ニュース
JALとお客さまのファーストコンタクト。電話応対を行なうJALナビアの仕事
(2015/6/24 10:56)
航空券を購入する手段として一般化しつつあるインターネット購入。トラベル Watch読者では、インターネットで各種旅行予約、購入を行なう方が多数派だと思うが、世の中的には代理店や航空会社に問い合わせての予約&購入も多い。また、インターネット予約&購入を主としている人でも、複雑な経路のチケットを購入する際は、電話で予約を作ってもらうこともあるだろう。
そんなときに頼りになるのが、各航空会社の電話問い合わせ先。一般的に航空券は電車のキップより複雑なことが多く、とくに年に1度の海外旅行といった際には、国内旅行とは違った注意が必要だ。
そこで今回、JAL(日本航空)の電話応対を行なう関連会社「株式会社JALナビア」で国際線を担当する石井さんに、電話応対の仕事に関してお話をうかがった。
――最初にお聞きしたいのですが、JALナビアとはどのような会社なのですか?
石井さん:JALグループの中で、旅行やチケット発券など、お客さまのさまざまな問い合わせに対して対応する会社になります。業務の中で一番意識しているのが、お客さまがJALに問い合わせたいと思ったときに、最初にお客さまとコンタクトする部署になることです。私たちがお客さまにどう接するかによって、これからJALを使おうとか、やはりJALはやめようとか、お客さまの第一印象を形作る場所になります。(電話応対において)予約を承るとか、航空券を販売するとかで、お客さまに満足をいただけているかどうか常に意識しています。
担当する地域は国内のお客さまとなっており、東京、札幌、大阪、福岡の4個所に拠点があり、1600名くらいのスタッフで業務を行なっています。勤務は早番と遅番の2交代制になります。
――JALへのファーストコンタクト個所としては、電話以外にもWebサイトがありますが、そちらもJALナビアの担当になるのですか?
石井さん:そちらは、別の部門が担っています。ただ、Webサイトの問い合わせコーナーなどはJALナビアが担当することになります。JALナビアは、旅行や航空券の購入を検討し、購入後、空港に行くまで、お客さまをサポートする会社になります。場合によっては、旅行中でも、お客さまの疑問に答えていくことになります。
――JALで航空券を購入しようと思ったときに気が付くのが、国際線の購入と国内線の購入で大きく入口が分かれていることです。Webサイトでも分かれていますし、問い合わせ電話番号も分かれています。これには理由があるのですか?
石井さん:一番の理由は、国際線と国内線で航空券のルールに大きな違いがあることです。そして、それぞれかなりの種類の航空券があり、両方を一度に受けるのが難しいことがあります。また、国内線と国際線で使っているシステムも異なります。
――電話での問い合わせですが、一番はチケット購入に関するものだと思いますが、それ以外でとくに多いものはありますか?
石井さん:インターネットでの操作に関するものが多いです。インターネットでどうやって予約を取ったらよいのかなどの相談があります。国際線の場合、予約を電話で取って発券すると手数料(5400円)がかかりますので、予約は電話で取って発券はインターネットでということをお勧めしています。その際に操作方法の案内をすることなどが多いです。
――電話問い合わせに関して、心がけていることは何かありますか?
石井さん:まずは、正確かつ誠実な答えを心がけています。次に、お待たせしない迅速な対応です。私たちは、お客さまがJALを使う中で一番最初の窓口になりますので、お客さまが安心して予約を完了していただければ、その旅行全体が快適に過ごせると思っています。
予約の部門でもお客さまの命を預かる仕事と思っていますので、お客さまが安全で快適にご搭乗いただけるよう心がけています。
――“待たせない”というキーワードが出てきましたが、具体的に行なっていることはありますか?
石井さん:お客さまの貴重なお時間をいただいて、電話いただいています。お待たせしないためには航空券の規則をしっかり知っておく必要がありますが、航空券の規則は膨大なものがあり、日々変わっていくため勉強するのがとても大変です。
航空券の予約だけではなく、空港のことであったりとか、お客さまのほうがよほど詳しかったりもしますので、お待たせしないように常に勉強をしています。
また、朝のブリーフィングで新しい事項を共有しています。ある件でお客さまにご迷惑をかけてしまったときは、同じようなことが起きないよう、全員で共有しています。
ただ、お待たせしないというのは2番目に大切なことで、まずは正確で誠実な答えが一番大切になります。分からないことであれば、お待たせすることになりますが、一度(問い合わせを)あずかって回答しています。
――空港については、どのような質問が多いですか?
石井さん:空港のことでよくある質問は、ラウンジの利用時間であるとか、手荷物の規則であるとかです。
――ラウンジの話が出ましたが、国内の空港はともかく、海外の空港のラウンジなどについて答えるのは大変ではありませんか?
石井さん:答えやすいようにデータをまとめているので、お客さまがラウンジ利用に該当するかどうか確認して答えています。ただ、海外の空港ですと、お客さまのほうが実際に利用されており、詳しいことが多いのです。利用できるかどうかについては答えることができるのですが、そのほかの細かなことだと、お客さまのほうが知っていることもあり、お客さまから教えていただくことも多いです。
――最近特に多かった質問とかはありますか? 代表的なものを教えてください。
石井さん:特典航空券についてこれまでは、電話であっても、インターネットであっても発券手数料はいただいていませんでした。4月以降は、インターネットから操作ができるように変わり、電話だと発券手数料(マイルを使った特典航空券は2160円)がかかるようになったので、有償の航空券と同様にインターネットからの発券をお勧めしています。
――石井さんは国内線と国際線の両方の経験があるとのことですが、国内線と国際線で質問内容は大きく違うのですか?
