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JTBとパナソニック、外国人の旅程情報を統合管理し支援するプラットフォームの「TRM」を発表

9月1日から試験導入

2016年8月31日 発表

JTB グループ本社執行役員の古野浩樹氏と、パナソニック 役員 井戸正弘氏

 JTBとパナソニックは8月31日、訪日外国人の観光支援をするためのプラットフォームを「Traveler Relationship Management(TRM)」を開発したと発表した。外国人客が国内観光をする際に利用するサービスを統合して管理するもので、それを利用した多言語観光案内や接客支援や手荷物搬送サービスも同時に発表された。

 TRMの開発は、外国人観光客が急増するなかで大都市圏以外に地方を訪れる個人旅行が増える傾向にあり、受け入れ体制が課題となっているため。TRMでは外国人客の属性や旅程などの情報をさまざまなサービスで使えるようにし、サービス申込時の氏名や宿泊先住所などの記入作業が不要となり、言葉の壁を気にせずに利用できる。

 TRMを使ったサービスとしては「JAPAN FITTER」を同時発表、4カ国語対応の音声翻訳と定型文案内を併用し、施設スタッフと訪日外国人との直接対話をサポートする。9月1日から10月31日まで試験運用を予定し、長崎・雲仙の宿泊施設および観光案内所の10カ所、JTB協定旅館ホテル連盟インバウンド委員の宿泊施設の全国11カ所、京王プラザホテルやホテルインターコンチネンタル 東京ベイなど都内のホテル6カ所に配置する。

 また、TRMを使ったサービスはもう一つ発表された。2社に加えてヤマトホールディングスも参加して実証実験する「LUGGAGE-FREE TRAVEL」。国内における手ぶら観光を支援するサービスで、日本語で送り状を手書きすることなく、旅程計画に合わせて配送先が設定され、申し込みすることが可能。配送伝票も自動でプリントされる。

「LUGGAGE-FREE TRAVEL」の実証実験も9月1日スタート。JTBの予約管理システム「GENESIS」で実証実験対象ホテルへ宿泊する外国人旅行者を対象として、サービスを告知、提供する。申し込み者には受付用番号とバーコード付きバウチャーを発行、ホテルなどの専用端末に受付用番号やバーコードを認証させることで宿泊先などの情報がTRMを通じてヤマトグループの送り状発行システムに送信され、伝票が印刷される。手荷物の集荷や配送はヤマト運輸が行なう。実験の実施期間は9月1日~10月31日で、実施施設は都内の6ホテルと羽田空港国際線ターミナルの京急ツーリストインフォメーションセンター内で手荷物の預け入れが可能になる。

「JAPAN FITTER」の端末
音声翻訳と画面操作が同時に可能。ボキャブラリーも観光用途に特化しているのでただの翻訳機ではないという
LUGGAGE-FREE TRAVELの端末一式
画面操作で送り先が設定できる
送り状が印刷できた
左が旅行申込時に渡されるバーコード付きバウチャー。QRコードを読み込ませることで、自分の旅程など情報が引き出せる

訪日外国人客の困っていることを両社の強みで解決する

 都内で開催された発表会では、JTBはグループ本社執行役員の古野浩樹氏と、パナソニック 役員 井戸正弘氏が今回の概要を説明した。

JTB グループ本社執行役員の古野浩樹氏

 JTB グループ本社執行役員の古野浩樹氏は、訪日外国人観光客の動向として、個人旅行の比率が74.4%と全体に占める割合が高く、特に欧米からの旅行者にその傾向が強いという状況や、東京、大阪、京都の都市圏以外の地方部への旅行者の増加傾向を示し、「訪日外国人客に対して、ストレスのない対応、サービスが求められる」「将来、フランスのような観光大国になるには、早急にクリアしなければならない重要な課題」と述べた。

 また、訪日外国人客が困っていることは多数あるとしたものの、「多言語コミュニケーション、そして、大型荷物の持ち運び、まずはこの2点について両社の強みを発揮して課題解決する」とした。

「JAPAN FITTER」については、自慢の郷土料理の解説など込み入った会話の翻訳、地域の観光情報や予約の手配もできて、多言語コミュニケーションを可能するものと説明、今後は、外国人向けの「JTBサンライズツアー」の予約機能を持たせたり、予約サイトの「asoview!」を多言語で予約できるようすることに取り組むと説明した。また、設置場所についても、実験後には一気に全国に広げていくとした。

「LUGGAGE-FREE TRAVEL」についても旅行中の大型手荷物の課題を解決するもの今後、ヤマトグループと協業して、商用化を進めていくという。

2020年にJAPAN FITTERを5000カ所に配備、訪日客の5%が利用するサービスに

パナソニック 役員 井戸正弘氏

 パナソニックの井戸氏は、システムの詳細と今後の目標を説明した。パナソニックのクラウドサービスを使い、旅行前の「タビマエ」からの囲い込みを行なう共通基盤のTRMを構築する。その結果、増加する個人旅行者に対して、タビマエ、タビナカ、タビアトでつながり続けることで、旅行の満足度向上、リピーターの効果、地方への回遊へつなげていくとした。

 JAPAN FITTERはまず今年度中の商用化を目指す。井戸氏は「すでに製品としては実用化レベルにある」としており、今後は観光分野のいろいろなボキャブラリーを集めることで、より高精度化していく。対応言語も現在は4言語だが、2020年には10カ国語対応とし、クラウドで進化に対応するという。配置数は宿泊施設や観光施設、インフォメーションセンターなど5000カ所。

 LUGGAGE-FREE TRAVELも商用化を目指す。現在、大型手荷物の配送サービスは活用されているとはいえず、認知もされていない。タビマエから積極的にプロモーションし、ガイドブックやSNSも活用する。2020年に訪日外国人予想の4000万人の5%、200万人が利用するサービスに育てたいとした。

 これらの結果、TRMを2020年には最低100億円のビジネスとして展開、状況によっては倍の200億円の可能性もあるとした。