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新デビューの西九州新幹線にさっそく乗ってきた! 武雄温泉駅で「かもめ」「リレーかもめ」を対面乗換

長崎駅~博多駅間は最速約1時間20分に

2022年9月23日 開業

西九州新幹線の長崎駅~武雄温泉駅間で乗車したのは「かもめ88号」。N700Sは4編成あるが、そのうち3編成目(Y3編成)が充当された

 9月23日、西九州新幹線(武雄温泉駅~長崎駅間)が開業した。従来は博多駅~長崎駅間を特急「かもめ」が結んでいたが、西九州新幹線の開業により博多駅~武雄温泉駅間を特急「リレーかもめ」、武雄温泉駅~長崎駅間を西九州新幹線「かもめ」の2本で結ぶかたちに変わった。そこで今回は、長崎から博多に向かうルートを実際に乗車し、利用者視点で気が付いたことをレポートしていきたい。

高架化で西側に移転した長崎駅

 実は、長崎駅は西九州新幹線の開業以前から変化が生じている。地上にあった駅が立体化事業で高架化されるのに伴い西側に移動し、2020年3月28日に新しい高架駅が供用された。その東側に、西九州新幹線の長崎駅が造られた。

 これにより、従来は国道202号線のすぐ前にあった長崎駅が西方に離れるかたちとなった。現在はまだ地上時代の長崎駅の跡地を整理している段階で、これから再開発が本格化する。バスや路面電車で長崎駅まで来た場合、長崎駅までの移動に5~10分程度の徒歩移動を要する点に注意したい。

 筆者はもともと足が速いほうで、身軽なこともあり5分足らずで済んだが、大荷物を抱えていたり子供連れだったりすると、もっと時間がかかるだろう。

国道202号線の西側にある高架広場から、西九州新幹線の長崎駅を望んだ様子。国道と駅は直線距離で150mほど離れている。なお、この東側の出入口は「かもめ口」と呼ばれることになった。反対側の、出島メッセに面する西側は「いなさ口」だ
駅に向かう通路のうち、新しくできた交通広場の南側に隣接する部分は囲われており、風雨の影響を避けられる
かもめ口から駅に入ると、手前側に新幹線の改札口がある。こちらの写真は式典前に撮影したためくす玉が掲げられている
在来線と新幹線を乗り継ぐ場合は、乗換改札を通る。これは新幹線側から見た様子

「かもめ88号」に乗って長崎駅から武雄温泉駅へ

 さて長崎駅から博多駅に向かう際に、最初に乗車するのは西九州新幹線の「かもめ88号」。おもしろいのは、発車標を見ると行先が「武雄温泉」ではなく「博多」となっていることだ。長崎駅発17時00分、武雄温泉駅着17時30分。乗車時間はわずか30分だ。これぐらい乗車時間が短いと、車中でおちおち食事もしていられない。

 西九州新幹線の各駅のうち、諫早駅には全列車が停車するが、嬉野温泉駅と新大村駅は通過する列車がある。武雄温泉~長崎間を、全駅に停車する列車は30~31分、嬉野温泉と新大村の両駅とも通過する列車は24~25分、嬉野温泉駅だけを通過する列車は28分で走破する。ちなみに、西九州新幹線の66kmという距離は、東海道新幹線でいうと品川~小田原間(69.9km)よりも少し短い。

長崎駅の発車標における「かもめ88号」の表示。行先が「武雄温泉」ではなく「博多」となっている
「かもめ」と「リレーかもめ」は、物理的には別の列車だが、論理的には一体のものとして扱われている。そのため、途中停車駅も新幹線区間だけでなく……
このように、「リレーかもめ」の分までまとめて表示される
当然、列車の行先表示器でも行先は「博多」と表示される

 なお、上り最終の1本前となる「かもめ64号」は例外で、発車標では行先が「門司港」と表示される(接続する「リレーかもめ64号」が門司港行きのため)。ところが車両のほうでは「博多」と表示される。おそらく車両側のシステムに「門司港」が登録されていないのだろう。

 また西九州新幹線で車内販売は行なわれない。後述するように、武雄温泉駅での乗換時間はわずかしかない。さらに長崎駅の改札内には売店の設置がないため、食事の用意は出発前に済ませておくのがベターだ(飲料の自動販売機はホームにある)。

西九州新幹線では、全駅に可動柵が設けられている

 最近の新幹線の常で、西九州新幹線もトンネルが多い。とはいえ、新大村駅の北方では明かり区間、つまり外が見える高架橋の区間がしばらく続く。武雄温泉駅に向かう上り列車なら進行方向に向かって左側、長崎駅に向かう下り列車なら進行方向に向かって右側の席では、大村湾を車窓に望むことができよう。

