール型のデザインでドライミストを噴出していたが、新たにバス停などで利用できるシェルタータイプも提案。バス停の柱などに配管し、噴出口は天井のみとすることで、空間をより広く使えることが利点となる。具体的な計画は明かされなかったものの、このタイプの実証実験も2017年中に実施したいとしている。
「スポーツ」のエリアでは、日本のスポーツ産業市場規模のGDP比が他国に比べて低いことなどを挙げ、現在1%程度のGDP比を、2025年前に諸外国並みの3%までに引き上げ、15兆円規模の市場とする目標などを紹介。そのうえで、スポーツ会場の興奮を会場内、会場外で感じられるような仕組みや、さまざまな媒体に合わせたコンテンツ作り、応援するチームの強化につながる技術などを紹介した。
日本の玄関口である空港での「おもてなしサービス」
もう一つのエリアである「空港」では、ハード・ソフト・人が連携した“日本らしい高品質なおもてなしサービス”の提供に向けたソリューションを紹介。概要説明を行なったパナソニック 東京オリンピック・パラリンピック推進本部 副本部長 北尾一朗氏は、「日本を訪れる人のほとんどが空路を使い、空港は日本の表玄関。その印象が大事」とコメント。「初めて来た空港のアクセシビリティが印象を大きく変える」とその重要性に言及した。
これから求められるソリューションの一つとして、アクセシビリティの改善を挙げ、特に障がい者やケガをして移動に支障がある乗客を指すPRM(Passengers with Reduced Mobility)に対応するソリューションを紹介。PRM向けサービスの利用者は、海外空港の例でロンドン・ヒースロー空港で1日2000名、パリ・シャルル・ド・ゴール空港で1日1100名と増えており、東京パラリンピックもきっかけの一つとして日本におけるPRMサービス拡充の必要性を説いた。
空港でのアクセシビリティ改善のソリューションとしては、2015年12月に羽田空港(日本空港ビルデング)との協力で実証実験を行なった「バリアフリーナビ」や、2016年12月から同じく羽田空港で実証実験している衝突防止機能搭載の電動車椅子「WHILL NEXT」、2017年1月に成田国際空港のNarita TraveLoungeで実証実験を行なった「HOSPI」による食器回収実験など、実際に空港会社と協力しての実証実験例もある。
パナソニックでは、おもてなしサービスだけでなく、日本の人口減に伴う人手不足に対応できる業務効率化も両立する、映像やIoT、ロボティクスの技術を駆使したソリューションを提供し、将来的には鉄道などのほかの交通機関へ展開していくことを視野に入れているという。
「Wonder Japan Solutions」で展示された空港ソリューション
カフェをイメージした空間で、さまざまな形状のディスプレイを用いたサイネージを展示。「Information」のタイトル部分は光ID「LinkRay」に対応しており、これを利用することで、自身の便に搭乗するのに必要な時間(カフェからの移動時間やセキュリティエリア通過にかかる時間)をスマートフォンなどで確認できる。
このセキュリティエリアの混雑状況のチェックにあたっては、セキュリティカメラの画像から自動的に混雑具合を測るソリューションのデモも展示。現在はセキュリティカメラの映像提供を受けて開発を進めているとのことで、将来的には上述の空港内移動時間をセキュリティカメラの映像からリアルタイムに算出できることを目指しているという。
もう一つのディスプレイを使った空港内移動の例としては、バスの案内板をデモ。行き先の部分がLinkRayに対応しており、これを利用すると、時刻表を手元のスマートフォンなどで確認できるだけでなく、ビーコンを使った高精度の現在地確認を組み合わせて目的のバス停までのナビゲーションも可能になっている。
また、次世代無線LAN「WiGig」を用いたデモは、2月16日~24日に成田国際空港で実証実験を行なうことも案内した。これはKADOKAWAと協力して行なわれるもので、Narita TraveLounge利用者にWiGig搭載タブレットを無料貸し出しし、デジタルサイネージから大容量コンテンツを高速でダウンロードできることを体験してもらうもの。
実証実験ではアニメコンテンツを4タイトル、観光コンテンツを33タイトル、書籍コンテンツを34タイトル用意。タブレットにダウンロードしたコンテンツはラウンジ内で鑑賞できる。
Wonder Japan Solutionsの会場では、通常のWi-Fiと比較してアニメコンテンツを高速にダウンロードできることを見せるデモしていた。
訪日外国人向けサービス強化のために、空港やホテルなどへの導入を目指すのが「Japan Fitter」と呼ばれるソリューション。JTBやヤマト運輸らと協力しての荷物の手ぶら観光サービスのほか、検疫を簡便化して生鮮品を持ち出すことをサポートする機能、定型英文をタブレットでタップしながらコミュニケーションを図る機能を搭載している。
ロボットやパーソナルモビリティの展示スペースでは、2016年1月に成田空港のNarita TraveLoungeで食器回収ロボットとして実証実験を行なった「HOSPI」のデモのほか、パーソナルモビリティの「WHILL」にパナソニックの衝突防止機能や高精度な自立移動システムを搭載した「WHILL NEXT」の自律走行デモ、前方のWHILL NEXTに追従するカートロボのデモを行なった。
WHILL NEXTは、先述のPRM向けソリューションとして、スマートフォンを使って呼び出すことで自動的に所定の場所へ到着。同様にスマートフォンを使って出発するよう指示することで、自動的に搭乗口などへ輸送してくれる。
デモでは、そのWHILL NEXTの走行にもう1台のWHILL NEXTとカートロボも追従。デモで使用されたカートロボは、ショッピングセンターなどで使用されるカートを前方から引っ張って移動する第1世代のもの。会場には、空港で用いられるハンドルにロック機能が付いたカートを押して移動する第2世代のものも展示された。
カートロボは、周囲360度を検知するために、カートのタイヤやフレームなどの障害物をいかに避けてセンサーを配置するかなどを検証しているという。将来的には、アダプタパーツを追加する程度の作業で、さまざまな種類のカートに対応でき、引っ張ることも押すこともできるカートロボとすることを目指すという。