旅レポ
山口県東部の観光地や名物料理を堪能してきた(前編)
岩国市周辺の名物料理や観光地
(2016/3/23 00:05)
山口県の観光地といえば萩や下関、また名物料理といえば下関のふぐを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、山口県東部にも、魅力的な観光地や名物料理が多く存在しています。そんな山口県東部の観光地や名物料理を思いっきり堪能してきたので、その様子をレポートしていきます。前編では、山口県岩国市周辺の観光地や地元の名物料理を紹介します。
岩国最大の観光地、錦帯橋
錦帯橋は、日本三大名橋の一つとされる、日本を代表する橋です。岩国藩第3代藩主の吉川広嘉が技術者である家臣の児玉九郎右衛門に命じ、1673年に完成しました。なぜ、この地に錦帯橋が必要だったのか。それは、岩国城と、その麓にある川、錦川の地理的要因に重要なヒントがあります。
岩国城は、横山と呼ばれる山の頂に築かれています。そして、横山の麓は錦川に囲まれています。山の頂に築かれた岩国城は非常に見渡しがよく、また錦川に囲まれているために、敵に攻め込まれにくい城となっています。地理的要因を最大限に活用した、まさに要塞城だったのです。
ただ、上級武士の屋敷などは横山の麓にありましたが、下級武士の屋敷は錦川を隔てた対岸に用意されたことで、どうしても錦川を渡る橋が必要でした。ところが錦川は昔から暴れ川で、錦帯橋以前の橋は増水や濁流で流されてしまうことが多かったそうです。そこで、増水や濁流にも負けない橋として架橋されたのが錦帯橋なのです。
錦帯橋は、岩を組み合わせて作られた4つの橋台と、その橋桁を結ぶ5つのアーチ状の反り橋で構成されています。橋台は、濁流にも押し流されないように、川の流れに沿って船の舳先のような形状となっています。これによって、濁流から受ける力をいなしつつ、流木などの漂流物が引っかからないようにしています。また、錦帯橋下部の川底は、両岸まで敷石が敷き詰められています。これは、濁流で川底がえぐられて橋台が崩れることを防ぐ支えになっているそうで、これも濁流に負けない錦帯橋を支える重要な構造の一つです。
橋台は高さが6m以上あり、その上に反り橋が架けられていますが、5つある反り橋のうち中央の3つは増水した濁流に橋が流されないよう非常に特徴的な構造となっています。
錦帯橋はアーチ構造の橋ですが、木造でアーチ構造という橋はほかにほとんどない、非常にめずらしいものだそうです。そして、組木の技法を用いて、すべて直線の木材のみで構成されています。また、木造橋ですが、すべてが木で作られているわけではありません。橋を下から見ると、橋桁を構成する木材は、黒い金属製のバンド「巻金」で補強されています。また、V字型の「鞍木」と呼ばれる補強構造なども採用されています。これによって、木造橋ながら非常に強い構造となっているそうです。この構造を江戸時代当時に確立できていたという点が非常に驚きです。
建造翌年の1674年に1度流出したものの、こういった橋台や敷石、橋桁の構造などによって、補強後から276年もの間流出することがなかったのだそうです。
現在の錦帯橋は、「平成の架替」と呼ばれる2001年秋から2004年春の期間に架け替えられたものです。そして、平成の架替から20年が経過する2021年から2023年に次の架け替えが計画されているそうです。そのときには、5つある反り橋を1つずつ架け替えていくそうで、現場のすぐ横に迂回路となる橋を用意して、工事の様子を真横から見学できるようにするそうです。それも非常に楽しみですね。
また、春から秋にかけては、屋形船の遊覧船が運航されるそうです。春は岸辺に咲き誇る桜、秋は紅葉をバックに雄大な錦帯橋を船の上から堪能できます。また、夏には鵜飼いの様子を屋形船から楽しめるとのことです。特に、夏の鵜飼いの遊覧船は夜に運航されるので、漆黒のなかに鵜飼いの漁り火に照らされた錦帯橋が楽しめるそうです。今回、特別に屋形船にも乗船させてもらいましたが、あいにくの雨ながら、船から見る錦帯橋は橋の上や岸辺から見る姿とはまた違う迫力がありました。もし錦帯橋を訪れたら、タイミングが合えばぜひ遊覧船も楽しんでみてもらいたいです(事前の予約が必要)。
