旅レポ

北欧フィンランドの冬を満喫する至福の5日間(その1)

本場、ラップランドで堪能するサウナ三昧の日々

元祖にして王道。本場のサウナをじっくり堪能してきました!

 冬がやってきました。北海道をはじめ北国では風景が日に日に雪景色に変わってきています。そんな冬の訪れを感じ始めた先月、11月の中旬にフィンエアーが主催するプレスツアーに参加して、冬の北欧フィンランドを訪問してきました。その名はズバリ「サウナプレスツアー」。そう、フィンランド発祥と言われ、日本でもクアハウスやホテルの大浴場などに併設されているあのサウナを本場で体験しましょう、というツアーです。

 雪景色や寒いところは大好きな筆者ですが、実は「えーっ、あの暑い密室で我慢比べみたいなことをして、よりによってその後水風呂に入っちゃうアレですか……」というのが最初の印象。ちょっぴり躊躇しつつも、以前フィンランドの首都ヘルシンキに少しだけ立ち寄った時の街の印象がすこぶるよかったこと、誰よりも先に雪国を堪能できること、その2点のみで参加を決めました。

 目的地はフィンランドでも南部に位置するヘルシンキではなく中央部~北部あたりに位置する「クーサモ(KUUSAMO)」という街。いわゆる「ラップランド」と呼ばれるエリアで、翌年の5月頃までウィンタースポーツを楽しめるところだそうです。

いざ、サウナ発祥の地フィンランドへ!

 日本からは、まず首都ヘルシンキへ向かいます。往路は約9時間30分。今回は主催者に用意していただいたビジネスクラスでの旅となりましたので、機内食を食べ、映画見て、グッスリ眠っていれば到着という疲れ知らずの旅ではありましたが、通常ヨーロッパへ出かける際は、ほぼエコノミークラスを利用している身としては、この10時間切りというのは実は絶妙な飛行時間。筆者の場合10時間を超えるフライトでは大体到着1~2時間くらい前に疲れがピークに達し、席を離れて体を伸ばしながら通路をウロウロしたくなる時間帯です。ゆえに成田~ヘルシンキっていうのは、エコノミーだと飛行時間の後半で我慢を強いられないギリギリの時間じゃないかと思います(個人差が大きい話ではありますが)。今回はビジネスクラス利用かつヘルシンキ到着後市内に1泊して翌日クーサモに向かう余裕のある行程でしたが、ヘルシンキの空港がわりとコンパクトかつシンプルな造りになっていることもあって、仮に当日乗り換えだったとしても不満のない旅だったと思います。

非常にシンプルな造りのヘルシンキ空港(ヘルシンキ・ヴァンター国際空港)は入国手続きや乗り継ぎも非常にシンプルで楽です

 ヘルシンキ到着の翌日、再び1時間15分ほど飛行機に乗ると目的地のクーサモの街。そこはもう一面雪景色の世界。ボーディングブリッジもない小さな空港に着いた飛行機からタラップで降り立つ大地はラップランド。ローカル空港らしい小さな水色の建物がまたその雰囲気を盛り上げてくれます。

 もう筆者はここからテンション高めです。宿は20kmほど北上したルカ(RUKA)というスキーリゾート。ジャンプ、クロスカントリー、ノルディック複合など、さまざまなスキー競技の世界大会が行なわれているスキーのメッカです。もちろん今回の目的はスキーではなくサウナですのでゲレンデに出ることがなかったのは言うまでもありません。

ヘルシンキから1時間15分ほどで、もうそこは雪のラップランド
沖止めされた飛行機から雪の上をトコトコと歩いてターミナルへ向かうのも風情があってなかなかいいものです
この水色の建物がクーサモの空港。北欧らしい風情のあるターミナルビルが旅行者を迎えてくれます
こちらが空港の表玄関。外側は北欧らしいシンプルかつモダンなデザイン。まわりは一面雪と森だけの世界
モミの木に囲まれた道を20kmほど北上すると宿泊地のルカ。途中トナカイと出会いました
さまざまなスキーの国際大会も行なわれるリゾート地ルカ。ここが今回の旅の拠点となります

