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伊豆急行と東京急行電鉄、水戸岡デザインの伊豆観光列車「THE ROYAL EXPRESS」

2017年夏運行開始、横浜駅にはラウンジ設置

2016年11月17日 発表

伊豆観光列車「THE ROYAL EXPRESS」の発表会にて、写真左から東京急行電鉄株式会社 取締役社長 野本弘文氏。株式会社ドーンデザイン研究所 水戸岡鋭治氏。伊豆急行株式会社 取締役社長 小林秀樹氏

 伊豆急行と東急(東京急行電鉄)は、2017年7月からJR横浜駅~伊豆急下田駅で運行開始予定の観光列車の名称を「THE ROYAL EXPRESS」とし、車両デザイン、シンボルマークロゴなどを発表、発表会を行なった。キャッチフレーズは「美しさ、煌めく旅」。運行にあわせて、横浜駅には専用のラウンジも開設される。

 会場では、THE ROYAL EXPRESSのコンセプトにあわせて、クラシックやイージーリスニング音楽の生演奏が行われたり、豪華な花で飾るなどイメージを感じてもらうための工夫がされていた。

THE ROYAL EXPRESSの車両デザインは水戸岡鋭治氏が担当

 THE ROYAL EXPRESSの車両デザインは、JR九州のクルーズトレイン「ななつ星in九州」や「或る電車」など多数手がけるドーンデザイン研究所 水戸岡鋭治氏が担当。外観はロイヤルブルーを基調として金色のラインをアクセントとし、伊豆半島の海の「碧」や高原の「青」を感じさせている。

 運行する区間はJR横浜駅~伊豆急下田駅間で、約3時間程度で結ぶ。8両編成で運行し、販売席数は100席。車両は既存のアルファリゾート21をベースとしている。週に2日が基本の運行で、繁忙期には増便も予定している。料金は、運賃と食事、飲物を含め2万円~3万円を予定し、料金体型は2コース用意する。

 シンボルマークは「ROYAL」の「R」をモチーフに、水資源豊富な伊豆の水滴をイメージし、上に王冠を載せたデザイン。文字のロゴタイプはクラシックなセリフ系を組みあわせ、エレガントに仕上げている。

THE ROYAL EXPRESSの車両デザイン。ロイヤルブルーを基調に金色のアクセントラインが入る
THE ROYAL EXPRESSのロゴ。水滴をイメージし、上に王冠を載せたデザイン
ロゴマークの展開
運行する区間はJR横浜駅~伊豆急下田駅間

 車内デザインは、可能な限り木材を使い、森の中にいる感覚になるイメージ。8両の車両ごとに異なる機能とデザインとなる。素材と工法には先端技術を使い、これに伝統的な素材と職人の技を組み合わせ融合した豪華な内装となる。ななつ星を制作した職人集団がそのまま携わり、同様の組子細工があしらわれる予定。

 伊豆急下田方面に向かう側から1~2号車が「ファミリーカー」、横浜側となる5~8号車は「プレミアムカー」となっている。プレミアムカーのうち5~6号車が食堂車になっていて、移動して食事をとる。ファミリーとプレミアムでデザインは異なるが、内装はどちらも車内が楽しめる豪華仕様となっていて、「内装デザインでの差別化は考えていない。提供される料理が大きく異なるようにする」(ドーンデザイン研究所 水戸岡氏)とのこと。

 1号車のファミリーカーには、先頭となる展望客室と「木のプール」のあるキッズコーナーも設けられ、ニーズや機能で分けていることが分かる。料金はこの2種が設定される予定。

 6号車のプレミアムカーには、職人が握る寿司カウンター(サービスコーナー)もあり、「寿司カウンターは野本社長から、ぜひ欲しいとリクエストがあり設置した」(水戸岡氏)と、金目鯛など伊豆の海の幸の提供が期待される。子供などの希望に応じ、おむすびの提供も予定しているとのこと。4号車は「キッチンカー」で、通路以外1両ほぼすべてが厨房として機能し、提供カウンターが設けられている。

 また車内にはピアノが置かれ、食事中に音楽の生演奏も予定されている。3号車のマルチスペースカーでは、コンサートやミュージアム、ブライダルなど多目的な活用も考えられている。ここはパーテーションで仕切ることも可能。「マルチスペースは初めて手がけます。東急グループですから、デパ地下やハンズが入ったりすることもあるかも知れません。今までにない新しい旅を創出できるはずです」(水戸岡氏)とのコメントや、「車両を貸し切っていただき、さまざまな企画で活用してもらうことも考えていきたい」(東急 竹内氏)などと解説があり、列車の特徴のひとつと言える。

