旅レポ
山形県・庄内を旅してリフレッシュ。美しい田園風景と神秘の泉に魅せられた
2022年8月18日 06:00
庄内空港利用振興協議会が主催する2泊3日の「エアー&レール型ソロトリップ向けメディアツアー」に参加してきた。最終日、キラキラの太陽の光を感じて目覚めたのは、前日(2日目の記事)の夜に宿泊した「SUIDEN TERRASSE(スイデンテラス)」の一室。
伸びをして深呼吸をした。こんなに気持ちのいい朝を迎えるのは、都会では経験できないだろう。田んぼに浮かぶこのホテルは世界的建築家の坂茂氏が設計を手掛け、客室によっては田園風景を眺められるデザインになっている。ほかにも天然温泉の露天風呂や今人気のサウナなど施設が充実。フィットネススペースでは日々の疲れを癒やせるし、共用棟2階には約1000冊の本が並ぶライブラリーがあり、施設内ならどの場所でも(自室でも)自由に閲覧可能だ。
この日は快晴に恵まれ、庄内平野の向こうに堂々とそびえ立つ鳥海山を望む。まずは即身仏の拝観ができる酒田市にある砂高山 海向寺へ。
即身仏とはミイラ状態の仏様のこと。庄内には6体の即身仏があり、海向寺の即仏堂には忠海上人(1755年入定)と円明海上人(1822年入定)の2体が祀られている。海向寺の即身仏は撮影不可であったが、拝観してみると何かを語りかけてくるような気持ちもなり、さらに内なる声が聞こえてくるようにも思えた。とはいえ言葉では語り尽くせない世界観なので、百聞は一見にしかず。ぜひとも足を運んでみてほしい。
続いては傘福の制作体験ができる「山王くらぶ」へ。傘福とは「暮らしを豊かに」との願いを込めた縁起物で、江戸から明治の時代にかけて大阪から北海道を結ぶ北前船が帰港した湊町酒田ならではの文化だ。山王くらぶはかつて、明治に建てられた酒田を代表する料亭で、現在は国の登録有形文化財に指定されている。
106畳ある2階の大広間では、大小さまざまな傘福が展示される「第17回港町酒田の傘福特別展」を10月31日まで開催中。傘福の制作体験では地元のお母さんたちが縫い付け方から綿の入れ方まで丁寧に教えてくれる。こうした地元の方々との交流も楽しい。近くには江戸時代から続いた料亭をリノベーションした「舞娘茶屋 相馬樓」があり、舞娘の踊りや食事を楽しめる。
次に訪れたのは、米どころ庄内のシンボルともいえる「山居倉庫」。明治26年(1893年)に建てられた米保管倉庫で、白壁の土蔵作造り9棟からなる倉庫の米の収容能力は10万俵(1万800トン)といわれている。
夏の高温防止のために植えられたケヤキ並木は樹齢150年以上で、フォトスポットや散策路として人気がある。実際に歩いてみると、木陰で涼しく夏でも爽やかな散歩が楽しめた。内部の湿気防止のために二重屋根になっており、自然を利用した先人の知恵が生きた低温倉庫は農業倉庫として使用されていた。建物の一部には酒田市観光物産館「酒田夢の倶楽」があり、お土産物の豊富さに驚かされた。
ランチは酒田駅前交流拠点施設「ミライニ」にある、フランス風郷土料理「ル・ポットフー」へ。ここでは“食の都庄内”を満喫できるランチコースがオススメ。
メイン料理はシェフおまかせの魚料理、肉料理、山形牛ハンバーグステーキからチョイスでき、庄内野菜とシェフ手作りオードブル、旬の野菜の濃厚ポタージュスープ、シェフおすすめデザート、パン、コーヒー付き。ディナーではコースやアラカルトなどのメニューも豊富とあって、地元でも人気がある。
