旅レポ
世界遺産登録の軍艦島へ。日本の近代化を支えた海底炭鉱の今を見てきた!
2021年12月15日 08:00
長崎県と長崎県観光連盟は、「100年に一度の変化期にある長崎市を巡る旅」として、変わりつつある市内の新名所、文化的な見どころをメディア向けに公開した。
今回訪れた長崎港沖合約19kmに位置する「軍艦島(端島)」は「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産の1つとして、2015年世界文化遺産に登録。日本の近代化の礎となった産業遺産「端島炭坑」を有し、1890年(明治23年)から三菱所有となり本格的に稼働、良質な製鉄用原料炭を産出する海底炭鉱として栄えた歴史を持つ。
長崎港から出発。往復約2時間半の海上の旅がスタート
軍艦島への上陸は、現在ツアーでのみ向かうことができる。今回はシーマン商会による「軍艦島ツアー 上陸&周遊コース」(大人3900円、中高生3100円、小人1900円)を利用。別途上陸の際は「施設見学料」(一般310円、小学生150円)が必要だ。乗り場は長崎港の常盤2号桟橋。ここから「さるくII号」に乗船した。
長崎港航行中は、周囲の世界遺産について船長の湯浅氏が説明。三菱重工長崎造船所「ジャイアント・カンチレバークレーン」や「小菅修船場跡」。メンテナンス中の護衛艦についてなど、目の前に迫る巨大な船や建造物に関して紹介した。
「軍艦島」の手前では約20分ほど周遊。立ち入り禁止区域を船からじっくりと眺め、写真を撮ることができた。現在は祠のみが残る「端島神社」や、社宅が高層アパートの密集により常に電灯を付けていたため、学校だけは窓を大きくし採光していたことなどの解説も。移動をスムーズにするための渡り廊下、実写版の映画「進撃の巨人」で登場したX型の階段。さらに波による護岸の破壊で見えるようになった映画館跡から、上部の共同浴場まで生活の跡がまざまざと残っていた。
なお島を所有する長崎市の「端島上陸見学施設利用基準」により、伊王島沖の波高計の測定値が0.5mを超える場合や周辺海域における視界が500mに達しない場合、許可事業者の船舶に設置された風速計の測定値が5mを超えるときは上陸が不可となり、「軍艦島周遊+高島上陸コース」に変更となる。直前まで上陸の許可が降りないため、乗船中もかなり乗客は緊張している状態で、無事上陸が許可された瞬間は思わず歓声が上がった。
「軍艦島」に上陸しての見学は約45分と短いため、ガイドが順路に沿って説明。ふと横を見ると大波により倒壊した護岸が横たわり、自然の脅威が間近に迫る。「端島炭坑」は海底炭鉱のため、地下1000mまで炭坑夫は向かう必要がある。地下への入り口「第二竪坑入坑桟橋跡」の階段には、当時の採掘で足に付いた石炭の粉の黒い跡が閉山から約47年経った今でも克明に残り、仕事後の汚れを落とすための風呂などに水を提供する島民用貯水タンクは山頂に佇んでいた。
なお、世界遺産登録されているのは、明治時代の建造物のみで、現時点ではレンガ造りの「総合事務所」こと「第三竪坑捲座跡」ならびに石灰と赤土をまぜた接着剤「天川」を使った石積みの護岸のみとのこと。日本初の鉄筋コンクリート造りのアパート群は大正時代に建造されたため対象ではないが、島全体が世界遺産エリアとのことだ。
続いては日本最古の7階建て鉄筋コンクリート造高層アパート「30号棟」「31号棟」へ。「31号棟」は防潮棟の役割を持ち、窓はすべて廊下側。内側の建物や来島者が泊まる宿泊棟「25号棟」を守る形で建てられている。ちなみに、来島時には三菱社員と警察のチェックが入るためセキュリティは万全だったとのこと。
乗船前にはボタ(石炭として使えない石のこと)を捨てるためのベルトコンベアー跡や、精炭(精選された石炭)を貯炭場に送るためのベルトコンベアーの支柱などを見学。島をあとにして、船内では「軍艦島上陸記念証明書」が配られた。ほかにも無煙炭の石炭、オリジナルペーパーファン、酔い止めのキャンディも渡された。なお、帰りの船内では「軍艦島」にまつわる映像が流れ、より身近に感じられる工夫も。あっという間に長崎港に到着し、ツアーは無事終了となった。
「長崎出島ワーフ」でトルコライスor市内で長崎和牛食べ比べどっちにする?
