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ANAHDによるピーチ子会社化、ピーチの「独自性」確保を強調

バニラエアとの“兄弟ゲンカ”は“親なりの支え方”で対応

2017年2月24日 発表

Peach Aviation株式会社 代表取締役CEO 井上慎一氏(中央左)と、ANAホールディングス株式会社 代表取締役社長 片野坂真哉氏(中央右)

 ピーチ(Peach Aviation)とANAHD(ANAホールディングス)は共同で記者会見を行ない、ピーチ株式の資本構成変更により、ANAHDがピーチを連結子会社化することを発表した。

 ピーチの現在の資本構成は、ANAHDが38.7%、ファーストイースタンアビエーションホールディングスが33.3%、産業革新機構が28.0%の比率となっているが、ANAHDと、ファーストイースタンアビエーションホールディングス、産業革新機構が株主譲渡契約を締結。これによって資本構成はそれぞれ67.0%、17.9%、15.1%となり、ピーチはANAHDの連結子会社としてANAグループの一員となる。ANAHDの株式取得費用は304億円。譲渡契約に基づく株式取得は4月10日を予定している。

 記者会見では、ピーチ代表取締役CEOの井上慎一氏と、ANAHD代表取締役社長の片野坂真哉氏が登壇。

 新しい資本関係のなかで、調達力や安全面の向上といった支援体制を築きつつも、ピーチの独自性、ブランド力をこれまでどおり尊重していくとした。また、同じくANAグループのLCCであるバニラエアの合併なども現在のところ視野に入れておらず、お互い切磋琢磨して、グループとしての発展を目指すとしている。

両者代表の挨拶

 記者会見では、まず冒頭で各位が挨拶。内容はそれぞれ下記のとおり。

ピーチ代表取締役社長CEO 井上慎一氏 挨拶

Peach Aviation株式会社 代表取締役CEO 井上慎一氏

「ピーチは2012年3月の就航当初、日本ではLCCなど根付くはずがない、利用者減に悩む関西空港を拠点する会社が成功するはずがない、などとさんざんに言われてまいりました。しかし、当社は創立から3年で単年度黒字化を達成し、今ではLCCも広く認知され、関西空港は人でごった返し、過去最高の利用者が訪れております。ピーチがここまでの会社になれたのも、お客さま、大阪をはじめとする地方自治体の皆さま、そして絶対にこの会社を成功させると熱い思いで頑張ってくれた社員たちによるもの。心より感謝を申し上げます。

 今では北東アジアで最も成功したLCCと言われるに至り、2020年には現在の保有機材18機の保有機材を30機以上に増やすというチャレンジングな計画を掲げています。これを確実に実行することでインバウンド4000万人の達成、ならびに地方創生に貢献できると考えております。

 今回、ANAHDが安定株主となることで、安全推進、オペレーション面を中心に強力なサポートを受けることができるようになります。株主3社からはこれまでどおり、当社の独自性はしっかり確保するとの力強い約束をいただいており、両社のシナジーを発揮しながら、一層の拡大、発展をしていけると確信しております。

 今後もリーディングLCCとして、アジアの皆さまに笑顔をお届けする架け橋として、安定した空飛ぶ電車となるべく頑張りますので、今後ともよろしくお願いします」。

ANAHD代表取締役社長 片野坂真哉氏 挨拶

ANAホールディングス株式会社 代表取締役社長 片野坂真哉氏

「日本初のLCCであるピーチは、今や日本を代表するLCCとなっております。このピーチ躍進の原動力は、搭乗いただいたお客さま、井上CEO、そしてピーチの従業員の皆さまの類いまれなる頑張りにあると考えています。

 このたび株主3社は、2017年から2020年までをピーチの第2の創業期と考え、さらなる飛躍のためにANAグループへ連結化することとしました。これにより、フルサービスキャリアのANA、首都圏からリゾート路線を中心に運航するバニラエアとともに、グループとしてより幅広いサービスを提供してまいります。

 国内のLCCは現在10%ながら、今後ヨーロッパ並みの30%以上になっていくと考えており、ピーチが独自性にさらに磨きをかけ、成長に拍車がかかるよう、より一層支援してまいりますのでよろしくお願いします」。

質疑応答

 挨拶後は質疑応答が行なわれた。主なやりとりを紹介する。

――ピーチの子会社によるANAHD、ピーチ双方のメリットとは何か?

