旅レポ
空飛ぶホテル? 豪華絢爛マハラジャ気分のエア・インディアでインドのオリッサへ
(2016/3/23 00:00)
若い頃、バックパックを背負って旅したインド。安宿に泊まり、屋台のご飯を楽しむ旅も楽しいけれど、今回は一度はやってみたかったインド豪華旅行をついに実行。空の旅からマハラジャ気分に浸れると噂のエア・インディアのエグゼクティブクラスに体験搭乗してきました。インド屈指の文化都市・オリッサ州の州都であるブバネシュワールの観光地やインド系のホテルとともにご紹介していきます。
旅のはじまりは“マハラジャシート”
一度訪ねると、なんだか中毒になる国、インド。一度はやってみたかった憧れのマハラジャ気分で豪華旅行を計画。エグゼクティブクラスでインドに飛び、ビーチリゾートも楽しめるオリッサ州に向かうことになりました。
出発当日、少しレトロなデザインがほっとするエア・インディアのボーイング 787型機の機体を眺めながら搭乗すると、インドの伝統衣装パンジャビドレスを着こなした美しい客室乗務員(CA)のみなさんがにこやかな笑顔でお出迎え。成田~デリー間には日本人の客室乗務員も搭乗していることが多いので安心です。
エグゼクティブクラスは全18席。ほかの航空会社のエグゼクティブクラス(ビジネスクラス)と比べ、ずいぶんと広々としています。どっしりとしたソファをそのまま持ってきたかのような赤とベージュの2色のシートが並んでいますが、どちらも金と白のクッションが2つ置かれていて、スタイリッシュなデザインというよりも、家のリビングでくつろいでいるかのような居心地のよさです。
シートベルトを締め、金のクッションを抱きしめていると、客室乗務員の方がシャンパンを注いでくれます。隣に「乾杯!」と言える人もなく、一人旅なのが残念ですが、それでも気分はマハラジャです。
まるで空飛ぶバーラウンジ!
離陸後、機体が安定すると、ワインとともにスモークサーモン、ターキーのハムのイクラ添え、ブラックオリーブをペーストしたカナッペが運ばれてきました。「あれ、ここどこかのホテルのバーだったっけ?」と勘違いしそうなくらい本格的に美味しいのです。
ちなみに、インドの人はベジタリアンも多く、後ろの座席のおじさんたちは、ベジタリアンメニューのカナッペを食べていました。ターキーやサーモンの代わりにズッキーニカップ入りのスパイシーフルーツサルサなどが出されています。
続いて、ピーナッツやアーモンドなどドライスナックが配られ、雑誌を乗せたワゴンもやってきます。新聞は毎日、読売。週刊誌は文春、新潮などの週刊誌のほかサライやオレンジページなども選ぶことができます。
ピーナッツを袋から出してポリポリ食べていると、ビールがほしくなります。なぜならカレー味だからです。ちらっと客室乗務員のお姉さんの方を見ると、「ビールですよね?」と微笑んで持ってきてくれました。すみません、酒飲みで。
まさかウナギを食べられるなんて
カナッペとピーナッツでうっかり空腹が満たされてしまったのですが、お楽しみの昼食の時間がやってきました。和食、洋食、インド料理、べジタリアンのいずれかが選択できるのですが、これから嫌というほどカレーを食べるので、ここでは和食を選択しました。とはいえ、インドの航空会社ですから、あまり期待はしていなかったのですが、前菜を一目見て反省しました。盛り付けが鮮やかで美しかったのです。
取材したのが秋の終わりでしたから、季節がずれていて恐縮ですが、秋の味覚が満載です。焼き栗、茄子の田楽、紅葉の生麩、つくねなど、いろどりも鮮やかで、ここが空の上ということを忘れてしまいそうです.
