旅レポ

山形県・庄内の癒やし旅へ。豊かな食文化と歴史にふれて、底抜けパワーを体感

「つかさや旅館」のすぐ隣にある「正面湯」。早朝から地元の方々がくつろいでいる

 山形県の庄内空港利用振興協議会が主催する「エアー&レール型ソロトリップ向けメディアツアー」に参加してきた。1日目(前回の記事)は、出羽三山神社を参拝したり、山形の地酒を味わったり、クラゲの展示種類数世界一を誇るクラゲドリーム館で癒やされたりと盛りだくさんの旅。

 2日目は、湯田川温泉の「つかさや旅館」で気持ちのいい朝を迎えた。昨晩女将から「すぐ隣の公共温泉、正面湯も朝から爽快ですよ」とオススメされていたので、朝6時にさっそく向かうことに。女将と一緒に行き、鍵を開けてもらう方式だ。なかにはすでに地元の方々が朝風呂を満喫されている。「おはようございます!」と声を掛け合い、清々しい気分になった。正真正銘の天然かけ流し。朝から極上の癒やしだ。

湯田川温泉の開湯は1300年前の和銅5年(712年)といわれ、庄内藩主の湯治場でもあった
全国屈指の新湯注入率を誇る「天然かけ流し」の湯。加水、加温、循環は一切なしだ

 お風呂でさっぱりしたあとは、つかさや旅館に戻り朝ご飯をいただいた。地元の食材の恵みを朝からしっかり身体に取り込んで、元気がみなぎる。廊下にあるハーブティーやコーヒーの心遣いも嬉しい。

 出発前に近くの「九兵衛旅館」にも立ち寄ってみた。九兵衛旅館の女将は、山形県鶴岡市出身の作家・藤沢周平の教え子ということで、よく藤沢周平が訪れたという。

「つかさや旅館」の朝食。優しくて温かい心のこもった料理が身体に沁みわたる
米どころ庄内の代表格「つや姫」は10余年の歳月をかけて誕生した今や日本が誇るブランド米
「つかさや旅館」の2階にはハーブティーやコーヒーがそっと置かれ、さりげない心配りを感じる
湯田川温泉にある「九兵衛旅館」。源泉かけ流しと手作り料理が自慢の宿だ
鶴岡市出身の作家・藤沢周平のエッセイにも「九兵衛旅館」の名が登場する
庭も眺めているだけでホッとする空間。元気に錦鯉が泳いでいた

 ツアー2日目はまず荘内神社へ。「鶴ヶ岡城」というお城の本丸御殿があったところに鎮座している。かつて庄内藩は酒井家を藩主とした250年にわたる善政が行なわれていた。その歴代藩主から初代酒井忠次公、2代酒井家次公、3代酒井忠勝公、9代酒井忠徳公の4人がここの荘内神社に御祭神として祀られている。

 最初に目を引くのは花手水だ。この時期は紫陽花の花で埋め尽くされていた。手水とは神様にお参りする際に手などを洗って清める場所だが、コロナ禍でひしゃくなどが多くの参拝客で共有となってしまう。そこでより安心して参拝してもらおうと「綺麗な花を見ることで心を清めてもらう」という意味が込められている。SNS映えすること間違いなし。多くの人がカメラやスマホで撮影をしていた。

取材日がちょうど七夕で「えんむすび七夕祭」でとても華やかだった
「鶴ヶ岡城」というお城の本丸御殿があったところに鎮座する荘内神社
庄内の初代藩主・酒井忠次公をはじめ4人が御祭神として祀られている
紫陽花の花で埋め尽くされた花手水が見事。SNS映えスポットしても人気だ

 ここで明るく元気な仲間がこのツアーに合流してくれた。山形県の庄内に移住して、ANAの客室乗務員として乗務を続けながら庄内(酒田市)のよさを開拓、そして発信し続けている「ANA SHONAI BLUE Ambassador」の2人だ。「ANA SHONAI BLUE Ambassador」としては5名で活躍している。日々精力的に発信している公式Webサイトも、ぜひチェックしていただきたい。

 取材した日はちょうど七夕で、荘内神社も七夕飾りで彩られていた。BLUE Ambassadorの2人も願いごとを書いた短冊をかけてとても嬉しそう。

庄内のよさを開拓、発信し続ける「ANA SHONAI BLUE Ambassador」の2人が合流
えんむすび七夕祭(7月1日~8月7日)に限定発行される切り絵御朱印~天の川~
切り絵御朱印~天の川~は専用の天の川クリアファイル付きだ
6月中旬~7月下旬に楽しめる「紫陽花水みくじ」。夏らしい風流を感じる