ANAHD 片野坂社長:ピーチの企業価値は2020年に向けてさらに高まっていくと考えている。これをグループに取り込んでいきたい。また、連結化によって、ANA、バニラエアとともにネットワークを広げることで、Win-Winの関係を築き、より多くの果実を得られると考えています。

ピーチ 井上CEO:ピーチはこれまで、持ち株会社と厳格に一定の距離を置いてきたため、孤軍奮闘してきました。しかし、LCCのマーケットシェアには大きな伸びしろがあり、競争環境も激化している。1社でやっていくつもりではあったが、やはり限界がある。機材や燃料の調達、乗員の採用、整備、運航技術のノウハウなどを一層ご提供いただき、安全面での強化も図っていけると考えています。

――ANA、バニラエアとの棲み分けはどう考えているか?

ANAHD 片野坂社長:ANAはビジネス、LCCはレジャーというようなネットワークの棲み分けは考えていない。驚いたことにピーチでは機内で高価な高級車が5台売れたという実績もあり、従来にはない特徴的なマーケティングには学ぶところが多い。こうした面でも、従来の棲み分けを強調してしまうとお客さまを取り逃してしまうことになりかねないため、今後も自由に展開していきたい。

――ピーチの大阪からの本社移転やユニークな機内アナウンスなどはなくならないのか?

ピーチ 井上CEO:独自性を尊重しながらどんどんやれという言葉をいただいております。お世話になった大阪ならびに関西からの移転はまったく考えていません。大阪弁のアナウンスなどを変える気もまったくございません。さらに発展させていきたいと考えております。

――ピーチの上場などは考えていないか?

ANAHD 片野坂社長:上場などは現時点でなにも決まったことはございません。新しい資本体制のなかで、ピーチの独自性を強調して、さらに企業価値を高めていただきたい。

――3月25日で運航廃止となる成田~新千歳便、成田~沖縄便は今回のことと関係があるか?

ピーチ 井上CEO:関係はございません。あくまでビジネスライクに考えて、より収益性の高い路線に集約させるということです。

――ユーザーにとって何が変わるか?

ピーチ 井上CEO:創業当初から空飛ぶ電車になるんだといい、いろんなチャレンジをしてきました。新しいコンセプトの航空会社としてより磨きをかけていきたいと考えている。昔、スーパーマーケットしかなかった時代にコンビニが現われた。今では大きな存在になっている。ピーチはそのコンビニになりたいと考えているので、独自性を失うことはしません。

 マイレージ、予約システム、コードシェアなど、一切変更は考えていない。海外にはこれらを親会社と共通化してしまったがゆえに、ダメになってしまったLCCもある。この考えを尊重してくれる関係として、新しい例になりたい。

――グループ内にLCCが2社になる。バニラエアとの統合などは考えていないのか?

ANAHD 片野坂社長:今はそれぞれの会社のビジネスモデル、独自性を尊重したい。バニラとピーチはしばらく切磋琢磨した方が面白いと考えている。親の権利を行使するのは当然ではあるが、兄弟がケンカしたとしても、甘やかさず親なりの支え方を考える。特定の路線が二重になっても、今のところ深刻には考えておらず、アジアに自由にネットワークを築き、競争しながらフレキシブルに成長していってほしい。

ピーチ 井上CEO:運賃を下げるために、コスト面において協業できるところは最初から探っていく。ただ、それぞれのビジネスモデルがあり、簡単にできるとも思っていないので、ケースバイケースで考えていきたい。

――将来の展望について。どの程度のシェアを目指すのか?

ピーチ 井上CEO:2015年に「アジア太平洋地域 LCCオブ・ザ・イヤー」をいただいたことで、知名度は確実に上がっている。とくに台湾、バンコクでは予想以上に高い知名度を得ていることが分かっている。この連結化が成功だったと言っていただけるよう、さらに独自性に磨きをかけて、チャレンジを続けていきたい。

ANAHD 片野坂社長:今はバニラが300億円弱、ピーチが700億円程度の市場規模。合わせて2000億円程度を目指したい。これは2020年頃と考えているが、実際の時期はこれから詰めていくところだ。LCCのシェアだけでなく、ANAもシェアを高めていくことで、3社で1兆円程度の市場規模を目指したい。