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海運を知るミュージアム、大阪に登場! 商船三井「ふねしる」を見て・体験して・食べてきた

2025年7月19日 開業

 360度をぐるりと海に囲まれた日本で、輸出品・輸入品は、どこから来るの? そんな海運と海のお仕事をテーマにした博物館「商船三井ミュージアム ふねしる」(大阪府大阪市住之江区南港北2-1-10)が、7月19日にオープンする。場所は、大阪市住之江区の「アジア太平洋トレードセンター」、フェリー「さんふらわあ」ターミナルの目の前だ。

 このミュージアムを作った商船三井グループは、さんふらわあをはじめとして、クルーズ船・貨物船などを手広く展開している。ふねしるでは、そんな船が果たす役割や海での仕事などを、丁寧に分かりやすく、かつリアルに体験できるよう展示している。

 なかには大型フェリーの船長の教育施設とほぼ同様の、本格的な大型シミュレーターを体験できるコーナーもあり、何度も挑戦してしまうこと必至だ。

141年の商船三井の歴史で初の本格ミュージアム

株式会社商船三井 常務執行役員 ウェルビーイングライフ事業本部長 向井恒道氏
株式会社商船三井 ふねしる 館長 上田和季氏

 テープカットに先だって登壇した商船三井 常務執行役員 ウェルビーイングライフ事業本部長の向井恒道氏によると、商船三井がここまで本格的なミュージアムを開設するのは、141年の歴史のなかで初めてのことだという。

 さんふらわあは、目の前のターミナルから鹿児島・志布志、大分・別府などと毎日往復している。ターミナルの至近距離にあるふねしるで船や海を身近に感じてもらい、ゆくゆくは「ふねしるがきっかけで船乗りになった、海や船の仕事に就いたという方が、一人でも多く出てくることを願っている」と、抱負を述べた。

 続いて登壇したふねしる館長の上田和季氏によると、氏が商船三井の新規事業提案制度に応募し、採用されたことからふねしるが誕生したという。

 上田館長は2015年から足掛け5年にわたって「京都鉄道博物館」に勤めており、のちに「フェリーさんふらわあ(現在の「商船三井さんふらわあ」)に転職。さんふらわあ乗組員としての経験も長く、各地のミュージアムを巡りつつ、大型フェリーや旅客船の世界を深く知ったことで、「海運の魅力を伝えたい」との思いが強くなり、今回のミュージアム開設に至ったとのこと。

 ふねしるは構想当初から、上田館長と付き合いのあるさんふらわあ乗組員の意見が反映され、オープン前にも展示を見てもらって好評だったといい、いわば“現場のお墨付き”とも言えるだろう。

「ふねしる」何を知れる? 3つの有料エリア、徹底解説!

 ふねしるロゴが入った巨大コンテナを目印に通路から入っていくと、フロアは入館無料の売店・カフェと有料エリア(高校生以上500円、小中学生250円、未就学児無料)に分かれている。

 有料エリアは「海運を知る」「仕事を知る」「商船三井グループを知る」の3エリア。まずは「海運を知る」エリアから入ってみよう。

「海運を知る」エリア

「海運を知る」エリアの壁面は、長さ10mはあろうかという、巨大なパノラマシアターで海の仕事を紹介している。手前には商船三井グループのフェリーさんふらわあ、クルーズ船「三井オーシャンフジ」、コンテナ船などの模型が並び、それぞれの船の大きさや役割の違いを、目で見て学ぶことができる。

 隣の「モノからたどる船」では、カレーや衣服など、身近なものの原材料が世界のどの海から来るか、目で見て学ぶことができる。輸出入の99%を海運に頼る日本で、船がどこまで重要な役割を果たしているかを実感できて学べる展示だ。

 その横では、描いた船の絵が壁画を動くという、インタラクティブアートのコーナーも。希望次第で、Tシャツやトートバッグに描いた絵をプリントして持ち帰れるので、記念にどうだろうか(生地・プリント代金は別途必要)。