続いての小鉢はタラバガニの黄身和えとコブ巻き、そして春菊のおひたし。味は濃い目で食べごたえのある先ほどの前菜から、あっさりとした日本らしいメニューです。箸を手に取るも、ちょっと待て……これを食べる前に、おねだりをしなければなりません。そう、日本酒です。
「日本酒? もちろん、ありますよ!」と快く運んできてくれたのは、月桂冠の「満つる月」。クセはなく中口なので、どの料理にも合う純米酒です。まわりのインドのお客さんたちは、宗教上の理由なのか、お酒を呑む人はほとんどいません。
私一人が前菜をつまみに手酌でクイクイ呑んでいて申し訳ないような気がしましたが、インドではお酒が堂々と飲める店は少ないので、今のうちに堪能させていただきました。
そして運ばれてきたメインディッシュはなんとウナギ! 焼き魚か鶏の照り焼きかと思い込んでいたので、太っ腹な献立に驚きです。最近、ウナギは高いのに……。口に入れると臭みもなく、ほどよく弾力もあり、やや甘めのタレとよく合います。
最後にワゴンによるチーズとデザートのサービスが。チーズはロックフォール、エメンタール、ブルサン、カマンベールの4種類。どれにしようか悩んでいたら、「全部載せますね。赤ワインもどうですか?」と持ってきてくれました。エア・インディアの客室乗務員のお姉さんは、どうしてこんなに酒飲みの気持ちが……いえ、気が利くのでしょう。
お腹はいっぱいですが、デザートは別腹です。お客さんに人気があるのは、ニンジンとカシューナッツ、ミルクで作ったキールというインドのスイーツ。ニンジンの甘味とカシューナッツの香ばしさが引き立つ絶品デザートです。しかし、その隣の大きなチョコレートケーキにもびっくり。4分の1カットあるのですが、これで一人分なのだそう。
「インドの人は、このくらいペロリと食べてしまうのですか?」と思わず尋ねました。
「いえ、インドのお客さまも多すぎる、と。みなさん半分でいいとおっしゃるんですけど、せっかくですからたくさん食べていただけたら」。
残したらわるいなあと思いつつ、甘さ控えめでしっとりしているので意外とお腹に入ってしまいます。
ケーキとともに頼んだ紅茶はインドの有名ブランド「Typhoo」のもの。さすがインドの航空会社、お茶の種類が豊富です。アールグレイ、イングリッシュ、ダージリンのほか、最近、インド人気のある緑茶もセレクトされています。インドの緑茶と日本の緑茶の2種類あるそうです。私はエライチ(カルダモン)が入ったエライチチャイをお願いしました。マサラティーとは違って少し舌にピリッときますが、体が温まる気がします。
よっぽど甘いものが好きなのかと思われたのか、「こちらもどうぞ」と上品なチョコも持ってきてくれました。至れり尽くせりで夢心地の旅の始まり。こんなに快適で果たしてインドの旅を乗り切れるか心配になりました。
「フルーツもいかがですか?」とすすめてくれますが、もうお腹がいっぱいで一口も食べられません。そろそろシートを倒して寝ることにしましょう。
まるでベッドのように広いシートにぐっすり
倒す操作ボタンはこちら。イラストが分かりやすいですね。背中だけ、足元だと設定でもできますが、一番下のフルフラットのマークがついているスイッチをオン! すると足元のフットレストが上がり、背中のシートが倒れていきます。そして座席前方の荷物入れのようなボックスにピタッとくっつき、でこぼこもなく180度の水平になりました。
座り心地を優先するあまり、フルフラットにすると背中がゴツゴツしてしまうシートもありますが、これは快適! 横になってみるとまるでシングルベッドのようです。
前方のモニターの横には、小物を入れるボックスもあり、寝るときは眼鏡など起きてすぐ使うものを入れておくのに便利ですね。
毛布を二重にかけてくださり、ぐうぐうと倒れ込むようにして寝ていたら、明るい光で目が覚めました。
成田からデリーまで直行で8時間。そろそろインドが近づいてきたようです。
マスタードソースをかけたローストビーフやフルーツなどのアフタヌーンティーのあと、カップケーキも運んできてくれましたが、もうお腹がいっぱい。これは次回の楽しみとしましょう。
空飛ぶホテルのようなエア・インディアのホスピタリティ溢れるサービスはやみつきなりそうです。
美術館のようなデリーの空港
デリーの空港でまず驚いたのは、デザイン性の高さです。伝統衣装を着たインドの美男美女の写真、これは何だと思いますか? なんとトイレの入り口なのです。分かりやすいですね。入らないのに、思わず見とれてしまいました。
出国審査へと向かう通路にはたくさんの壁画や彫刻を眺めることができます。まるで美術館。現代アートのような空港は飽きることがありません。ここで国内線に乗り換え、インドの東にあるオリッサ州の州都、ブバネシュワールへと向かいます。
オリッサの魅力 州都ブバネシュワールを歩く
デリーやカルカッタ、ベナレスやアーグラーなどの観光地は日本でも有名ですが、オリッサ州と聞いてピンと来る人はあまり多くはないかもしれません。
しかし、魚介が豊富なベンガル湾に面し食が豊かで、寺院や神殿などが点在するインドでは有名な観光地です。またオデッシー・ダンスなど、オリッサ独特の踊りも知られています。州都であるブバネーシュワールは紀元前から栄えた街で、100を超えるヒンドゥー寺院があり、美しいオリッサ建築を見ることができます。
