旅レポ
JALの「どこかにマイル」でどこかに参ってみた(後編)
大久野島のウサギの可愛さに“まいった”。ウサギギャラリー掲載
2016年12月26日 17:22
JAL(日本航空)が、JMB(JALマイレージバンク)会員向けの特典航空券のバリエーションとして新たに設定した「どこかにマイル」。12月11日から申し込みが開始されており、一部では「マイルガチャ」なんて呼ばれたりもして人気沸騰中だ。仕組みや内容についての詳細は前編(羽田から6000マイルで女満別や宮古島など「どこになるかはお楽しみ」)および笠原氏の記事(前編、後編)を参照していただきたい。
さて、前編では申し込み開始と同時に試してみたら「広島」「高知」「女満別」「釧路」の4カ所が行き先として選ばれた、ってトコロまでを紹介した。ちなみに、このときに指定したのは「12月22日 出発時間05:00~08:59」「12月22日 到着時間19:00~23:59」「大人1名」だけ。要は日帰りでどこかに参って来よう、ってノリだ。
申し込み直後に来た「受付」メールでは、「15日までに行き先を決定してメールでお知らせ」するというアナウンスだった。まだしばらく掛かるななんて思いつつ記事を書いて編集部に送ったところ、タイミングよく「JAL国内線 【どこかにマイル】ご搭乗便決定のお知らせ」のメールを受信した。どこかにマイルの場合、宿泊を伴う日程だと決まるまで宿泊の予約ができないのが最大の問題点になるけれど、このぐらいすぐに教えてくれるのなら余裕を持って対応できる。
わくわくしながメールを読んでみると、予約内容確認ページへのリンクと、「ご搭乗便確定後のご搭乗者・区間などの変更はできませんのでご注意ください。」なんて注意事項だけ。リンクからページを確認すると行き先は広島で、往路がJL253便(羽田06時40分発~広島08時10分着)、復路がJL264便(広島18時05分発~羽田19時20分着)に決定していた。往路は少し早いものの復路はちょうど便利な時間になった。広島に滞在できるのはおよそ10時間とたっぷりあるものの、広島空港の場合、市内まで行くとなると60分前後の時間が必要になる。これをどう扱うかがキモになりそうだ。
と、思案しつつ、行き先が表示されていたページにある「エリア情報」を開いてみた。そこには広島周辺の「名所旧跡・風景」「温泉」「ご当地グルメ」「スポーツ」の4項目が紹介されていた。そこで見つけたとある場所にピンと来た。行きたい場所が見つからないならぶらぶらと気ままな旅もよいけれど、行きたい場所があるなら綿密な時間配分が必要になる。特に地方で複数の交通機関を乗り継ぐとなれば、ヘタをすれば1時間なんてあっという間に過ぎてしまう。
時刻表愛読者(元)としては、こういったスケジュール調整は得意中の得意。とりあえず満足いくものができたと思っていたら、前日、取材先の北海道で「ご搭乗案内」に加えて「【出発時刻未定】」なんてタイトルのメールが! それによれば、自分が復路に登場予定のJL264便は、新千歳空港から広島へのJL3406便が折り返し、羽田行きのJL264便になるようで、折からの悪天候で新千歳空港を出発する時刻の見通しが立たない、ってことらしい。この日の取材に同行していたT編集長は「ネタができていいじゃん!」なんて言っているけれど、暗雲立ち込めるとはこのことだ。
いざ広島へ
12月21日に仕事先の北海道から羽田へ戻り、ハワイアン航空の出発を見送ってから、翌朝再び羽田空港へ。スマホの「おサイフケータイ」を利用した「JALタッチ&ゴーアプリ」を使うと、航空券を持ち歩かないですむので、荷物の預け入れや保安検査場でのチェックがホントにラクちん。慌ただしくJL253便に乗り込み、今度は広島へのフライトだ。
気がつくとすでに広島上空。残念ながら小雨模様のようだ。ここからは8時55分発の路線バスに乗って三原駅へ。使えるICカードは「PASPY」と「ICOCA」だけらしいので、持っていないなら事前に切符(820円)を買っておくとスムーズ。空港の撮影をしたり朝食をすませたりしても、まだ若干時間があったのでJALのカウンターに行き、JL264便の件を聞いてみると「未確定」とのこと。「搭乗便の変更も承ります」ってことだったけれど、どうしても今日中に帰らなければいけないわけじゃないので、ここは一応保留にしておいた。