本場のサウナ初体験

 ホテルの部屋に着くと早速部屋に立派なサウナを発見。日本人的には旅館の部屋に露天風呂が付いているような感じでしょうか。さすがサウナ発祥の地フィンランド、と関心はするものの元々あまり興味がなかったサウナだけに、使い方も正しい入り方もも分かりません。

 ここは一旦おあずけにして、夕食前にツアー参加者と一緒に市内のサウナ施設へ出かけました。ここで人生初の本場の本格的サウナ体験です。ここからサウナ漬けの3日間が始まるわけですが、率直に言って今まで筆者が体験してきたものとは似て非なるもの、いや、似てもいない全くの別物でした。

 ルカあたりはどこへ行くのも森のなかの道を延々と走らなければならない田舎。そんななかに点在するサウナ施設の多くはログハウスの一戸建てで、まず雰囲気が違います。コテージなど宿泊施設に併設されたサウナも立派なものが多く、いかにこの地の人の生活にサウナが根付いているかをうかがえます。サウナ室自体も日本でよく見る光景とは少々異なるのですが、なにより違うのが水風呂です。

 ジャグジーなどが用意されている所もありますが、今回おじゃました施設の多くは湖沿いに建てられていて、サウナ室を出たら即湖へGO! です。しかもこの時期のこの辺りの湖はすでに氷が張っている状態! 水風呂には入らず汗だけ流して終わらせてしまうような、サウナの効果すら知らない不届き者の筆者ですが、今回のツアーの目的を考えると体験しないわけにはいきません。仕方なく心の奥底でうっすらと心臓麻痺の心配をしながらも恐る恐る入ってみると不思議なことに平気です。それどころか、一度体験しちゃうとその気持ちよさが病みつきになります。なにかものすごく新しい世界を発見したような感覚ですらありました。

ルカ周辺のさまざまなサウナ施設。宿泊施設やレストランを併設しているところも多く(というよりもサウナ付き宿泊施設というのが本来の姿)、大体このような建物が訪問者を迎えてくれます。ここで着替えて室内のサウナに向かったり、別棟のサウナ棟(こちらも大体ロウグハウス)に向かったりさまざまです
こちらは母屋(写真左)とサウナ棟(写真中央、右)が離れたタイプ
サウナ施設の多くが湖畔にありますので、火照った体はこの湖で冷まします。湖の中はその冷たさが気持ちよいのですが、実はそこに行くまでの足元は苦痛を伴うほど猛烈に冷たく、ビーチサンダルのようなものがないと結構キツイです(施設で用意してあるところも多いようです)
ちなみにフィンランドの人なら誰でも湖に飛び込むというわけではないらしいです
こんなワイルドなロケーションもあります(右側の小屋がサウナ)
山頂のレストランにも立派なサウナがあります。サウナがない施設を探す方が大変なくらいどこにでもあります
山頂のレストランのサウナはジャグジー付き。物足りない人はまわりの雪原に寝転ぶのもアリです

なぜフィンランドのサウナは快適だったのか

 さて、ルカ初日から病みつきになったサウナですが、それは冬の湖に裸で入るという日本人にとって非日常的行動が面白いからでは決してありません。サウナ室で過ごす時間が極めて快適だったのが最も大きな理由のように感じます。

 サウナ室を熱した石で温め発汗を促すのは日本でも一緒なのですが、フィンランドではあらかじめ桶に用意した水を、柄杓で石にかけて水蒸気を発生させます。これが「ロウリュ」というものだそうです。もちろん同じものは日本にもあるようなのですが、どこでもこのスタイルをとっているわけではありません。このロウリュこそが筆者が気に入った最大の要因だと思います。

 十分にサウナ室が熱く乾燥した状態になった頃、石に水をかけると一瞬にして蒸気となり部屋を対流し始めます。座る場所によって顔から熱くなる場所があったり、頭の上をサーッと蒸気が通り過ぎて背中にまわり込む場所があったり色々なのですが、とにかくその熱気が気持ちよい。今まで乾燥した空気が停滞している場所でじっと我慢し、発汗することによる気持ちよさをわずかに感じていたにすぎない筆者にとっては新感覚の気持ちよさ。ロウリュによる熱気は当然湿度も含んでいて(湿気そのもの?)その熱さが実に気持ちよいのです。