お寺を見ながら歩いていると、必ずといってよいほど市場を見かけます。日本にはない野菜に驚いたり、陽気なオリッサの売り子さんと話したり。お土産になりそうな美しい布を探して歩いても楽しいかもしれません。
ブバネシュワールの郊外にも見どころがあります。中心地から西へ約6km離れたところにある、ジャイナ教の僧院で紀元前2世紀頃から造られたウダヤギリ石窟群は見応えがあり、お勧めです。僧たちが修行した部屋が残っており、丘の上からは街の景色を一望できます。
少し南に足を延ばせば、ヒンドゥー教の寺院であり、「太陽神殿」と呼ばれるコナーラクの「スーリャ寺院」もあります。クルマで1時間から1時間半、長い参道にはたくさんの出店が出ていて、オリッサ州各地のおみやげを買うこともできます。太陽神スーリヤに捧げられた巨大な寺院の装飾は一日、歩いていても飽きることがありません。
ブバネシュワール一の高級ホテルへ
いくつもの宗教や文化を受け入れてきたオリッサ、ブバネシュワール。街中には安い宿から欧米系の5つ星ホテルまで幅広く存在します。さて、どこにしようかと探していたところ、たまたま知り合った高田馬場でインド専門の旅行代理店をされているインド人のガンジーさんに相談したら、「それなら、絶対、メイフェア・ラグーン! 欧米系のホテルにはない魅力があるよ。エステも評判いいからきれいになっておいで」とお勧めされました。
ホテルまでは、空港からクルマで20分くらい。アクセスのよさも魅力なのですが、町中にありながらゲートをくぐると別世界。自然がいっぱいでリゾート気分が味わえます。
ホテルの敷地のど真ん中に大きなラグーンがあり、そのまわりをコテージがぐるりと取り囲んでいます。どの部屋からもラグーンと揺れる木々が見え、テラスの椅子に腰かけているだけでリラックスできるのです。
日が落ちる直前、だいぶ涼しくなったころ、ラグーンのまわりを散策すると、クラッシクカーが展示されていたり、インド女性の像が微笑んでいたりと思わず立ち止まりたくなるスポットがたくさんありました。木々の間にトラの親子がくつろいでいてギョッとしましたが、これは彫刻。ずいぶんとリアルです。
最近、仕事が忙しくて肌も荒れぎみなので、奮発してガンジーさんお勧めのエステも覗いてみました。さわやかなエステシャンのみなさんが笑顔でお出迎えしてくれます。ここに勤めて9年になるというディグリさんにカープラディとダハンワントラムという2つのオイルをミックスした特製オイルで背中をマッサージしてもらえば、もう極楽、極楽。
ホテル内にはインド料理やイタリアン、中華などいくつかのレストランがありますが、朝食はラグーンを見渡せるテラスで。生野菜がたくさん取れるのがうれしいですね。インドの人は朝からたくさんの甘いものを食べる習慣があるのか、デザートも充実していました。
見るものすべてが新鮮なインドは刺激もありますが、日中、暑いなか動きすぎると体調を崩すことも。朝は早く起きて観光したら、暑くなる午後はホテルでまったりという旅のスタイルがお勧めです。
気分は王族!? マハラジャ・ラウンジを体験
楽しかったオリッサの旅も終わり、ブバネシュワールを離れる日がやってきました。国内線でデリーへ。着いたのは午後2時頃。夜便の成田発まで、エア・インディアの「マハラジャ・ラウンジ」に寄ることにしました。
2012年にリニューアルされたラウンジのエントランスをくぐると、ファーストクラスとエグゼクティブクラスで分かれています。
ファーストクラスよりももっと上、セレブやVIPのための特別ルームもあるそうです。スタッフが、「今、誰もいないから。ちらっと見せてあげるよ」と案内してくれました。小さいながらも空港の夜景が窓一面に広がる快適空間。世界各国のセレブたちはここでどんな会話をしているのでしょうか。
では、エグゼクティブクラスのラウンジへと向かいましょう。まるでホテルのラウンジのように豪華で広々しています。
うれしいのは、待ち時間が長い人のために個室のベッドルームを無料で使用できること。4室あり、予約はできないけれど、空いていればいつでも使えるそうです。
シャワールームも、エグゼクティブクラスが3室、ファーストクラスが3室、合計6室あり、アメニティも充実しています。
「ごろんと横になっていきますか?」と尋ねられたのですが、いいえ、それよりも酒! 美味しいお酒を飲みたいです。併設されているバーのバーテンダ―さんにお願いして、お勧めのワインをいろいろと選んでいただきました。
インドのマハラシュートラ州で作っているワイン「SULA」も置いているそうなので、ぜひ飲んでみていただきたいです。すっきりしてインドのスパイシーな味の食事にも合わせやすいですよ。
そのほか、オムツを替えられるソファを置いたベビールームや、大人数のグループのためのミーティングルームも。ビジネスでも使えそうです。ここに来てまで仕事はしたくないのですが。
さあ、搭乗の時刻になりました。マハラジャ・ラウンジの名にふさわしく至れり尽くせり。エア・インディアのマスコット、マハラジャ君に「また来るね」とご挨拶して楽しかったインドをあとにしました。