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相鉄の新型13000系を見てきた。エレガント×未来のネイビー車両、バリアフリー設備は2種類の優先席

2026年3月9日 公開
おなじみ、相鉄のキャラクター「そうにゃん」と13000系。奥に見える銀色の車両は、相鉄で初めてのアルミ車両・6021号車である。まさに相鉄の世代の変化を示す1枚となった

 相模鉄道は3月9日、新型車両「13000系」の報道公開を実施した。この車両は、来たる3月30日から営業運行を開始する予定である。

 相鉄では、グループ公式Webサイトや相模鉄道公式YouTubeチャンネルにおいて、13000系の製造から導入までをまとめた動画を公開するなど、「13000系プロモーション」を実施する計画もある。開始時期は5月上旬を予定している。

お披露目開始の時点では、車両は検修庫に入った状態。スモークを噴射した状態で扉を開けると……
そのスモークの向こう側から、13000系が姿を現わすという演出
まず、前部標識灯をロービームで点灯
次に、改めてスモークを出しながら庫外に出てきた。このとき、前部標識灯はハイビーム
外に出てきた13000系。場所の関係で、姿を見られたのは先頭車のみ。

「安全×安心×エレガント×未来」

 相鉄は2014年から「デザインアッププロジェクト」を推進している。その一環として、特注色の「YOKOHAMA NAVY BLUE」への車体色変更が進められており、これが傍目にはもっとも目立つ。

これは従来塗装の8000系。13000系と入れ替わりに引退が進むことになる
リニューアルして「YOKOHAMA NAVY BLUE」になった9000系。これもゆくゆくは13000系で置き換えていくことになろう

 しかしこれは、単に車体の見た目を変えるだけのプロジェクトではない。「安心×安全×エレガント」というコンセプトのもと、車両・駅舎・制服など、さまざまな分野のデザイン水準を高めて、誰もが快適に、気持ちよく移動できる輸送手段を目指そうという考えがあるようだ。

 プロジェクト開始から約12年を経て、さらに「未来」というキーワードをコンセプトに加えるとともに、具体的な現われの一つとして「沿線の未来を運ぶ新型車両」が出てきた……そんな構図といえようか。

 もちろん、「安全」は輸送に携わる者として最優先の課題であるし、「安心」して利用できることも重要。そこに「エレガント」や「未来」という思想を加えて相鉄の沿線価値を高めようという話になろう。

 実際、「YOKOHAMA NAVY BLUE」塗装の12000系がJR線内に乗り入れるようになってから、「あの見慣れない電車はいったい何だ? 相鉄の車両か!」と驚く事例があると聞く。つまり、相鉄とその沿線に目を向けてもらうためのトリガーになっている。

なぜ新型車両を

 この13000系は、すでに相鉄・JR直通線で使われている12000系をベースにしているが、相鉄線内専用の8両編成として、新形式を起こしたものだ。

 だから、主要機器や運転台など、基本的なところは12000系と共通している。すると、運転や検修に携わる現場にとっては、違和感なく導入・運用ができるし、予備品の共通化による合理化メリットも得られる。

これが12000系。単純に考えると、12000系から中間車2両を抜いたものが13000系となるが、主要機器こそ共通であるものの、変更点はいろいろある
13000系の運転台は、基本的に12000系と同じ。ただし、将来のワンマン運転導入に備えて、ホーム監視カメラの映像を表示するディスプレイが左上に追加された

 では、なぜ新形式を起こすことになったのか。12000系の8両バージョンでもよかったのではないか、と思いそうになる。

 ところが、12000系は先頭車の運転台直後だけ側扉の位置が異なっている。その先頭車をそのまま使って8両編成にすると、10両編成では中間車が来る位置に8両編成の先頭車が来るため、可動式ホーム柵と側扉の位置が合わなくなるのだ。

 そこで13000系では先頭車の全長を800mmばかり伸ばすとともに運転台まわりの寸法を見直すなどして、側扉の位置を中間車に合わせた。その結果、先頭車の座席定員が6席、増えることにもなった。

 ちなみに、12000系以外の車両は先頭車でも中間車でも側扉の位置は基本的に同じなので、こうした問題は起こらないのである。

先頭部の側面。最初の側扉と2番目の側扉の間隔が12000系より広く、その分だけ座席定員が増加した
概要説明で用いられた資料から。扉位置の違いが明瞭に理解できる
報道関係者向けの試乗列車がかしわ台駅に進入してきたときの様子。可動式ホーム柵との位置関係はこんな按配となる

