旅レポ

上質な船旅が楽しめるドリームクルーズに新しく加わった「エクスプローラー ドリーム」に乗船してみた(前編)

ゲンティンクルーズラインの「ドリームクルーズ」ブランドに「エクスプローラー ドリーム(Explorer Dream)」が加わった

 ゲンティンクルーズラインが持つ3つのブランドのうちの1つ「ドリームクルーズ」に、新たな船「エクスプローラー ドリーム(Explorer Dream)」が4月に加わった。

 その就航式と命名式が上海で行なわれたので、船内の様子と合わせて紹介する。

上海の宝山地区に停泊するエクスプローラー ドリーム号。総トン数7万5338トンで13階建ての大型豪華客船だ(写真提供:ゲンティンクルーズライン)

ドリームクルーズの3隻目になるエクスプローラー ドリーム

 今回乗船したエクスプローラー ドリームが所属するドリームクルーズは、同社のカテゴリーでは中間に位置するブランド。ラグジュアリーに特化した「クリスタルクルーズ」、カジュアルに楽しめる「スタークルーズ」といったラインアップのなかで、手の届く価格で上質な船旅を楽しめるプレミアムクラスに当たるのがドリームクルーズ。

 のちほど紹介する「パレス」など、至れり尽くせりのサービスが味わえる特等客室も用意されているので、豪華であることは間違いない。ドリームクルーズには「ゲンティン ドリーム(Genting Dream)」「ワールド ドリーム(World Dream)」の2隻がすでに運航しており、今回のエクスプローラー ドリームが加わることで3隻体制になる。

 エクスプローラー ドリームのスペックは、総トン数7万5338トン、全長268m、全幅32m、デッキ数13、客室数928、乗客定員が1856人(lower berth)となっており、ドイツのマイヤー・ヴェルフトが建造したものだ。姉妹船であるゲンティン ドリームやワールド ドリームよりも一回り小さく、総トン数は約半分。数字ではかなり異なる船体だがそれもそのはずで、エクスプローラー ドリームはもともと、「スーパースター ヴァーゴ(SuperStar Vargo)」としてスタークルーズで運航されていた船だ。

 今回ドリームクルーズの一員として加わるにあたり、約5600万ドル(約61億円)をかけて改修が施され、同ブランドにふさわしい船体となって登場。船体アートはニューヨークに拠点を置く中国人アーティストのクリ・ホアン氏が手掛けたもので、ドリームクルーズの象徴であるマーメイドに加え、冒険と発見をイメージするためにユニコーンが描かれており、幻想的で力強いイメージが伝わってくる。

 このような特徴を持ったエクスプローラー ドリームは、ドリームクルーズのなかでも速い船足を活かし、外洋をまたいだり、多くの都市に寄港したりするプランが予定されている。ちなみに、既報のとおり2021年には総トン数20万4000トンの超大型豪華客船も就航し、同ブランドに仲間入りする予定だ。

ドリームクルーズが所有する船のスペック

エクスプローラー ドリーム

総トン数: 7万5338トン
全長: 268m
全幅: 32m
デッキ数: 13
乗客定員: 1856(lower berth)
客室数: 928
建造: マイヤー・ヴェルフト(ドイツ)

ゲンティン ドリーム

総トン数: 15万695トン
全長: 335m
全幅: 40m
デッキ数: 18
乗客定員: 3352(lower berth)
客室数: 1674
建造: マイヤー・ヴェルフト(ドイツ)

ワールドドリーム

総トン数: 15万695トン
全長: 335m
全幅: 40m
デッキ数: 18
乗客定員: 3376(lower berth)
客室数: 1686
建造: マイヤー・ヴェルフト(ドイツ)

