旅レポ

羽田からANAでひとっ飛び! 身もココロも癒される山形県の庄内へ

ANA便で東京(羽田)からフライト時間は40分ほど。広大な庄内平野の向こうに雄大な鳥海山を望む

 庄内空港利用振興協議会が主催する「エアー&レール型ソロトリップ向けメディアツアー」に参加してみた。山形県の庄内地方が東京・羽田発の空路利用で利便性が高く、ソロトリップとして癒しの地であることを発信するのが目的のこのツアー。文字どおり癒しの旅となった模様をお届けしよう。

 羽田からANA便で1時間後には「おいしい庄内空港」に降りたっていた。7時5分発と早朝便だが、その分庄内に早く到着でき、ゆとりある現地プランが組める点でメリットは多い。庄内空港はANAが羽田から1日4往復しており、酒田と鶴岡の中間という立地のため、市内へのアクセスも良好だ。

 機窓からは秋田県との県境にある鳥海山、手前には広大な庄内平野が見えていた。山形県庄内地方は、海、山、里の食材に恵まれた自然の宝庫。精進料理などの伝統食に加えて地元の在来作物(古くから庄内で根づき、庄内でしか栽培されていない作物)がとても多い。

羽田~庄内空港間はANA便が1日4往復運航している
2021年に開港30周年を迎えている庄内空港。LINE公式アカウント「おいしい庄内空港ファンクラブ」では空港内で利用できるクーポンやさまざまな特典も

 まずは今回の庄内旅へのごあいさつを兼ねた参拝をするべく、羽黒山の出羽三山神社へ誘なわれた。羽黒山の参道である“一の坂”上り口の杉並木のなかに、国宝「羽黒山五重塔」がある。東北地方では最古の塔といわれており、平将門の創建と伝えられ、現在の塔は約600年前に再建されたものだという。朝の光のなかで、その荘厳な姿にいきなり魂が揺さぶられるぐらいの感動を覚えた。

羽黒山参詣道の入口に立つ赤い門の随神門(ずいしんもん)。人の世界とご神域である山とを分つ門とされている
樹齢推定1000年以上で羽黒山で最大最古の巨木「羽黒山の爺スギ」。国の天然記念物に指定されている
羽黒山参道“一の坂”上り口の杉並木のなかにある国宝「羽黒山五重塔」。東北地方では最古の塔とされる

 羽黒山レストハウスにて山形名産の玉こんにゃくをいただき、羽黒山山頂の中心に建つ出羽三山神社へと進む。太陽の光と心地よく吹き抜ける爽やかな風に日頃の喧騒を忘れていると、分厚い茅葺き屋根が特徴的な三神合祭殿が目に飛び込んできた。

 出羽三山とは羽黒山、月山(がっさん)、湯殿山の総称で、それら三神を合祭した日本随一の大社殿が「三神合祭殿(さんじんごうさいでん)」だ。茅葺は2.1mあるそうで、日本一の厚さだそうだ。中央部分が月山神社となっていて左右に湯殿山神社、出羽神社と並ぶ。現在の社殿は文政元年(1818年)に再建されたもので、正面にある鏡池は「神秘の御池」として古来より信仰を集め、三神合祭殿と合わせて庄内の人たちが大切に守ってきたものだ。

茅葺は2.1mで日本一の厚さ。三神を合祭した日本随一の大社殿が「三神合祭殿(さんじんごうさいでん)」
中央部分が月山神社となっていて左右に湯殿山神社、出羽神社と三神が並ぶ
三神合祭殿の正面にある鏡池は「神秘の御池」として古来より信仰を集めている
出羽三山神社の参事 吉住さん「地元の人々が守り抜いたこの地で、生きていくうえで大切なことを感じる旅はいかが」と優しく語りかけてくれた

 羽黒山山頂の少し手前に、羽黒山参籠所の「斎館」がある。元は羽黒山の三先達の一つ「華蔵院」で、内部には僧侶の礼拝施設が現存している。現在は修行目的ではなく一般の人も宿泊可能で、精進料理も味わうことができる。食材はすべて地元の山などで採れたもの。究極の地産地消であるだけでなく、この山々でできた作物をいただくことで、内側から身を清める意味を持つ。

 今回は山伏修行の祈祷の場として用いられた神前の間、京都からの公家をもてなした勅使の間にて、精進料理の「涼風膳」をいただいた。丹精込めて作ったという胡麻豆腐餡かけ 山独活(やまうど)添えや菊の海苔巻き、月山筍と干し柿の天ぷらなど、地場の栄養をたっぷりと含んだ究極のデトックス食だ。想像以上にボリュームもあった。

羽黒山山頂の少し手前にある参籠所の「斎館」。修行目的ではなく一般の人も宿泊可能で、精進料理も味わうことができる
元は羽黒山の三先達の一つ「華蔵院」で、内部には僧侶の礼拝施設が現存している
山伏修行の祈祷の場として用いられた神前の間、京都からの公家をもてなした勅使の間
精進料理の「涼風膳」。地場の栄養をたっぷりと含んだ究極のデトックス食だ
丹精込めて作った胡麻豆腐餡かけ 山独活(やまうど)添えや虎杖と干し柿とトマトの甘酢、茄子のばんけ味噌田楽など
雪のなかから掘り起こすという月山筍と干し柿の天ぷら、赤・青みずの炒り煮、外内島キュウリの佃煮
菊の海苔巻きは感動もの。身もココロも清められる正真正銘の精進料理。ボリュームもあって超オススメ