さらに錦帯橋を訪れたら、ぜひとも見てもらいたいのが白蛇です。白蛇は、アオダイショウの突然変異だそうで、岩国周辺にのみ生息する真っ白な蛇で、国の天然記念物にも指定されています。この白蛇を見学できる施設が、錦帯橋のそばにあります。この施設内では、数匹の白蛇が飼われています。見学時には、オスのゲンキ君とメスのつくしちゃんがいました。真っ白の身体と赤い目はとても神秘的で、一般的な蛇のような恐さは感じませんでした。また、白蛇グッズも多数販売されています。白蛇は非常にめずらしいので、蛇が苦手という人もぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
なお、錦帯橋の入橋料は大人300円、小学生150円、小学生未満は無料です。
岩国寿司に舌鼓
岩国には伝統的な郷土料理があります。それは「岩国寿司」という押し寿司です。錦帯橋周辺にも岩国寿司を食べられるお店が多数ありますが、今回は錦帯橋のほど近くにある「岩国国際観光ホテル」でいただきました。
岩国寿司は、錦糸卵や鯛の身をほぐして桜色に着色したでんぶ、椎茸、穴子、地元食材「岩国れんこん」などの食材とシャリを大きな木箱の中に5段に重ねて蓋をし、職人が蓋の上に乗って押し固めた押し寿司です。木箱は非常に大きなもので、岩国国際観光ホテルでは、1つの木枠を使って1度に150人分(1段が30人分、5段重ねで150人分)の押し寿司を作れるそうです。
岩国寿司は、岩国城初代城主の吉川広家が、家来にいついかなるときでも戦場に赴けるように渡した保存食が始まりだそうで、地元では「殿様寿司」とも呼ばれています。さっぱりとした酸味のシャリと、でんぶや野菜などの甘みの調和が素晴らしい、とても優しい印象の味がする押し寿司です。個人的には、岩国れんこんのしゃきしゃきとした食感もアクセントとなっていて、非常に美味しく感じました。
また、岩国寿司と一緒に提供されるお椀として「大平」というものがあります。鶏ガラをベースとしたおつゆに、こんにゃく、里芋、じゃがいも、人参、岩国れんこんなどの根野菜をふんだんに使った、煮物に近いお椀ものです。大平という名前は、直径が50cmほどもあるような、“大”きくて“平”たいお椀に盛られて提供されることからそう呼ばれるそうです。さっぱりとしていますが、野菜の旨みがおつゆに溶け込んでいて、こちらも非常に味わい深いです。煮物好きの筆者には、かなり好みの料理でした。
ところで、岩国寿司や大平に使われている岩国れんこんは、一般的なれんこんと違って、穴が9つあるめずらしいものだそうです。実際に穴の数を数えてみましたが、確かに9つありました。岩国れんこんは、色白でしゃきしゃきとした食感が特徴とのことですが、確かに岩国寿司や大平に入っていた岩国れんこんのしゃきしゃきとした食感は、一般的なれんこんとは違うという印象でした。
この岩国寿司と大平は、地元ではハレの日の縁起物として欠かせない料理だそうで、岩国や錦帯橋を訪れた際には最適な食事なのではないでしょうか。
岩国の老舗酒蔵「酒井酒造」を見学
岩国市には、現在5件の酒蔵があります。そのなかで老舗の酒蔵として有名なのが、銘柄「五橋」を製造している「酒井酒造」。今回の旅では、この酒井酒造を見学してきました。酒井酒造は1871年(明治4年)創業の、老舗酒蔵です。銘柄の「五橋」にピンと来る人もいるかと思いますが、5つの反り橋からなる錦帯橋から名付けられたものだそうです。
この酒井酒造の造る日本酒には、ほかにはない大きな特徴があります。それは、「軟水仕込み」。現在でこそ軟水仕込みの日本酒は多く存在しているそうですが、昔はほとんどの日本酒が硬水で仕込まれていたそうです。なぜなら、ミネラル分の多い硬水を使うと酵母が活発に活動するため、硬水の方が日本酒を造りやすいからです。それに対し、酒井酒造のある地域は錦川の中州で、錦川の伏流水が豊富に取れるそうですが、その水は超軟水です。つまり酒井酒造の日本酒は、創業当時から独自の技術をベースに軟水で仕込んでいるのです。1947年(昭和22年)の全国新酒鑑評会で1位を獲得したことで業界関係者から注目を集め、それ以降軟水仕込みを行なう酒蔵が増えていったそうです。
