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ドリームクルーズと香港観光局、香港発着クルーズのメリットを日本にアピール
女子旅では“執事”サービスも人気
2017年12月14日 12:44
- 2017年12月13日 実施
アジア海域で大型客船を運航しているドリームクルーズは、香港政府観光局が合同で日本の旅行業界関係者に向けたセミナーを12月13日に都内で実施した。
ドリームクルーズでは2016年11月から総トン数15万トン級の大型客船「ゲンティン ドリーム」による香港発着クルーズを提供しており、2017年11月17日には新造船の姉妹船「ワールド ドリーム」を就航した。トラベル Watchでも香港市内観光と組み合わせた香港発着クルーズやゲンティン ドリーム、ワールド ドリームの船内施設について紹介しているが、ドリームクルーズと香港政府観光局が協力して、日本人旅行客に向けた大型客船による香港発着クルーズのメリットを訴求している。
クルーズ前後の観光に適した「コンパクト」な香港
香港政府観光局旅行業界担当アシスタントマネージャーの古谷剛氏は、香港がクルーズの発着拠点として最適な理由について、日本から香港を結ぶ空路直行便の多さと香港にある多種多様な宿泊施設を挙げている。日本と香港の間には直行便だけでも日本全国14の空港から週373便が就航しているという(2017年5月時点での数字)。また、多種多様な宿泊施設があるので幅広い予算に合わせたフライ&クルーズのプランを設定可能なのもメリットとだと主張する。
加えて古谷氏は、客船の乗船前または降船後の時間の観光スポットとしても香港のメリットを紹介した。そこでは、夜景をはじめとする観光資源が豊富なことは当然として、市街地がコンパクトにまとまり交通手段の価格が安いことから移動がしやすいこと、SNSユーザーが好む美しい多種多様な景観や料理、スイーツが数多く存在すること、そして、親日的で安全に滞在できることを挙げている。
特に治安のよさでは香港警察と警視庁がそれぞれ発表した犯罪率を示し、東京と比べて犯罪率は低く現在も下がり続けていることや、香港には国際的に高い評価を得ているホテルが多く、セキュリティが万全であることから滞在時の安全を訴求した。
古谷氏は香港のクルーズターミナルについても、船客のための滞在基点としての優位性を述べている。香港には「オーシャンターミナル」と2013年から運用を開始した「カイタック・クルーズターミナル」がある。古谷氏は、オーシャンターミナルがショッピングモールと直結し、宿泊施設や夜景を楽しめる中華料理レストランが多数存在するほか、香港を移動するための公共交通機関ステーションも多いなど、香港観光の基点として大変便利であると述べている。
オーシャンターミナルに2017年10月からオープンした「オーシャンターミナルデッキ」についても説明した。この施設は5層構造で、最上層に設けた屋上展望スペースでは270度に開いた空間から港の景観を楽しめる。また、施設の港に面したエリアにはレストランを準備中で、北京料理の「義和雅苑」、イタリア料理の「ペーパームーン」、和食の「天穴」と合わせて日本から「塚田農場」も出店している。現在利用できるのはこの4店舗だが、2017年中に四川料理の「映水芙蓉」に広東料理の「六公館」、フランス料理の「ア・ニュルトゥルヴェ・ヴー」の3店舗がオープンし、2018年前半にはさらに4店舗が開業する予定という。
2013年から国際客船埠頭として新しく運用が始まったカイタック・クルーズターミナルについても、宿泊施設や夜景が楽しめるレストラン、ショッピングモールの整備が進んでいる状況をマップで示した。カイタック・クルーズターミナルでは、2013年6月の第1バース運用開始に続いて、2014年9月には第2バースの運用が始まり、2016年1月には大型船の接岸を可能にすべく水深を確保するための浚渫作業が完了して、2017年時点で最大級の総トン数22万トンクラスの客船が2隻同時に停泊できるキャパシティを備えている。
古谷氏は、カイタック・クルーズターミナルの利便性について、特に交通面から訴えている。それによると、カイタック・クルーズターミナルで主要な移動手段となっているタクシー以外にも、バスやフェリーを使ってアクセスできるという。バスでは、クリーンミニバス86番路線が始発6時40分から最終23時まで8~25分間隔で運行し、MTRカオルーン・ベイとカイタック・クルーズターミナルを20分程度、運賃6香港ドル(約90円、1香港ドル=約15円換算)で、KMBバスのルート5Rが11~16時(土・日・祝日は19時まで)の間に30分間隔で運行してMTR牛頭角駅とMTR觀塘駅、カイタック・クルーズターミナルを約30分、運賃6.7香港ドル(約100円)でそれぞれ結んでいる。そして、フェリーはノースポイント・ピアとカイタック・ランウェイ・パーク・ピア間で7~19時30分(土・日・祝日は19時)の間、クントン・ピアとカイタック・ランウェイ・パーク・ピア間で7時15分(日・祝日は7時30分)~19時45分(土・日・祝日は19時30分)の間に利用できるという。
