旅レポ

タイ料理の奥深い魅力を求めて東北部イサーン地方へ。マンゴツリーのレシピブックに掲載された名店を巡る

タイ国政府観光庁主催のツアーでタイの東北部を訪れました

 タイ国政府観光庁主催のツアーで、タイの東北部に行ってきました。実は今回の旅、タイ料理レストラン「マンゴツリー」とコラボしたちょっとめずらしいツアーなのです。

 2002年に東京・丸の内にオープンして以来、多くの食通から支持される「マンゴツリー東京」は、本格タイ料理を楽しめるレストランとして知られ、日本におけるタイ料理の草分け的な存在の名店。そんなマンゴツリージャパン代表の小島由夫氏が2018年4月に「mango tree kitchen イサーン地方の伝統料理と人気メニュー32のレシピ」という本を出版しました。

レシピブックを手にマンゴツリージャパン代表取締役の小島由夫氏。今回の旅は小島社長も同行しました

 今回はそのレシピブックに掲載されているイサーン地方のレストランを訪れたり、料理教室があったりという“タイ料理を堪能しちゃいましょう♪”という食いしん坊にはたまらないツアーだったのです。

スワンナプーム国際空港では入国審査後、成田で預けた荷物を一旦受け取ります
乗り継ぎのため、2階の国際線到着フロアから4階の出発階へ移動

 ということで、目指すは個人的にも初となるタイの東北部イサーン地方。東京からバンコクへは羽田・成田の両方から飛んでいますが、今回は成田から。タイ国際航空のTG641便で成田空港を朝出発し、バンコク・スワンナプーム国際空港を経由して、空路でウドーンターニー国際空港への移動でした。

タイスマイル航空のチェックインカウンター。ここでまた荷物を預け、その後保安検査場へ
乗り込んだのはタイスマイル航空のTG2008便。エアバス A320-200型機で運航

 国内線で使ったタイスマイル航空は、タイ国際航空を親会社とする航空会社で、一見「LCCかな?」と思われがちですが、20kgまでの受託手荷物が無料だったり、事前座席指定ができたりとLCCとは一線を画しています。1時間ほどのフライトでも簡単な機内食とドリンクが無料で提供され、小腹が空いていた時間帯だっただけにとってもありがたかったです。

3-3の配列。個々にモニターはなく、天井からところどころに設置されているタイプ
かわいらしい手提げ袋に入って提供された機内食のサンドイッチ
19時15分、定刻どおりにウドーンターニー国際空港に到着

初日の夕食は政府お墨付きのローカルレストランでイサーン料理を初体験

食い倒れツアー、まずは1軒目

 ウドーンターニー国際空港からバスで20分ほどで到着したレストラン「クルア クン ニット(Krua Khun Nid)」は、レシピブックによると“イサーン料理のコンテストで優勝したこともある名店”だそう。政府要人や各国の大使館御用達のレストランとのことですが、気取らずカジュアルな店内はローカル感も味わえるよい雰囲気でした。

イサーン料理のレストラン「クルア クン ニット(Krua Khun Nid)」。地元の人も食べに来ていました

 機内食のサンドイッチも食べたちゃったからそれほど食欲はないなぁ~と思っていたのですが、それがどっこい大誤算。ココナッツ入りのトムヤンクン、グリーンカレーや腸詰め、ソムタムに豚のサラダラープなど、出てくるものすべての「辛さ」「酸っぱさ」「塩気」「甘さ」が絶妙! しかも油っこくなくヘルシーで、たっぷり使ったハーブやスパイスが胃袋も気持ちも元気にしてくれるのです。

 そしてなによりデザートで出てきた私の大好物、カオニャオ・マムアンが絶品中の絶品で、人生史上ナンバーワンのカオニャオ・マムアンとして胸に刻まれたのでした。

実家にありそうなザルに盛られたハーブがいい感じ。筒の竹かごに入って出てくるもち米も、いくらでも食べられちゃう美味しさ
タイのデザート「カオニャオ・マムアン」。もち米のねっとりさと美味しさは今まで食べたなかでナンバーワン。マンゴーの濃厚な甘みもグッド

 1日目と2日目の宿泊は、ウドーンターニーの中心部にあるホテル「センタラホテル&コンベンションセンター ウドーンターニー」。会議場や宴会場、スパやプール、テニスコートなどを有する大型ホテルです。エレベータを降りて客室に向かう際のダイナミックな吹き抜け空間は壮観。お部屋もシンプルで広々、快適でした。