THE ROYAL EXPRESS列車編成
7号車プレミアムカー
6号車プレミアムカー
6号車プレミアムカー。寿司カウンター(サービスコーナー)まわり
2号車ファミリーカー
1号車ファミリーカーには、先頭の展望客室と「木のプール」のあるキッズコーナーも設けられる
4号車キッチンカー
3号車マルチスペースカー。コンサートやミュージアム、ブライダルなど多目的な活用も考えられている

横浜駅にはカフェ・ラウンジ設置、運行日は専用ラウンジとして利用

 THE ROYAL EXPRESS運行にあわせ、横浜駅にはカフェ・ラウンジを設置する。通常は一般でも使えるカフェ&バーとしてオープンし、THE ROYAL EXPRESS運行日には、隣接するラウンジが専用ラウンジとして利用できるようになり、セレクトショップも併設する。「これまでの経験から、出発前のラウンジはとても好評で、ぜひ必要と考えた」(水戸岡氏)

 また、伊豆急下田駅周辺でも運行にあわせたリニューアルが計画されている。

 駅前から寝姿山自然公園に向かうことのできる下田ロープウェイ寝姿山山頂駅を改修するほか、山頂店舗施設も「RESTAURANT THE ROYAL」としてリニューアルを計画している。これらの設計についてもドーンデザイン研究所が手がける。

 ほかにも列車運行に先立ち、東急ホテルズが運営する下田東急ホテルでは、2017年3月17日リニューアルオープンを目指し、全館休業して客室、レストラン、ロビー、大浴場を改修工事中。

横浜駅ラウンジ内部イメージ
横浜駅ラウンジ外観イメージ
下田ロープウェイ寝姿山山頂店舗施設イメージ
下田東急ホテルリニューアルオープン後のツインルーム完成イメージ
下田東急ホテルリニューアルオープン後のレストラン完成イメージ

東急電鉄創業者 五島慶太は伊豆を大変愛していた

東京急行電鉄株式会社 取締役社長 野本弘文氏
THE ROYAL EXPRESSの名称とロゴデザインを発表する野本社長

 発表会では冒頭に伊豆の魅力を伝えるムービーが流され、続けて東京急行電鉄 取締役社長 野本弘文氏が挨拶に立った。「東急電鉄創業者 五島慶太は伊豆を大変愛しておりました。“五島慶太は伊豆とともに生きている”は寝姿山山頂の顕彰碑にこめられ社是にもなっています。その後さまざまな苦難を乗り越え、1961年に伊東と下田を結ぶ伊豆急行が開通いたしました。

 その後旅行ブームがあり、リゾート21という車両を登場させ、伊豆観光も一気に全国区になりました。1990年代からは経済低迷や伊豆の地震などもあり、観光客が半減してしまいました。伊豆は自然に恵まれ、美味しいものもあります。これからさらに伊豆の魅力を知っていただこうと施策を続けています。伊豆の魅力を伝える“伊豆急 オモシロ駅長”であったり、オリーブを名産にするという活性化プロジェクトでは6千本近く育てています。伊豆に多くの方が来ていただけるきっかけを作っていく必要があるということで、当社60年におよぶ伊豆への思い入れの結晶である観光列車を開発しました。

 目的地に向かう手段ではなく、列車に乗ったときから旅が始まったと感じていただくこと、憧れを持ってもらえ、豊かな時間を過ごしていただけること、を提案していきたいと思います。一度は『乗ってみたい』と、乗った方は『また乗ってみたい』と感じてもらえるよう願っています。インテリア、食事、音楽の生演奏、クルーのおもてなしから、乗客ひとりひとりの記憶に残るサービスを考えています。

 観光列車の名前は“THE ROYAL EXPRESS”です。“ROYAL”には伊豆のすばらしさと気品、特別感のある観光列車にしたいという思いをこめています。事業的に必ずしも大きく利益が出るものと思っていません。この観光列車を走らせることで、伊豆が元気になってくれればと考えています。2017年7月運行開始のTHE ROYAL EXPRESSにどうぞご期待ください」と、東急電鉄の歴史から伊豆への思いを語り、THE ROYAL EXPRESSの名称とロゴを発表した。

株式会社ドーンデザイン研究所 水戸岡鋭治氏

 続けて、ドーンデザイン研究所 水戸岡鋭治氏から、車両の内外デザイン、ロゴマークの詳細解説があった。「JR九州で約30年間鉄道のデザイン、サービス、文化について学習させていただき、培ったものをこの伊豆でお役に立てればと思い参加します。街が走るような舞台を作ることがテーマです。伊豆の経済と文化、人を結ぶ豊かなコミュニケーションが自然と生まれる移動空間を目指しました。

