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THE ROYAL EXPRESSの東海道・富士クルーズに乗ってきた。車窓を愛でながらご当地の絶品料理をいただく至福の旅
2025年11月4日 12:00
- 2025年11月2日 実施
JR東海と東急は11月2日、「THE ROYAL EXPRESS~TOKAIDO・FUJI CRUISE TRAIN~」のメディア向け試乗会を実施した。
THE ROYAL EXPRESSとは
「THE ROYAL EXPRESS」は、伊豆急行の2100系電車を改造して生み出された観光列車で、2017年7月に運行を開始した。これまでに北海道や四国で運行したほか、2024年の秋と2025年の春には静岡県内でも運行している。
そして11月7日から12月22日にかけて、「THE ROYAL EXPRESS~TOKAIDO・FUJI CRUISE TRAIN~」と題して、横浜を発着地として静岡県・愛知県・岐阜県をめぐる、3泊4日行程での運行が行なわれる。
静岡・愛知・岐阜といえば、富士山や浜名湖、蒲郡付近の海に近い区間、木曽川・長良川・揖斐川を渡るあたり、岐阜城など、車窓のハイライトがさまざまある。また、地域によって瓦屋根の色が変わるなど、地域性の違いも実感できる。
1泊目は静岡(泉ヶ谷工芸ノ宿和楽またはホテルアソシア静岡)、3泊目は浜名湖(KIARAリゾート&スパ浜名湖)と、いずれも静岡県内。2泊目はコースによって異なり、東海・犬山コース(11月28日・12月12日・12月19日出発)では犬山(灯屋迎帆楼、またはホテルインディゴ犬山有楽苑)、美濃・岐阜コース(11月28日出発)では美濃(NIPPONIA美濃商家町)または岐阜(都ホテル岐阜長良川)となっている。
車内の模様
THE ROYAL EXPRESSは8両編成で、定員は約50名。ただし、今回のツアーでは募集を13組・26名程度としている。
8両編成のうち、客室が設けられているのは4両で、残り4両はダイニング、キッチン、多目的車(マルチカー)という割り振り。客室はゴールドクラスとプラチナクラスがあり、いずれも座席車。そのため夜行での運行は行なわず、宿泊は沿線の施設を利用する。
THE ROYAL EXPRESSの編成
(↑静岡・岐阜方)
1号車: ゴールドクラス、展望室
2号車: ゴールドクラス
3号車: マルチカー
4号車: キッチンカー
5号車: ダイニングカー
6号車: ダイニングカー
7号車: プラチナクラス
8号車: プラチナクラス、ライブラリー、展望室
(↓横浜方)
マルチカーは、コンサート、結婚式、展示会といったイベントの会場となるほか、フリースペースとしても使われる。
THE ROYAL EXPRESSでは、食事の際にピアノやバイオリンの生演奏が行なわれている。そのため担当の演奏家がいて、楽曲も専用に作曲されたものがあるという。どういう事情によるのか、7号車だけ電子ピアノという違いがある。
試食の模様
本ツアーでは、朝食と夕食は宿泊施設を利用する。よって、車内における食事は昼食となり、毎日、以下のように内容が変わる。
・1日目(横浜~静岡間):「エルマイヨン」
・2日目(静岡~岐阜間):「鰻処 うな正」
・3日目(岐阜~鷲津間):「BOTTEGON」
・4日目(浜松~横浜間):「中国料理 村松」
今回の試乗会では、これらのうち「BOTTEGON」のイタリア料理が試食に供された。
なお、THE ROYAL EXPRESSの車内で中華料理を出すのは今回が初めて。車内では直火を使えないなどの制約があり、スチームコンベクションオーブンやIHを使う。それを考慮して調理の方法を工夫することで、初の中華料理を実現できたとのことだった。
そこで「BOTTEGON」の山口氏にお話を伺ったところ、「厨房の設備がしっかり整っているため、特に不便を感じるようなことはありません」とのこと。ただ、お店であれば炭火や薪を使って香りをつけるようなことができるが、それは車内では実現できない。
