荒木麻美のパリ生活
パリでヒルデガルトの自然療法を実践。「原種のスペルト小麦」を試せるレストランとブティック
2019年7月20日 00:00
私にはグルテンに対する明らかなアレルギーなどはないのですが、いろいろ調べた結果、できるだけ小麦、正確に言うと「緑の革命」(1940年代から1960年代ごろに行なわれた、穀物の多収穫品種開発をはじめとする農業技術の革新)以降のパンコムギのグルテンを食べないようにしています。といっても夫はフランス人でパンが主食ですし、私もうどんや餃子などを食べたいです。
そこで現在は、古代小麦の一つであり、原種の(パンコムギと交配されていない)「スペルト小麦」というのを食べています。このスペルト小麦に切り替えて数年経ちますが、パンコムギを食べて眠くなる、だるくなるといったことがほぼなくなりました。逆に出先でパンコムギを食べると猛烈な眠気に襲われることが多いのには毎回ビックリします。
中世ヨーロッパ最大の賢女・ヒルデガルトが勧める原種のスペルト小麦
原種のスペルト小麦に落ちついたのには、いくつかの理由があります。まず、私が卒業したフランスの自然療法の学校(関連記事「フランスで自然療法を学ぶ」)の卒業生がその後、さらに別の学校で「ヒルデガルトの自然療法」を学んでその専門家となりました。その人に原種のスペルト小麦の以下のような特徴を説明され、これはとてもよいと思ったからです。
・タンパク質の含有量がパンコムギの平均12%に対して、原種のスペルト小麦は平均17%と高いうえに、消化しやすいタンパク質である。ミネラルやビタミン、食物繊維も豊富。
・原種のスペルト小麦に含まれるチオシアン酸塩は体内の細胞膜を強くする働きがあり、天然の抗生物質であり、抗アレルギー作用もある(※チオシアン酸塩は甲状腺ホルモンにヨウ素を取り込むのを阻害する働きがありますが、原種のスペルト小麦に含まれているのは微量なので、普通に食べるくらいの量ならば気にすることはないそうです)。
・原種のスペルト小麦の硬い皮は農薬、放射能、重金属、酸性雨に強い。この硬い皮のおかげで、栽培に化学物質を使う必要もない。
・発ガン性のあるカビ毒であるアフラトキシンを含まない。
市販されているスペルト小麦を含む古代小麦の多くはパンコムギと交配されているかもしれないそうで、パッケージを見ただけではよく分かりません。
でも、フランスではヒルデガルトの自然療法に熱心な人も多いため、専門の販売サイトがいくつかあります。ここで販売されているスペルト小麦は「原種の」と明記されていますし、価格も手ごろです。今では私のクライアントさんたちにも症状に応じて原種のスペルト小麦を勧めていますが、消化に問題のあった人からの反応は特によいです。
ちなみにグルテンフリー商品はどうなのか?とよく聞かれるのですが、栄養的には原種のスペルト小麦の方がよいですし、市販のグルテンフリー商品はいろいろな添加物が入っているものが多いうえに割高です。自分で作るにしても、プロの料理人でもない限りは原種のスペルト小麦の方が簡単に美味しくできるでしょう。
以上のことから、セリアック病(グルテンによって引き起こされる慢性の自己免疫疾患)や小麦アレルギーといったグルテン関連障害のある人以外には、原種のスペルト小麦が一番よい、という結論に至りました。
さて、そもそもヒルデガルトの自然療法って何でしょう? ヒルデガルトというのは中世ドイツに実在した修道女の名前です。正式にはヒルデガルト・フォン・ビンゲンといい、ベネディクト会系女子修道院の院長でありながら、神学者、作家、詩人、作曲家、そして薬草をはじめとするホリスティック医学にも精通しており、「中世ヨーロッパ最大の賢女」といわれています。そのヒルデガルトが勧めた食べ物のなかでも一番大切なものが原種のスペルト小麦なのですね。
原種のスペルト小麦を買うには? 食べるには?
