【イベントレポート】ファンボロー国際航空ショー2016
ボーイング、2035年までの20年間に世界の旅客機の数は2倍になると予測
次世代ボーイング 737 MAXシリーズの仕様変更も発表
2016年7月15日 20:07
- 2016年7月11日~17日(現地時間)開催
英国・ファンボロー空港で7月11日~17日(現地時間)に開催されている、「ファンボロー国際航空ショー(Farnborough International Airshow)2016」で、ボーイング(Boeing)は今後20年間の航空機市場の予測ならびに同社の新ラインアップの概要を説明するプレスカンファレンスを実施した。
冒頭、マーケティング部門のバイス・プレジデントであるランディ・ティンセス(Randy Tinseth)氏が市場概況などを説明。2010年から2015年にかけ、旅客数が6%、貨物が1.6%、エアラインの利益が960億ドルといった数字を紹介。特にエアラインの利益については、ボーイングの航空機の出荷数にも表われており、2010年で462機、2015年では762機と65%の増加となったという。
この期間のなかでも特に2015年は好調であったとし、2016年についても、旅客数6%増、貨物2~3%増、エアラインの利益400億増と、引き続きの成長を見込む。
この成長を支えるポイントとして、「新興経済圏とLCC」「リプレイス需要」「新型旅客機の新たな能力が新市場を切り拓く」という3点を挙げた。
まず最初の点について、今後20年間のGDPの成長率が、先進国の経済圏では1.8%増、20兆ドルに留まるのに対し、新興経済圏と中国は4.3%増、35兆ドルと成長の伸びしろが大きいことを挙げた。
さらに、ボーイング 737シリーズやエアバス A320シリーズに代表される単通路機(シングルアイル、ナローボディ)の出荷先としてLCCの比率が高まり、現在の27%から33%へと伸びると見ている。
2点目のリプレイス需要については、機齢が25年を超える機体が、単通路機で700機以上、複数通路機(ツインアイル、ワイドボディ)で300機以上運用されていると指摘。この買い換え需要が今後20年間で高まり、単通路機で3倍以上、複数通路機で50%増を見込んでいる。
3点目の新市場開拓は、ボーイング 787型機の実績を紹介。長距離を高い効率で運用できる787型機により、100路線以上の新たな直行便を生み出したとし、需要のある路線を開設できる能力を持った航空機への需要が高まるとした。
20年間で航空機数は2倍、4万機近くの新たな航空機が必要に
続いて、2015年~2035年にかけての市場の予測を披露した。
これによれば、GDPが20年間で2.9%増加するのに伴い、旅客数は4%増、有償旅客キロは4.8%伸びると予測。そして、世界の航空会社は3万9620機の新たな旅客機が必要になり、経済規模は5兆9300億ドルとしている。
この航空機のなかで特に数の伸びが大きいのが単通路機で、2万8140機が必要と予測。一方、ワイドボディ機は単価が高いことから市場への影響が大きく、この単通路機とワイドボディでほぼ市場規模の半分ずつを分け合う見込みだ。新たに必要となる航空機のうち、43%にあたる1万6890機はリプレイス需要で、主に北米やヨーロッパで多く使われている単通路機を見込んだもの。
一方、機体サイズと地域別に需要を見た場合、アジア圏の需要の高まりを見込んでおり、20年間でアジア圏のシェアが出荷数、市場規模ともに約40%に高まるとしている。単通路機では約80%の需要を、先述の北米、欧州、そしてアジアが占めるとした。
また、単通路型機については座席増に対する要求も強いとしている。過去10年間でも平均座席数が伸びており、LCCの成長や、フルサービスキャリアでのプレミアムクラスシートの提供といった座席仕様の広がりを理由に挙げた。このことから、ボーイング 737型機の次世代モデル「MAX」シリーズでは-800型機の後継となるMAX 8の比率がより高まるとしている。
ワイドボディ機についても、やはりアジアのシェアが40%ほどとなる見込み。航続距離の長いネットワークを構築するために導入される一方で、座席数が多いと採算が取れず、ネットワークを維持できないことになる。
ここでティンセス氏は成田空港の事例を取り上げた。1990年にシアトルから成田へボーイング 747-200型機で行ったとき、窓の外にはたくさんのボーイング 747型機が駐機していたのに対して、今年3回行ったという成田ではボーイング 777やボーイング 787が多数駐機していたという。実際、1990年には30路線以上でボーイング 747型機が使用されていたが、2016年には8路線にまで減少している。
世界的に見てもこの傾向は出ている。ボーイング 747型機やエアバス A380型機といった大型のワイドボディ機は1990年の市場シェア30%から、2015年には11%まで減少。1990年にはおよそ60社の航空会社が400路線以上を運用していたのに対して、2015年にはおよそ30社が200路線を運用する程度にまで減少したとする。
このことは、過去25年間に中型のワイドボディ機の市場が立ち上がってきたことが大きな理由であるという。25年前には長距離を飛べる大型のワイドボディ機のほかには、ボーイング 767型機やエアバス A300/A310型機といった小型のワイドボディ機しかなく、これらの小型ワイドボディ機で運航できる路線には限りがあった。一方、ボーイング 777やエアバス A340に代表される中型旅客機の存在が長距離路線で市場の競争力を高めたことから、現在は約35%を占めるまでに成長したとしている。
ボーイングのラインアップは座席数に応じて多様化
続いて説明を行なった、グローバルセールス&マーケティング部門のシニア・バイス・プレジデントであるジョン・ウォジック(John Wojick)氏は、ボーイングの将来のラインアップを紹介。
現在、ボーイング 787-10、ボーイング 737 MAXシリーズ、ボーイング 777Xの開発を進める同社だが、これらが揃うことで、ラインアップが従来よりも大幅に増え、座席数に応じて多様化する。
この理由として同氏は、顧客である航空会社が、より適切なサイズ、より適切な能力を選択できるようにするためであるとした。
このうちボーイング 737 MAXシリーズについては、顧客の要望に応じて最終仕様を変更することを発表。MAX 7型機については、主要顧客であるサウスウェスト航空、ウェストジェットの要望により、標準座席を2列、12席増やした仕様とする。
なお、開発中の各機種についての概要は別記事でお伝えする。