石井さん:国内線と国際線の違いですが、国内線で電話問い合わせされる方の中には、航空機に慣れていない方も多いように感じます。そのため、質問内容を先読みすることもあり、例えば空港に来ていただく時間をお伝えするとかです。航空機の場合、電車と異なり、チェックインや荷物を預ける時間が必要になります。その分の時間を見ていただいたりしています。
――電話応対をする仕事で、最低限必要なスキルはなんだと思いますか?
石井さん:私自身も入社するまで電話応対などはしたことがなかったので、“JALフィロソフィ”を共有していただける方であれば、どなたでもできる仕事だと思っています。後は、電話応対の基本的なマナーはあったほうがよいと思いますが、(私自身)お客さまに育てていただいたので、それは入社してからで問題ないと思います。
――JALナビアで特別な訓練はあるのですか?
石井さん:基本的な電話応対に関することはありますが、特別なことはありません。ただ、電話応対は第一声が大切なので、JALナビア内では「第一声コンテスト」などをしたりしました。これはどの担当者が電話に出ても、同じようにお客さまに対応できるようにするためです。去年のテーマが“第一声の名乗りをハッキリしよう”というのがあったためです。後は、終話です。最後の名乗りをきちんとするよう、みんなで指摘し合っています。
――電話応対では相手の顔が見えない中での対応となりますが、その点についての大変さはありますか?
石井さん:やはり、表情が見えないというのが一番難しくて、お客さまの声のトーンでしたり、話のスピードでしたり、話す間の長い短いでしたりで、お客さまがどう思われているのか察するようにしています。ただ、必ずしも100%察することができているわけではないので、こちらから「何がご心配なことはございますか」「ご案内した内容の中で分かりづらい点はございませんか」などの言葉で、お客さまとコミュニケーションを図っていくようにしています。
こちらが理解していただいたつもりでも、お客さまの声のトーンからはそこが分からないところがあるので、終話をする前にはお客さまが不安なことはないか、きちんと確認してから電話を切るようにしています。
――電話予約をスムーズにするコツとかはありますか?
石井さん:国際線ですとお名前はパスポートどおりの予約を作成しなければなりません。そのため、パスポートに書かれている正確なローマ字表記が必要になります。たとえば、佐藤さんがSATOUなのかSATOなのか、大野さんがONOなのかOHNOなのか、というところが分からないと予約を作ることができないのです。代表の方からの電話だとその辺りが分からないことがあり、予約をお取りできないことがあります。
――国際線予約を作る際に必須となるのは、ローマ字の綴りだけなのですか? パスポート番号とかは必要ないのですか?
石井さん:つい最近、北米と欧州線はパスポート番号が必要になりました。ただ、それは予約のときになくてもかまわないので、予約ができた後、JALのホームページからパスポート番号を入れていただければ結構です。
ただ、名前に関しては変更ができないので、一度予約を取っていただいても、パスポートの名前の綴りが違ったら、一旦予約をキャンセルしなければならないのです。そのため、キャンセルした後、空いている席の中で予約を作っていく必要があり、もし満席になってしまうとキャンセル待ちのようなことになってしまいます。
――今まで電話でやりとりした際にとくにうれしかったことはありますか?
石井さん:(しばらく考えて……)私たちは笑顔で応対するよう心がけているのですが、お客さまが笑顔になる瞬間が分かるのです。(お客さまが)安心して電話を終話していただくと、よかったなと思います。実際にお客さまが目にする、空港だったり機内のことだったりはすごく印象に残ると思うのですが、予約の電話が印象に残ることは少ないと思っています。しかしながら、「予約をきちんとできたので、これで安心して旅行に行けます」という手紙をいただいたことがあり、それはうれしかったです。
今回、回答の一部に「“JALフィロソフィ”の共有」というのがあったが、この“JALフィロソフィ”についてはJALのWebサイトに掲載されているので、興味がある方はJALのWebサイトを参照していただきたい。そのほか、JALナビアとしての取り組みもあり、別途回答をいただいた。
JALナビアの取り組み
JALが世界一お客さまに愛され、選ばれる航空会社になるために、JALグループの窓口として、JALナビアは世界最高のコンタクトセンターを目指して、以下に取り組んでゆきます。
・お待たせしない接客・応対
・丁寧かつ礼儀正しい応対
・お客さまが常に新鮮な感動が得られるようなサービスの実現
・正しい知識に基づく応対等
石井さんにさまざまな質問をしてみたが、印象的だったのは彼女の声のトーン。ハッキリと聞き取れる声で、ゆっくりと、そしてしっかりと話をしてもらえた。また、国際線予約作成における綴りの話などは、グループ海外旅行の予約をする際には抑えておきたい部分。航空会社における電話応対を取り上げてみたが、旅行予約を作るときのちょっとしたヒントになれば幸いだ。