研修旅行のバンケット施設としても有力なワールド ドリーム
ドリームクルーズと同じゲンティンクルーズラインの系列企業にあたるスタークルーズ日本オフィスアシスタントマネージャーの大塚大輔氏からは、ゲンティンクルーズラインとドリームクルーズの紹介、そして、新造船「ワールド ドリーム」で備える船内施設などの説明があった。ゲンディンクルーズラインは東南アジア海域を中心に、大型客船による船旅を提供している複数のクルーズ会社からなる企業グループだ。「ドリームクルーズ」は2016年11月に誕生した新ブランドで、ほかの系列には、より上級の船旅を提供する「クリスタルクルーズ」とカジュアル層をターゲットにした「スタークルーズ」がある。
大塚氏はドリームクルーズのコンセプトとして「アジアのホスピタリティとインターナショナルのクオリティ(Asian at Heart, International in Spirits)」を掲げている。「これまでクルーズというと難いもの、ハードルが高いものであったが、ドリームクルーズは、気軽に楽しめ、かつプレミアムなクルーズができる船を持っている」と大塚氏は述べる。
ドリームクルーズが主な船客として想定しているのは「アクティブシニアの次の世代」(大塚氏)という。ポスト団塊にあたる50代後半から60代前半の世代では退職という特別なイベントではなく、また、それに続くファミリー層には日ごろ経験している海外旅行の延長として気軽に体験できる船旅を、ドリームクルーズでは提供することを考えている。大塚氏は「ファミリー層は子供がいるから無理と思っている」としたうえで、ワールド ドリームには子供向けのイベントを数多く用意しており、寿司を握るなどの職業経験や、シェイクスピアの演劇指導など、年齢に合わせたプログラムを体験できることを紹介した。
ほかにも若い世代に向けた訴求では、音楽学校のキャンプ(日本的にいうと合宿)や1隻すべてを貸し切ったクラブイベントなどを実施した実績や、香港などではデートコースとしての利用もあることを取り上げている。「女子旅では、華やかなクルーズというイメージに加えて、エステや上級船室専用の24時間“執事”サービスも好評」(大塚氏)という。
さらに、「社内研修向けには(ワールド ドリームを)香港にあるバンケットとして位置付けている。貸切価格もホテルのバンケットと比べて低く設定している」と大塚氏は述べ、企業向けのMICE利用も訴えている。客船には社内研修に必要な施設がすべて用意してある利便性に加えて、寄港先の観光や研修イベントへのクルー派遣、船長の講演、そして、船体に組み込んたLEDを使ったメッセージ表示に花火、レーザー演出なども利用できる。
続いて、ワールド ドリームの船内施設を紹介。ワールド ドリームの詳細についてはすでにトラベル Watchでも紹介しているが、大塚氏は社内研修などの団体利用に向けたアピールとして、バルコニー(Balcony)船室だけでなく、上級のスイート船室も多数用意しているので、団体利用でも全員を同じ等級の船室に収容できるとアピールしている。
香港政府観光局が仕掛ける新しい香港旅スタイル
古谷氏からは、香港政府観光局が2017年から取り組んでいる新しいプロモーションについても紹介があった。このプロモーションでは女優の水原希子さんなど著名人をコメンテーターとして起用し、食事、ファッション、自然などを現地の人が紹介していく。また、香港島の中環(セントラル)と上環(ションワン)を含む地域を「オールド・タウン・セントラル(OTC)」と命名し、東洋と西洋、過去と現在、伝統と革新、賑わいと静けさといった対局する雰囲気を、英国統治時代から現代にいたるまでの新世代旧世代が混在する街並みから体験してもらうプロジェクトも進めている。ほかにもSNSユーザーを対象にして、ハッシュタグ「#アガる香港」を設定して、香港に数多くある美しい建築物や街並みなどの景観、デザインを工夫した料理や甘味などを紹介する「フォトジェニックな香港」も訴求している。
併せて、香港ディズニーランドで2016年6月11日から始まった「スター・ウォーズ:トゥモローランド・テイクオーバー」や2017年4月30日からオープンした直営ホテル「ディズニー・エクスプローラーズ・ロッジ」、香港市内にある5カ所のミュージアム(香港歴史博物館、香港文化博物館、香港海防博物館、孫文記念館、香港美術館、ただし美術館は改装中で2019年再開予定)で始まった常設展入場無料も紹介している。
古谷氏は、香港文化博物館で2018年7月20日まで開催しているブルース・リー展は特別展だが入場無料となっており、米ブルース・リー財団の支援の下、映画衣装や小道具、私物、ドキュメンタリー映像など、600点以上を展示していることにも言及した。