旅レポ
ザ・リッツ・カールトン・レジデンス・ワイキキビーチ 総支配人 ダグラス・チャング氏に聞く
2019年2月11日 00:00
2018年10月に新棟が完成し、グランドオープンを迎えたハワイ・ホノルルのラグジュアリーホテル「ザ・リッツ・カールトン・レジデンス・ワイキキビーチ」。
前2回はその新棟「ダイヤモンドヘッドタワー」に宿泊した様子を紹介してきたが、滞在中、ザ・リッツ・カールトン・レジデンス・ワイキキビーチ 総支配人のダグラス・チャング氏に、ホテルや日本人利用者向けの取り組みについて聞いてきた。
「ザ・リッツ・カールトン・レジデンス・ワイキキビーチ」新タワーにステイ
――新しいダイヤモンドヘッドタワーの魅力を教えてください。エヴァタワーと違いはどんなところにありますか。
チャング氏:ダイヤモンドヘッドタワーによって、245室の新しいレジデンスとレストラン、もう1つの大きなプールが加わり、リゾートとして完成したと思います。現在は全552室のうち340室のオーナーがレンタルプログラムを利用しており、残りはプライベートユースです。
――レジデンスオーナーもホテル利用者も日本人が多いと聞きますが、客室やホテル内施設において、日本人を意識した設備や装備はありますか。
チャング氏:日本では「リッツ・カールトン」にネームバリューがあるというのがまず第一でした。日本人はワイキキが好きですし、リッツ・カールトンも好きですよね。
それから、エヴァタワーを作る前に日本を訪れました。リッツ・カールトン大阪、リッツ・カールトン東京、リッツ・カールトン京都などを訪問して、「何を求められているか」をリサーチするなかで、「日本人は一つ一つがきちっと収まっているのが好き」だということに気付いて、バスルームにしてもコーヒーマシンにしても、日本人を意識した形で用意しています。バスタブが肩まで浸かれる形になっていたり、温水洗浄便座を用意していたりといった点もそうです。
――日本のホテルなどを訪れたときによかったと感じたところはありますか。
チャング氏:純粋におもてなしの心、真摯な思いを強く感じましたし、それはリッツ・カールトンの理念に通じるものです。ハワイには「マラマ」という「おもてなし」に近い言葉があるのですが、生活や文化のなかで育まれてきたものなので、ここ(ザ・リッツ・カールトン・レジデンス・ワイキキビーチ)ではそれを自然に体現することができるのです。
日本の文化を取り入れたトレーニングも実施しています。日本語のスピーカーを講師に招くこともあり、日本人の考えるクリアネス(清潔さ、片付いていること)など感覚的なものや、謝罪すべきときにどう謝れば気持ちが伝わるかといった繊細な部分の教育を行なっています。
――日本語を話すスタッフは何人程度いて、どの程度の習熟度ですか。
チャング氏:日本語を話すスタッフを集めるということを重要視しています。変動はありますが、だいたい25~30人くらいのスタッフが日本語での対応が可能で、チェックインなどの業務を行なうフロントは70%、コンシェルジュは50%、プールのスタッフも50%が日本語を話せます。スパに関しては、すべてのスタッフが日本人です。
――海外に来ているので「英語で話さなければ」と思ってしまいがちですが、思い切って日本語で話しかけても大丈夫ですか?
チャング氏:そのとおりです。英語でコミュニケーションしたいと考えている日本の方も多いと思いますが、何かあったときに日本語でサポートできるというのはとても大切です。
――日本人の利用者から過去に受けた改善要望があれば教えてください。
チャング氏:あまりないのですが、ライス(お米の銘柄)や味噌汁について要望を受けたことがあります。これはシェフたちが改善を進めています。ハウスキーピングに関していえば、スリッパを1人2足分用意して、部屋用とトイレ用で使い分けたいという希望もありました。細かいところでも、いただいたリクエストにはなるべく応えたいと思っています。
――日本ではリゾートウェディングに人気が高まっていますが、チャペルを計画しなかった理由はありますか。
チャング氏:レジデンスとしてのデザインが先にあったので、チャペルは含まれていません。ですが、プールで小規模なウェディングセレモニーができるようなプランを今後考えていきたいと思っています。
――2019年5月にANA(全日本空輸)が500席クラスのエアバス A380型機をホノルル線に就航します。ANAは計3機を導入する予定ですが、今後増えると予想される日本人客の取り込みについて具体的な対応を検討していますか。
チャング氏:ANAとはパートナーシップを組んで、新しい取り組みができないかと模索しているところです。過去にANAのファーストクラス利用者向けのサービスで成功を収めたので、A380型機就航以降も需要に即したサービスを展開できればと考えています。航空会社はANAだけでなく、JAL(日本航空)やハワイアン航空といった日本から就航しているエアラインはもちろん、H.I.S.(エイチ・アイ・エス)、JTBなどホールセラーともパートナーシップを結んでいます。彼らから要望をもらうこともあり、最近ではリッツ・カールトンのロゴの入ったトートバッグを作ったこともあります(編集部注:ハワイでは2018年7月からレジ袋が有料になっている)。
――ハワイでサンゴ礁に有害な成分を含む日焼け止めの規制法が成立したことが話題になりましたが、リッツ・カールトンで環境に対して配慮していることを教えてください。
チャング氏:現在実施しているのは、照明のLED化やペーパーレスの推進です。今後検討しているのは、まだ決まったことではありませんが、部屋に用意している水のペットボトルを個人のボトルに変える、といった施策です。
――2018年10月に行なわれたグローバル・ツーリズム・サミットでのHTA(Hawaii Tourism Authority:ハワイ州観光局)の発表によると、米国の好景気で本土からの送客が増えており、かつ(ホテルの宿泊料含む)物価も上がっていると聞きます。その影響を感じることはありますか。
チャング氏:数年前まではハワイへの年間訪問者が800万人と聞いて驚いていたのですが、今では年間1000万人を超えるペースになっていて、年々増えているのは実際に感じています。世界的にもラグジュアリートラベルという市場が大きくなってきていますし、ダイヤモンドヘッドタワーの開業は非常によいタイミングだったと思います。