最初のバス停まで10分近く掛かるという路線バスとは思えない路線バスは、国道2号の渋滞にハマって13分延着。9時46分に三原駅に到着したものの、次に乗るべきJR呉線の広行きが出発するのは9時50分。ギリギリだったけれど、こちらは「SUICA」が使えたため、発車ベルが鳴り響く中、滑り込みでセーフ。ドアが閉まっていたので一瞬「ダメか」と諦めかけたものの、よく見たらボタンで開けるタイプでした。次の列車となると11時21分だから、これに乗れなかったら最強の手札を使って乗り物を召喚しなきゃいけなくなる。自分(のお財布)にもダメージがあるから、ここぞという時以外は使えない最後の切り札「タクシー」カードを! まぁ、使わずにすんだので結果オーライ、ではあるけれど。しかし、こういった事例(?)は、机上の計算だけで余裕のないスケジュールを組んでしまうとあとが大変、という好例と言えよう。
三原駅を出発すると須波駅、安芸幸崎駅、忠海駅、安芸長浜駅と、「波」「崎」「海」「浜」と海を連想させる駅名が続く。それにあわせて車窓にも瀬戸内の風景が広がるものの、この日はあいにくの天気でスッキリしない眺め。10時13分着の忠海(ただのうみ)駅で下車。
ここからは10時50分発のフェリーに乗って大久野島に向かう。フェリー乗り場は駅から約200mで5分ほどなので、ゆっくり歩いても余裕。自分のアシは確実だ。大久野島までの船旅料金は片道310円、往復620円。就航しているフェリー「第三おおみしま」は300人乗り。繁忙期には積み残しがでることもあるというけれど、この日は師走の平日とあって20名ほどが乗り込んだ程度。インバウンドのグループが目立つぐらいで、おっさん一人なのは筆者だけ。ちょっと場違いな感がなくはないものの、空いている(平たく言えばガラガラ)だけにそれほど浮いた感じはしない(と思う)。フェリーはゆっくりと瀬戸内海を進んでいく。こんな天気でも海の透明度は高く、波は穏やか。気持ちのよいクルージングが楽しめた。
15分ほどでフェリーは今回の目的地である大久野島の第二桟橋に接岸。ひと足先に降りた乗客達から歓声が上がる。よく見ると、その足下には小さな動物がまとわりついている。それは何かといえば「ウサギ」。リスやらウサギやらといった小動物に目がない(もちろん被写体として)筆者としては、いつかは来てやろうと思っていた場所なのだ。ついでに、来年(2017年)の干支が「卯」だったら文句ナシなのだけれど、まぁ、ウサギの数え方も「羽」だし、と強引にまとめておきたい。
それはさておき、この大久野島には野生化したウサギが数多く生息している。公式に約700羽ということなのだけれども、正直どこもかしこもウサギ“だらけ”。もっとたくさん棲んでいそうだ。何も持っていなくてもそこら中からわらわらと近寄ってきてくれるけれど、忠海港のフェリー乗り場で売っているエサを持って行くともう大変。バニーちゃん(君もいるだろうけど)たちにモテモテだ。
本当は11時40分のフェリーでさっくり帰る予定だったのだけれども、あまりのモテ度に気をよくしてしまい1本遅らせて13時48分発に乗ることにした。いや~、ウサギたちのかわいさに“まいった”わ。
忠海駅14時29分発の呉線広行きに乗り、14時41分着の竹原駅で下車。竹原は「安芸の小京都」と呼ばれる町で、明治~江戸時代後期の町並みが保存されている地区があり、某アニメの聖地にもなっている。作品名にはあえて触れないけれど、横須賀市民だったこともある筆者には縁が深い、かも。
竹原を第2の目的地として選んだのは、広島空港までのリムジンバス(と言う名のジャンボタクシー)が運行されているのも理由の1つ。所要時間はわずか25分で、広島市内から向かうよりずっと早いのも魅力だ。ただし、本数は少なくJL264便に接続するのは15時55分発と17時15分発の2便。しかし、後者はあまりにも時間的に余裕がなく、渋滞などのトラブルがあったら確実にアウト。余裕を見て前者にすると、竹原に滞在できるのは1時間ほどしかない計算になる。