「軍艦島」へ上陸したあとは、長崎港に面した複合施設「長崎出島ワーフ」へ。下船した常盤2号桟橋からも徒歩圏で市街地にも近く、食事やコーヒーブレイクをするのにぴったり。オープンエアのテラス席が並び、港の景色を眺めながら長崎名物が味わえるベストスポットだ。
今回訪れたのは「Delicious Restaurant Attic」。大人のお子様ランチにアップデートした長崎名物・トルコライスを提供中で、一番人気の「Attic デリシャストルコライス」(950円)は通常トンカツが乗る場所に、いろいろな味を楽しんでほしいとヒレカツ・エビフライ・クリームコロッケをオン。サラダもたっぷり盛られ、サフランライフとスパゲティもほどよい量で、女性でも完食できるようアレンジ。お店自慢のスペシャリティコーヒーも食後にプラス100円でつけられるなど良心的だ。
「軍艦島」上陸後、港に戻って祝杯をあげるのにぴったりなお店をもう1軒ご紹介。こちらも長崎港から徒歩圏、出島からすぐ近くの「長崎和牛焼肉 ぴゅあ」だ。JA全農ながさき直営で、扱う和牛の品質のよさはお墨付き。柔らかでほどよい霜降り肉を焦げ目が少しつくまで焼いて頬張れば、口の中でとろけ至福の時が訪れる。
お勧めはランチタイムの「長崎和牛カルビ3種盛りランチ」(1500円)。手の届きやすい価格帯ながら、カルビ・モモ・漬け込みカルビの3種の食べ比べが楽しめると大人気。タレは自家製の醤油だれと味噌だれの2種で、ランチはご飯もおかわり可能。県内産のお米に、日本一のお茶「そのぎ茶」、食後に長崎みかん「味ホープ」のサービスと長崎のうまいが大集結。ランチだけでなくディナーも訪れたくなるはず。
食後は散策がてらコーヒー専門店へ。コーヒー伝来の地でもある長崎では、市内に個性的なコーヒーショップが近年増えており、気軽に美味しい1杯を味わえる。長崎銘菓との相性も抜群、お気に入りのスイーツにぴったりの味わいを探してみるのもよい。
訪れたのは「カリオモンズコーヒー 長崎」。世界中を旅して手に入れたこだわりのコーヒー豆の販売とコーヒーの提供を行なっている。フレンチプレスで淹れたコーヒーは豆の脂分が抽出され甘さや香りが際立つクセになる味わい。産地にまつわるストーリーが書かれたインフォメーションカードもカップとともに渡され、読みながら&飲みながら生産地に思いをはせることもできた。
なお、長崎港側のベイエリアでのんびり1杯を楽しみたいならば「e.m.e」がお勧め。もっちもちでほろ苦さと甘さがたまらない「カヌレ」(200円)をはじめスイーツが絶品と話題。「カフェラテ」(450円)を飲みつつ、スイーツをパクッ、街歩きのおともに最適だ。
1回目は「西九州新幹線」そして今回は「軍艦島」と新旧2つの長崎の表情を見てきた今回のツアー。次回は長崎旅は早朝も充実! ということで、眼鏡橋付近からカヌーが楽しめる「朝たび長崎」プラン、そしてスパ併設のリゾート。さらに10月末にオープンしたばかりの「長崎市恐竜博物館」の様子をお届けする。