 続いて連れて行っていただいたのはJA鶴岡の「庄内砂丘メロン直売所」。庄内は海に面した砂丘地域でメロン栽培が盛んだ。庄内砂丘メロンの鶴姫や鶴姫レッド、アンデスメロンなどがちょうど旬を迎えていた。贈答用にも人気があるという。庄内旅初日から庄内の恵みをたくさん味わうことができ、すでに元気が出てきている。

ちょうどいまが(7月中頃~)旬だということで、おいしい庄内空港のすぐ近くにあるJA鶴岡の庄内砂丘メロン直売所に立ち寄った
庄内砂丘で育つメロンは甘さ、味ともに自慢の逸品揃い。左から鶴姫レッド、鶴姫、アンデスメロン
贈答用としても大人気の庄内砂丘メロン。食べ頃の日にちを明記したカードを同封して発送される
近くのメロン畑を見せていただいた。トンネル式というビニールの下には……
張り巡らされたネット(網目)も立派なメロンがすくすくと育っていた

 美味しいメロンで満たされたあとは、クラゲの展示種類数では世界一の「クラゲドリーム館」があるという鶴岡市立加茂水族館へ向かった。館内にはクラゲ研究所があり、庄内の海に生息しているクラゲを中心に魚類なども展示している。時を忘れて眺めていられる。クラゲドリームシアターはSNS映えする超人気スポットだ。

日本海に面した岬にある鶴岡市立加茂水族館。地元の小学生も来ていてとても楽しそうだった。人気スポットなのがうかがえる
庄内沿岸に生息する、マダイやスズキ、カンパチ、エイなど観ることができた
加茂水族館はクラゲの展示種類数で世界一。展示室「クラネタリウム」では、クラゲの動きを見ているだけで時を忘れて鑑賞できる。ライティングもとてもきれいだ
このクラゲは傘の部分に羅針盤(コンパス)のような模様があることから、コンパスジェリーと言われる。一般的にヨーロッパの大西洋沿岸で見られる
シロクラゲは光に集まる性質が強いという。スマホやカメラで夢中になって撮影していると時が経つのが早い
クラゲ研究所も併設しており、クラゲの繁殖活動も積極的に行なっている
クラゲドリームシアターはSNS映えする超人気スポット。人のシルエットから規模感が想像できるだろうか。これだけでもいく価値あり!
アザラシやアシカの飼育にも力を入れている。ゴマフアザラシと目が合った。かわいい

 この日のお宿は、湯田川温泉にある老舗「つかさや旅館」。湯田川温泉は庄内藩主酒井家の湯治場として、また出羽三山参拝の精進落としの歓楽街として約1300年前から賑わいをみせているという。そのなかでつかさや旅館は1870年創業の格式ばらない温泉宿として長年愛され続け、現当主で10代目だ。源泉かけ流しの温泉に浸かりながら、ご主人や女将さんのアットホームな笑顔に癒され、くつろぎのときが流れた。

 食事は「在来野菜」をふんだんに使用し、また日本海で水揚げされる新鮮な魚介の刺身に、ブランド肉の「山伏ポーク」など四季折々の食材の郷土料理を味わうことができる。まさに7月が旬の岩牡蠣も堪能した。そんなつかさや旅館のご主人こだわりの日本酒を存分に味わえる日本酒飲み比べセット(3種・6種・10種)が好評だ。全国でも屈指の酒どころでもある山形県だが、そのなかでも庄内地方は18もの酒蔵がある。それぞれ味わい深い日本酒ばかり。食後には心地よい眠りに落ちたことは言うまでもない。

初日の宿は湯田川温泉の老舗「つかさや旅館」へ。10代目のご主人と女将さんの優しい笑顔と朗らかな人柄に心が和んだ
槐(えんじゅ)の間に泊めていただいた。日本一の豪商「酒田本間家の宿」として古くは六代目本間光真氏は1870年から利用しているという。槐で作られた床の間と戸棚は当時のまま
「つかさや旅館」には2つの温泉風呂がある。こじんまりの湯と少し広めのゆったりの湯
四季折々の庄内ならではの地元食材をふんだんに使用して丹精込めて作られた夕食
ご主人がこだわりも持つ日本酒は飲み比べセットがお勧め。こちらはなんと10種の日本酒を味わうことができる
こちらは6種の飲み比べセット。和田来 純米吟醸 改良信交や杉勇 夏純米 生酒 出羽の里、鯉川 純米吟醸 美山錦など
漁師が素潜りで採ってくるという旬の岩牡蠣。天候によっては漁ができないときもあるため、食べられれば幸せそのもの
小鉢の充実。もずくの酢の物にバイ貝の旨煮、わらびのかつ和え
「最近黒胡麻に凝っていまして」とご主人がはにかみながら説明してくれた胡麻豆腐の餡かけ
丸茄子の揚げ出し餡。素朴な味わいだけど「つかさや旅館」の皆さんの愛がこもっている気がして、ほっこりしながらいただいた
野菜の冷やし煮物。栄養がしっかりと詰まった地物野菜は色が鮮やかなんだと気づかされた
山伏ポークの塩豚と夏野菜。噛めば噛むほど味わい深い山伏ポークの美味しさが昨日のことのように思い出される
鮮度抜群のメジマグロとスズキの刺身。すずきは塩焼きもあって大満足
深澤 明