また、米にも大いにこだわっているそうで、仕込みに使っている米は、すべて山口県産米を使っているとのことです。山田錦やイセヒカリといった銘柄米を、契約農家で栽培してもらっています。
酒蔵見学では、日本酒の仕込みの手順を詳しく説明してもらえます。まずはじめに、米を蒸します。酒井酒造では蒸気で蒸しているそうです。今回の見学では、すでに蒸米の作業は終了していました。次に、蒸された米の一部から麹を作ります(残りの蒸米は仕込みに使います)。その後、麹と蒸米、水を合わせて仕込みとなりますが、いきなり麹と蒸米と水を合わせても発酵が進みにくいため、まず「酒母」という酒のもとを作って酵母を増やします。この酒母を作る作業も「初添」「仲添」「留添」と3段階に量を増やしながら酵母を増やしてていって仕込むそうで、この一連の作業を「三段仕込み」と呼ぶそうです。その後、大きな仕込みタンクに蒸米と水と酒母を入れて、最終的な仕込みになります。そして、仕込みの終わったもろみは搾り器で搾られて、日本酒が完成します。ちなみにその搾りかすが「酒粕」になります。
また、酒井酒造では木桶を使った仕込みも行なっています。木桶では、特別銘柄のお酒を仕込んでいるそうですが、その酒井酒造で使っている木桶は、2014年に放送されたNHKの連続テレビ小説「マッサン」でも使われたのだそうです。木桶を使った仕込みは温度管理が難しいので、非常に手間がかかるそうですが、こだわって取り組んでいるそうです。今では使われることが少なくなっているという、木桶を使った仕込みの様子を見せてもらえるのも、酒井酒造の魅力でしょう。
酒蔵見学では試飲も醍醐味と思いますが、もちろん酒井酒造の見学でも試飲させてもらえます。今回の見学では、4銘柄を試飲できました。筆者は下戸なので、日本酒の味はよく分からないのですが、すっきりとして飲みやすい印象でした。
なお、酒井酒造は酒蔵見学も受け付けています。仕込みが忙しい12月から2月にかけては見学を断ることも多いそうですが、それ以外の時期であれば、少人数なら事前に連絡を入れれば見学させてもらえるそうです。もちろん試飲もあるので、日本酒に興味のある人はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
周防大島で人気の絶品ジャムをいただく
続いて向かったのは、周防大島です。周防大島は、正式には屋代島(やしろじま)と呼びますが、地元では周防大島と呼ばれることが多いそうです。岩国市から南下した瀬戸内海に浮かぶ島です。周防大島はみかんの栽培が盛んで、山口県内で生産されるみかんのうち約80%がここ周防大島で生産されているほどです。対岸の愛媛県の影に隠れてはいますが、みかんの一大生産地なのです。
ところで、周防大島で今、全国的に注目されているスポットがあります。それが「瀬戸内ジャムズガーデン」です。周防大島で栽培されたみかんをはじめとする柑橘類やさまざまな果物を使った手作りジャムやマーマレードを販売するお店です。季節に合わせて年間でなんと140種類以上のジャムやマーマレードを作っているそうで、店頭には常時30種類ほどの製品が並んでいます。そして、そのジャムやマーマレードの美味しさに加えて、店主の独特の経歴もあって、消費者だけでなく生産者からも注目を集めているのです。
瀬戸内ジャムズガーデンでは、ジャムやマーマレードを作るには美味しい果物作りが不可欠と考え、果樹栽培も含めた生産を行なっています。実際に、周防大島に果樹農園を作り、ブルーベリーやあんず、金柑、すだいだいなどを育てているそうです。それも、食べて美味しい果物を作るのではなく、ジャムやマーマレードにして美味しい果物を作ることにこだわっているといいます。