途中、国道7号線沿いにある「道の駅 鳥海ふらっと(遊佐町)」に立ち寄った。季節柄、天然の岩牡蠣をその場で剥いてくれて食べられるという。自分で岩牡蠣を選んで購入、剥き場へ持っていてその場で食べられる状態にしてくれる。ふらっと立ち寄ってこのクオリティ。庄内恐るべし、をここでも体感した。
さて次に向かったのは、庄内エリア屈指の映えスポットとして知られる遊佐町「丸池様」。神秘の泉といわれ、水源は湧水のみ。直径約20m、水深は3.5mほどで、澄み渡ったエメラルドグリーンが美しい。まるで絵画の世界へ自分が入り込んだかのような錯覚さえ覚える。太陽の光の加減で水面の表情が変わりとても神秘的。池そのものがほとりにある「丸池神社」の御神体とされており、手付かずの社叢も残っている。
近くを流れる牛渡川は100%が湧水で、水は冷たくどこまでも透明だ。秋には鮭が遡上するという。川沿いに多くのトンボが飛び交い、カエルもあちこちに。「日本の夏ってこういうイメージだよね」という言葉が自然と出てきてしまった。
ここで庄内とはお別れし、秋田県にかほ市象潟町にある「元滝伏流水」へ向かった。駐車場から750mほど歩くと、途中から空気がひんやりしてくるのがよく分かる。滝壺の周辺はさらに天然クーラーよろしく、まるで別世界。清涼感抜群だ。「元滝伏流水」は約10万年前に流れ出た鳥海山の溶岩の末端崖から流れ落ちる湧水の滝で、水温は1年を通じてほぼ10℃とのこと。
伏流の水源である「元滝」はこの滝よりも200mほど上流にあるそうだが、崖崩れが起きており現在は立ち入り禁止となっている。先ほどいただいた岩牡蠣も、この鳥海山からの伏流水で育っており、風味のよさの秘訣でもある。
ラストに見学へ訪れたのは、日本海や鳥海山の絶景を満喫しながらモンゴル遊牧民の移動式住居「ゲル」に宿泊できるグランピング施設「象潟モンゴルヴィレッジ バイガル」。昨今のブームとなっているグランピング。日常とは違う異空間かつ異文化に触れながら、アウトドアを気軽に体験できるスポットとして人気だ。
目の前には象潟海水浴場があり、ゲストハウスにはトイレとシャワーを完備。海の見えるレストランではグリル料理を味わえる。ゲルは全13棟あり、直径6m、高さ約2.8mで最大5名まで宿泊できる。ベッド、テレビ、冷蔵庫、エアコン、無料Wi-Fiも完備しており、ワーケーションにも利用可能だ。
山形県の庄内地方と秋田県にかほ市を満喫し、2泊3日にわたってお届けしてきた「エアー&レール型ソロトリップ向けメディアツアー」もこれにて終了。名残惜しいが筆者も東京へ帰らねばならない。
帰路は象潟駅から「特急いなほ号」に乗って新潟駅へ。途中、村上の手前で日没を迎えた。新潟駅では到着ホームのすぐ隣に新幹線「とき号」が待機しており、乗り継ぎもスムーズ。大満足の3日間だった。
最後に正直な感想を。「庄内」と聞いて一体どんな土地で、どんな体験ができるのか、これまでは何もイメージできてなかった。さらにいえば、東京から近いとはいえ、旅の目的地として候補にも挙がらなかったのがホンネだ。しかしながら、これほど魅力あふれる土地だと思い知らされる感覚を味わえた。
羽田空港から1時間以内のフライトで到着する“近さ”に加え、豊かな自然と豊富な、いや、豊富すぎる食材の宝庫。そして、アニメで描かれる“日本の夏”のような理想のふるさとがそこにはあった。この記事をきっかけに1人でも多くの方が「庄内に行ってみようかな」と思っていただければ幸いだし、自信を持って「庄内へ行ってみて!」と声を大にしてオススメしたい。