 普遍性と機能美を追求すると同時に、地域のアイデンティティを洗練された形で表現する、そのためには地域の素材と職人の技、最先端の高度な技術をコンテンポラリーに使いこなせるよう、ユニバーサルデザインの充実に努めています。THE ROYAL EXPRESSは感動と楽しさを持っています。開放感の生まれるガラスをふんだんに使い、古今東西の意匠やデザインを曼荼羅のように組み合わせてオンリーワンを作っています。最高の素材と職人の技術を組み合わせて、今までにないものを作っていく、そういったテーマを組み込んでデザインしています。これまで制作したデザインの流れを汲みながら、伊豆ならではの車両を作っていきたいと、多くの職人とともに考えているところです。

 JR東日本のIZU CRAILE(伊豆クレイル)とは違い、職人による手作りです。今日お見せするのは完成予想図で、色や細かなディテールはこれから検討していきます。これだけの車両を本当に来年夏までに完成できるのか、とても不安ですが全力で取り組んでいきます。23年前にできた車両を蘇らせるプロジェクトです。いまだかつてない車両で、伊豆を元気にしていければ思っています」と、説明の中でコンセプトや思いを語った。

 続けて、東京急行電鉄 鉄道事業本部 事業推進部 統括部長 竹内智子氏からは、概要の説明もあった。

東京急行電鉄株式会社 鉄道事業本部 事業推進部 統括部長 竹内智子氏
伊豆急行株式会社 取締役社長 小林秀樹氏

 最後に、伊豆急行 取締役社長 小林秀樹氏が「当社は55年前に伊豆に開通し、以来伊豆の東海岸の大動脈として利用していただいています。伊豆は東京からわずかな距離でありながら、豊富な温泉があり、金目鯛、伊勢エビといったおいしい食材にも恵まれ、下田のあじさい、早咲きで有名な河津桜と四季折々の花も楽しめる場所です。伊豆半島は海底火山を起源としていて、たいへん珍しい地形があちこちに見られます。これにより日本ジオパークの認定を受けています。見所の多いエリアだといえます。

 今回のTHE ROYAL EXPRESSの運行により、伊豆の旅に新たに大きな魅力が加わります。伊豆急行と下田の町は連携をしていきます。来年3月には東急ホテルズが運営する下田東急ホテルが半年の改装を終え、リニューアルオープンします。下田ロープウェイ寝姿山山頂店舗の飲食施設へのリニューアルも計画しています。下田駅構内を活用したマルシェの実施も計画中で、THE ROYAL EXPRESSの乗客と地元の方々の交流をはかる仕組みも作っていきます。

 今年7月に運行を開始したJR東日本の観光列車“IZU CRAILE(伊豆クレイル)”もたいへん好評のようです。THE ROYAL EXPRESSの運行開始を機に、これまで以上に東急電鉄、JR東日本、地元バス会社、タクシー会社、宿泊事業者、地元と一体になって相乗効果を生み出して、思い出に残る付加価値の高い旅行を提供できるように努力をしていきます」と今後の展望を含めて挨拶があった。

THE ROYAL EXPRESSのテーマ曲を生演奏で披露

 車内での音楽生演奏の演出にあわせ、ヴァイオリニストのプリマヴェーラ・アーツ 大迫淳英氏プロディースにてTHE ROYAL EXPRESSのテーマ曲「THE ROYAL EXPRESS」も制作された。その曲の本人による生演奏が、ピアノとチェロとのトリオにて披露された。THE ROYAL EXPRESSの特徴のひとつが、音楽で旅のシーンを彩ることともしている。

ヴァイオリニストのプリマヴェーラ・アーツ株式会社 大迫淳英氏
大迫氏の演奏
ヴァイオリン、チェロ、ピアノでの演奏

THE ROYAL EXPRESSの車両デザインや機能

 発表会では、別室に大きな解説パネルを用意、THE ROYAL EXPRESSの車両デザインや機能が解説されていた。

THE ROYAL EXPRESS解説パネル
コンセプトや車両外観デザインなどの解説パネル
8~6号車の解説パネル
6~4号車の解説パネル
3~1号車の解説パネル
横浜駅のカフェ・ラウンジ、下田ロープウェイ山頂の展望カフェなどの解説パネル
パネル前でデザインについて質問に答える水戸岡氏

2017年1月~2月頃に詳細発表予定、車内クルーの募集も開始

 発表翌日となる11月18日からは、現社員に加えて新たに採用する車内クルー1期生のスタッフ募集を開始。今後、2017年7月運行開始に向けて、シェフの選定、車内サービス内容、運行日など詳細が決まる予定で、2017年1月~2月頃に発表される。

会場受付前で四重奏による生演奏
開始前にはピアノによる生演奏
お茶菓子なども
机上のブーケ
受付で飾られた生け花