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富士山越しにご来光を拝む「ANA 2016年初日の出フライト」に乗ってみた

おみくじ機能装備のPepperがお出迎え。機内で初日の出プロポーズも

2016年1月1日 実施

機上から見た2016年の初日の出

 ANA(全日本空輸)は1月1日、上空から2016年の初日の出を拝む「初日の出フライト」を実施した。ANAマイレージクラブ会員限定ツアーとして11月19日に羽田空港発の「羽田コース」が、20日に中部国際空港発の「名古屋(中部)コース」がそれぞれ発売されたもので、2001年の初実施以来、2016年で16回目となる。今回はこのうち羽田コースのフライトに同乗した。

グランドスタッフとCA、そしてPepperらがお出迎え

 羽田コースは、羽田空港を出発した後、三浦半島、伊豆半島を経由して富士山の西側で待機、富士山や周辺の景色とともに初日の出を鑑賞してから、北上して那須高原を旋回し、筑波山上空を南下、さらに房総半島も縦断して再び東京湾の羽田空港に戻ってくるというルート。2015年の初日の出フライトの使用機材はボーイング 787-9型機だったが、2016年は機材スケジュールの都合からボーイング 777-200ER型機が使用されることになった。

羽田コースのルート

 旅行代金は、最高金額が窓側席を含むプレミアムコース2名分で10万円、最低金額でも窓側席を含まない普通席コース2名分で6万円。高額ながら、羽田コースは11月19日10時に発売を開始してからわずか1時間ほどで完売したという。当日は20歳代とみられるカップルや子供と一緒の家族、年輩の夫婦など幅広い乗客が搭乗し、最終的な搭乗人数は大人174名、幼児1名の計175名となった。

 初日の出フライトのために、この日は特別に朝4時30分頃から羽田空港のゲートがオープン。搭乗口に集まった乗客は、和服姿のグランドスタッフと、胸に愛媛県生まれの新品種「さくらひめ」のコサージュを身に着けたCA(客室乗務員)に迎えられ、さらにソフトバンクロボティクスの対話式人型ロボット「Pepper」2台による歓迎も受けた。

便名は「ANA2016便」
CAは胸に愛媛産の新品種「さくらひめ」のコサージュを身に着けていた

 Pepperは、通常時は1台がANAの自動手荷物預け機の前で案内役をしているが、さらに追加でもう1台を動員し2台体制となっていた。はっぴに加えCAと同じさくらひめのコサージュを身に着けていたほか、歓迎と見送りの挨拶、初日の出フライトの経路説明、おみくじの表示、一緒に記念撮影するモードなど、この日、この場だけの機能を備えており、乗客らの注目を集めていた。

Pepperと対話する着物姿のグランドスタッフ
Pepperや装飾ゲートの前には、記念撮影する乗客の列ができていた
初日の出フライトのみのために、おみじくじなどの機能を特別に用意した

 5時20分頃から便名「ANA2016便」への搭乗受付が始まると、グランドスタッフやCA、Pepperのほか、ANA 代表取締役社長 篠辺氏と同副社長 内園氏に見送られ、手渡されたお土産とともに機内へ。ほぼ予定どおりの5時35分頃に駐機場を離れ、5時49分頃に離陸した。

搭乗開始を告げるアナウンス
全日本空輸株式会社 代表取締役社長 篠辺 修氏(中央左)と同代表取締役副社長 内園幸一氏(中央右)
ゲートを通過する乗客らを見送る
手渡されたお土産はスター・ウォーズコラボのオリジナルバッグに初日の出フライト搭乗証明書付きのフォトフレーム、人形町 亀井堂の絵文字せんべい、おとそが入っていた
搭乗直後の機内。空席はほとんどない

 離陸して東京湾を右に旋回した後、三浦半島と伊豆半島の上空を横切るという予定どおりの航路を進行。離陸時に真っ暗闇だった空は徐々に白み始め、6時を過ぎた頃には東の地平線付近が濃いオレンジとブルーのグラデーションで染まっていった。ドリンクサービスと、初日の出フライト専用に開発されたおせち料理が機内食として振る舞われ、離陸から30分足らずで初日の出の鑑賞ポイントとなる富士山の西側に差し掛かった。

初日の出フライト専用のおせち料理とお品書き

 その後は富士山と南アルプスの山稜を臨む上空で楕円軌道を描いて旋回しつつ、高度1万6000フィート(約4900m)で待機。周辺には目立った大きな雲はなく、富士山やアルプスの稜線もくっきり見えていたが、房総半島上空にかかる雲がやや厚く、初日の出時刻が、当初想定されていた6時44分前後から数分遅れる見込みであると機内アナウンスで告げられた。

6時半頃の空。夜が明け始めた
富士山のシルエットが浮かび上がってきた

 とはいえ、雲は少ないため見晴らしはよく、美しいアルプスの山々も含め、初日の出鑑賞には絶好のフライト。機体が旋回しているため左右の窓から交互に富士山を眺める形となり、通路側席の乗客も立ち上がって窓側席の方へ身を乗り出す。6時30分を過ぎ、少しずつ浮かび上がってくる富士山の姿を目にして機内はざわつく。そしてついに6時48分頃、富士山越しの房総半島上空にかかる雲の背後から強いオレンジ色の光が漏れたかと思うと、やがてそれは強烈な閃光となり、富士山の背後からあふれんばかりの輝きとなってその姿を現した。

徐々に姿形がはっきりしてきた富士山
JAL機と思われる機体が同じく初日の出フライトしている姿も目にできた
南アルプスの峰も美しい
いよいよ太陽が地平線の向こうの雲から顔を見せ始めた
いったん富士山の影に隠れる
しかし次の瞬間、まばゆい閃光が
180度旋回後、反対側から朝焼けの朱色が機内を照らす
山の峰も朝焼けに照らされている
ご来光の瞬間に男性からプロポーズし、成功。さくらひめの花束はCAからプレゼントされた

 この時、機内で「おめでとう」の声が上がる。初日の出のタイミングで男性客が連れの女性客に結婚を申し込み、無事女性客が承諾してプロポーズ成功。予約時にその計画を知らされたANAは、「さくらひめ」の花束をあらかじめ用意し、CAから女性客にプレゼントするというサプライズも演出した。

 機体はその後も旋回をしばらく続け、7時10分頃に富士山周辺を離脱。いったん北上して那須高原へと向かい、その後南下して筑波山付近を通過すると、さらに房総半島を縦断して大きく右旋回、降下しながら東京湾の真ん中を飛行して、羽田空港に7時50分頃着陸した。駐機場に到着したのは8時前で、トータルで2時間半弱のフライトだった。最後にチーフパーサーからの「今年も希望に満ちあふれた1年となりますよう、お祈りしています」との機内アナウンスがあり、2016年の初日の出フライトは幕を閉じた。

すっかり姿を見せた朝焼けの中の富士山
徐々に遠ざかる
筑波山方面からの眺め
東京湾からの眺め
羽田帰着後、再び社長、副社長らのお出迎え
今回のフライトには「第3回 OMOTENASHIの達人コンテスト」ファイナリスト5人もCAとして搭乗。左から伊藤さん、チーム部門グランプリの辻尾さん、樋之口さん、フレッシャーズ層グランプリの山田さん、チーム部門グランプリの谷村さん
エプロンのグランドスタッフからも新年の挨拶
Pepperから初日の出、東京湾の眺めまで

(日沼諭史)