旅レポ

開業前の西九州新幹線 長崎駅ホームを見てきた! 変化のただなかにある長崎市を旅する

2022年秋開業の西九州新幹線・長崎駅新幹線ホームとレール

 長崎県と長崎県観光連盟は、「100年に一度の変化期にある長崎市を巡る旅」として、2022年秋開業の西九州新幹線・長崎駅新幹線ホームと、変わりつつある市内の新名所、文化的な見どころをメディア向けに公開した。

 同市の最大のトピックといえば、長崎県長崎駅と佐賀県武雄温泉駅を結ぶ西九州新幹線の開業。対面乗り換え方式の導入により、長崎~博多間の所要時間が最速で約30分ほど短縮する。今回、長崎らしさを散りばめたコンコースデザインと、長崎港を臨む開放的なホームを見ることができた。

変わりつつある長崎。各空港や港の拡充に新名所のオープンなどが目白押し

 長崎県 新幹線対策課長の峰松茂泰氏は、「県内全体で変化が起きている」として、IRの推進から長崎空港の機能拡充、長崎港と佐世保港の国際クルーズ船の受け入れ機能の拡大、さらに雲仙エリアの長期滞在型ホテルのリニューアルや平戸城の城泊の開始などを例に挙げた。

 その変化のなかで2022年秋に長崎~武雄温泉(約66km)の区間を走る「西九州新幹線」が開業。新幹線と在来線特急の対面乗り換えで利便性の向上が期待されており、車両に関してもN700Sを導入し、特急「かもめ」の名前を継承する。

 開業に合わせて、県内に「新大村駅」「諫早駅」を新設。新大村駅周辺は桜の名所や「大村寿司」が有名で、大村純伊の城跡もあり、観光資源が豊富。駅を中心とした街づくりも進めるという。諫早駅は、高架駅ではなく地上駅であることがポイントで、名物「いさはや楽焼きうなぎ」やコスモスの名所があり、雲仙温泉へのアクセスもよいとアピールした。

 一番変化が大きいのは西九州新幹線の発着する「長崎駅」で、周辺では11月1日に開業したばかりの「ヒルトン長崎」「出島メッセ長崎」など西口側は整備が完了している。東口には多目的広場をはじめ、市民の憩いの場も生まれるという。

すでに運用を開始している西口側と駅前広場
大型イベント利用が可能なコンベンションセンター「出島メッセ長崎」
11月1日に開業したばかりの「ヒルトン長崎」
長崎県 新幹線対策課長 峰松茂泰氏
長崎市 長崎駅周辺整備室長 芝宗一氏

建設中の長崎駅新幹線ホームへ。「海への方向性を感じる」空間作りが魅力

 いよいよ長崎駅駅舎と新幹線ホームの見学がスタート。長崎らしいモチーフを活用しているという駅舎のデザインを見ることができた。

 実際に天井部分には長崎県産の杉材、レストルームにはステンドグラスをイメージさせるダル・ド・ヴェールで市の花・紫陽花を描き、貿易船を彷彿させるイメージや出島形に似た曲線、レンガ調タイルの柱などを取り入れている。

鉄道建設・運輸施設整備支援機構 九州新幹線建設局上野所長
長崎駅の完成予想図と特徴
東口から見た建設中の新幹線ホーム側の外観
在来線からの乗り換えで改札口を抜けた新幹線コンコース
こちらはすでに運用されている西口側チケット売り場
天井部分には長崎県産の杉材を使用
ステンドグラスをイメージさせるダル・ド・ヴェールで紫陽花を表現
エスカレーター奥は曲線で出島、特徴的なブラウンの細長いウォールなどで貿易船をイメージ
構内デザインは長崎にゆかりのあるモチーフを盛り込んでいる

 ホームはプラットホーム2か所、レール4本での構成。屋根は縦横方向ともにに曲線的に作られており、高さはホームから最大約13mと開放感抜群の作りが特徴。フッ素樹脂膜を屋根に使用し、昼間は明るく開放感あるホームに、夜はライトアップされ、稲佐山から眺めると「世界新三大夜景」の長崎の景観に効果をもたらすとのこと。そして日本でも類を見ない「海に開かれた駅」としてホーム南側からは長崎港を眺めることができる。

建設中の長崎駅の新幹線ホーム
フッ素樹脂膜を屋根に使用。昼間は自然光で明るい雰囲気に
曲線を描いたホーム屋根
南側からは長崎港を眺めることができる
南端からホームとレールを眺めた様子
ちょうど特急「かもめ」が隣の在来線ホームに停車していた