「仕事を知る」エリア

「仕事を知る」エリアでは、航海士・アテンダント・機関士など、海上での仕事を細かく紹介している。なかにはピストンエンジンを動かしたり、機関士になって停電時の非常電源をつないだり、ポンプを起動させたりと、ちょっとハラハラする場面をゲーム感覚で体験できる。ふねしるはミュージアムなのに、全部やると汗をかくぐらい、スリルある体験ができるコーナーが多い。

挑戦者求む! 操船シミュレーター

 そしてお待ちかね、シミュレーションゲームのコーナーだ。メインとなる「操船シミュレータ」はさんふらわあが実際の研修で使用しているものとほぼ同様のシアターを使用しており、自らがハンドルを操作しながら大阪入港・明石海峡大橋通過などを体験できる。室内にある速度計(ノット表示)や風速計・風向計などのメータ-の並びも、本物の研修施設を参考にしているという。

 さらに、操船用の機材やハンドルも、「そこまで忠実に再現しなくても!」というほど堅く、大型船の操船の難しさをほぼそのまま体験できる。準備しているモードのなかでも、悪天候や時化、夜モードではまっすぐ進むことが難しく、「電車でGO!」などのシミュレーションゲームをプレイした人でも「これ難しい!」と音を上げる完成度であった。

 ゆくゆくは、本物のさんふらわあ船長の挑戦や、世界各国の港の追加など“やりこみ要素”の追加も検討しているという。

 1回の操作に500円かかるが、ミュージアムにあるシミュレーションでここまで手ごわいのは、ふねしるだけかもしれない。腕に覚えのある方は、ぜひ挑戦を! そうでない方は、手前に「ガントリークレーン操作」「小画面での操船シミュレーション」もあるので、そちらで腕試ししてみるのもよいかもしれない。

商船三井グループを知る

 今の商船三井グループの歴史は、1884年に創業した「大阪商船」から始まる。時代の波を乗り越え、海運業界をリードしてきた商船三井の仕事ぶりも、ふねしるでチェックできる。

 フェリーさんふらわあは「くれない・むらさき」などのLNG燃料船への切り替えが進んでおり、風と水素で動く船「WIND HUNTER」などの開発も進めている。従業員1万500人、船舶運航規模は世界第2位という海運業界のトップランナー・商船三井の仕事ぶりも、最後にチェックしていこう。

レアグッズ&レアアイテムがいっぱい! 売店&レストラン

 有料エリアの出口にある売店・カフェは、営業時間内(日~水曜10時~18時、金・土曜10時~18時30分、木曜休館・夏休み中は毎日開館)ならいつでも利用できる。

 売店はさんふらわあに限らず船グッズが特に多く、さまざまな種類の船の学習帳や消しゴム、マリンルックのテディベアなど……部屋に飾っておきたいデザインの商品が満載だ。

 またレストランでは、船を通じて運ばれる7種類のフルーツで原材料で作ったカレーがあり、食べながら「このカレーの原料はどこから来たの?」と、学ぶことができる、なお、さんふらわあ名物のカレーとは違った、ここだけのオリジナル商品だという。

 また、船をかたどったソフトクリームやドリンクなどもSNS映えは必至だ。

今後のふねしる「課外学習の活用」「自由研究の聖地」なるか?

 上田館長によると、ふねしるは年間300日程度の開館で、年間20万人程度の利用を目指しているという。折しも大阪・関西万博の開催中であり、多くの人々がさんふらわあ乗船前に訪れ、船や海運のことを楽しく知るだろう。

 また今後は、学校の課外学習や教育旅行での団体の来場も積極的に誘致していくとのこと。九州方面から発着するさんふらわあのターミナルが目の前ということもあり、「修学旅行のついでに立ち寄り」といった利用も、おそらく相当数見込めそうだ。

 オープンの時期は夏休みでもあり、館長は「家族でここに来れば、子供の自由研究は絶対にはかどる!」と、自信を見せていた。日本に欠かせない「海運」を体験して楽しく学べるふねしるがどれだけ子供をワクワクさせるか、今後に期待したい。