 サウナ室に入ったみんなで会話を楽しみながらロウリュを繰り返し発汗を促す。これがフィンランド人のサウナへの入り方だそうですが、筆者もこのスタイルが大変気に入りました。だからついつい長居してしまい、それゆえ火照った体を湖で冷す。このサイクルができるというわけです。そしてこれを3~4回繰り返して終了です。施設によっては水を張ったジャグジーだったり、ときには雪の中を転がって体を冷やしたりさまざまですが、個人的には湖が1番気持ちよかったのです。頭のてっぺんまで潜ると顔まで冷やされ気持ちよさ倍増です。ルカ滞在期間中は夜食前にツアー参加者とみんなでサウナ。朝起きたら部屋でサウナ。このサイクルをルカ滞在中はひたすら繰り返したおかげで常に心も体もスッキリです。

サウナ=フィンランドの文化そのものと言っても差し支えないくらい、本当にどこにでもサウナがあります。写真は明るく写していますが、実際はかなり薄暗いなかでリラックスし、今回のツアーで知り合った仲間と語りながら時を過ごします。ロウリュのタイミングや入り方に特に決まりはないようですし、裸で入っても水着を着ても特に問題はないようです(今回は水着を着用)
新鮮な樺の小枝を束で体を軽く叩きます。自分で叩くのもよし、仲間と叩き合うのもよし。これが肌にとてもよいそうです。それにしてもこのサウナに積み上げられた石は見事です。この石すべてが熱源ですから、他のサウナとはスケールが違います
サウナの前後には十分な水分補給が必要ですが、ここでは隣室に甘く冷たいドリンクが用意されていました
夜仲間とサウナを楽しみ、十分な睡眠をとったら、翌朝今度は部屋でサウナです。もちろんバスタブには水を張っておきます
決して広くはありませんが会話する仲間がいないこと以外は、ほかのサウナにひけをとりません。1人でロウリュを楽しみます
朝食前に朝風呂ならぬ朝サウナ。サウナストーブの能力も十分すぎるほどパワフルです

 ルカでの初日から楽しんだサウナは、フィンランドではオーソドックスなスタイルのものですが、そのほかにも「サウナ ヨガ」やサウナ施設に併設された部屋でのサウンド・セラピーなるものも体験することができました。

インストラクターの指示に従いながらの「サウナ ヨガ」
体の硬い筆者にはなかなかキツかったものの、暑いサウナ室で硬い部分が伸ばされる柔軟体操的感覚はちょっとだけ快感
不思議な楽器の音色が眠気を誘うサウンド・セラピー
いつ寝たのか、どのくらいの時間寝たのかまったく記憶ないほど熟睡してしまいましたので実はどんなものかよく分かりません

 ただただ楽しみながら汗を流し、深い眠りに就き、またサウナを楽しむ、という筆者の日頃の仕事ではありえないような健康的な生活を送る3日間に、わずかな罪悪感を感じながらも、実に体調よくクーサモの街を後にすることができました。気持ちよく過ごした3日間でしたが、フィンランドを発ったあとで調べてみると、このサウナでの発汗というのは冷房や暖房の効いた環境で過ごすことが多く、さまざまな自然に対する調節機能を失いつつある現代人の体を健康にする効果が高いようです。疲労物質の排出、不眠症の緩和、リラックス効果、などなどいいこと尽くめのようで、帰国後の体調のよさにも納得です。

 おまけにヨーロッパのなかでは比較的日本に近い東側に位置するフィンランドでのサウナ三昧は、帰路の疲労もそれほど大きくもなく、日々激務やストレスと戦っている我が国の社会人にお勧めできるプランだと感じます。もちろん学生の方にだって快適な時間は魅力でしょう。長年社会に貢献してきた先輩方にも魅力的な場所だと思います。

 でもあえて筆者はお勧めしたい。「今日も明日も頑張っている現役真っ只中の社会人の皆さん、スケジュールを調整し、なんとか休みを確保して疲れた体も疲れた心も1度リフレッシュしにいきませんか!?」と。

高橋 学

1966年 北海道生まれ。仕事柄、国内外へ出かける機会が多く、滞在先では空いた時間に街を散歩するのが楽しみ。国内の温泉地から東南アジアの山岳地帯やジャングルまで様々なフィールドで目にした感動をお届けしたいと思っています。