【写真で見る】13000系、車内外のディテール

 では、ここからは写真を主体にして13000系のディテールを見ていく。

先頭部の形状は「水を切り拓いて進む海の生き物のような流麗な造形」と説明される
正面寄りから。2000系・21000系・12000系のような「フロントグリル」はやめて、つや消しの「センターパネル」を中央に設置、そこに「SOTETSU」ロゴを配している
前部標識灯は「未来を見つめる目」と説明される。汎用品の小型LEDを複数組み合わせて、理想的な照度・配光になるように工夫した一品である。その右側にある「13000 SERIES MIRAI」と書かれた部材は、「Concept Emblem」という。実はこれ、前部標識灯を取り付けるためのビスが外から見えないようにするカバーも兼ねている
先頭部の下半分・全体はこんな按配
グレーを基調にした内装や袖仕切の形状は、12000系と共通するもの。袖仕切の一部をガラス製とすることで、見通しをよくしている。ちなみに、9000系のリニューアル車も似たようなデザインになっている
荷棚はガラス製で、奥の方に落下防止用の板が設けられている。側窓はUVカット機能を持つ熱線吸収合わせガラスを使用しているため、ロールカーテンはない
調色調光式のLED照明を採用しており、朝から日中にかけてと夕方とで、車内の照明の色調を変えられる。これは朝から日中にかけての状態
こちらは夕方の状態で、色が電球色に変わっているのが分かる
側扉の上には、17インチの液晶式案内表示器が2台ずつある。車内防犯カメラは以前からあるアイテムだが、13000系では解像度とフレームレートを高めている
すべての側扉に「個別ドアスイッチ」を設置している。始発駅、あるいは長時間停車する中間駅で、夏や冬に車内保温を図りたいときに乗客が開閉操作を行なえる
相鉄における伝統アイテム(!?)の1つ「鏡」は、仕切壁に設置されている。見た感じ、鏡面仕上げのステンレスだろうか
車番と号車番号表示に加えて、製造所の表示もある。ベースは総合車両製作所(J-TREC)の「Sustina」で、そこは12000系と同じ

バリアフリー設備は幅広い層にアピール

 バリアフリーについては最新の基準に合わせているので、全車両にベビーカー・車椅子用のフリースペースを設置している。

 もちろん優先席もあるが、これには2種類の腰掛がある。1つは通常型の腰掛と共通のもの(ただしモケットの柄が異なる)。もう1つは、座面の位置を通常より高めるとともに、立ったり座ったりするときに手を添えてアシストするための手掛けを個別設置した「ユニバーサルデザインシート」だ。

一端には、赤系統のモケットを用いるユニバーサルデザインシート、その対面はフリースペース
同じ場所を反対側から。もちろん、フリースペースには非常通報装置がある
反対側の車端は、一方はユニバーサルデザインシート、もう一方は通常型の優先席。これはユニバーサルデザインシートで、座面の奥行きが少ない
ユニバーサルデザインシートの全景。袖仕切の角の部分との対比から、座面の位置が通常より高いのが分かる
こちらは通常型シートの優先席。座面の先端と袖仕切の端部が一致しているのが分かる
吊手は独特の楕円形。よく見ると相鉄のロゴ入り
優先席だけ吊手の色を変えているのは最近の通例。高さはもともと、全体的に低くされているようにも見える

 近年、「子育て世代へのアピール」を狙って、従来より大型のフリースペースを設けるなどの工夫を取り入れた新型車両が、あちこちから出てきている。対して相鉄は、特定の層だけを狙い撃ちにするよりは、フリースペースやユニバーサルデザインシートといった設備を通じて、幅広い層に「使いやすさ」をアピールしていく考えのようだ。

これも子育て世代へのアピールというのかどうかは分からないが、運転台背後の仕切りは比較的、窓の面積が広い部類。つまり「かぶりつき」がしやすい。中央の窓の左側には鏡があり、その下には非常脱出用の梯子を収納している

おわりに

 相鉄グループは、横浜市で開催する2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)において、最寄りの瀬谷駅・三ツ境駅までの輸送を受け持ち、「会場への足」となる。

 それに加えて、自らも出展を実施する。そこに13000系の現物を設置する「SOTETSU PARK(そうてつぱーく)」を設置するとのこと。そこに展示する車両の詳細は、後日に明らかになるようだ。

先頭部の側面には相鉄のロゴが入る
取材時、横浜方の先頭車だけ、車内に13000系をアピールする吊広告が設けられていた
13000系に限らず、どんな車両でも同じだが、車内外で使用する色を決めるために、さまざまな見本が作られる。屋内だけでなく屋外でも、それもさまざまな状況下で見て検討するのだ
センターパネルと、先頭部形状を決めるために作られた模型の一例。13000系では、1つ基本となるデザインを決めたあとで、それを生成AIにかけてバリエーションを生み出すプロセスを反復したという。とはいえ最後は、実際に模型を作って見てみなければ決められない
クルマでいうところのオーナメントだろうか。こうした小さなアイテムでも、色・柄・形状を変えながら最適解を追求する
横浜駅に到着した試乗列車。後部標識灯はこんな具合に点灯する
そうにゃんも「みんな乗ってくださいね」とアピール中!?