店主の松嶋匡史さんがジャム作りを始めたきっかけがまた、とても興味深いです。松嶋さんは2001年に結婚されて、新婚旅行でパリに行ったそうです。そのとき、奥様はアクセサリー店に行くということになり、時間潰しのためにたまたまそのアクセサリー店の隣にあったコンフィチュール(ジャム)専門店に入ったところ、非常に多くのジャムが販売されていることに衝撃を受けたのだそうです。そして、日本に帰ってからもその衝撃から冷めることがなく、ジャム作りを始めてしまったとのこと。それも、趣味で終わることがなく、それまで勤めていた名古屋の会社を辞め、ジャム屋を始めるところまでいってしまったそうです。そのジャム屋こそ、この瀬戸内ジャムズガーデンです。
周防大島で瀬戸内ジャムズガーデンを始めた理由は、周防大島の温暖な気候と、柑橘植物の栽培が盛んだったこと、そして奥様が周防大島出身だったからだそうです。奥様の実家がお寺で、そのお寺の門徒さんの農家の協力を得るなどしていちじくを入手し、いちじくジャムを製造。2003年に道の駅にいちじくジャムを卸したのが始まりだったそうです。ただ、当初は、松嶋さん自身が周防大島出身ではなかったことや、都会の会社を辞めて移住してきたということもあって、地元の果物農家からあまり果物を分けてもらえなかったそうです。しかし、奥様の実家のお寺や、お寺の門徒さんの協力を得つつ徐々に打ち解けていき、現在では地元の農家に新しい果物の栽培をお願いできるようにもなって、非常に多くの製品を送り出すまでに成長したということです。
販売されているジャムやマーマレードは、どれも原料からこだわった手作りということで、その味わいは一般的なジャムやマーマレードとは大きく異なるものでした。素材の味わいがしっかり引き出され、非常に風味豊かな点が驚きでした。もちろん、えぐみはないし、甘ったるさもありません。とにかくナチュラルなジャムという印象で、パンに付けて食べるほかにも、さまざまな料理で活用できると思いました。
また、販売店の隣にはカフェが併設され、ジャムやマーマレードを使った料理やスイーツを味わえます。今回は、リンゴのジャムを使ったデザートピザをいただきましたが、リンゴの味わいがしっかりと残った、とても美味しいピザでした。
現在松島さんは、瀬戸内ジャムズガーデンで商品を作るだけではなく、周防大島全体を巻き込んだ新たな産業作り、いわゆる「6次産業」を目指しているそうです。ジャム作りを通して、農業を目指す若者の雇用や、地域の生産者にもメリットが生まれる商品開発、高付加価値商品を販売することによる賃金の確保などに取り組んでいるとのこと。こういった取り組みが評価され、2015年11月に6次産業化優良事例として、農林水産大臣賞を受賞しています。
このような取り組みもありますが、瀬戸内ジャムズガーデンで販売されているジャムやマーマレードは、わざわざ足を運んで買いに行く価値は十分にあります。公式Webサイトからの購入も可能ですが、お店にしか売っていない商品も多くあるので、周防大島を訪ねる機会があれば、ぜひとも足を運んでみてください。これまで食べたことのない、新しいジャムやマーマレードに出会えることでしょう。
周防大島のご当地鍋「みかん鍋」は見た目のインパクト以上の美味しさ
さて、冬の季節に周防大島に来たからには、絶対に外せないご当地料理があります。それは「みかん鍋」です。以前テレビで見て、鍋に丸ごとのみかんが浮かべられているという、その強烈なインパクトから、一度は食べてみたいと思っていましたが、今回機会に恵まれたので、当然食べてみることになりました。
まず最初に、みかん鍋がどういったものか紹介しておきましょう。みかん鍋は、その名のとおり、みかんを使ったご当地鍋です。ただ、そのみかんの使い方に特徴があります。普通の考えでは、みかんの絞り汁を使ったたれで食べる鍋と思うかもしれませんが、周防大島みかん鍋は、鍋の具としてみかんが使われるのです。それも、皮をむいていない丸ごとのみかんを使います。鍋の具として皮ごとのみかんがごろごろ入れられているので、見た目のインパクトは非常に強烈です。