 続いて向かったのは、鶴岡駅前にある「つるおか食文化市場 FOODEVER(フーデェヴァー)」。ここは日本で初めて「ユネスコ食文化創造都市」に認定された鶴岡の食文化情報発信拠点だ。「ユネスコ食文化創造都市・鶴岡」の食を体感できる専門店やフードコート「鶴岡バル」の飲食店が併設されているほか、厳選された旬の食材や土産品が並ぶ「つるおか駅前マルシェ」も人気という。

鶴岡駅前にある「つるおか食文化市場 FOODEVER」
厳選された食材や土産品が並ぶ「つるおか駅前マルシェ」も人気
フードコート「鶴岡バル」の飲食店なども併設

 お次は「フルーツショップ青森屋」へ。山形県なのに青森屋?と不思議に思ったが、初代社長が青森県からりんごを山形県鶴岡市の地に持ってきたのがはじまりだとか。現在は3代目の社長自ら産地に赴き、厳選したフルーツを提供するとあって地元で大人気。「フルーツカフェ」も併設しているので立ち寄らない選択肢は、ない(笑)。

厳選されたフルーツを豊富に取り揃える「フルーツショップ青森屋」
庄内メロンや山形県産さくらんぼがちょうど旬を迎え、店内に甘い香りが漂う

 季節の旬のフルーツを使った名物のフルーツジュース。こちらも季節感あふれるフルーツタルトとセットでいただけば、一気に幸せな気持ちへ昇天できること間違いなし。しかも超フォトジェニックで、食べるのがもったいないくらいSNS映えする。見て、撮って、発信して、そして食べて、飲んでと何段階も楽しめる贅沢なときが流れた。BLUE Ambassadorの2人もテンションが高い。

フルーツをそのままいただくのとはまた違った魅力があるフルーツジュース。ぜひともお試しあれ!
さあ、どれをいただきますか! 迷ってしまうほど誘惑してくるフルーツタルト
白を基調とした落ち着いた店内のカフェスペース。ソロトリップを1人振り返り、次の行動を練りながら……
これでもか!とフルーツが乗ったタルトは見ているだけで幸せな気分に。カフェスペースでゆっくりと味わえる
BLUE Ambassadorの2人もまずは撮影。SNSでの発信も重要な任務。美味しく食べることも、もちろん任務(笑)
決定的瞬間をあえてそのままに。しつこいようだがこれも重要な任務だ

 続いては、庄内の暮らしや食文化を体感できる「知憩軒(ちけいけん)」へ。庄内における農家民宿レストランの先駆けといわれる店で、自家栽培の野菜や地元で採れた食材、お米を中心に素材のよさを活かしたシンプルな味付けの「いのちを繋ぐ1汁3菜と保存食」を味わえる。

庄内の暮らしや食文化を体感できる「知憩軒」
昔ながらの庄内での暮らしがリアルに想像できそうな和室
自家栽培の野菜や地元で採れた旬の食材、お米を中心に素材のよさを活かした「いのちを繋ぐ1汁3菜と保存食」
添加物ゼロの究極のデトックス食。身もココロも元気になる
冷蔵技術が未発達の時代に保存食として貴重なタンパク源だった身欠きニシン
素朴だけど絶妙な塩加減のしその実をのせたつや姫。美味しくおわかりした
BLUE Ambassadorの2人も「いのちを繋ぐ1汁3菜と保存食」を満喫

 女主人の長南光(ちょうなんみつ)さんのあたたかいお話が聞けるのも魅力の1つで、どこか懐かしい、心のふるさとに帰ってきた感覚になる。窓際で猫がまったりしている姿も、さらに心を和ませてくれた。

女主人・長南光さん。優しい語り口と笑顔に癒やされた
涼しげに寝転ぶ猫も、訪れる人の癒やしに一役買っている
宿泊も可能で12月~2月は冬季休業。庄内の冬は雪が多いという
干し柿のドライフルーツを自分へのお土産に購入。この原稿を書きながら味わっている
BLUE Ambassadorの2人と記念撮影。心からの笑顔は見ているこちらも和む

 次に立ち寄ったのは、採れたて新鮮野菜や旬のフルーツなど豊富な食材を取りそろえる「産直あぐり」。生産者の名前と栽培履歴が分かる仕組みで販売しているという。野菜やフルーツのほかにも、生花やお米、惣菜や漬物などが並び、眺めているだけでも楽しくなってくる。ふと見ると、BLUE Ambassadorの2人の手にはアイスクリームが! まさに庄内を満喫中。

