旅レポ
広島・江田島(えたじま)で夏の美食を堪能してきた。さかなとオリーブオイルに瀬戸内の底力を知る旅
2025年7月29日 12:00
夏に出掛けたいスポットの筆頭といえば間違いなく“海”だ。海水浴(死語か?)をはじめ、SUPやシーカヤックのような暑いからこそ楽しめるアクティビティがたくさんあることに加え、風景としての美しさはもちろん、コンクリートジャングルな都会より気温が低く過ごしやすいのもポイントだ。ただ、日本は全周を海に囲まれてはいるものの、外海に面した場所は波が荒くなりやすかったり、離岸流が発生したりとレジャーで気軽に楽しむには少し危険度が高め。やはり陸地に囲まれたエリアの方が気軽な感じだ。
日本の代表的な内海は本州、四国、九州に囲まれた瀬戸内海。その広さは東西およそ450km、南北15~55km。面積は2万3000km2以上と広島県の約2.5倍を誇り、そこには淡路島を筆頭に大小700以上の島(外周0.1km以上)が点在している。
そのなかで4番目の大きさを誇るのが広島市内中心部の沖合いに浮かぶ江田島および能美島で、今回は夏を目前に控えたこの瀬戸内の島へのメディアツアーが開催されたので紹介したい。ちなみに割と多くの人に「えだじま」と間違われているらしいが、正しくは「えたじま」で濁らない。アラフィフの著者的には某昭和の少年漫画に出てきた塾長を思い浮かべてしまい、ついつい「えだじま」と言ってしまいそうになる。まぁ、どうでもいい話ではあるが。
この島は地図で見るとザリガニもしくはロブスターのようにも見える特徴的な形をしており、右手部分が江田島、それ以外が能美島になる。この2島はもともと離れて独立していたが、潮の流れなどにより海峡部に土砂が堆積し、ひとつながりとなったという。そんな経緯もあってか、現在では大黒神島など9つの島を含めて江田島市となっている。
本州とは倉橋島を挟み音戸大橋、早瀬大橋とふたつの橋でつながっているためクルマでの行き来が可能なほか、広島宇品(広島)港などとフェリーや高速船で島の各所が結ばれており、島内には本数は少なめとはいえ路線バスも走っているから公共交通機関でも訪れることも可能だ。その際、一番分かりやすいルートは広島駅から広島電鉄(広電)1号線に乗り広島港へ。そこからフェリーや高速船に乗り中町、三高、切串西沖、小用などの港へいたるといった感じ。
島内をバスで移動するなら各方面への便がある中町港を利用するのが便利そうだ。空路を利用なら広島空港から広島駅まで行かずとも呉を経由して小用港へいたるルートもある。バスの本数が少ないと感じるなら各港に江田島市観光協会によるレンタサイクルが用意されているので、そちらを利用するのもアリ。利用料金は1回2500円+保証料1000円、電動アシストタイプは1回3000円+保証料1000円になる。また、広島市内でレンタサイクルを借りフェリーに乗って……という手もある。各自アレンジしていただきたい。
旅客定期航路(広島県)
江田島尽くしのランチに舌鼓
ツアーの方はといえば東京から広島空港を経由してバスで江田島へ。到着すると時刻はすでにお昼を少し回ったあたり。そろそろお腹がすいてきた。
広島といえばお好み焼きあたりがB級グルメの筆頭だけども、せっかく瀬戸内海に来たのだから魚介類を楽しみたいところ。広島県では「瀬戸内さかな」として県内産の黒毛和牛「比婆牛」とともにアピールしており、ちょうどタイミングがいいことに「瀬戸内さかな プレミアム グルメフェア 2025夏編」を実施中。そこでは瀬戸内さかなを楽しめる料理店42店舗を紹介するとともに、プレゼントキャンペーンも行なっている。
瀬戸内さかな
ということで訪れたのがキャンペーン対象店にもなっている「寿司・生簀料理 割烹 大学」(広島県江田島市大柿町大原1174-2)。場所は江田島市役所のすぐ近くで、ロブスターで例えると頭としっぽの間にあるくびれたあたり。割烹で「大学」とはめずらしい名前だなと思って店主の佐々木氏に尋ねたところ、「島内には高校までしかないので大学を作った」との答え。また、「大いに学ぶ」なんて意味も込められているとか。
ランチとして用意されていたのは「文月 江田島御膳」(税別4000円)で、江田島をはじめとした瀬戸内海で獲れた旬の瀬戸内さかなを贅沢に使い先付、お椀、向付、焼き物などバラエティ豊かな会席膳に仕上げたもの。
魚だけでも鯛、鱧、カンパチ、鰆、鱚、生しらすとバラエティに富んでいるけれど、付け合わせの野菜類も県内1位の生産量を誇るきゅうりをはじめ青梗菜、甘長唐辛子などなど江田島産が使われているとか。まさに江田島を中心とした瀬戸内の恵みがぎゅっと詰め込まれているのだ。
彩りが美しい盛り付けを楽しみつつ味わってみると、シンプルながらひと手間かけた日本料理らしい内容で素材のよさが十分に引き出されており文句ナシに美味。ボリュームもあるから腹ペコおっさんも大満足だった。
ひとつ注意したいのはこのお膳、地場モノが多めとあってその日の水揚げにより内容は変化するとのこと。8月にかけての夏場は今回も提供された生しらすや鱧をはじめ鱸、小イワシなどが旬となるとか。あらかじめ内容がキッチリ決められているよりも、行ってからのお楽しみの方がサプライズ感があっていいかもしれない。