ここまで読んで原種のスペルト小麦に興味を持ってくださった人がいたら、ぜひ行っていただきたいのは、パリ5区にある「Crêpe de la Joie(クレープ・ドゥ・ラ・ジョワ、喜びのクレープ)」という小さなオーガニックレストランです。クレープに原種のスペルト小麦粉を使っています。アニエスさんという女性が主に一人で切り盛りしており、平日は12時から15時で、土曜日は12時から17時までの営業です。
Crêpe de la Joie(クレープ・ドゥ・ラ・ジョワ)
所在地: 4 rue du Fer à Moulin, 75005 Paris
TEL: +33(0)1 47 07 84 04
Webサイト: Crêpe de la Joie(仏語)、注:ほかの言語に切り替えると、オンライン予約がうまく機能しません。
レストランのメニューは「そば粉のガレット」と「クレープ」だけ。平日ならガレット+シードルまたはコーヒーで13ユーロ(約1600円、1ユーロ=約123円換算)、ガレット+クレープ+シードルまたはコーヒーで18ユーロ(約2220円)です。具はすでに決まっている組み合わせ以外にも、好きな具材を組み合わせることもできます。
飲み物はヒルデガルトの自然療法に沿ったハーブティーが充実しており、ノンカフェインの原種のスペルト小麦のコーヒーもあります。
アニエスさんは以前ご紹介した「Grand Appétit」(関連記事「パリの老舗マクロビオティックレストラン」)で働いていたこともあるそう。「Grand Appétitに原種のスペルト小麦粉を紹介したのは私よ!」とのこと。そんなアニエスさんの作る料理には華やかさはありませんが、大好きだったGrand Appétit同様、私にはとてもほっとする料理です。
お店にはヒルデガルトの自然療法を取り入れている人、ベジタリアンまたはビーガンのお客さんが多いそうです。店内には少しですがヒルデガルトの自然療法の商品も置いてあります。
私の知る限り、パリでは2軒のお店が原種のスペルト小麦のほか、ヒルデガルトの自然療法の食材や商品を扱っているので、レストランと合わせてご紹介しますね。
まず1軒目は「Comptoir des Abbayes(コントワール・デ・アベイ)」。アベイというのは修道院の意味なのですが、主に修道院で製造された商品がたくさん並んでいるお店です。ヒルデガルトも修道女でしたから、ヒルデガルトの自然療法の商品も扱っているのでしょう。Comptoir des Abbayesで扱う商品は超ロングセラー商品も多く、夫の祖父母の家で見たことがある商品もちらほらあって懐かしかったです!
Comptoir des Abbayes(コントワール・デ・アベイ)
所在地: 23, rue des Petits Champs, 75001 Paris
TEL: +33(0)1 42 96 11 24
Webサイト: Comptoir des Abbayes(仏語)
2軒目は「Les Gourmandises de Catherine(グルマンディーズ・ドゥ・カトリーヌ)」。オーナーいわく、ヒルデガルトの自然療法の商品をパリで一番多く扱っているお店はここだそう。
Les Gourmandises de Catherineは健康だけにこだわっているお店ではなく、オーナーが実際に食べて「美味しい」と思った商品を厳選して置いています。ヒルデガルトの自然療法の商品以外にも、魅力的なチョコレートやアイスクリームなどもありました。
Les Gourmandises de Catherine(グルマンディーズ・ドゥ・カトリーヌ)
所在地: 116 rue Lecourbe, 75015 Paris
TEL: +33(0)9 82 28 10 57
Webサイト: Les Gourmandises de Catherine(仏語)
参考までに、2軒とも原種のスペルト小麦粉1kgが約5ユーロ(約615円)、乾燥パスタが500gで約7ユーロ(約860円)です。専門のWebサイトで買うともっと安く買えますが、まずはここでどんなものか試してみてはいかがでしょうか?
私の職業であるフランスの自然療法士にもいろいろなタイプがあって、サプリを積極的に使う人は多いですし、それを否定するわけではありません。でも私はできるだけ食事と運動をメインにしてサプリを必要最小限に留め、あまりお金をかけずに楽しみながら体調を管理していきたいと思っているので、ヒルデガルトの自然療法には参考になる部分がたくさんあります。
私はさまざまな食事法を組み合わせているので、ヒルデガルトの自然療法に100%沿った生活をしていませんが、これからも原種のスペルト小麦以外にも、私に合っていると思える、取り入れやすいものをいくつか取り入れた「ゆるヒルデガルト生活」をしていくつもりです。
原種のスペルト小麦をはじめ、ヒルデガルトの自然療法の商品は日本では手に入りにくいものが多いです。機会があれば今回ご紹介したレストランやお店をのぞいてみてくださいね!