採れたて新鮮野菜や旬のフルーツなど豊富な食材を販売する「産直あぐり」
仕事も人生も明るく楽しく。庄内の旅は人の心を前向きにしてくれる気がしてきた
新鮮な野菜、生花やお米、惣菜や漬物など見ているだけで楽しくなってくる

 続いては、ブルーベリーの収穫体験や食べ放題が楽しめる「鈴木農園」へ。出羽三山に囲まれた自然豊かな羽黒町にあり、広大な敷地に約1万本におよぶさまざまな品種のブルーベリーがたわわに実っている。しかも食べてビックリ。甘くてコクがあって、お世辞抜きにして超うんめ~ブルーベリーなのだ。濃厚なブルーベリージュースも身体に沁みわたった。

完熟のブルーベリーを摘んですぐ食べるという贅沢な時間
ブルーベリーの品種が複数あるので、食べ比べも楽しい
広大な敷地に約1万本のブルーベリーがたわわに実っている
私設の農園としては日本一広いブルーベリー畑を有する「鈴木農園」
出羽三山に囲まれた自然豊かなロケーションが最高。思わず深呼吸してしまう
お土産用のブルーベリーも購入できる。そのまま移動中に食べてしまうほどの美味しさ
想像を超える濃密な味わいのブルーベリージュース。園内を歩いたあとはさらに格別

 さて、庄内において忘れてならないのは「松ヶ岡開墾場」だ。明治維新後、旧庄内藩士3000人によって開墾され、桑園を作りあげたのち大蚕室を10棟を建設。その後、鶴岡に製糸工場と絹織物工場が創設され、庄内の、いや日本の繊維文化向上に多大なる貢献をした地である。

繊維文化の基盤となった「松ヶ岡開墾場」のシルクミライ館
絹産業の歴史と文化を楽しみながら学べる施設として2022年にリニューアル
養蚕から繭、製糸にいたるまでの工程などを詳しく学べる
おしゃれなシルク製品の展示・販売も豊富に取りそろえる
年季の入った機織り機での絹織り体験も可能

 この蚕による製糸産業がなくなると、桑畑も不要になる。その桑畑にブドウを植えて栽培をはじめたことが起源となり、現在松ヶ岡ではワインの生産が行なわれている。刀から鍬に、鍬からブドウに。

 2020年には「エルサンワイナリー松ヶ岡」が手掛ける「ピノ・コッリーナガーデン&ワイナリー松ヶ岡」が誕生。2017年にブドウ畑を作り、2020に初めてワインを醸造し販売を開始した。そしてこの「エルサンワイナリー松ヶ岡」と「鶴岡シルク」、「ANA SHONAI BLUE Ambassador」が連携し、歴史の新たな1ページになるようなワインを制作する「松ヶ岡ワインプロジェクト」が進行している。そのワインの名は「VestitoCielo(ベスティートシエロ)」。

ピノ・コッリーナガーデン&ワイナリー松ヶ岡
抜群のロケーションで開放感を味わえるスポットだ
ワイン製造の地として注目されている松ヶ岡
ブドウ栽培にも適した地であり、ワイン製造のポテンシャルも高い
山形・庄内発「松ヶ岡ワインプロジェクト」が進行中
見た目もオシャレな「VestitoCielo」
このスカーフもシルク製品のハギレを使用し、BLUE Ambassadorの皆さんが手作業で結び付けている

 夕食は地元・庄内浜で水揚げされた新鮮な旬の魚や野菜を使った日本料理の店「庄内ざっこ」でいただいた。おまかせコースは、海や山からの季節の贈り物といったところ。その時期に、庄内でしか味わえない逸品の数々が味わえ思わず笑顔になる。

地元庄内でとれた旬の魚や野菜を使った日本料理店「庄内ざっこ」
季節ごとの食材を使ってここでしか食べられない逸品を出してくれる
揚げ物も上品で食べやすい。コースでゆっくり語らいながら和やかな時が流れた
魚や野菜だけでなく、肉も美味しい庄内の食事
なんといっても今が旬の岩牡蠣。漁師が素潜りで採る天然はモノが違う
デザートも庄内メロンに山形のさくらんぼ。まさに地産グルメを堪能

 お腹が満たされたところで、この夜は“田んぼに浮かぶホテル”こと「SUIDEN TERRASSE(スイデンテラス)」に宿泊した。とても魅力的な“食泊施設”なのでしっかりとお伝えしたいのだが、詳細は次回に委ねよう。それにしても庄内の魅力恐るべし。語り尽くせぬ感動と癒やしを与えてくれ、大満足の2日目が終了したのであった。

この日の宿は田んぼに浮かぶ「スイデンテラス」。詳細はまた次回に
深澤 明