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JAL、「空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」の福岡代表選考会を開催

選抜された2名が11月の東京全国大会に出場

2016年9月29日 実施

 JAL(日本航空)グループのJALスカイ九州は、2016年11月に開催される「空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」の福岡代表を決める選考会を行なった。基本アナウンスから、天候不順時の搭乗時刻変更を伝えるアナウンス、チェックインカウンターでのサービスという3種目の接客技術を、選抜された14名のグラウンドスタッフが競い合った。日頃磨いてきた接客技術の成果を発揮し、全国大会を目指すJAL福岡空港支店スタッフの奮闘の模様をお伝えしていく。

1人1分の基本アナウンスから天候不順を想定したイレギュラーアナウンス

緊張の面もちで説明に聞き入る出場者
司会を務めたのは、2015年度の全国優勝者でもある田島由佳里氏
会場にはストップウォッチが表示されており、時間ピッタリで競技を終える出場者には大きな拍手があがる

 選考会は、2015年に全国優勝したJAL福岡空港支店の田島由佳里氏の司会でスタート。最初の競技となる基本アナウンスの内容は、事前に配布されている文言を1分以内にまとめるシンプルなもの。実際に空港を利用する際に、よく放送がかかる内容だ。日本語のアナウンスのあとに、英語で搭乗手続きを促すのだが、競技者ほぼ全員が1分ピッタリでアナウンスを終えていた。

 そもそも、この選考会は7月より社内で出場者の選考がスタートしたが、 8月には14名が決定し、終業以降に練習がはじまったとのこと。選考会に出場するスタッフのキャリアもさまざまで、多くの仲間が1カ月間、夜遅くまで練習に付き合う姿があったとのことだ。

 多くの審査員が見守るなか、声のトーンや表情など、実に多くの審査項目から総合的に評価されていく。基本・イレギュラーアナウンスと、まずは腕慣らしといったところだが、独特の緊張感が漂っており、競技を終えた参加者の表情も複雑。会場の後方には応援に駆けつけた仲間の姿も多くあった。

出場者
吉良優花氏(オペレーション部第4グループ・国際)
荒木愛氏(オペレーション部第2グループ・国内)
御園勧称氏(オペレーション部第1グループ・国内)
大庭沙友理氏(オペレーション部第4グループ・国際)
壬生恵香氏(オペレーション部第2グループ・国内)
押川佳奈氏(オペレーション部第1グループ・国内)
稲田沙友里氏(オペレーション部第2グループ・国内)
松尾夏実氏(オペレーション部第3グループ・国内)
藤木詩織氏(オペレーション部第2グループ・国内)
野村翼氏(オペレーション部第3グループ・国内)
日高汐梨氏(オペレーション部第3グループ・国内)
宮本まりあ氏(オペレーション部第3グループ・国内)
福元南美氏(オペレーション部第1グループ・国内)
牧瀬美里氏(オペレーション部第4グループ・国際)

 最初の基本アナウンスが終了後、すぐさま次の競技に移行。2番目の競技は「イレギュラーアナウンス」。選考会当日に発表された3つのケース例から参加スタッフ自身が選び、10分の持ち時間でアナウンス内容を作成し発表していく。

ケース例1:JAL〇〇便 ☓☓行き、△△時△△分発は遅延が決定。目的地が台風のため。1時間後の天候調査で、運航の可否を決定する。

ケース例2:〇〇行きの便は遅延が決定。〇〇空港の航路混雑のため、航空管制塔の指示により、出発が40分遅れる予定。新しい出発時刻は〇〇時〇〇分。そのため搭乗開始も遅れに合わせてご案内予定。

ケース例3:JAL〇〇空港行きは、〇〇空港が濃い霧のため、天候の回復を待って出発予定。そのため1時間の遅延が決定。ただし、着陸できない場合には出発地へ引き返すか、△△空港へ向かう条件付きの運航になる予定。ご了承いただき出発していただきたい。

 結果からいえば、ケース3を選択する者はおらず、3分の1がケース2を選択し、ケース1で挑戦するスタッフがほとんどだった。ただし、このコンテストは個人の日頃の業務経験が蓄積された結果が発揮される側面もあり、誰もが個性的なアナウンスで審査員を唸らせていたのが印象的だった。

いつの間にか会場は応援にきた社員でいっぱい

難関続出の最終競技では想定外の対応力が求められる

5分の持ち時間で、3組の搭乗案内を行なう最終競技

 最終競技は、複数の搭乗受付業務を行なうロールプレイ。チェックインの基本となる挨拶から座席指定、危険物確認や手荷物受託など、旅客対応力を総合的に審査。1人5分の持ち時間があるが、事前にどのような搭乗客がチェックインカウンターに来るのかは知らされていない状況で競技が始まる。