新大村駅~嬉野温泉駅間で撮影。9月23日の夕方だが、天候があまりよくなかったのが惜しまれる。一瞬だが新大村駅の北方では新幹線の車両基地(大村車両管理室)も見える

 嬉野温泉駅~新大村駅間にある三ノ瀬トンネルの嬉野温泉側は落石防止のために、コンクリート覆工が坑口上部の斜面全体にわたって豪快に施された。外から見ると目立つポイントだが、車内にいるとうかがい知る術はなさそうだ。

武雄温泉駅で対面乗換

「かもめ」と「リレーかもめ」は武雄温泉駅で接続する。ここでは同一ホームの両側に列車が並ぶかたちになるため、乗換に際して階段やエスカレーターなど上下方向の移動は発生しない。

 新幹線と在来線を乗り継ぐということになるが、ほかの乗換駅と違って中間改札はなくそのまま乗り換えられる。どうしてこういう仕組みにできるのかについては別途記事にしたい。

 なお「かもめ88号」が武雄温泉駅に到着した時点で「リレーかもめ88号」はまだ到着しておらず、少しあとに到着した。その分だけ乗車に要する時間は厳しくなるが、もちろん全員が乗車を終えるまで発車はしないので安心してほしい。一方、長崎行きでは基本的に「リレーかもめ」が到着した時点で「かもめ」が反対側に待機していると考えてよいだろう。

「かもめ88号」(右)が到着して乗客がホームに出てきたところに「リレーかもめ88号」(左)が到着
「リレーかもめ88号」の発車は17時33分だが、時計はすでに17時31分を回っている
「リレーかもめ88号」が到着すると、待っていた乗客が次々に乗り込んでいく

 この乗換は九州新幹線(新八代駅~鹿児島中央駅)が開業したときに、新八代駅で行なわれていた方法と同じだ。接続時間も同じで、基本的には3分間である。

 3分間というととても短い時間に感じられるが、実際には案外余裕がある。といっても武雄温泉駅が近づいてきたら荷物をまとめて、サッと動けるようにしておきたい。乗車が終わらないのに列車が出てしまうことはないが、気が急いて忘れ物をするリスクはあるからだ。かつて新八代駅では「つばめ」と「リレーつばめ」を乗り換える際に車内に忘れ物をする人が続発して、毎日のように着払いの宅配便で忘れ物を送り届けていたという。

 筆者はどこでも日常的にやっていることだが、席を離れて降車する前に荷物をすべて持ったところで、座席まわりと荷棚を一瞥して忘れ物の有無を確認する。この数秒の配慮があれば、宅配便の送料を負担せずに済むかも知れない。

武雄温泉駅から博多駅へ

「リレーかもめ88号」は、博多駅~西鹿児島駅(改称して現在は鹿児島中央駅)間の「つばめ」としてデビューしたことでおなじみの、787系電車。このほか「白いかもめ」「白いソニック」でおなじみの885系も「リレーかもめ」に使われている。両者を時刻表で見分けるにはDXグリーン車の有無を見るのが確実だろう。設定があれば787系、なければ885系である。

 また博多駅~佐世保駅間の「みどり」がリレー列車を務めるケースがまれにあるが、その場合には「みどり(リレーかもめ)」というややこしい名前になる。こちらの車両は885系のほか、783系が使われることもある。

「リレーかもめ」で使われる車両のひとつが787系。武雄温泉方の先頭車がグリーン車で、DXグリーンの設定もある
もうひとつが885系。カーブでも高速で走れるように工夫された振子電車
「みどり(リレーかもめ)」には783系が充当されることもある

「リレーかもめ88号」は、武雄温泉の発車が17時33分、博多着が18時32分だから所要時間は59分。これもあまり長い時間とはいいがたいが、車内で食事をとったり寝たりするぐらいの余裕はある。博多駅ではもちろん在来線ホームに発着する。

 なお今回は上り列車を利用したが、下り列車でも博多駅の発車標を見ると「リレーかもめ」の行先が「長崎」となっており、「かもめ」と一体のものとして扱われていることが分かる。

博多駅における「リレーかもめ」の表示例。行先は「長崎」

 武雄温泉駅の対面乗り換えについてはさまざまな意見があるだろうが、乗り換えで置いていかれることはないので“案ずるよりなんとやら”ではある。それに博多駅~長崎駅間の所要時間が短くなっているのは事実。

 ただ長崎駅におけるバスや路面電車との接続は、もう少しなんとかならないのかなと思わざるを得ない。長崎市の北部を目指すのであれば、長崎駅で在来線に乗り換えて、浦上駅まで行くのも一案だろう。