立派なロビーラウンジ
吹き抜け空間がカッコいい
利用したスーペリアツインルーム

紅い睡蓮の花で埋めつくされるノンハーン湖へ

毎年12月から2月上旬にかけてがベストシーズン

 食べるだけではなくしっかり観光も組み込まれていた今回の旅。2日目はウドーンターニー市内から南東に43kmほどのところにある、ノンハーン湖へ。この湖は毎年12月~2月ごろになると一面紅い睡蓮の花が咲き乱れることで有名です。ただし見られるのは早朝のみ。お昼頃になると花が閉じてしまうため朝早くに向かわないといけません。

ホテルを朝7時に出発したので朝食はお弁当をバスの中で
ウドーンターニー市内の朝
だんだん車窓から見えるのどかに

 ホテルから1時間ちょっとで到着したノンハーン湖。大きな駐車場の近くには土産物の屋台が立ち並ぶ観光地らしい風景が広がっていました。ここでは通常チケットを買ってボートに乗り込みます。私たちはツアーだったので料金のことは気にしないで乗ってしまいましたが、プライス看板によると、1ボートが500バーツ(約1750円、1バーツ=約3.5円換算)。ボートには5~6人乗れるので一人当たりはとってもリーズナブルですわよね。

湖の近くに到着。日焼け防止の帽子などが売られる屋台が立ち並ぶ。おやつもいろいろと
おそらくここはインスタスポット
待ち構えるたくさんのボート
タイの人はいつもにこにこ笑顔

 この場所を訪れるまでは、湖の岸から一面の睡蓮の花が見えるものだと勝手に想像していたのですがそうではなく、ボートでしばらく行かないと睡蓮スポットは現われません。遠くの水面のピンク色がだんだんと近付いてくるのをワクワクしながら眺めていました。

白鷺が絵になる場所に。時折上空を水鳥が群れで飛ぶのどかな景色が広がります

 睡蓮の密集地では、ボートはエンジンを止めて停泊します。ここではボートの先端に座ってステキなポーズで記念写真するのが定番(たぶん)。手に届きそうなところに咲いている睡蓮の美しさは何枚シャッターを切っても足りないほどでした。ちなみに船頭さんに湖の深さを聞くと1m50cmほどとのこと。この時期だけの絶景を十分に堪能できました。

代わる代わるボートの先端で記念写真
鮮やかな赤がきれいですわ~
国旗がたなびくカラフルなボートが景色にマッチしていて思わずパチリ
ボートのなかで立ったり座ったりとアングルを変えて試行錯誤
密集エリアに30分ほど滞在して岸へと戻ります

料理教室で激辛イサーン料理の真髄に触れる

赤や青の唐辛子、にんにくや生姜などたっぷりと使うイサーン料理に挑戦

 湖をあとにして向かったのは、ウドーンターニー郊外にあるレストラン「チャババーン イサーン ビンテージ キッチン(Chabaa Barn E-san Vintage Kitchen)」。手入れされたお庭が美しいレストランで、この旅最初の料理教室です。

タイ人スタッフさんがお料理の先生
普段はレストランとして使われるおしゃれな建物で料理教室

 作るのはイサーン地方の代表的なサラダ「ソムタム」と、スパイシースープ「トムセップ」の2品。まずは熟していない青いパパイヤで作るソムタムから。食材と一緒に用意されていたのは大きな石臼と棒。多くのタイの家庭ではこのような素焼きの石臼が調理器具としてあるそうで、サークと呼ばれる棒で食材を叩いたり割ったりすりつぶしたりして料理するのだとか。ということで唐辛子やにんにくから投入してつぶしていきます。

用意されたこの食材のたたずまいだけでもうっとり。こちらはソムタムの材料と石臼。
ソムタム作りの先生。慣れた手付きであっという間に絶品ソムタムを作ります
日本では茹でて食べるいんげんを、ぶつ切りの生で食べるのが新鮮

 今回やってみてソムタムのすべての食材やスパイスが石臼に入れられ、石の棒1つで調理されることにびっくり! つぶし方や叩き方で味が変わるらしく、先生は私たちが作ったものを試食して「塩をもう少し」とか「ライムが足りないわね」とか「もうちょっと砂糖を」とアドバイス。いろいろ味見してみたところ、やっぱり先生のが一番美味しいという結論に。う~ん、奥深いぞイサーン料理!