 今回、エクスプローラー ドリームが停泊していたのは上海の宝山地区にある客船ターミナルで、浦東国際空港からは直線距離で40kmほどにある長江の河口付近。陸から突き出た道路の先には大型客船が3隻ほど停泊できる場所があり、河口とはいえどもほとんど海に面しているのと変わらない風景が広がっていた。筆者は船と言えば遠い昔に宮崎から川崎までのカーフェリーに乗ったことくらいで、クルーズ船には乗船したことがなかったことから、とにかくすべてが今までにない体験となった。巨大なターミナルに巨大な船、厳しいパスポートチェックに荷物検査など、空と海との違いはあれど、空港と同じ港であるのだと実感した。

宝楊路碼頭
海上というか、河口上に建てられている乗船ターミナル
停泊するエクスプローラー ドリーム号。中国名は「探索夢号」
ターミナル内のゲート前は招待客や関係者、多くの中国メディアでにぎわっていた

 乗るまではとにかく厳しいチェックが行なわれるので緊張していたが、ひとたび船内に足を踏み入れるとそこには別世界が広がっていた。豪華な内装にホスピタリティ精神にあふれるスタッフのお出迎えと、わずか数m移動しただけなのに雲泥の差ともいえる空間だ。乗降口のある7階は中央にレセプションがあり、レストランやシアター、カジノなどがある。

セキュリティチェックの先に広がる別世界。ドリームクルーズのマスコットキャラクターであるマーメイドの姿も
清潔感と高級感のあるレセプション(受付)
船内ではさまざまな国籍の人が働いているが、日本人スタッフも在籍している
レセプションの対面にあるロビーラウンジ「グランドピアッツァ」。すでにラグジュアリー感がスゴイ
上を見れば豪華な装飾が施された天井とスケルトン仕様のエレベーター
下を見れば新調された美しいファニチャーが目に留まる
横を見ればお酒が飲めるバーカウンター。船っていいところですね(笑)

ゲンティン香港の副CEOと有名デザイナーが式典に登場

 就航式と命名式は7階船尾にある「ゾディアックシアター」で行なわれた。そのなかでゲンティン香港の副CEOであるフイ・リム氏は、香港を中心とする中国の南部においては知名度が定着しつつあるが、北部に関してはまだまだで、その市場は5倍と見積もっている。上海や天津を母港にすることで、今後もその潜在的な需要を掘り起こしていきたいと展望を語っていた。式典は途中からダンサーらによるパフォーマンスが披露され、スモークと光のどハデな演出と同時に中国の有名デザイナーであるグレイス・チェン氏が登場。ゴッドマザーとしてステッキを振ってエクスプローラー ドリームの命名を行ない、最後は関係者がステージに登壇してシャンパンで乾杯した。

式典であいさつをするゲンティン香港の副CEO フイ・リム氏
ステージではさまざまなパフォーマンスが披露されたが、最新の照明設備に加え、スモークや火花などが使われたどハデな演出にも驚いた
船に命名するグレイス・チェン氏
関係者が登壇し、シャンパンで就航を祝う(写真提供:ゲンティンクルーズライン)

 グレイス・チェン氏はその後、10階の船尾にあるパレスプールデッキにおいて、スペシャルイベントのファッションショーも行なっている。チェン氏はアメリカでキャリアを積み、セレブ御用達のデザイナーとして成功を収めて中国に帰国。現在は習近平国家主席の夫人が愛用するなど、中国のセレブリティの間では絶大なる人気を誇っているデザイナーだ。そのような背景もあり、今回のエクスプローラードリームのゴッドマザーとして起用されている。

船上で行なわれたファッションショー。全体的に天候のわるい日が続いていたが、このときだけは奇跡的に晴れ間が広がり、ショーも大成功に終わった(写真提供:ゲンティンクルーズライン)
顧客層がセレブ層なこともあり、エレガントな装いが多い

 後編では今回の改装の目玉になる特等客室であるパレスや船旅の楽しみである数々のレストラン、充実した時間を過ごすためのジムやスパ、そのほかの施設を紹介する。

野村シンヤ

IT系出版社で雑誌や書籍編集に携わった後、現在はフリーのライター・エディターとして活動中。PCやスマートフォン、デジタルカメラを中心に雑誌やWeb媒体での執筆や編集を行なっている。気ままにバイク旅をしたいなと思う今日この頃。