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三菱航空機、量産初号機納入が1年遅延する「MRJ」開発状況説明会

「安全性を高めるための強度の改修を実施」

2015年12月24日 発表

三菱航空機と三菱重工業、MRJ量産初号機の納入時期を含めた開発スケジュールの見直しを発表

 三菱航空機と三菱重工業は12月24日、「MRJ(Mitsubishi Regional Jet)」量産初号機の納入時期変更の発表を含めた開発状況説明会を実施。同説明会には三菱航空機 代表取締役社長 森本浩通氏、同取締役副社長執行役員 岸信夫氏と、三菱重工業 取締役副社長 鯨井洋一氏が出席した。

 今回両社は、MRJ量産初号機の納入時期に関して、当初予定していた2017年第2四半期から、1年程度先となる2018年中頃に変更することを発表。同説明会では、開発を担当する岸氏からMRJ開発の最新状況と全体スケジュールの見通しについて説明がされた。

三菱航空機 取締役副社長執行役員 岸信夫氏

 岸氏は、2015年10月3日~11月7日に13回行なった走行試験で、「脚操舵特性」「制動特性」「走行速度領域拡大(10-120kt)」「緊急制動特性」「緊急離陸中断」を実施したことを報告。「全て良好な結果」と話した。

 11月11日、19日、27日の3回行なった飛行試験では、「離陸性能」「上昇下降性能」「着陸性能」「脚上げ/下げ」「フラップ動作特性(30-0度)」「飛行特性(0-15000ft/0-200kt)」「旋回性能」試験を実施したことを報告。これらについても、「飛行試験の後データを確認して、元々設計上想定していた内容で、期待された基本的な特性を全て確認しています」と述べた。

 岸氏は、現在実施している機体の改修について、全機静強度試験を反映し、機体強度を向上していることを明かし、「初飛行には問題ないが、その後の飛行試験でより安全性を高めるための強度の改修を実施しています。主翼の付け根の部分と胴体の改修を実施しています」と説明した。

 加えて岸氏は、「機体システムに組み込まれているソフトウェアのバージョンアップ。例えばアビオニクスの表示やフライトコントロールのソフトウェア。地上試験や飛行試験で得られた内容をより機体の完成度を高めるために、通常行なわれる改修として実施している」と話した。

 岸氏は「現在実施ている改修は(2016年の)1月の中頃には完了して、その後、時期を見て飛行を再開したい」とした。

説明会のプレゼンテーションで示したスライド

 今回のスケジュールの変更要因について触れた岸氏は、「飛行機が完成した状態で空中を模擬する装置を繋げて地上滑走から上昇下降する、一連のシミュレートする試験を追加したことと、4月の段階では予見し難かったペダルの改修などの事項も発生した」ことを挙げた。

 3回の飛行試験を含めた初飛行までのプロセスの有効性を強調しつつ、初飛行終の飛行試験データについては、シアトル地区のエンジニアと三菱航空機のエンジニアで全体工程を見直したことを明かし、「試験の追加、試験の内容の変更を行なって、装備品のパートナーとも全体レビューを一緒に行ない、現在、我々が定めた開発スケジュールに沿って納入の約束を得ている」と話した。

 なお、一部報道によるスケジュール変更の要因について、岸氏は「ANAさんによる仕様変更の要請や、主翼の強度が不足しているためにスケジュールが変更になったのではないかといった報道がありましたが、そういった事実はございません」と、これを否定した。

 説明の締めくくりとして岸氏は、北米での飛行試験の早期実現を目指すとともに、三菱航空機本社、シアトルエンジニアリングセンター、モーゼスレイクテストセンターの3拠点の役割・体制を明確化するなど、スケジュール精度を高めるため施策を講じて、開発作業を推進していく方針を示した。

三菱航空機 代表取締役社長 森本浩通氏

 一方、初飛行後の反響について、森本氏からは「初飛行後の商談の状況については、引き合いはここにきて増加している。かなり具体的な計画で話を進めている案件もあり、やはり初飛行の成功は大きい」とコメントした。

(編集部:椿山和雄)