荒木麻美のパリ生活

フランスで自然療法を学ぶ

自然治癒力を取り戻して未病に努める

この人がフランスの自然療法の父、ピエール=ヴァランタン・マルシェッソー氏

 プロフィールにあるとおり、私はフランスのNaturopathie(ナチュロパシー、自然療法の意)の専門学校を2015年の暮れに卒業しました。

 といっても「ところでフランスの自然療法とは?」と思われる方も多いはず。まだ日本でほとんど知られていないフランスの自然療法について、私の学校生活の話を織り交ぜつつ、簡単ではありますがご紹介したいと思います。

なにをしてくれるのか?

 フランスの自然療法では、生活全般の見直しをすることが基本です。

 特に大切なことは、優先順位から行くと、

1. 食事内容の見直し
2. 行なっている運動のチェック
3. メンタル面(特にストレス)のケア

となり、そのほか必要に応じてサプリメントやアロマ、バッチフラワーの提案、リフレクソロジー、マッサージなどといったテクニックも使いますが、クライアントは受け身ではなく、クライアント自身が能動的に生活を変えて行かなくてはなりません。自然療法士はそのお手伝いをするということになります。

 病気になってから対処療法をするのではなく、自然療法では、皆が持っている自然治癒力を引き出し、高めることで、体の不調を整えつつ、根本の原因を探し、改善していくので、未病に努めることもできます。

 なお、フランスの自然療法は西洋医学を否定しません。将来的には統合療法の一つとして、自然療法士が西洋医学と一緒に働く環境になっていくのが理想なのですが、フランスでもまだまだというところです。

 カウンセリングの内容は、自然療法士によるのですが、私の場合はクライアントのお話をうかがうのが1時間から1時間半くらいです。必要に応じて目の虹彩を見たり、脈診を取ったりもします。その後、カウンセリングの内容を元にクライアントに合った、実行できそうなプログラムを作ってお渡しします。

Naturopatheをどう選ぶ?

 フランスではNaturopathe(ナチュロパット、自然療法士の意)は国が認めた資格とはまだなっていません。ですからどの学校に行っても、または学校には行かずに実施経験を積んだ人などでも、「私は自然療法士です」と名乗ることはできます。たくさんいる自然療法士のなかで、信頼できる人からの口コミで決めるのが一番よいと思いますが、それ以外ではどこで学んだかをチェックすることもお勧めします。

 フランスではFENAHMAN(フェナマン)というフランス自然療法組合があり、そこに所属している学校の卒業生を私はお勧めします。フランスには多くの自然療法の学校があり、私はすべての学校を知っているわけではありませんし、FENAHMAN所属の学校でなくともよい学校は多くあるでしょう。でも少なくともFENAHMAN所属の学校であれば、FENAHMAN規定のカリキュラム内容と授業時間に沿ったことを学んでいるので、安心だと思います。

私が行った学校はCENATHO(セナト)といい、創立は1990年。FENAHMANに加入しています

 なお、フランスの自然療法士は国に認められた資格ではないので、カウンセリング料は国民健康保険ではカバーされません。でもフランスでは国民健康保険以外に、個人保険に入ることがほとんどなのですが、最近では代替療法をカバーするという個人保険も増えてきており、そこに自然療法が含まれることも。フランスに住んでいる方は、個人保険の内容を確認してみるとよいと思います。

ちょっと試してみたい人には?

 カウンセリングがどんな感じなのかを知るには、以下のような方法であれば無料で体験することができます。

BIOサロンに行って体験カウンセリングを受ける:自然療法の学校の生徒により、体験カウンセリングをしていることがあります(BIOサロンについての過去記事)。

BIOのチェーン店でカウンセリングを受ける:店舗内で自然療法士がミニカウンセリングをすることがあります。ホームページまたは店舗内に案内が出ています(BIOチェーンを紹介した過去記事)。

 ただし、これらはごくごく簡単なカウンセリングなので、もっと深く知りたいと思ったら、個人的に予約を取って見てもらうとよいですね。

 なお、カウンセリング料は、パリですと、70~90ユーロくらいが多いのではないかと思います。基本はフランス語ですが、英語を話せる人も多くいます。

フランスで自然療法を学ぶには?

 日本でも自然療法という言葉をよく聞くようになりました。私も最初は日本語で学べる方が楽だなと思い、日本の自然療法の学校を調べました。でもフランスの学校の方が、私の調べた限りではカリキュラムが格段に充実しており、すでにフランスに住んでいましたし、フランスで学ぶことにしました。

 パリにあるFENAHMAN所属の数校を訪問のうえ、CENATHOに決定。私のフランス語力を鑑みて、約2年間の平日コースではなく、4年間の週末コースにしました。結果的に私にはこれが大正解でした(今は4年制がなくなり、週末コースは3年制のみとなっています)。

教室の一つはこんな感じ
教室に置かれた骨格模型は、皆にオスカーと呼ばれていました
1年に1回ある、ベルギーでの夏の講習会で、マッサージの講習を受講中(C)CENATHO
講習会中に、会場付近にある植物を実際に見ながら効用などについて勉強をしているところ
同じく夏の講習会でクライアントにトレガー・アプローチという、リラクゼーションの一種をしている私。この写真を撮られたのは講習会最終日で、心身ともに疲労マックスなのが表情から分かりますか?(居眠りしているのではありません!)。夏の講習会はとにかくハードで、1週間で2kg痩せるというのが毎年のお約束でした(C)CENATHO

 週末コースに来る人は、平日は働いている人が大半です。私はたまに単発の仕事をすることはありましたが、それ以外は学校の予習・復習、テストの準備だけで、平日と学校のない週末は終わっていました。これは私がとにかくフランス語が苦手だからなのですが、それでも学校だけに集中できたのは、ほかのクラスメイトに比べてとても恵まれていたと思います。

 というのも、入学時には50人ほどいたクラスメイト(私以外は全員フランス人)は仕事や家庭との両立が難しいこともあったのか、退学したり休学したりで最後には半分に。そこからさらに卒業試験に全員が合格したわけではありませんでした。

 なお、学校の卒業試験に加えてFENAHMANの試験もあり、最後に卒業論文を出すと、やっと卒業証書をもらうことができます。私はこれまたのんびりで、卒業試験から半年後の7月にやっと提出できました! 卒業証書授与式は1年に2回あり、私は2017年の1月にもらえる予定です。

卒業論文発表会の様子。発表が終わると校長先生から卒業証書をもらえます。発表しているのはクラスメイトのクリステル。彼女はノートをまとめるのが本当に上手で、自分でどうにもならないときは、ときどきノートを貸してもらいました。横にいるのが校長先生のダニエル・キーファー氏。フランスの自然療法といえば名前の挙がる人の一人です
これが以前、息抜きにシュヴルーズに誘ってくれたサンドリンです。サンドリンも無事に卒業証書を手にしました

 入学から約5年が経ち、やっと今一息ついているところですが、これで終わりではもちろんなく、学ぶべきことはまだまだたくさん。自然療法士としての初めの一歩をやっと踏み出したところです。これからも経験を積みながら、日々精進していきたいと思っています。がんばります!

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。フランス人の夫と黒猫と暮らしています。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。