実際に列車のなかで調理してみることで、オペレーションや時間の配分に関する確認や、改善点の洗い出しができる。「揺れる車内なのでパスタは難しいかなと思ったんですが、今日の様子だと、できるかもしれないと思いました」(山口氏)。事前に想定していたよりも揺れが少ないと分かれば、調理の幅が広がるわけである。
事前に乗客の年齢層などに関する情報を知らせてもらい、それもメニューや味付けの参考にしているという。車内では胃もたれしやすい傾向があるからということで、塩分を控える工夫をしたとのことだった。
沿線との連携
THE ROYAL EXPRESSは現在、運行路線の沿線にあるレストランのシェフに、車内での食事をお願いする形となっている。その際、沿線にあるお店というだけでなく、沿線で手に入れられる食材を活用することもポイントになっている。この列車の運行を通じて沿線をフィーチャーするという意味があるからだ。
例えば、試食に供された伊勢海老の蒸し焼きでは、イタリアのパレルモを原産地とするパプリカを使用している。これは岐阜県で栽培しているものだ。そして、食材の入手性や旬まで考慮に入れてメニューを組み立てているのだという。
列車を走らせるための裏方のお仕事
そのシェフの人選に加えて、宿泊施設の選択や手配といった話はもちろんのこと。すでに多くの列車が走っているところに新たにスジを引く形になるから、そちらの調整も行なわなければならない。
このあたりについて、JR東海 東海鉄道事業本部 運輸営業部 営業課 担当課長の沖健太氏と、東急 社会インフラ事業部 事業統括グループ 部長の松田高広氏にお話を伺った。
列車の位置付けから運行は日中となるので、まず東急とJR東海で「どんなダイヤで運行するか」という検討を行なう。そして、既存の定期列車の間にスジを入れていくとのことだった。
特に本数が多いのは、豊橋~岐阜間。この区間、東海道本線では基本的に新快速と普通列車が15分サイクルで走り、さらにその間に貨物列車や特急列車が入ることもある。そうした定期列車の時刻はずらさずに、空いているところに新たなスジを引いていく。
既存の列車と“あたらない”ようにするのは当然のこと、途中の駅で後続列車を待避する場合には、空いている番線があるかどうかも問題になる。試乗列車は途中で何回も後続の列車を待避したが、あとから追加する「盛りスジ」だから、そういうことになる。
そして、普段はJR東海では使用していない伊豆急行の車両が走るが、それを運転するのはJR東海の乗務員だ。だから、運転士も車掌も、車両の扱いに習熟する必要がある。今回の試乗会は、単に報道関係者に見てもらうというだけでなく、訓練運転という意味合いもある。
「運転士は、前後の列車との位置関係や車窓を、すべて頭に入れており、そうしたことを考慮しながら運転しています」(JR東海 沖氏)
実際に車内で接客を担当するのは東急のクルーだ。単に接客を担当するだけでなく、事前に沿線のことを勉強して、お客さまの様子を見ながら適宜、車窓のガイドをするような場面もある。
車両は伊豆急行のものだから、車両そのものの検修は伊豆急行が担当している。しかし、接客設備の部分は東急のクルーが自らメンテナンスを行なっているという。その作業の過程で、「この部分はこんなふうになっていたのか」といった発見があるそうだ。
そこで教えていただいた話のひとつが、腰掛に取り付けられている肘掛。出入りをしやすくするための配慮から、通路側の方が短くなっている。
まだ受付中
記事執筆の時点では、12月12日の出発分と、12月19日の出発分について、先着順での受付が行なわれている。その後、1月は伊豆での運行を予定している。
THE ROYAL EXPRESSには熱心なリピーターがいて、新しい地域で運行するたびに乗りに来て「完全制覇」した方もいるそうだ。ほかの地域の方が東海地方を訪れるだけでなく、「地元の方に乗っていただいて、改めて『地元っていいな』と思っていただけるようにもしたい」と東急の松田氏は話していた。
















































