【イベントレポート】
【APEX2016】パナソニック、USB Type-C対応のシートモニターなど次世代の機内エンタメ設備
シンガポール航空が23日に運航開始したエアバス A350型機に搭載した「Companion App」も紹介
2016年10月27日 14:24
- 2016年10月24日~27日(現地時間)開催
シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズ・エキスポ&コンベンションセンターで開催されている、航空機内での乗客の体験向上を目指す展示会「APEX EXPO 2016」に出展した米パナソニック・アビオニクス(Panasonic Avionics)は、会場でも1、2を争う規模のブースを展開。同展示会のダイヤモンド・スポンサーも務めている。そのブースでの展示内容を紹介する。
2016年1月に米ラスベガスで開催されたCES 2016で、同社が4Kシートモニターを搭載したビジネスクラスシートを展示していたことをお伝えしているが、このシートはAPEX 2016にも展示。ただし、新機能が追加されている。
その新機能は顔認証を用いて、機内で事前に入国審査や税関手続きを行なうというもの。入国審査で実施される顔写真の撮影や必要書類を機内システム上で行ない、そのデータを事前に送信。実際の入国時にはカメラを備えたゲートを通過するだけでOKにするというもの。
日本国内でもICパスポートと指紋認証を用いた事前登録方式の自動化ゲートを一部空港に備えているほか、顔認証による自動化ゲートも実験が行なわれている。パナソニック・アビオニクスが示したシステムは、各旅行ごとに行き先の国に合わせた事前申請を行なうという点で一歩先を見据えたシステムになっている。もちろん政府との連携が不可欠ではあるが、航空会社とともに働きかけていくとのことだった。
製品の担当者は、日本の空港において外国人入国審査で長い行列ができることがあることも認識しており、日本人である記者に対して、多くの外国人が訪れる2020年の東京オリンピック・パラリンピックにこのシステムがあれば短時間で入国できる、という想定事例を挙げて説明した。
詳しくは別記事で紹介するが、顔認証は航空関連ではホットなトピックスとなっており、併設イベントのFTE Asia 2016(Future Travel Experience Asia EXPO 2016)でも、空港設備に顔認証を導入することで各プロセスを簡略する展示が行なわれている。
エコノミークラスのシートではB/E Aerospace(ちなみに、同社は会期中にRockwell Collinsによる買収が発表された、買収額は64億ドル)のシートを用いたシートモニターのコンセプトがCES 2016に引き続き展示されたが、新たに、より薄いレカロ製のシートとの組み合わせも紹介していた。
さらに、このレカロ製シートと組み合わせたシートモニターは、新しいコンセプトとしてサブディスプレイを備えたものを展示。現在の飛行時間や、シートベルトサインなどをこのサブディスプレイに表示するデモを実施した。
また、USB接続によるデジタルヘッドフォンは、ノイズキャンセリング機能を備えるほか、外部の人の声を聞き取りやすくするモードへの切り替えをシートモニターから行なえる仕組みになっている。
また、パナソニック・アビオニクスとジャムコが共同開発したファーストクラスシートのコンセプトモデル「Space X」も展示。これは4Kディスプレイを用いた機内エンタテイメントシステム(IFE:In-Flight Entertainment)などをパナソニック・アビオニクス、シートなどの設備をジャムコが提供。デザインは日産自動車やアウディなどでカーデザイナーを務めたことで知られるSWdesignの和田智氏が務めた。
シートについては軽量素材の採用やリクライニングのためのアクチュエータを省略するなどして約20%の軽量化を実現。スマートデバイスによる機内照明などの調整が可能となっている。機内エンタテイメントシステムについては、新たなコンセプトとして天井に設置したプロジェクタからテーブルに投影するというデモも実施していた。エアバス A350型機やボーイング 777型機などの大型機へのファーストクラスとしての提案を進めている。
機内用のディスプレイも各種展示。一つは、ナローボディ(単通路機)や短距離路線用の航空機に搭載される天井から吊り下げるシートモニター。パナソニック・アビオニクスでは、現在フルHD(1080p)に対応した製品を提供しており、新造機におけるシェアは73%に達するというデータを、10月25日に実施したプレスブリーフィングで提示している。
各座席に搭載するシートモニターについては、ファーストクラス/ビジネスクラス向けの「Altus」、ビジネスクラス/プレミアムエコノミークラス向けの「Elite」、エコノミークラス向けの「Eco」の3シリーズを展開。
Ecoシリーズは、現行モデルである「Eco v3」シリーズに続く、「Eco v3 Plus」も展示した。これは、USBポートからの給電能力を、v3の1.5Aからv3 Plusでは2.1Aに引き上げているほか、新たにUSB Type-Cも搭載。USB 3.1規格でのより強力な電力供給や高速なデータ転送といったポイントで、同社に限らず機内シートモニター全般に今後の普及が見込まれている。
機内エンタテイメントシステムでは、シンガポール航空が10月23日(現地時間)からシンガポール~サンフランシスコ間で運航を開始した、エアバス A350-900型機で新たに採用された「Companion App」のデモも実施していた。これは、先述のCES 2016レポートの後半で紹介している、個人デバイスと機内エンタテイメントシステムを連携して利用するシステムを、シンガポール航空向けにカスタマイズして提供しているもの。
飛行機に乗る前に、機内で観賞したい映画などのコンテンツをCompanion App上で選択。ただし、この際には動画選択の参考となる予告編などの動画しか表示できない。
機内では、Wi-Fiに接続し、シート番号や連携のためのPINを入力することで目の前のシートモニターと個人デバイスとがリンク。事前に選択したコンテンツが機内エンタテイメントシステム側と同期されて、機内ではオリジナルのコンテンツを楽しめる仕組みとなっている。著作権保護のための個人デバイスでは映画などを観賞できないが、事前に見たいものを選択しておくことで機内での時間をより効率よく過ごせることができる。
機内インターネットシステムの「eXconnect」については、アンテナの展示のほか、地球儀を模したプロジェクションマッピングによる紹介が行なわれていた。この地球儀には各航空会社のネットワークや、eXconnectがカバーする衛星通信のエリアなどを表示できる。もっとも現在のカバー範囲は99%以上なので地球儀はほぼ1色に染まるが、2017年にはHTS(High Throughput Satellite)、2018年以降はさらに高速なXTS(Extreme HTS)の導入が進められることから、このカバー範囲も確認できるようになっている。
ブースでは、このeXconnectと連携して利用できる個人デバイスでの機内エンタテイメントシステムのほか、実際に機内シートモニターを使っての機内エンタテイメントシステム「eX3」のデモ、ライブテレビ映像を視聴する「eXTV」のデモを実施。eXTVはコンテンツプロバイダとして新たに「Sport24」との提携も発表され、同社のスポーツ中継を機内で楽しめるようになることを紹介した。
パナソニック・アビオニクスはこのAPEX 2016会期中に多数の発表を行なっている。機内エンタテイメントシステムでは、中国東方航空、エア・タヒチ・ヌイ、アエロメヒコ航空、ビーマン・バングラデシュ航空との契約が発表されたほか、エアバスが広帯域の衛星通信プログラムでパナソニック・アビオニクスをリードサプライヤーに選択したことなどを発表。
加えて、航空会社向けソリューションとして、機内エンタテイメントシステムや機内インターネットシステムの統合管理システム「ZeroTouch」や、航空会社向けの広告・マーケティングプラットフォーム「Captify」も発表している。