ソムタムのソムは「酸っぱい」、タムは「叩く」という意味だそう
なんだかそれっぽくなってきましたよ。これをお皿に盛り付けて
タイの青いパパイヤのサラダ、ソムタムの完成! 器がかわいい~♪

 2品目は「トムセップ」と呼ばれるイサーン地方のピリ辛スープです。こちらもハーブやスパイスをふんだんに使ったイサーン地方の代表的な料理で、豚肉や軟骨などがたっぷりと入った“酸っぱ辛い”スープはやみつきになる美味しさです。

室内に場所を移して「トムセップ」作り
チキンストックを入れた水のなかにレモングラスやトマトを入れて煮込みます

 このトムセップもまた、調味料のちょっとした加減でそれぞれ微妙に異なる味と仕上がりに。同じように作っているはずなのに、なぜか先生の作ったものは辛さと酸っぱさとしょっぱさが絶妙なのです。ちなみにイサーン料理の特徴は砂糖をあまり使わないこと。発酵食材の文化も根付いていたり、昔からバッタや蟻の卵など昆虫をタンパク源としてとっていたりすることなども特徴なのだそうです。タイ国内の食文化の違いっておもしろいですわね~。

グツグツ。レモングラスの香りが爽やか~
調味料いろいろ。少しのさじ加減でそれぞれ違う味になるのがおもしろい
先生に味見をしてもらいます
柔らかく下処理された豚の軟骨を投入
スパイシースープ、トムセップの完成

 昆虫食が根付いているというお話を聞いたところで、早速そのあとのランチで1品出てきましたわ、それがアリの卵のサラダ! 「こ、この白いつぶつぶがアリさんの……」とちょっとだけ躊躇しましたが、思い切ってパクリ。辛い味付けがされているので口の中でつぶれたときのマイルドさとちょうどいい感じで中和した感じ。意外とフツーに食べられましたわ~。

自分たちで作った2品のほかに、レストランで出たメニューずらり。これ、もち米以外全部辛い
デザートはココナッツミルク味の甘いシロップがホッとする一品
南国の植物や花に囲まれた敷地内でゆっくりイサーン料理を楽しめる、お勧めのレストランです

国境の町をサイクリングしながら散策

地元の人であふれるマーケットに立ち寄りました

 料理教室のあとは、北へ60kmほど移動してメコン川をのぞむ国境の町に到着しました。ここで用意されていたのが自転車。途中で市場に立ち寄ったりしながらサイクリングで6kmほどの市内観光を楽しみました。

ラオス国境のメコン川周辺をサイクリング

 途中で立ち寄ったマーケットには、みずみずしい色とりどりの野菜やハーブ、いろいろな種類の麺、そしてニワトリのさまざまなパーツや食材としてのカエルなども売られていてとっても楽しい♪ この町に長期滞在して、活気ある楽しい市場に毎日お買い物に来たいな~なんて夢が広がります。

地元の人であふれる市場。豊富な食材は魅力的な食文化を表わしていますね
白菜の漬物!?さすが発酵食品文化圏
スープに入るのかな?鳥の足いっぱい
カエルの串焼き。美味しそうだった
こんなのどかな景色のなかを通り過ぎ……
到着したのはメコン川沿いのレストラン
夕暮れ時のドラマチックな光景が

 サイクリングの終点はメコン川沿いのおしゃれなカフェ&レストラン「Hat kham」。ここで対岸のラオスに沈む夕日を眺めながら優雅な夕食となりました。いただいたコース料理「Life On The Mekong River」では、カリッと揚げた魚のフライや香ばしく焼かれて特製ソースに絡めた鶏肉の手羽が美味しかったです。国境と接する町で、お隣の国に沈む夕日を眺めるという貴重な体験は忘れられない思い出です。

対岸のラオスに沈む夕日
ナンプラー、粉唐辛子、酢漬け唐辛子、グラニュー糖の4大調味料
南国らしいお花の飾られ方に女性陣から歓声が

 以上、初日の成田出発から2日目までをお伝えしました。イサーン料理のストレートな辛さに最初はびっくりしていた胃袋でしたが、2日目が終わるころにはやみつきに。すっかり“酸っぱ辛い”食事に慣れてしまったゆきぴゅーでした。次回はオーガニック農園でのBBQ体験や、村でのお菓子作り、ピマーイ遺跡観光などをお伝えします。お楽しみに!

ゆきぴゅー

長野生まれの長野育ち。2001年に上京し、デジカメライター兼カメラマンのお弟子さんとして怒涛の日々を送るかたわら、絵日記でポンチ絵を描き始める。独立後はイラストレーターとライターを足して2で割った“イラストライター”として、雑誌やWeb連載のほか、企業広告などのイメージキャラクター制作なども手がける。