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JAL、グランドスタッフが“おもてなし”の技を競う「空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」(本選編)
(2015/11/27 18:28)
- 2015年11月11日~12日 実施
JAL(日本航空)は11月11日と12日の2日間にわたり、国内外の空港から選ばれたグランドスタッフの接客スキルを競う「空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」を羽田空港新整備場地区にある同社第一テクニカルセンターで開催した。今回で4回目となる本コンテストでは、日本航空グループが就航している国内38空港、海外9空港から選ばれた58名が参加した。
日本航空では2016年度までの中期経営計画でJCSI(日本版顧客満足度指数)調査での顧客満足度向上を目標の1つに掲げており、それまで空港ごとにばらつきのあったサービスの均一化とレベルの底上げを目指して本コンテストを2012年より行なっている。
コンテストは「アナウンス」と「カウンターチェックイン」の2つの審査が行なわれ、11日の予選を勝ち抜いた13名が12日の本選へ駒を進めた。また、今回から初めて保安検査部門が行なわれ、選出された3組6名が参加した。本記事では12日に行なわれた本選の模様をお伝えする。
本選では、社外からゲスト審査員として、アメリカン航空の真壁元氏、帝国ホテルの室谷廣二郎氏、オリエンタルランドの南澄恵さん、早川清敬さんが招かれ、JAL社内からは植木義晴社長をはじめ執行役員らが審査員を務めた。
12日午前中に行なわれた本選のアナウンス審査は、本番前に控え室に集まった出場者にお題を発表。お題の内容は「空港の発着便混雑の影響で管制当局から出発待機を指示され、出発が30分遅れる事が決定した」という状況を想定したものだ。それぞれの出場者は、利用客に不安や不満を与えないように、的確に状況をアナウンスできるかがカギとなる。
アナウンス審査に続き、保安検査部門の審査が行なわれた。今回初めて実施された本部門は、予選審査から選出された、羽田空港のにしけい 新井規晃さん、新海真弓さん、鹿児島空港の鹿児島綜合警備保障 安藤洋平さん、有村理佐さん、新千歳空港のセノン 日向佳太さん、松尾みさきさんの3組6名が出場した。
保安検査部門の審査では、乗客役を演じたJALの教官がさまざまなトラップを用意。内容は、「長い間列に並んでようやく検査の順番がやってきて少々イライラしている様子」「手荷物のキャリーバックの中にケーキを入れているため、鞄を横にすることができない」「ポケットにカッターナイフを持っている」「携帯電話をポケットに入れたまま金属探知機を通過する」といったもの。いかに乗客にストレスを感じさせずに、航空法や手順に沿った検査を正しくできているかが問われる。
優勝した羽田空港の株式会社にしけい 新井さん、新海さんペアは、次々に出くわすイレギュラーな事態にも、冷静に笑顔で対応。真摯に乗客に説明して保安検査への理解を求めた。審査を終え、ゲスト審査員のアメリカン航空 真壁元さんは「航空会社にとってセキュリティが最大の顧客サービスと言われている。海外の空港では軍隊姿のセキュリティの警備もおり、アメリカではTSAというセキュリティチェック機構がある。その警備する側に顧客サービスというものが本当に必要なのかを考えていたが、日本人のカルチャーのなかでは“是非とも協力していただきたい”という姿勢が必要なのかと感じた」と、“おもてなしの心”を体現した保安検査に驚いている様子だった。
午後に実施されたカウンターチェックイン審査は、実際の空港カウンターを模したモックアップで行なわれた。審査では6名の教官が「搭乗手続き後に搭乗口が分からずに迷う利用客」「機内に持ち込む手荷物に、危険物と知らずにアーミーナイフを入れていたために保安検査場からカウンターへ戻ってきたビジネスマン」「初めての上司との出張で座席の指定を任されて戸惑う部下」「英語しか話せない外国人旅行客」など、さまざまなシチュエーションの乗客を演じて接客スキルを審査。制限時間は8分間だが、国際線の手続きなど時間のかかるケースもあるので、6名すべての対応ができなくても失格にはならない。乗客に寄り添った対応で、またJALを利用したいと思ってもらえるかという細やかな気配りがカギとなる。
審査の結果、福岡空港の田島由佳里さんが優勝。準優勝は成田空港の福島英峰(ひでたか)さん、審査員特別賞に福岡空港の緒方良美さんが選ばれた。
JALの植木義晴社長は「いつも感動させられる、これはコンテストだから、勝利を得た者と得ない者がいる。得られなかったものは悔しがるといい。みんなが1番を目指して、また1年頑張れ」と出場者たちねぎらった。
さらにコンテストをラグビーに例え「最後のホイッスルの瞬間に“ノーサイド”、試合が終われば右も左も敵も味方もない、みんな1つの仲間。そして“ワン・フォー・オール”。うちで言えば、1人1人がJALのために力を尽くす。そしてJALという会社はみんなを一番大切にする。また明日から、来年のこの日を目指して頑張ろう」と出場者に語りかけた。
また、植木社長は優勝した田島さんについて「すごく自然体だった。他の人が気付いていないこと、例えば別のスタッフが対応した人にも気遣いができていたり、待っている人にも“もう少々お待ちください”と声をかけたりなど、彼女だけが気付いていたことがいっぱいあった。さらに自然体だから安心感、安定感、信頼感があった。彼女はずっと努力をしてきて、努力を重ねた者だけが出す表情を持っている。それは強い」と評価した。
またグランドスタッフの理想像として「素直な心、他人を思いやれる心、このベースさえあればお客様に心は通じる。もう1度スタッフに会いたい、またJALを利用したいと思ってもらえるのは心の繋がりだと思っている」と話した。
優勝した田島さんは入社7年目「まず感謝の気持ちでいっぱい。このコンテストに臨むにあたり、自分の実力以上は出ないと思っていた。とにかくお客様に心を尽くすところを、今できる精いっぱいを体現できるように頑張った。気持ちが伝わったのかなと思う」と優勝した思いを語り、続いて「世界一お客様に選んでもらえる航空会社になるために、英語力を含め日本のおもてなしの心を体現できるようなグランドスタッフになりたい」と今後の目標を語った。
準優勝の福島さんは本選で唯一の男性出場者だった。「女性と肩をならべて勝負しなくてはいけないというプレッシャーがあった。普段と同じようにフレッシュな感じでやろうと決めていた」と話した。JAL総合職として入社した福島さんは、1年半前に成田空港に配属された。総合職は多岐にわたる仕事があるが「お客様がどういう気持ちで飛行機に乗っているのか、現場で感じ取っているのが強み、直接お客様の顔が見えない間接部門に行っても、現場で経験したことは役に立つと思う」と現場での経験の大切さを話した。
本選に出場した13名のグランドスタッフには、アルメリアの花をデザインしたバッジが授与された。アルメニアの花言葉は「おもてなし」。このバッジはJALのおもてなしの模範となるグランドスタッフの証で、過去3回の本選出場者も着用している。
JALは11月に発表されたJCSIの調査で、初めて「国際航空」の顧客満足部門で1位を獲得した。植木社長は今後の目標について「ずっと同じことを追い続けるだけ。1番目に安全運航、2番目に顧客満足。お客様に愛されなければ、航空会社は話にならないと思っている。そして3番目には財務基盤の安定。安全の面も顧客満足の面も当然投資が必要になってくる。誰かが払ってくれるものではないので、しっかりと稼いで投資し、この3つを安定させることが重要」と語った。