江田島産オリーブオイルの持つポテンシャルに驚く
続いて訪れたのはオリーブオイルの生産などを行なう「瀬戸内いとなみ舎」(広島県江田島市能美町中町3769-1)。
江田島市はオリーブ栽培に適した環境を持つことから官民一体となって産地化に取り組んでおり、2011年から植えられた苗木はなんと1万7000本あまり。代表を務める峰尾氏は地域おこし協力隊の栽培技術指導員として同地で活動後、2019年に起業。自社農地として1ヘクタールを管理するほか、農家や市民からの買い取りを行ない、オリーブオイルや塩水漬け(新漬け)、オリーブ茶などの生産を行なっている。
3種類生産しているオリーブオイルはすべてエキストラバージンオリーブオイルで、品種や収穫時期を変えることで違いを生み出しているという。ラインアップは甘みの強い「マイルド」、甘みと苦みをバランスした「ミディアム」、苦みと辛味の強い「ストロング」で、なかでもストロングは「ニューヨーク国際オリーブオイルコンペティション(The NYIOOC World Olive Oil Competition)」において2024年に金賞、2025年には銀賞を受賞。「日本の緑茶のような香りが特徴」と評されている。
瀬戸内いとなみ舎(オリーブラボ江田島)
ここでは生産のかたわら「オリーブラボ江田島」としてオリーブの収穫やオリーブオイルの搾油、できあがったオリーブオイルのテイスティングといった体験ツアーも実施している。収穫および搾油体験は10月ごろ、テイスティングはそれ以外の季節も行なっているが、オリーブオイルが完売となってしまったことから現在は休止中。今年も収穫時期にはツアーの募集を行なうそうなので同社サイトをチェックしていただきたい。
今回のツアーではテイスティングを体験。これは3種類のオリーブオイルと豆腐、チキン、醤油を載せたトレイが用意され、それぞれを単独、そして一緒に味わうというもの。まずはオリーブオイルのみを香り、味の順で試していく。
内容をバラしてしまうとつまらないので詳しくは書かないが、甘さや苦み、こってり感など意外にも味わいが異なることにびっくり。豆腐やチキン、醤油などに加えるとより一層違いが明確になった。最後に用意された出汁に加えてみると旨みにコクが加わってより引き立つように感じられた。オリーブオイル=イタリア料理と思い込んでいたが和食との組み合わせのよさも新鮮な驚きだった。
峰尾氏によればオリーブオイルはオレイン酸やポリフェノールが豊富なことから、日本でももっと気軽に使ってほしいとコメント。このオリーブオイルも「和食に合う」ことを意識しており、炒め物などのオイルとして使うだけでなく「お料理に“あとがけ”する“調味料”として味の変化を楽しんでほしい」と話した。
マリンレジャーも楽しみたい!
いとなみ舎をあとにするとすでに時刻は16時を回ったところ。ただ、瀬戸内まで来て海に入らないのはいかがなものか、と向かったのは能美島の西岸に位置する入鹿海岸。
ここにはオーシャンビューが楽しめるホテル「Uminos Spa&Resort(ウミノス)」(広島県江田島市沖美町是長1433-2)があり、そこをベースにマリンアクティビティ「シーカヤック」を楽しもうってワケだ。時間があまりなかったこともあり説明も早々にカヤックで海へ。
若干、潮の流れが速いと聞いたが、遠くに神社で知られる厳島を望みつつのパドリングは気分爽快。陸地より風も少し涼しく十分に楽しむことができた。サンセットビューが自慢の展望大浴場(日帰り入浴可)やラウンジもあるとのことだったが、残念ながら今回は時間切れとなってしまった。
隠れ家カフェで夕陽を見る
入鹿海岸の少し北、四郎五郎岬にある隠れ家のようなランチとカフェのお店が「Bricolage17(ブリコラージュ ディセット)」(江田島市沖美町是長 字四郎五郎1782-11)。ランチは土日祝のみで完全予約制、カフェは金土日祝の15時から日没30分後までで予約不要となっている。
今回は定休日だったためロケーションのチェックのみとなってしまったが、厳島に沈んでいく夕日の美しさは言葉を失うほど。営業日に訪れたいスポットだった。
この日の宿は……
夕陽をたっぷりと眺めたあとはこの日の宿となる「江田島荘」に向かった。“荘”なんてついていると民宿のように思えるかもしれないけれど、ホテル業界のアカデミー賞といわれる「World Luxury Hotel Awards 2024」において、「Luxury All Inclusive Hotel」部門でアジア大陸最高位、「Luxury Hot Spring」部門で世界最高位、「Luxury Small Hote」部門でアジア大陸最高位と3冠を受賞したホテルなのだ。
その魅力は……、そして広島の海の幸といえばアレがないじゃん、なんて気が付いた人は次回必見。




































