みかん鍋は、周防大島でみかんの栽培が盛んなことから、みかんを使った新しいご当地料理として、地元でとれる魚介などの海の幸とを組み合わせて生まれた鍋です。当初は、みかんをどう使うかに苦労したそうだが、インパクトを与えるために丸ごとのみかんを浮かべることや、皮を焼いて鍋に入れることで、えぐみの原因である皮に含まれるリモネンを減らすことにつながって美味しく食べられるということから、いまの形に到達したそうです。
みかん鍋に使われるみかんは、残留農薬検査をパスした小ぶりのもので、「鍋奉行御用達」の焼き印を押してあるものだけが使われます。そして、そのみかんをオーブンで焼き、丸ごと鍋に入れます。そのほかの具材は、いわゆる海鮮鍋に近い物で、地域でとれる魚介類や定番の野菜とともに、柑橘の香りを練り込んだつみれも入れられます。また、薬味としてみかんの皮と青唐辛子を練った「みかん胡椒」も添えられます。そして、鍋の最後には、メレンゲを使った「みかん雑炊」でシメとなります。以上が、みかん鍋の作法です。
実際に食べてみたみかん鍋ですが、確かにベースは白だしを使った海鮮鍋なのですが、みかんの風味がいい具合にしみ出して、抜群の味わいです。もともと鍋料理にはポン酢など柑橘系のたれを合わせることが多いですが、みかんも柑橘系の果物で、もともと鍋との相性はわるくないということでしょう。しかも、丸ごと入れられたみかんは皮ごと食べられますし、想像以上の美味しさにびっくりしました。見た目のインパクトに反して、苦みや邪魔な味わいが一切なく、鍋の具として立派に成立していると感じました。あまりの美味しさに、みかんをおかわりしたぐらいです。
また美味しさだけではなくて、みかんを皮ごと食べることによる健康への影響も研究されているそうです。みかんの皮には、多機能ポリフェノール「糖転移ヘスペリジン」という成分が含まれていて、みかんを皮ごと食べると、血管力が高まって、生活習慣病の予防につながることが確認されているそうです。つまりみかん鍋は、美味しいだけでなく健康にもよい鍋だったのです。
テレビなどでは、変わり種の鍋料理として紹介されることの多いみかん鍋ですが、実際に食べてみると、その印象は一変します。とにかく、この美味しさはぜひ一度体験してもらいたいと感じました。市販のみかんを使ってみかん鍋のようにして食べるのは、農薬などの問題もあってお勧めできないとのことでしたが、冬の周防大島で、絶対に外せない料理と思いました。
また、周防大島には、みかん鍋と合わせて売り出されているご当地料理がもう一つあります。それは「太刀魚の鏡盛り」です。周防大島は、山口県内の太刀魚漁獲高の6割を占めているそうで、その太刀魚を美味しく、そして楽しく食べてもらうために登場したものだそうです。
見た目は、薄造りの太刀魚の刺身を丸い大皿に敷き詰めるという、どこかで見たことのあるような盛り付けです。これは、山口県の特産海産物、ふぐのふぐ刺しからヒントを得たものだそうです。ふぐは「てっぽう」と呼ばれることもあるのと、幕末維新のイメージも組み合わせて、「西のてっぽう、東の刀」というキャッチフレーズで、この太刀魚の鏡盛りを開発したといいます。
太刀魚の刺身は、銀色の皮目を落とすことなく、鏡のように大皿に敷き詰められます。そして、棒を付けたみかんを、刀を手入れするときの打粉を行なう道具に見立てて、ぽんぽんと太刀魚の刺身に軽く叩きつけてみかんの香りを移します。そして、バーナーで皮目を焼くことで、鏡から花が咲いたような見た目に変化します。この、一連の所作が太刀魚の鏡盛りの作法となっているそうです。
こちらも、みかん鍋に負けず劣らず、インパクトのあるご当地料理ですが、味わいもまた格別です。太刀魚は刺身と塩焼きが一番美味しい食べ方だそうですが、太刀魚の鏡盛りならその両方を一度に味わえる点も魅力になっているそうです。太刀魚はどちらかというと淡泊な味わいですが、炙った皮目の香ばしさとホクホクとした食感も加わって、とにかく後を引く美味しさでした。こちらも、みかん鍋同様にぜひとも味わってもらいたい逸品です。
【お詫びと訂正】初出時、冒頭の文章に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。