 最初は、英語しか話せないフィリピン人がカウンターにやってくる想定でスタート。すべて英語で座席指定や搭乗口の案内までをこなす。次は、福岡空港から新千歳空港へ向かおうとする旅行帰りの親子。預け荷物の中に伊万里焼の器が入っている設定で、航空機の揺れによる破損は保証しかねる旨を了承してもらい、子供が手に持っている風船を、機内に持ち込めないという説明をしていく。5歳という設定なので、当然子供は「どうして?」となってしまうが、母子に気圧の関係で破裂してしまうおそれがあるので、空気を抜いて持ち込む提案をするのだが、競技者全員がこの時点で所要時間がきてしまい、3組目に進めないというハードルの高さ。ちなみに3組目の客は若い男女のカップルだったが、どのような想定だったのかは明らかにされなかった。

 しかし、競技スタート時に前担当者が送り出す搭乗客にも、すれ違いざまに挨拶を忘れない点や、新たに並びはじめるうしろの搭乗客にも気遣いの声掛けなどを忘れない繊細さなど、随所に接客サービスのレベルの高さが見受けられた。

1組目は、英語のみで接客。便名の確認と座席の希望を聞いて発券
2組目は旅行帰りの母子。膨らんだままでは機内に持ち込めない風船の空気を抜くお願いをするところが難関。風船にはハッピーバースデーの文字が入っており、誕生日を迎えた(という設定)子供にとっては大事なおもちゃなのだ
3組目は、男女のカップル。残念ながら全員が2組目でタイムアップとなってしまったため、当ペアがどのような要望をするのかまでは確認することができなかった
真剣な表情の審査員。しかし、臨機応変に対応する出場者のアドリブに笑いがでる一幕もあった
競技風景

全国大会出場者はフレッシュなパイロット訓練生と2015年度全国優勝者の同期スタッフ

結果発表を行なうのは、日本航空株式会社 福岡空港支店 支店長の中野直人氏

 すべての競技が終わり、審査結果が集計され全国大会に出場する2名を決める審議が行なわれたが、予定より時間がかかったうえでの結果発表となった。それほど、実力が拮抗していたという証だろう。

 ようやく審査員が部屋に戻り、審査結果の発表。全国大会への2枠が発表される前に、社長賞と審査員特別賞の発表があった。社長賞は大庭沙友理氏、審査員特別賞は牧瀬美里氏が受賞。緊張から開放されたのか、涙の受賞となった。

社長賞を受賞した大庭沙友理氏
審査員特別賞は牧瀬美里氏
表彰状の授与

 いよいよ、福岡支店からの代表2名の発表となった。1人目に発表されたのは、唯一の男性スタッフとして参加した入社初年度の野村翼氏。続いては、入社10年目の荒木愛氏。

 野村氏は、一貫して声のとおりがよく、搭乗者に安心感を与える競技を終始展開していたのが選出に至った。荒木氏は、2015年度全国優勝の田島氏とも同期ということでグループ内でも刺激を受け合ったという。絶対に慌てず笑顔を絶やさない柔らかさで代表に選出された。

1人目の発表は、唯一の男性スタッフとなった野村翼氏(中央)
2人目の発表は、荒木愛氏
表彰状の授与
2015年度全国大会優勝者で、荒木氏と同期入社の田島氏も、声を詰まらせながらの司会進行
野村翼氏の受賞コメント
野村翼氏

「パイロット訓練生ということで、地上業務研修についてまわりからは“力を抜いてるんじゃないか”という見られ方もあったと思う。しかし自分は、最大限で業務にあたっている。それを証明するためにも今回のコンテストで一番を目指したいと思い参加しました。全国大会までの期間も先輩方に胸を借りて技術を磨き続けます。毎日遅くまで、練習に付き合ってくれたり応援してくれたりした先輩方にも、この場を借りて感謝いたします」

荒木愛氏の受賞コメント
荒木愛氏

「この場に推薦されることも想定してませんでした。競技については、緊張で自分で思ってなかったような動作をしてしまったり……。しかし、同期に全国優勝の田島さんと片山さんがいて、影響を多く受けた部分もあります。全国大会に選ばれたからには自分もそういう立場にたてればよいなと思います」

2016年度の全国大会出場者とこれまでの全国大会優勝者。田島由佳里氏(左から1番目)は2015年度、片山佳恵氏(右から1番目)は2013年度の全国優勝者
2013年度全国優勝の片山佳恵氏からのアドバイス

「あの2人は全然キャリアも違います。荒木さんは勤務10年目のママさんということもあって、これまでの上質な接客を、より磨いていく感じになると思います。野村さんは経験が少ないぶん、日々の対応力を向上させていくことが課題だと思います。ただ、こうして選出される実力は2名ともありますので、よいところを伸ばしていければ、と思っています」

2015年度全国優勝の田島由佳里氏からのアドバイス

「今日は緊張もあったと思いますが、そういう状態で、つい出てしまうフランクな言葉づかいをしてしまわないように、平常心を保つような競技を目指せばよい結果がでると思っています。あとは、カウンターのなかだけではなくて、自由に前に出る柔軟さでしょうか。目の前のお客さまだけがJALのお客さまではないんですよね。視野を広げて風景に溶け込むようなサービスを目指して、みんなで頑張りたいと思います」

 今回の選考会は誰が代表になってもおかしくなく、過去の全国優勝者が2名もいる「強い福岡空港支店」を証明する機会でもあった。JAL福岡発着便を利用する際には、空港でそのサービスの高さを感じていただきたいと思う。