400m続く商店街をおさんぽ。スイーツや町並みから長崎の和華蘭文化を紐解く

 新たな長崎市の側面を知ったあとは、古くからの長崎エリアの文化的な魅力を伝え、にぎわいの再生を目的とする「まちぶらプロジェクト」のツアーに参加。長崎は海外との唯一の貿易港であったため、和(日本)、華(中国)、蘭(オランダ)の文化が絶妙に混ざり合った文化が栄えているのが特徴。砂糖が早くからもたらされ、それに伴いスイーツ文化も発達。砂糖自体が江戸に運ばれたことから長崎街道は「シュガーロード」とも呼ばれている。

 まずは、約130軒が連なり江戸中期から続く「アルコア中通り(中通り商店街)」を訪問。天保元年から続く老舗「岩永梅寿軒」の「長崎カステラ」をはじめ、第266代ローマ教皇に献上した一口サイズのおはぎ専門店「天使ノオクリモノ」を巡った。なお、新幹線の新駅「新大村駅」の大村市で味わえる大村寿司も砂糖を使った名物料理で、シュガーロードに縁深い郷土料理の1つだ。

江戸時代中期から続く「アルコア中通り(中通り商店街)」。道幅は江戸時代当時のまま
天保元年から続く老舗カステラが絶品の「岩永梅寿軒」。風格ある町屋造りが目印
「天使ノオクリモノ」の「ROKU(おはぎ6個入り)」(1620円)。教皇は「金胡麻」を味わったとか
「梅ヶ枝荘」の「大村寿司」。砂糖をふんだんに使い大村藩とその歴史を語るのに欠かせない名物

 さらに町屋造りの家屋が並ぶ中島川・寺町エリアでは通称・南京寺とも呼ばれる「興福寺」の本堂でお参り。教会とお寺が隣同士に並ぶ長崎ならではの景色を眺めるなど充実の約1時間。ゆっくり散歩をしながら観光だけでは気づけない側面も知ることができた。

中島川・寺町エリアでは寺巡り。「興福寺」の本堂は国指定重要文化財
教会とお寺が隣同士に並ぶのも和華蘭文化の長崎ならではの風景
町屋の残る地域では維持・保全とともに改修で街並み造りに市が補助金を出している

夜は稲佐山で日本三大夜景鑑賞&「INASA TOP SQUARE」で絶品ディナーを堪能

 日も落ちてきたタイミングで、長崎駅をはじめとする変わりゆく長崎市全体を眺めることができる稲佐山へ。実は、長崎滞在で外せないアクティビティの1つが「世界新三大夜景」「日本新三大夜景」として多くの観光客の心を掴む夜景鑑賞。

 特に長崎市のランドマーク的存在の稲佐山からの眺めは地元の人からも愛されるほど。山頂エリアの人気スポット「INASA TOP SQUARE」が7月にリニューアルし、より快適な空間に進化、昼夜問わずにぎわっているのだ。

 山頂を訪れたならば必ず寄りたいのが「INASA TOP SQUARE」に併設するレストラン「ITADAKI」。大パノラマを眺めながらフレンチとイタリアンを融合したディナー「ITADAKIコース」(3500円)を味わえると、カップルや観光客に人気。

 ディナーではビーツで色付けカラフルな「五島うどん ピンクの色鮮やかなカルボナーラ」から長崎野菜にご当地食材をふんだんに盛り込んだ「雲仙豚のローストと彩り野菜 マスタードソース」をはじめボリュームと美味しさを両立した6品を提供、夜景とともに味わえる。

稲佐山山頂へは「長崎稲佐山スロープカー」を利用。約8分間の旅へスタート
山頂エリアの人気スポット「INASA TOP SQUARE」
プロデュースを長崎県五島市出身の山口翼シェフが手がけるレストラン「ITADAKI」
メインが選べる「ITADAKIコース」をゆっくり味わいながら夜景が見れる

 屋上の展望エリアでは、毎日20時からライトアッププログラム「長崎・星物語」の鑑賞が可能。標高約333mの山頂部分で360度の大パノラマで眺める夜景はロマンチックそのもの。長崎にまつわる「鶴(鶴の港)」や「鳩(市の鳥で平和の象徴)」から「龍(長崎くんち)」などの星座。そして定番ハートにシークレットまで、長崎らしさに遊び心をプラスした夜景灯が見どころだ。

展望エリアからの「世界新三大夜景」「日本新三大夜景」の眺め
長崎駅の新幹線ホームや「長崎スタジアムシティ」予定地、夜景灯まで一望できる

 長崎駅を中心に中から外から上からさまざまな角度で市内を巡った今回。次回は日本の近代化を支えた「軍艦島」への上陸を中心にレポートをお届けする。

相川真由美

フリーライター/鉄鋼業やIT系やエンタメ関連の雑誌やWeb媒体の編集者を経て、フリーの記者として活動中。海外は一人旅がほとんど。趣味は世界のディズニーのパーク&リゾート巡り。最近は年間パスポート片手に日々舞浜通い。うなぎとチョコレートが好物で、旅の基本は“出されたものは全部食べる”。激辛とうがらしから謎の木の実まで挑戦するのがモットー。