駅前の案内所で話を聞いてみると、町並み保存地区(正式には「竹原市重要伝統的建造物群保存地区」)までは徒歩約15分とのこと。あまりにも時間が足りないので、片道は切り札を使うことにした。距離が近いのでレベル(料金)の低いカードでもOKだったのも後押ししてくれた。
630円で保存地区の中心に到着。いや~、速い速い。こういった街並みも好きであちこち訪ねているけれど、個人的にかなりツボ。あまり観光地然としておらず、人影もまばら(これはたまたまかも)。静かで、風情もあって素晴らしいムード。街並みを楽しみながらほぼ中心の高台に位置する西方寺にも“お参り”していく。境内には1758年に京都清水寺を模して建立された普明閣があり、舞台づくりの楼閣からは竹原の街並みを一望することができる。いや~、素晴らしい……。
けれどすぐにタイムオーバー。街並みを楽しむのもそこそこに、今度は徒歩で駅に戻った。その途中、ジャンボタクシーもしっかり予約。定員がわずか9名なので、乗る便が決まったら早めに予約しておいた方が安全だ。乗れなかった場合、別のルートを使うとなると、時間的にまず間違いなく間に合わないのだ。
きっかり満員のジャンボタクシーに乗ったところでメールが着信。え、どんなメールかって? もちろん「【欠航】12月22日JAL0264便」ですよ。はぁ、まいったなぁ。
さて、どうしたものか。とはいえ、ジャンボタクシーに乗ってしまった以上、とりあえず空港に行くしかない。広島空港に到着すると、まずはJALカウンターへ。話を聞いてみるとどこかにマイル(=特典航空券)の場合、今回のような天候事由による欠航だと、JALのWebサイトによる対応になるとのこと。
どこかにマイル ご利用方法
悪天候や地震の影響で搭乗予定便が欠航になるかもしれない(または、欠航・遅延になった)場合、どこかにマイルの航空券の取り扱いはどうなりますか。
ホテルやほかの交通機関の運賃は支払われないので、新幹線を使いたい、なんて場合は払い戻して新たに切符を買うことになるワケ。
払い戻しは今回だとすでに広島に来ているため、復路の3000マイルのみ。当日飛ぶ復路予約便の変更ということにしたが、前日からメールが届いていたこともあって先手を打っている乗客が多く、すでに満席とのこと。キャンセル待ちはできるものの、まぁ、これはムリでしょってことで、翌日のJL264便に振り替えることに決定。ホテル代は自腹になるけど、1日増えたと思えば万事オッケーである。23日は祝日だしね。広島市内行きのリムジンバスを待っている間にホテルを予約、想定外の事態も事なきを得たのだった。
予想外のアディショナルタイムは?
明けて翌日23日。スマホを見ると、今度は「【天候調査】12月23日JAL0264便」ってメールが届いていた。北海道の天候がアレなんだからダメだよね、と思いつつ、今度は電話でさっさと最終便への振り替えを依頼。帰りのアシを確保することができた。
ボーナスのように増えた1日、どこに行くかさんざん迷った末、選んだのは定番中の定番「厳島神社」。だって、まだ行ったことないんだもん。そうと決まったら「広電」の1日乗車券を購入。広島駅から宮島口駅まで1時間あまりの路面電車の旅を楽しみつつ、そこからはフェリーで宮島へ。朱塗りの回廊と大鳥居を眺め、鉄道ファンにはお馴染み宮島口の駅弁「あなご飯」に舌鼓。JL266便の「クラスJ」に空きがあったために、JALカウンターで当日購入額の1000円でシートを確保。ゆったりとしたクラスJシートで羽田へと戻り、どこかにマイルの旅は無事に(?)終了したのだった。
今回の旅は、いろいろな“まいる”があったけれど、単なる旅行とは違う面白さがあったのもまた事実。普段、行こうと思っていても行けなかった場所に、半分以下のマイルで行くことができたのはこの企画ならでは。行く先々で自由にスケジュールを変更するなど気ままな旅が楽しめるのは面白いし、なにより後々記憶にも残るもの。どこかにマイルを使ってどこに行くのか分からない、そんな旅をぜひ楽しんでみてほしい。